<ロマーニャ沖合.コルシカ島上空9000m.PM23:00>
俺「・・・で、今日は色々と作業をしました。久しぶりだったので楽しかったです」
ハイデマリー≪私は新人さんの研修で忙しいです・・・でも皆明るくて楽しいですよ≫
ハイデマリー≪毎回何かで問題起こすのは頭が痛いですけどね・・・≫
俺「あんまり迷惑な時は怒っていく方が...ちょっと待って」
俺「ネウロイ・・・方位240、距離は約25km、相対速度は約400m/s。攻撃可能範囲まで約80秒」
今までのネウロイとは違う反応だ。熱排出に対策を行ってあるのか詳しく位置を特定出来ない。
レーダーには完全に反応していない。ステルス性が高い機体のようだ。
ハイデマリー≪大丈夫ですか?私にはどうしようもありませんが・・・≫
俺「何とかやってみます。通信終了」
俺「14000m...MG42用意よし」
俺「9000...こちら俺小尉。只今よりネウロイと交戦を開始します」
一応基地には連絡すべきだろう。前とは違い夜間哨戒のみが任務では無いからだ。
しばらく後に基地から返答が来る。だいぶ慌てている様子だ。
竹井≪...私よ。少し待って頂戴。今から援軍を送るわ≫
俺「今からの援軍は間に合わないでしょう。ですが・・・一応遣して下さい」
俺「目標を目視で確認・・・中型が一機、で良いのか・・・」
悪いことに今は晦日の夜。肉眼で黒い機体を確認するのは困難だ。
おまけにネウロイによくある模様も無い。
ネウロイはロマーニャへと向かっていたが、急に針路を変えて俺へと向かってきた。
俺「残り1900m...600mまで近づいて叩き落として・・・チッ!!」
強くなる熱反応。素早く高度を上げるが...
ガリガリとストライカーから嫌な音が鳴る。右翼の一部が削れていた。
俺「アウトレンジとか卑怯だぞ!」
俺の声が届く訳でも無く、ネウロイは俺から距離を空けて遠距離ビーム攻撃を行い始める。
俺(シールドを張って突撃しかない・・・)
ストライカーとシールドにパワーを回し、一気にネウロイへと突撃を行う。
俺「1100...900...当たれ!」
照準を合わせトリガーを引く。曳光弾の光の筋がネウロイへと向かっていくが・・・
俺「避けた!?」
旋回で弾幕を回避、スピードを上げられて気に距離を空けられてしまった。
俺「・・・中々やるじゃないか」
また同じようにビーム攻撃が行われる。食らい続ける訳にもいかず
熱反応に合わせて回避行動とシールド展開を行うしか手がない。
俺「ええい・・・何か手は無いのかっ?」
中島≪援護に来ました!≫
諏訪≪もう少しでそっちに到着します!≫
俺「了解! 結局長引いて・・・え?」
ネウロイが一気に離れていく。戦う気が無くなったのか・・・?
中島「俺さん!私達が来たからには敵なんてイチコロに・・・あれ?」
諏訪「・・・敵はどこなんです?」
俺「・・・・・・俺にもよく分からないよ」
<翌日.504基地.作戦室>
竹井「では俺さん、敵についての情報をお願い」
俺「はい。今回俺が遭ったネウロイは電波及び赤外線ステルス能力と長距離攻撃能力を持ち...」
アンジェラ「本当にそうなのか!?俄かには信じがたいが・・・」
俺「ええ、俺に気付かれずに30km圏内に近づいたのはアレくらいですよ」
俺「問題は長距離攻撃能力です。恐らく射程は1.5km以上。こちらの攻撃が届かない位置からのビーム攻撃は厄介です」
パティ「何か対策はあるの?」
俺「俺が出来る事は何もありませんよ・・・まぁ赤外線レーザー、なんて物もありますが」
ジェーン「なんですそれ?」
俺「高出力の中赤外線レーザーを発生、照射する攻撃です。射程は100km以上になるでしょう」
俺「残念なことに俺はそれを出来ないんですけどね。理論は分かっているつもりですけど・・・」
ドミニカ「使えないのなら別案を出すしかないだろう」
俺「ええ、今出来る案は一つ・・・」
フェル「狙撃可能なウィッチとロッテを組む、辺りじゃないかしら」
俺「さすがです、赤ズボン隊隊長」
中島「でもアンジェラ大尉やルチアナ中尉が使ってるボーイズって精々1kmまでの射撃しか出来ないんじゃ・・・」
ルチアナ「S-18なら・・・射程は2km。十分に対抗できますね」
アンジェラ「だが1.5km以上の移動目標に当てるのは困難だぞ」
俺「確かにそうだけど今回狙撃手がネウロイを倒す必要は無いんだ」
俺「狙撃手は攻撃可能範囲に入った時点で攻撃を行う。敵が回避行動を行ったら俺が接近して攻撃」
俺「ね、簡単でしょ?」
竹井「相手に逃げる隙を与えなければ良いのね。なら今回の作戦は...ルチアナさん、貴方に同行してもらうわ」
ルチアナ「分かりました・・・頑張りましょう。俺さん」
俺「ええ、では出撃までに練習をしましょう。今回はちょっと特別ですから」
<射撃場.PM16:00>
俺「方位140.2度、距離1300m、相対速度は±0m/h。もう少し上を狙って」
ルチアナ「...調整完了、のはずです」
俺とルチアナは射撃場で伏せた状態での狙撃訓練を行っていた。
だが普通の狙撃とは違い、ルチアナは目を瞑ったまま銃を構えている。
マルチナ「・・・でも出来るものなの?撃つ瞬間だけ敵を見て調整するのって」
フェル「普通じゃ出来ないわね。でもルチアナなら・・・」
ドォン!!
