手帳を閉じる。

外からは轟音。窓に目を向ければ、幾つかの機影。

捜索隊だろう。

オレ「さて、それじゃ始めるとしますかね」

自室から出て、無線機のある管制塔へと向かう。

管制塔に人影はない。レーダーの監視要員すら居ないなど、普通ではありえない事だ。

――ま、坂本が落ちてからこっち、中佐も情緒不安定気味だったしな。

そんな異常事態でも、今回に限って言えば好都合。手早く無線機を操作、緊急時の連絡先へと繋ぐ。

オレ「こちらウォードッグ、――聞こえてるよな?」

<<こちらオーナー。どうした>>

オレ「隊員が一名脱走。先日遭遇した人型ネウロイに関係があると思われる」

<<人型ネウロイに……接触だと……?――気でも狂ったか。狗>>

オレ「――ハ、それこそ冗談。さっさとお仲間引き連れてこっちに来いよ」

<<基地の現在の状況は>>

「脱走した隊員の捜索の為に殆どが出払ってる。残ってるのは怪我人1人に付き添いが1人、待機が1人。――制圧は楽勝だな」

<<了解。直ぐに部隊を送る>>

オレ「早くしてくれよ?ここまで来て帰還した捜索隊と鉢合わせるなんてゴメンだからな」

交信を終える。後は部隊の到着まで待つだけだ。

――もう、後戻りは出来ねえな。

オレ「……はぁ、どうせならあの2人も今のうちに拘束しておくか」

抵抗はされるだろうが、最悪、坂本を人質にすればいい。

オレ「――ケケ、いい感じに悪者っぽい考えじゃねえか、オイ」

早速行動に移すため、管制室を出る。


――さぁて、大人しく医務室にいてくれれば良いんだが。


そのまま直接医務室に乗り込もうかとも思ったが、念には念を入れて武器を調達しようと武器庫へ。

予想通り、武器庫の扉には太い南京錠。

オレ「ワンマガジンで足りるかな……っと!」

支給品の拳銃を、跳弾に気をつけながら発砲。

拳銃といえど魔力を込めればそれなりの威力になるのか、8発目で南京錠が跳んだ。

オレ「うし、短機関銃はどこかなーっと。…………ん?」

倉庫の隅、ロングソードやらメイスやら戦斧なんかが渦高く積まれた山の横に『オレ用!』と書かれた木箱を見つけた。

オレ「……なんだ?」

中にはナイフ状の刃を先につけた、1m程度の棒が数本。

――槍、か?コレ。

槍にしては短すぎる。この程度の長さでは、投擲にすら使えない。

オレ「……む」

よくよく見れば、穂の根元辺りにレバーが確認できる。

どうやら、クランプの役目を果たしているようで、これをリリースすると、最大4m程度まで長さを伸ばすことが出来た。

――そういえば、装備課の奴らに新しい槍くれって言ってたっけか。

だとすれば、これがその試作品だろうか。

試しに数度振ってみるが、感触は悪くない。

オレ「……一応持っていくか」

短機関銃と、試作品の槍を持って武器庫から出る。

オレ「ちょっと時間を食ったな……、少し急ぐか」


坂本「そうだペリーヌ、もう少し……そうだ、その調子で奥に……」

ペリーヌの手を借りて、車椅子にストライカーを格納する。……自分が満足に動けないのが歯痒い。

ペリーヌ「でも少佐、何故こんな事を?」

坂本「ああ、それは――」

オレ「――やっと見つけたぜ。こんな所にいやがったのか」

視界が白く染まる。

坂本「……始まったか」

目を凝らすと、格納庫の正面扉から大型のライトで私達を照らす複数の影。

そして、その中心に立つ彼の姿。

ペリーヌ「軍曹!?一体どういう――!?」

坂本「……そうか、お前だったか」

ペリーヌ「少佐……?」

オレ「分かってるなら話は早い」

数人の兵を連れ、こちらへと近づくオレ。

オレ「こんな所で一体何をしていたのかは気になるが――」

オレの目線が私の背後にあるストライカーユニットの降着機へと向けられる。

――予備機だとバレたか……?

