ミッケリ臨時空軍基地 ハンガー外

 ハンガーの中から『いらんこ中隊』と暇を持て余した整備兵が見守る中
俺と穴吹智子は雪が若干吹雪き、新雪の積もった外で互いに距離を取ってそれぞれの剣を持って対峙している

俺「あのー穴吹少尉、ここ寒いんですけど…」

智子「あなたのその剣じゃ室内じゃ触れないでしょ」

俺「せめてストライカーを履いて空で戦った方が実践的じゃ…」

智子「そんな事したら俺軍曹が剣を一回も振れないで終わるけどいいかしら?」

俺「う…確かに」

智子「それに、これは俺軍曹が剣をどれだけ使えるか確かめるものなの、構えなさい!」

俺「了解しました、ただまともに持てないんで魔法力を使ってもいいですか?」

智子「なんでも構わないわ」

俺「お言葉に甘えて…」

 俺は使い魔の狼の耳と尻尾を出現させて、2メートルもある剣を両手で持ち智子に剣先を向けて正面に構える
 智子も軍刀を鞘から引き抜き俺と同じように構えた

エルマ「だ、大丈夫でしょうか、怪我とかしないでしょうか…」

キャサリン「俺軍曹はだめねー、トモコのサムライソードでなます切りねー」

エルマ「あわわわわ…」

ビューリング「あんまり脅すな、どちらも互いに怪我をさせるつもりは無いだろう」

エルマ「そ、そうでしょうか…」

ウルスラ「…」

エイラ「オレー!絶対勝てヨー!」

 いらんこ中隊の声は外で対峙している二人には聞こえず、吹雪の中ジリジリと俺と智子は間合いを詰めている

俺「…はぁ」

 隙が無い、俺から見た刀を構えた智子に感じた正直な感想だ

俺(どう飛び込んでも全部いなされるだろうな、こっちはリーチがあるけれど…どうする、しかけるか?)

 互いの距離はまだ4メートル

智子「…」ジリッ…ジリッ…

 智子は呼吸をしているか判らないほど肩も動かさずに俺との間合いを詰める

智子(私と同じ構え…あの剣は2メートル前後の間合い、私の刀はどう頑張っても1メートルちょっと どう攻めてくるかしら)

 互いの間合いは3メートルにまで詰められる

俺(いや…普通に駆け引きをしたら無理だろうな…)

 俺は少し諦めたように一度息を吐いて、智子を見据えなおす

俺(…それならなぁ!)

俺「らあああああああぁああああああああああああああ!」

 互いの距離が2,5メートルもう智子と俺の剣が触れる前に俺は智子の頭に向かって剣を最小限に振り上げて落とす

 ギィィィィ…!

 智子は体を素早く左に一歩ずらし、軍刀を頭の上まで持ち上げて剣先を地面に向け、軍刀の白羽部分で俺の剣を滑らせ攻撃の軌道を
最小限にずらした

智子「ふっ…!」

 俺の剣が智子の体を切れない軌道までずれたのを感じ取った智子は手の位置は頭の上にあるままで手首を使い
地面に向けた剣先を空の方向までくるりと回して持ち上げ、後は振り下ろしてしまえば俺の体を切れる大勢にまでになる

俺「させっかぁああああああああああ!」

智子「っ!」

 自分の剣をずらされた俺は2メートルもある巨大な剣を力づくで無理やり横に払う
 智子は一度後ろに飛び横になった俺の巨大な剣の腹踏み台にしてもう一度後ろに飛んで大きく後退した
 横に払われた巨大な剣は地面に激突して新雪を空中へ大量に巻き上げている

エルマ「あ、あの、俺軍曹が…さっきトモコ少尉の体を切ろうとしてましたよね…?」

キャサリン「あれがトモコじゃなくてミーだったら確実に体が真っ二つねー」

エルマ「お、俺軍曹は本当に本気でトモコ少尉を切ろうとしたんですか!?」

ビューリング「そうだろうな、勢いあまって地面に剣をぶつけるほどだ 寸止めは出来なかっただろう」

エルマ「えええええええっ!?と、止めてくださいぃぃぃ危ないですよー!」

キャサリン「あの間に入る勇気がユーにはあるかねー…?」

 エルマはハンガーの中からキャサリンが指を刺す方向にいる二人を見る

 俺は大声をあげながら巨大な剣を振り下ろし次々と雪煙をあげていく
 智子はそれを剣先で軌道を変えながらいなして距離を測ろうとしている
 智子はどうか分からないが、俺の攻撃は一度でも間違えば体の部位の何処かが確実に吹き飛ぶような代物だ

