第2話 ずっといっしょに
269 :
俺とララサーバル[]:2011/02/13(日) 04:43:50.88 ID:8J4HC81q0
第2話 ずっと一緒に
―1945年 3月 ロマーニャ 504JFW基地 ハンガー
竹井大尉からそう連絡が来て、1時間が経った。
そろそろ504JFWのウィッチたちが帰還してくる時間だろう。
俺達整備兵はそれをまだかまだかと待ちわびていた。
お、帰ってきたみたいだな。
東の空に少しずつ大きくなっている点がいくつか見える。
あれがきっとウィッチたちだな。
数は1、2、3、4、5、6、7,8,9。9人!?
一人足りない……?
嫌な予感がする…。
ウィッチたちが基地に近づいてくるにつれ、個人を認識できるようになってくる。
やっぱり…。アンジーがいない。
270 :俺とララサーバル[]:2011/02/13(日) 04:45:32.27 ID:8J4HC81q0
ウィッチたちが基地に到着した。
無意識のうちに、ウィッチのいる方へ走り出す。
ダメだと自分に言い聞かせてはいるが、足を止めることができない。
そして、ストライカーを外した直後の竹井大尉に掴みかかった。
俺「おい!アンジーはどうした!どうして一緒に帰還しない!」
大尉の胸倉を掴んで叫んだ。
上官にこんな態度を取るなど、軍法会議ものだ。
だが、問い詰めることを止めはしない。
俺にとって、今ここにアンジーがいないことが最も重大なことだから。
竹井「ララサーバル中尉は……私たちの撤退時間を稼ぐために…戦場に残ってくれました。」
大尉は申し訳なさそうに視線をそらした。
体の底から、激情が沸き上がってくる。
俺「ふざけるな!アイツ一人を残してきたのk」
ここまで言って気付いた。
みんな、傷だらけじゃないか…。
271 :俺とララサーバル[]:2011/02/13(日) 04:50:21.91 ID:8J4HC81q0
クレスピ曹長とマッツェイ少尉は脇腹、左肩に血のシミが出来ている。
マルヴェッツィ中尉は、自身が頭から血を流しているのに、必死にシェイド中尉の胸の傷の治療をしている。
中島少尉と諏訪少尉は腕を押さえてグッタリしている。
ジェンタイル大尉など、立っているのもままならない状態だ。
それを支えているゴッドフリー大尉も、足をひきずっている。
そして、俺が今胸倉をつかんでいる竹井大尉自身も、肩に大きな傷を負っていた。
慌てて胸倉をつかんでいた手を離し、深々と頭を下げた。
俺「すみませんでした!!」
何をやってるんだ、俺は!!
この子たちのどこに責められるべき所がある…?
こんな状態のこの子たちが戦場に残ったって足手まといになるだけだろうが!!
アイツを一人残していくのが、一番つらかったのはこの子たちだったってのに……!
273 :俺とララサーバル[]:2011/02/13(日) 04:53:20.17 ID:8J4HC81q0
竹井「大丈夫よ。あなたの気持ち…よく分かるから…!」
そう言って大尉は悔しげな表情でうつむいた。
罪悪感で胸がチクチクと痛む。
しかし、頭の中を占めるのは、アンジーが無事かどうか、ただそれだけだ。
俺「本当にすみませんでした。でも…俺…その…。」
竹井「ええ、行っていいわよ。こっちは私がなんとかしておくから。
あなたはララサーバル中尉の安否を私たちに一刻も早く伝えて。」
大尉は、そう言って俺に微笑みかけてくれた。
この人は…本当に……!
俺「ありがとうございます!!」
言うが早いか、俺は通信室に向かって走り出した。
274 :俺とララサーバル[]:2011/02/13(日) 05:00:22.02 ID:8J4HC81q0
―通信室
俺「失礼します!」
走ってきた勢いそのままで通信室のドアを開けた。
部屋の中にいたドッリオ少佐と通信士は一瞬驚いた顔をしたが、俺の顔を見て、黙って無線機の前を開けてくれた。
地域密着型航空団、アルダーウィッチ―ズの隊長の優しさには頭が下がる。
俺「ありがとうございます。」
俺は無線機の前に駆け足で向かい、無線機を手に取った。
ドクンドクンと心臓の鼓動が高まり続ける。
無線機を持つ手の震えも止めることができない。
276 :俺とララサーバル[]:2011/02/13(日) 05:05:07.66 ID:8J4HC81q0
俺「ララサーバル中尉。こちら俺兵曹です。そちらの状況はどうですか?どうぞ。」
『…………ザー……ザー…』
返事がない…。
おいおい…聞こえてねーのか…?