俺「...的の10cm上を通過」
ルチアナ「すみません・・・私のミスです」
俺「俺の指示ミスだよ。君の射撃は完璧だった」
マルチナ「ちょっと無理過ぎるんじゃない?」
俺「・・・敵は真っ黒、そして今日は新月。敵はかなり見え辛いです」
俺「そうなるとルチアナが捉えるまでの時間が遅れるかもしれません」
ルチアナ「...そういう時の為、俺さんの指示である程度の照準を合わせる訓練をしています」
フェル「はぁ・・・まったく貴方達は勉強熱心ねぇー」
パティ「フェルー!ティナー!ジュンコが始末書出して欲しいってさー!」
フェル「・・・いつもならルチアナに任している所だけど・・・仕方ないわねー」
ルチアナ「なら私がしますので...」
フェル「良いのよ。たまには書類を見るのも良い刺激になるから。ほら、ちゃっちゃと終わらせましょう」
マルチナ「はいはーい。ネウロイをぶっ飛ばして早く帰ってきてねー・・・」
俺「まったく・・・では続きをしますか」
ルチアナ「...指示をお願いします」
俺「次は方位140.8度、距離は1000m、同じく動きなし」
俺「...ちょっとおしゃべり良い?」
ルチアナ「・・・何でしょう?」
俺「本当はさ・・・俺の最初の案では狙撃を使わない事にしていたんだ」
俺「赤ズボン隊で周囲を囲うように哨戒して追い立てる、なんて考えていたんだけど」
ルチアナ「・・・多分『起きているのが面倒だわー』とか言いそうですね」
俺「あの隊長なら言うだろうね・・・でも」
俺「それだと二人っきりで飛べない、なんて思ってね」
ルチアナ「い、今なんて...」
ドンッ!!
ルチアナ「ああ・・・ごめんなさい。失敗です...」
俺「うーん・・・やっぱり上手く行かないな」
ルチアナ「・・・やっぱり私には無理です。アンジェラさんに代わって...」
俺「大丈夫だって。ネウロイも完全に見えない訳じゃない。
僅かな星の光、景色との違いで頑張れば発見出来るはずだよ」
俺「口で説明するよりも正確で簡単に教えるには・・・」
俺「ルチアナの後ろから銃を持って...」
俺「俺がある程度まで照準を合わせてルチアナが再調整、どう?」
ルチアナ「・・・確かにすぐに合わせられますね」
俺「じゃあ一回やってみよう。目を瞑ってくれ...」
俺は膝射状態のルチアナの後ろから手を回し、彼女の手の上から銃を構えて的の方に向けた。
俺「さっきの的だ。距離は1000m、風速は分かる?」
ルチアナ「大丈夫です。調整出来ています」
俺「...今だ!目を開けて!」
ルチアナ「!!」
彼女に合図を送った瞬間に手を離す。すぐに銃の照準が微調整され...
ドンッ!!
俺「真ん中に命中・・・」
ルチアナ「...上手く行きましたね、俺さん・・・?!」
彼女が振り向いた目の前には俺の顔。一気に彼女の顔が赤く染まる。
俺はすぐに彼女から離れた。
俺「ゴメン・・・驚かしてしまって」
ルチアナ「いえいえ。その・・・心の準備という物が出来ていなかっただけです。別に嫌だった訳ではありませんから...」
彼女は顔を赤くしたまま俯いている。俺はすぐに掛ける言葉が思いつかず、少しの間沈黙が続いた。
俺「...そろそろ食堂に行こう。今回は遠出をする事になるから多めに栄養補給をした方が良いよ」
ルチアナ「・・・そうですね。食事にしましょう」
僅かに顔を赤くしたまま明るく答えるルチアナ。
このまま会話が続かなかったら、と恐れていた俺は彼女の顔を見て思わず微笑み返していた。
その後俺達はS-18を片付け、夕食の為に食堂に向かうことにした...