エルマ「で、でもこれじゃあトモコ少尉が!?」

ビューリング「…まあトモコを信じてやれとしか言えないな」

エイラ「おおー!凄いぞオレー!」

 エイラは相変わらず他のメンバーの話は聞かずに戦いに夢中になっている中、ビューリングはハンガーから数歩前に出て
タバコに火を付けて観戦し始めた

俺「はぁ…はぁ…!」

智子「もう息が上がったのかしら?」

 激しい打ち合いの末俺と智子は距離を離して再び剣を構えて対峙している
 俺は肩で息をしているというのに智子は肩を揺らしすらしていない

俺「ば、化け物…」

智子「これくらいは扶桑では普通よ?」

俺「はぁ…はぁ…そうかい、じゃあもう少し粘らないとな!」

智子(へぇ…そうくるのね)

 俺は左足を前に出して正面に構えていた巨大な剣を両手で持ち上げ、振り上げた状態で腕を固定し、剣先を少し右斜めにして空に
向けている

俺「ふぅー…」

智子「…」カチャリ

俺「っ!」

 智子の剣先が俺の喉元から左斜めになろうとした所で俺は前に出していた左足を軸にして飛び出し、
振り上げていた剣を一気に智子の左肩を狙って振り下ろす

智子「ぐぅっ!」

 ギイン!
 短く響く金属音がスオムスの空に木霊する
 智子の左肩を狙って放たれた剣戟(けんげき)を智子は身を低くし、軍刀で俺の剣の腹に叩き合わせて無理やり自分の右側へ剣筋がそれるようにいなす

俺「まだまだああっ!」

 無理やり剣の軌道を変えられた俺は力任せに今度は反対側の右斜め上から、しゃがみこんで縮こまった智子に剣を振り下ろす

 バァァァアアアアアアン!

 振り下ろされた剣先に智子は居らず新雪が積もる地面をえぐる
 えぐられたその部分は土が見え、その土も若干舞い上がっていた
 後方に飛んで難を逃れた智子は一度だけ肩を上下させて深呼吸する

智子「今のはちょっと危なかったわ」

俺「ふぅー…」カチャリ

智子(今度も見た事ある構えね、剣は違うけれど…)

 一度目を瞑り深呼吸した俺は智子を見据えながら、左足を再び前に出し両手に持ったツヴァイハンダーの剣先を
自分の後ろへ持って行った
 まるで鞘に収まった刀から放つ居合いの構えの様

ビューリング「また構えが変わったな」

キャサリン「ソードを持った俺は猟奇的ねー…そう思うかねーエルマ?あれ?」

 同意を求めようとしてエルマの方向を向くキャサリンだったが
見えたのはガレージの中で倒れ意識が無い状態のエルマだった

ウルスラ「…途中で気絶した」

キャサリン「ちょっと刺激が強すぎたかねー…」

エイラ「なぁなぁ!これからどうなるンダ?」

 智子は剣先を俺に向けて構えなおし、両者互いにジリジリと間合いを詰めていく

ビューリング「多分だが次で勝負が決まると思うぞ」

エイラ「そ、そうナノカ…私には分からないナ…」

ビューリング「トモコの構えは最初から変わってないが俺軍曹の構えはトモコからみたら剣の先が見えないだろうな」

エイラ「ムゥゥゥ…とりあえず次で決まるんダナ!がんばれオレー!」

 俺と智子の間合いは2メートルより長いほどまでに詰められていた
 そこから両者は一歩も前進も交代もせずに立ち止まり、スオムスの吹雪が固まった二人になびく

俺「…」

智子「…」

 互いに呼吸をしていないのではないかという程固まっている
 スオムスの冷たい空気が俺や智子の息を受け取りその温度差で出る白い息でやっと互いが呼吸をしているのが分かる程度だ

 まるで針の上に風船が乗っているような、いつ破裂するか分からないしばしの静寂

 それはほんの一瞬で破られ

俺「シィッ!」

 俺は俺自身の持つ魔法力全てを使い全力で後ろに構えていたツヴァイハンダーを振りぬき

智子「っ!」

 ドォオオオオオン!