俺「おい、返事をしろ!アンジー!お前は無事なのか!?」
『…………ザー……ザー…』
クソッ!!なんで何も言わねーんだよ!
無事なんだろ!?
ヒスパニアのトップエースであるお前がそんなに簡単にやられるわけないよな!?
俺「おい…アンジー…。頼むから返事してくれよ…。
お前に何かあったら俺は……俺は…!」
『情けない声を出すな、俺兵曹。』
277 :俺とララサーバル >>275何故分かったし[]:2011/02/13(日) 05:10:18.86 ID:8J4HC81q0
俺「!? アンジーか!?無事か!?」
『…当たり前だ。私は…ハアハア、エースだぞ。今敵をまいて基地に向かっている。ハア
大…丈夫だ。ハアハア…無事到着できる。たいしたケガ…ハア、もしてない…から。ハアハア
本…当に大丈夫…だから』
無線はそこで切れた。
俺は、無線を無線機に置くと、一目散に駆け出した。
目的地は滑走路。
アンジー、お前は嘘が下手だなぁ。
性格の真面目さが裏目に出てるんだな。
まったくよう、
本当に大丈夫な奴が、そんなに露骨に『大丈夫』を強調するわけねーだろうが!!!
278 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/02/13(日) 05:12:42.98 ID:StdC0NCg0
全く、イイヤツだな、ホントに
279 :俺とララサーバル[]:2011/02/13(日) 05:15:17.69 ID:8J4HC81q0
―滑走路
東の空に一粒の小さい点があるのが目に入った。
アンジー…!
俺はその点の方向に走り出した。
近づくにつれて、点の軌道が分かるようになる。
あっちへ行ったりこっちへ行ったりと、軌道が全く安定していない。
アレは…明らかに異常だ…!
ジグザグにこっちに向かってくる点の形が分かってきた。
あのシルエットは明らかにアンジーだ。
うつむいてる…。…アイツ…前見てないんじゃないか…?
おいっ!意識はあるのか!?
俺「アンジー!!とにかく俺の方向へまっすぐ飛んで来い!!後は俺がなんとかしてやる!!!」
そう叫ぶと、アンジーは弱弱しく顔を上げた。
そして、俺の顔を見て………微笑んだ。まるで、迷子の子供が母親を見つけた時のように。
アンジーは俺の言葉通り、まっすぐに俺の胸へ飛び込んできた。
281 :俺とララサーバル[]:2011/02/13(日) 05:20:32.85 ID:8J4HC81q0
俺「グガッ…!」
俺は受け止めた衝撃で後方に吹き飛ばされた。
全身に痛みが走る。
だが、それよりも自分の腕の中の少女だ。
俺「アンジー、大丈夫か…?」
問いかけて絶句する。
血まみれじゃねーか…。
体の至る所に傷、傷、傷。見ているこっちが痛いくらいだ。
かろうじて呼吸はあるものの、文字通り虫の息だ。
あれ……?お前…腹に穴、空いてるんじゃないのか……?
ッ……!こんな状態で基地までずっと飛んでたってのかっ……!?
282 :俺とララサーバル[]:2011/02/13(日) 05:25:10.73 ID:8J4HC81q0
ララサーバル「俺…?どうだ?…ちゃんと……帰ってきたぞ…?」
俺「ッ…!ああ…すごいな…。本当にお前はすごいな……。
だから…もうしゃべるな……!」
俺は泣きながらアンジーを抱きしめた。その、今にも消えそうな温もりを逃さぬように。
俺はコイツがこんなにボロボロになっている時に、どこで何をしていた……?
安全な場所で、ただボーっと空を見上げてただけじゃねーか……!
本当に出来ることはなかったのか……?
本当にコイツの元に駆けつけて、守ってやることは出来なかったのか……?
俺の……クソ野郎が…!