オレ「……まあ、いいさ。――抵抗はするなよ?その方がお互いの身の為だからな」


――お、帰って来なすったか。

滑走路に、中佐を筆頭とした隊員が着陸する。

オレ「よう、お帰り」

バルクホルン「オレ!一体、今までどこに……!」

ミーナ「それよりもオレさん。……これは一体どういう事かしら」

中佐が俺の周囲にいる兵に目を向ける。

オレ「ああ、それはだな――」

合図をすると、兵が展開。中佐達を取り囲み、銃を構える。

同時に、空からは轟音。

人型の飛行機械が俺の背後に降り立つ。

オレ「こういう事さ」

――これがウォーロックか。……案外デケェな。

実物を見るのは初めてだ。

――成程。確かに見てくれは強そうだ。

オレ「――おう、久しぶりだな、オッサン」

視線を下げれば、ウォーロックの陰にオッサンがいた。

マロニー「大将と呼べ、狗風情が」

オッサンが中佐たちの前へと歩いていく。

マロニー「御苦労だった。ミーナ中佐」

ミーナ「……まるでクーデターですね。マロニー大将」

マロニー「命令に基づく正式な配置転換だよ、ミーナ中佐」

オッサンが命令書を掲げる。

マロニー「この基地はこれより私の配下である第1特殊強襲部隊、通称『ウォーロック』が引き継ぐこととなる」

――実働機数が1機で部隊とは無茶しやがるな……。

他の監視を受けていた隊員も、武装解除を受けた上で俺達の前に集められる。

マロニー「ウィッチーズ、全員集合かね」

オッサンが皆を見回し、嬢ちゃんの前に立つ。

マロニー「君が宮藤芳佳かね?あの宮藤博士のご息女らしいが……、実に残念だ」

芳佳「あ、あの……」

と、嬢ちゃんは何かに気付いたように顔を上げる。

芳佳「そうだ……、その後ろの! 私見ました!ネウロイと一緒の部屋で、研究室みたいな部屋で!」

オレ「……は?」

マロニー「……いきなり何を言い出すのかね、君は」

マロニー「ミーナ中佐。彼女は軍の機材を無断借用し、あまつさえ脱走を企てた。――これに意見は」

ミーナ「……いえ、ありません」

オッサンが咳払いを一つ。

マロニー「率直に言おう。――現時刻を持って第501統合戦闘航空団、『ストライクウィッチーズ』は解散とする」

バルクホルン「な……!」

マロニー「異論は認めない。各員は可及的速やかに各国の原隊に復帰せよ」

ざわめく皆をよそに、オッサンは続ける。

マロニー「予てからの君達の行動には目に余る物があった。極めつけは今回の脱走騒ぎだ」

マロニー「歯に衣着せぬ言い方をすれば……、君が最終的な原因という訳だ。宮藤軍曹」

芳佳「え、でも……、私、私は……」

マロニー「安心したまえ、ネウロイはこのウォーロックが撃滅する。――君達はブリタニアを守るのには、もう必要無いのだよ」

芳佳「――――」

ミーナ「宮藤さん!?」

不意に、嬢ちゃんが倒れこむ。

どうやら気を失ったようだが、傍にいた中佐に抱えられたお陰で、地面に直接倒れ込まずには済んだ。

基地内へと撤収するオッサンに続き、俺も皆に背を向ける。

そこへ、中佐に声を掛けられる。

ミーナ「俺さん!」

オレ「……何だよ、まだ何かあんのか?」

体は背を向けたまま、顔だけを後ろに向ける。

オレ「どうして、って質問なら無意味だぜ。初めからこうするつもりで、俺は来たんだからな」

ミーナ「嘘!それなら、この前私に話したあれは……、貴方の過去は……!」

やれやれと、大げさに呆れる素振り。

オレ「――全く、大したお人好しだぜ。あんなの嘘に決まってるじゃねえか」

覚悟は、決めた筈だ。

ミーナ「そんな……!」