 大きな音と大量の雪煙を上げ、一瞬で終わった

俺「はぁ…はぁ…」

智子「ふぅー…最初から最後まで私を本気で切り伏せるつもりだったのかしら、俺軍曹?」

 ツヴァイハンダーは智子の立っていた場所から右側に反れて剣先が地面に刺さっており
 智子はしゃがみこんで軍刀を俺の喉元に突き立てていた

エイラ「ど、ドウナッタンダ?私には見えなかったゾ…」

ビューリング「簡単な事だ、トモコは早く振りぬいた俺軍曹の剣を避けたんだよ」

キャサリン「ミーの目にも見えなかったねー…やっぱり扶桑のサムライは恐ろしいねー!」

ウルスラ「…」

エルマ「トモコしょーいが…おれぐんそうが…仲良くしてくださいぃぃぃ…」

 戦っている二人と気絶してうなされているエルマを除いていらんこ中隊のメンバーは緊張から解かれたように
息を吐き出し二人から視線を外して会話をしていた

智子「私って結構恨まれてたりするのかしら?」

俺「いえ、はぁ…はぁ…、信用していたんですよ」

智子「信用?」

俺「最初構えてた時から分かりましたから、少尉にはどんなに本気を出しても勝てないって…はぁー、ふぅー…」

智子「そう…なの、ねぇ」

俺「なんですか?」

智子「あなたの剣術は一体何処から教わったの?」

俺「趣味で覚えたんですよ、本ならカールスラントにもありましたしね」

智子「そう…とりあえず剣は振れるみたいだから空でそれを使っても良いわよ」

俺「了解、はぁーへとへとだ…」

智子「だらしないわね~」

「いやぁー、凄いものを見せてもらったよ。流石は『扶桑海の巴御前』、ほんとうに美人で驚いたけど剣術にも驚かされたよ」

 パチパチパチ
 拍手をしながら一人の男が俺と智子のところに歩み寄る

智子「こんな所に扶桑人…?」

「ぼくは中島飛行脚の糸川衛、新鋭機と一緒に来た技師なんだ」

智子「ずいぶんと遅くに到着したのね」

糸川「運び出すのに手間取ってね、説明の前に本体を見て欲しいんだけど良いかな?」

 智子は地面に座り込んでまだ息が上がっている俺を見てから糸川に誘われるように
俺に背中を向けて歩いていく

糸川「いやぁ、映画より実物の方が三倍…」

智子(俺軍曹の構え、あれは全部扶桑の剣術よね、それに修練をしている程には…)

 智子は糸川の口説き文句をスルーをしながら俺の事を考えていたが扶桑の新鋭機との出会いでその疑問が頭の中から消えていった




ミッケリ臨時空軍基地 ハンガー内

俺「はぁー…つっかれたぁ」

キャサリン「おつかれねーオレ」

俺「ありがと、よいしょっと…」ドンッ

 俺は持っていたツヴァイハンダーを整備を終えたフラックウルフA0の隣に置いた

キャサリン「しかし扶桑のサムライは恐ろしいねー、こんなでっかいソード相手にあんな小さなソードで勝てるなんて」

俺「それだけ錬度が違うって事さ。あれ、エイラは?」

キャサリン「エイラならあそこねー」

 キャサリンはエイラのストライカーがある場所を指し、彼女もまたそこに俺に背を向けて立っていた

俺「メッサーシャルフの整備がまだ終わってないの…かぁ!?」

 エイラの視線の先であろう場所を目を細めて見るとその先にはアホネン大尉と大尉に後ろから抱かれる格好で立っている
迫水ハルカが、なにやらけしからん動きをしていた

 俺はエイラの所まで走る

ハルカ「た、大尉……、なにを……。やぁ……」

アホネン「ご褒美あげよっか?子猫ちゃん。ねぇ……」

 アホネン大尉はハルカの薄い胸を、その細い指でまさぐっていた

俺「こいつの居る前で、っていうかこんな大衆の前で何をしてるんですかあんた達は!」

エイラ「あ!?な、何するんだオレ!」

 俺はエイラのところにたどり着いて彼女の両目を両手で塞ぎながらけしからん二人組みに抗議する

智子「そそそそ、そうよ!神聖なハンガーでな、何をしとるかぁ!」

 けしからん二人組みの奥で糸川に新型のストライカーの説明を受けていた智子も抗議の声を上げるが
その顔は真っ赤になっており先ほどまで凛として軍刀を振るっていた威圧感は全く無い