39 :俺とララサーバル[]:2011/02/15(火) 04:45:44.88 ID:P4dbcQUV0
―1944年 11月 ロマーニャ 504JFW基地 ハンガー
その女は驚愕した。
彼女は、8月の501JFWの
ガリア解放に刺激を受けた連合軍総司令部が、
主にロマーニャ北部とアルプス南部を防衛するために、つい先日設立した第504統合戦闘航空団のメンバーの一人である。
まだ基地に不慣れなため、迷ってしまい、ハンガーに行き着いた矢先に彼女は見つけてしまった。
まだ、幼い頃の面影を少し残した、『俺』と呼ばれるその男に。
女は無意識の内につぶやいた。
「俺…?俺なのか…?」
その言葉を聞いて、男は彼女の方を向いた。
男は彼女の顔を見て一瞬驚いた顔を見せたが、すぐに顔を引き締め、敬礼をした。
「俺整備兵曹であります。よろしくおねがいします、ララサーバル中尉。」
そして、ニヤリと笑い言った。
「久しぶりだな、アンジー。」
その笑顔は昔彼女が大好きだった笑顔と全く変わっていなかった。
いつも彼女を守り、元気付けてくれた少年の笑顔と。
40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/02/15(火) 04:46:56.44 ID:ZvMx9fHi0
俺イケメンすなぁ
支援
41 :俺とララサーバル[]:2011/02/15(火) 04:50:16.09 ID:P4dbcQUV0
―1945年 3月 ロマーニャ ローマ 病院
ここは…どこだ…?
シンという音が聞こえてきそうなほど静かで、かすかに消毒液のにおいがする。
病院…か?
?「目が覚めたのか…、アンジー?」
誰かの声が聞こえる。
私は目を開けた。
ララサーバル「俺…か…?」
俺「ッ…!気が付いたか!?」
視界に入ってくるもののほとんどが白かった。
床、天井、カーテン。この部屋にあるものはほとんどが白色だ。
そんな白だけの世界では、俺という存在は異彩を放っていた。
なのに、何故ベッドの隣のイスに座っている俺の姿がこんなにぼやけて見えるのだろう。
43 :俺とララサーバル[]:2011/02/15(火) 04:52:57.86 ID:P4dbcQUV0
俺「アンジー…よかった…本当によかった…グス」
おいおい。大の男が泣き出したぞ。しょうがない、慰めてやるか。
ララサーバル「何を…泣くことが…ある?青中隊の指揮官だった…私が死ぬ訳…ないだろう?」
いかんな、久しぶりに喋ったから舌が上手く回らない…。
ん?俺が眉をひそめている…?
俺の顔をよく見ると、心なしか頬がこけており、目の下に隈が出来ている。顔色も悪く、生気が感じられなかった。
存在感が希薄なのはそのせいか。コイツ…あんまり寝てないんじゃないか?
俺「グス…アンジー、お前は5日間も意識が戻らず、生死をずっとさまよっていた…。
今回ばかりは…本当に危なかったんだ…!」
そう言うと俺は、ヒザの上に置いていた拳をギュッと握りしめた。
そうか…。けっこうマズイ状態だったんだな…。
俺「すまないな…、」
ん?何故謝るんだ…?
俺「守ってやれなくて…。」
44 :俺とララサーバル[]:2011/02/15(火) 04:54:49.29 ID:P4dbcQUV0
…………………………………は? 今コイツは何て言った…?
守ってやれなくてすまない…? 何を言ってるんだコイツは…。
俺「俺がお前を守ってやらないといけないのに…肝心な時に何も出来なくて…お前をこんなにボロボロにさせちまった。
本当にすまない……!」
俺は、目に涙をためて深々と頭を下げた。
おい…お前はネウロイと戦うどころか飛ぶことすらできないだろう?
そんなお前がどうやって私の所に辿り着ける…?
どうやって私を守ることが出来ると言うんだ…!
ララサーバル「ふざ…けるな…!貴様、私を舐めているのか!
貴様が私を守る?傲慢にも程があるわっ!!」
それなのに…お前は…自分を責めているのか…?
寝ることが出来ないほどに思い詰めているというのか…!?
ララサーバル「不愉快だっ!出て行けっ!!」
お前はずっとせまい部屋に閉じこもっていて気が滅入っているだけなんだ…!
外に出て新鮮な空気を吸って頭を冷やして来い…!
45 :俺とララサーバル[]:2011/02/15(火) 04:57:09.34 ID:P4dbcQUV0
俺「…。」
何故動かない、俺? 私が本気で怒っているのが分かるだろう…?
私の怒号に、俺は表情一つ変えなかった。
そして、私の頭に手をやり、
俺「どこにも行かないよ。」
と言い、頭を撫でてくれた。
とても優しい撫で方だ。だが、手が…冷たい…。こんなのでは全然心地よくない…!