<ローマ沖合.高度8000m.PM23:30>
俺「・・・ロマーニャ方面にネウロイの影無し」
ルチアナ「そのネウロイ、前はどこから来たんですか?」
俺「地中海方面だ。多分
アフリカ辺りから飛んで来たんだと思う」
ルチアナ「・・・何かの目的でもあるのでしょうか」
俺「目的?」
ルチアナ「偵察...なのかも知れません」
俺「確かに・・・あのステルス能力は高いからなぁ」
俺「どちらにせよ落とすだけだ。今日も来てくれたらの話だけど」
ルチアナ「そこはネウロイの気分次第ですね...」
彼女は不意に空を見上げた。今は新月。明るい月が無いお陰で星々が綺麗に輝いている。
ルチアナ「真っ暗なのは嫌いですが・・・こんなに星が綺麗に見えるんですね。手が届きそうです」
ルチアナ「この景色を見れるようになったのも俺さんのお陰です・・・ありがとうございます」
俺「前から何回か夜間哨戒をしてたんだろう?」
ルチアナ「ええ。でもこうやってゆっくりと見れるのは
初めてです。
それも俺さんが一緒に居てくれるからですよ」
俺「そっか・・・」
俺「なぁ、ちょっとした頼み事があるんだけど」
ルチアナ「何ですか?」
俺「もし良かったら...俺のパートナーになって欲しいんだ。夜間哨戒の」
ルチアナ「パートナー・・・」
俺「今回みたいに遠距離の敵と戦う為の狙撃手が居てくれると嬉しいんだ。無論無理強いはしない」
俺「もしやってくれるのなら俺もルチアナの仕事を手伝ったりする。だから...!!」
ルチアナ「...来たんですね」
俺「...方位254、距離は約23km、高度1000mを何かが飛んでいる・・・」
ルチアナ「・・・私にはどこにいるのか・・・」
彼女は俺の言った方角をスコープで覗いているがまだ発見出来ていないようだ。
ルチアナ「その・・・射撃の指示、お願いします」
空中で静止した彼女の後ろに回り、抱きしめるように手を前に。そのまま銃を構えてネウロイのいる方向へ向ける。
位置を調整していると声を掛けられた。
ルチアナ「俺さん・・・暖かいですね」
俺「魔導針の副作用だよ。気になる?」
ルチアナ「いいえ・・・気持ち良い暖かさです」
ルチアナ「もっと体を近づけて下さい・・・上手く狙いづらいので」
俺「わ、わかった...これで良いのか?」
ルチアナ「・・・ありがとうございます」
ルチアナ「確かに海上で何かが動いているように見えますが・・・まだ見え辛いです」
俺「射程に入るまでに見つけるんだ。射撃が始まったら俺はネウロイへ全速力で向かう。その間も射撃してくれ」
ルチアナ「分かりました」
俺「残り8km...」
ルチアナ「さっきの答えですが・・・・・・こんな私で良ければ、是非パートナーにしてください」
俺「・・・ありがとう。残り3km...」
ルチアナ「ネウロイを捉えました。修正中...」
俺「残り2100m...」
ルチアナ「修正完了。いつでも撃てます!」
俺「・・・撃て!!」
ドォン!!
S-18の射撃音と共に俺は彼女から離れ、一時的に魔導エンジンを止める。
ルチアナより低くなった時点でまたストライカーを起動させ、最高速で発進した。
俺「弾は敵左翼に命中!よくやった!」
シールド展開。MG42用意。敵まで1500m。
ルチアナ≪続いて射撃します!≫
ドォン!!
敵は大きく高度を上げて弾の軌道から避けた。海に小さく水飛沫が上がる。
俺「敵は高度を上げている!星空の背景で姿が見やすくなるはずだ!」
残り1100m。MG42を当てるには600mまで近づきたいが...
ドォン!!
20mm弾が上昇するネウロイを掠めた。片翼を損傷している為か動きが鈍い。頑張れば追いつける・・・
俺「残り700...今だ!!」
MG42の弾幕がネウロイに当たっていく。白く飛び散る破片が夜空に尾を引くように流れた。
ルチアナ≪これで・・・終わりです!≫
通信から数秒後、ネウロイは直撃した20mm弾によって前後に真っ二つにされた。
後部はすぐに破片となって散っていったが、前部は残った推進力でゆっくりと上昇を続けている...
俺「シュターリュン」
残った前部をメーザーで蒸発させた。辺りに残っていた破片が段々と光を失っていく。
ルチアナ≪・・・ネウロイの撃破、完了ですね≫
俺「・・・良い狙撃だったよ。ありがとう」
ルチアナ≪どういたしまして≫
俺「その・・・これからもよろしく頼むよ。ルチアナ」
ルチアナ≪こちらからもよろしくです。俺さん≫
最終更新:2013年02月07日 13:54