アホネン「ちょっと子猫ちゃんの新しい装備について教えてもらってただけよ?」

俺「教えてもらうだけで何でそうなるの!というか指を止めろ!」

エイラ「オレー前が真っ暗で見えないゾー」

俺「俺が良いというまで見ちゃいけません!」

エイラ「マタカヨー…」

アホネン「ふぅん」

 アホネン大尉は俺に注意された指を止める事もせずに何やら怪しい笑みを浮かべる

アホネン「そんなに必死になって…貴方もしかしてハルカさんに気があるのかしら?」

 その言葉にエイラの体が一瞬だけビクっと振るえ固まる

俺「なんでそうなるんだよ。常識的に考えてあっちでやれ!」

アホネン「そうねぇ、貴方にはそこの可愛らしい子が居るものねぇ…もしかして幼女趣味でもあるのかしr」

俺「俺はロリコンじゃねぇ!!」

 俺は声を大にしてアホネン大尉に幼女趣味を否定すると彼女はハルカにまとわりつかせていた手をハルカの肩に移動させた

アホネン「そうなの、仕方ありませんわね。さあ怖いおサルさんがいるから、あっちに行きましょう子猫ちゃん?ふふ、ふふふふ」

 アホネン大尉はハルカの肩を抱いたまま、ハンガーを出て行った

俺「はぁー…人前でもお構いなしなのはこの基地ではあたりまえなのか?いやありえんだろう…そう思いたい」

 俺は一人自問自答しながら両肩を落としてため息を漏らすとエイラの目を塞いでいたままだったので手を離した

俺「あ、悪い、もう良いぞ」

エイラ「…」

 エイラは無言で俺に振り返って彼の眼を見る

エイラ「オレはハルカ一等飛行兵曹みたいなやつが良いのか?」

俺「お前も同じ事を、ん~…」

 エイラに言われ俺は右手を顎にあて少し真剣に考える
 その間エイラは微動だにしない

俺「たしかに迫水一等飛行兵曹は可愛いと思う…けど」

エイラ「っ!」

 その言葉を聞いたエイラは無言で俺に背を向けてズカズカとハンガーから出て行こうとする

俺「あ、おいエイラ!何処に行くんだ?」

 全身に力を入れてハンガーを出て行くエイラに俺はついていった




ミッケリ臨時空軍基地 いらんこ中隊居室

 ズカズカと歩いて居室に戻ったエイラは早々にベットのシーツに包まって横になっており
 俺はそのベットに座ってどうしたもんかと微妙な顔をしていた

エイラ「…」

俺「あのー、エイラさん?そこ俺のベットなんだけど」

エイラ「ソレガドウシタ?」

俺「魔法力を使い切ったから俺も横になりたいなーなんて…」

エイラ「アッチデ休メバイイダロ?」

俺「あっちって何処だよ…」

エイラ「ハルカ一等飛行平曹の所ダヨ」

俺「第一中隊のことか…?」

 エイラは頭までシーツに包まり、俺の問いに答えず沈黙する

俺「なんで怒ってるんだよ」

エイラ「オコッテナイ」

俺「いや、明らかに不機嫌だろ…」

エイラ「オコッテナイったらオコッテナイ!」

 顔も出さずにエイラは声を張り上げた

俺「はぁ…えーっと、迫水一等飛行兵曹みたいなのが良いかだっけか、さっきの質問」

エイラ「…」

俺「確かに可愛いとは言ったけどな、俺はノーマルだ」

エイラ「ノーマル?」

俺「普通の性癖だ、ああいいう特殊な性癖は持ち合わせていない」

エイラ「良く分からないナ…」

俺「とりあえず俺はハルカ一等飛行兵曹とは趣味が合わないって言えばわかるかな?」

エイラ「そ、そうなのカ…?」

 もそもそとエイラはシーツから顔半分、鼻から上を出して俺の顔を覗く

俺「そういう事だ」

エイラ「何処にも行かないカ?」

俺「何処にもって何処に行けっていうんだよ?」

エイラ「第一中隊とか…」

俺「いや…いろんな意味で無理だろ」

 俺は第一中隊の面々を想像してげんなりした顔になる

エイラ「そ、そうだヨナ…」

俺「ああ、俺は此処しか居る場所がないからな 理解できたか?」