46 :俺とララサーバル[]:2011/02/15(火) 04:58:02.23 ID:P4dbcQUV0
俺「お前がこんなに傷ついたのは、きっとお前を一人にしたからだ。」
やめろ…。
俺「9年前、お前を一人で行かせてしまったからこんなことになっちまったんだ。」
やめるんだ…!
俺「だから、もうお前を一人で行かせたりしない。」
そんなプロポーズみたいな言葉を、
俺「ずっと一緒にいよう、アンジー。」
今にも泣きそうな笑顔で言うんじゃない…!
お前は…どうしたら自分を責めるのを止めてくれるんだ…?
48 :俺とララサーバル[]:2011/02/15(火) 04:59:48.98 ID:P4dbcQUV0
目覚めてから1週間が経った。
その間、俺は何を言っても私のそばから離れようとしなかった。
表情はいつも笑顔。それはまるで笑顔の仮面を貼り付けているようだった。
俺といつもいっしょにいること…これが小さい頃からの夢だった。そして、たぶん今も…。
しかし、夢が叶ったはずの今はどうだ? こんな上っ面な暮らしを私は夢見ていたのか…?
そんなある日、私の病室にミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ カールスラント空軍中佐が訪ねてきた。
彼女は第501統合戦闘航空団の隊長を務めているらしい。
501JFWは、ほぼ壊滅状態の我々504JFWの代わりにロマーニャの守護を引き受けるために再結成された。
私が不甲斐ないばかりに…。申し訳なくて胸が詰まりそうだ…。
ミーナ「はじめまして、ララサーバル中尉、俺兵曹。ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ カールスラント空軍中佐です。お加減はいかがですか?」
ララサーバル「はじめまして、ヴィルケ中佐。アンジェラ・サラス・ララサーバル ヒスパニア空軍中尉です。まだ、ろくにものを食べることもできませんね。」
俺「自分は俺 ヒスパニア空軍整備兵曹であります!」
いつものように、私の寝るベッドの横のイスに座っていた俺が立ち上がって敬礼をして言った。さすがに笑顔の仮面は外しているか。
50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/02/15(火) 05:08:34.57 ID:ZvMx9fHi0
これはひょっとして501にアンジー&俺加入フラグ?
51 :俺とララサーバル []:2011/02/15(火) 05:09:08.67 ID:P4dbcQUV0
ヴィルケ中佐は柔らかい物腰で、利発そうな方だった。きっと良い司令官なのだろう。
ララサーバル「今日はどういったご用件で? 俺、少し席を外してくれないか?」
俺が従うかは分からないが。
ミーナ「あ、別にかまわないわよ。というより、用があるのはむしろあなたの方よ、俺兵曹。」
俺「自分に…ですか?」
ミーナ「ええ、あなたを第501統合戦闘航空団の
整備士としてスカウトするために来たの。」
俺「…。」
今、あからさまに嫌な顔をしたな…。
俺はストライカーユニットの整備士としてはかなりの腕らしい。だからこそ、18歳という若さでヒスパニアからロマーニャへと派遣されてきたのだ。
聞く所によると、私と別れてから8年間必死で勉強したとか。わ、私のため…か…?///
ミーナ「あなたは良い腕をしていると聞きました。504JFWが再起するまででいいの。私たちに力を貸してくれないかしら?」
俺「…。」
まあ、了承する訳ないか…。…仕方ない。
52 :俺とララサーバル >>50すみません…アンジーは加入しません…[]:2011/02/15(火) 05:14:44.46 ID:P4dbcQUV0
ララサーバル「…俺。お前がいなくて501JFWの整備が疎かになり、ロマーニャがネウロイに占領されたらどうする?
お前のせいで私が死ぬんだぞ?」
俺は少しの間考え込んで言った。
俺「…分かりました、ヴィルケ中佐。そのご依頼、お引き受けします。」
ミーナ「そう、それは良かったわ。」
ヴィルケ中佐はそう言って微笑んだ。むう、笑顔がものすごく綺麗だな…。
ミーナ「では、詳しい話は外でしましょうか。」
俺「はい。」
そう言って二人は部屋の扉の方へ向かって行った。
俺「アンジー。」
俺が扉の前で立ち止まって、私に背を向けて言った。何だ?
俺「いっしょにいるって言ったのに…。約束守れなくてゴメン…。
本当にゴメン…!」
そう言って部屋から出て行った。
私は、その小さな背中に何も言ってやれなかった。
絞り出したようなその震える声に、なんと答えたらいいか分からなかったから…。
最終更新:2013年02月03日 16:15