エイラ「半分くらいは…」

俺「半分かよ~…とりあえず俺は今の所エイラの所に居るぞって事だ」

エイラ「いまのところ~?」

 エイラは更に顔を全てシーツから出して俺をじとーっと睨む

俺「悪いわるい、エイラの長機をこれからも続けていく所存であります」

 俺は笑いながら訂正した

エイラ「私達の長機はエルマ中尉だけドナ~」

俺「言わせておいて突っ込むのかよ…まあそういう事だ」

エイラ「そっか…」

 それだけ呟いてエイラはシーツから出てベットの上、俺の隣に座る

俺「機嫌が良くなりましたかね?」

エイラ「イイエ」

俺「またベットを占領されるのはカンベンだぞ?」

エイラ「ならさ、コレ教えてくれよ」

 そう言ってエイラは自分のポケットから17cmほどのスパナを取り出し俺に突きつける

俺「なにこれ?」

エイラ「剣の振り方ダヨ!あの時のオレはカッコよかったゾー、こうドドーンズバーンってダナ」

 エイラはスパナを両手で握り締め、立ち上がって俺と智子の模擬戦を思い出しながらスパナを振るう
 しかしその動作はどこかぎこちない

エイラ「アレ?やっぱり何か違うナ?コウカ?」

 エイラは両手でスパナを振り上げて振り下ろすも納得の行かない様子なのか何度も繰り返している

俺「ああ、手が逆だよ」

 俺はエイラの手を取ってスパナの下の方を左手に持たせ、上の方を右手に持たせる

エイラ「な、何かこっちの方が手が逆な感じがスルナ」

俺「俺も最初はそんな気がしたよ。それでだな、振り上げたり振り下ろす時は左手だけを使って
 振り下ろした瞬間だけ右手を握って力を入れるんだ」

エイラ「こ、コウカ?」ブンッブンッ

 エイラは言われたとおりにスパナを振るって見るもうまくいかない

俺「右手に最初から力が入りすぎてるぞ、まずは右手を離して…」

 そう言って俺はエイラの背後に回り、そこから両手を伸ばしてエイラの両手を掴む

エイラ(これ、さっきのアホネン大尉達みたいな格好に…~っ///)

 第三者から見れば小さなエイラは俺に背後から抱かれるような形になっており
 エイラは何かを思い出したように顔を赤くする

俺「あ、右手に力入れるなって。こう離して、左手だけで振り上げて振り下ろす時に右手を握る」

 俺はエイラの手を掴みながら振るう動作を教え続けるがエイラの顔は真っ赤になって聞いているのかも怪しい

俺「エイラ?聞いてるのか?」

エイラ「あ、ああ聞いてるぞ!」ブンッ

俺「あがっ!?」ガンッ

エイラ「あ…」

 ドサリ…
 エイラが思いっきり振り上げたスパナによって背後に立っていた俺の顔にそれが直撃し俺は倒れてしまった

俺「いてててて…」

エイラ「ご、ごめん。大丈夫カ?」

俺「ま、まあ当たったのが頬だったから…物を思いっきり振り回す時は回りに注意してな」

 そう言って俺は立ち上がろうとした所に

 ドザザザザザザザザーーーーー!

 という外から雪の上を何かが激しく滑る音がして何事かと俺とエイラは窓から外を見る

俺「な、なんだ今の音?」

エイラ「あ、あそこに何かイルゾ!」

俺「ん~?」

 エイラが飛行場の場所を指差したので俺は目を細めて見て見ると飛行場より奥の方の揺れている岸辺の木立の下に
雪に埋もれた智子を見つけた

俺「穴吹少尉?」

 その足には俺が今まで見てきたキ27ではない別のストライカーが装着されていた

エイラ「どうしたんだ!?行ってみるか?」

俺「そうだなぁ、一応行ってみるか…」

 俺は疲れた体を引きずって雪に埋もれた智子の所まで走っていったが
到着する頃にはストライカーを脱ぎ、物凄い形相で大股でハンガーに戻っていく智子とすれ違い
 結局駆けつけた意味はあまり無かった。


続く
最終更新:2013年02月04日 14:53