オレ「よく考えてもみろ。あんな都合の良い話、そうそうあって堪るかっての」

ミーナ「でも、あの経歴は――」

オレ「ああ、アレもフェイク。……おかしいと思わなかったのか?あんなに早く都合の良い結果が出るなんてよ」

こうなる事を承知で、俺は動いた筈だ。

オレ「お涙頂戴で親交深めて、何か内部情報でも漏らしてくれればOKだったんだが……。手間が省けた」

ミーナ「…………」

オレ「話はそれだけかい?終わりなら行くぜ」

顔を前に戻し、一歩。

ミーナ「……俺さん」

オレ「……何だよ」

振り返る事は出来なかった。

ミーナ「私、貴方を軽蔑します」

オレ「……そうかい」

最早、歩みを止める事はない。





……気付けば、握りしめた左拳から血が流れていた。


ブリタニアの南東に位置する第501統合戦闘航空団の基地……であった場所。

現在はマロニー大将が指揮する部隊が駐留するその基地周辺。

そこに、林が広がっている。

一部には川も流れており、それは海へと続いている。

時刻は明朝、もうじき太陽が昇るであろう頃。

その林の中に、1つの影がある。

長身の男だ。

男は地面に突き立てた槍に、右腕一本でその身を上下逆さに保持。

一定の間隔で男の体が上下に動いているのは、その状態で腕立てをしているからだ。


男は声には出さず、呼気だけで回数を数える。

3分弱で、回数が50を越える。

男は腕を入れ替え、左腕を槍、そして右腕を腰へ。

また、腕立てを再開。

左右合計100回を1セット。

これが4セット程繰り返した所で、男は槍から飛び降りる。

深呼吸。

地面に突き立てた槍を引きぬき、右手で軽く回す。

同時にレバーをリリース。伸縮機構を持った槍は、遠心力でその長さを伸ばす。

伸びた穂先側を、左手で受け止めると同時、レバーをホールド状態へ。槍の長さが固定される。

その長さ、凡そ2m。

オレ「……ま、こんなモンか」

男が呟く。そして、

オレ「――いるんだろ?誰だか知らんが、言いたい事があるなら出てこいよ」

男が振り返る。

ややあって木の影から出てきたのは、茶色の髪の少女。

シャーリー「……やっぱバレてた?」

オレ「影が丸見えだっての」

シャーリー「え?――うわ、ホントだ」

オレ「んで、オレに何の用だ」

問いかける男に、少女は、うん、と前置きをして言う。

シャーリー「……正直さ、まだ信じられないんだよね」

オレ「……信じるも何も、事実だ」

だったら、と、少女が言う。

シャーリー「だったら、なんでルッキーニに構ってやったり、少佐達と一緒に訓練なんかしてたんだ?
       ――なんでアタシにストライカーの整備任せてくれたりしたんだ?」

ミーナ中佐と何があったのかは知らないけど、と言って彼女は続ける。

シャーリー「オレだっていつも言ってたじゃないか、 『あのチビッ子の度胸はいいぞ、将来大物になる』とか
       『少佐はあれホントに女か?くそ度胸ってレベルの踏み込みじゃねーぞ』って。
       ――その槍だって、私と装備課の連中と協力して作った奴じゃないか!」

オレ「…………」

シャーリー「監視が任務なら、あんなに馴れ馴れしくしなくとも、当たり障りの無い関係で済ませられただろ!?
       それなのに、それなのになんで――!」

オレ「……その方が任務に都合が良かったからさ。隊員の信用を得、情報を集めやすくする為の、な」

シャーリー「ウソだろ!?きっと何か理由があって、それで――!」

オレ「諦めろって」

シャーリー「ッ!」

男は落ち着き払った声で、少女に告げる。

オレ「お前が信じていたオレって奴は、全部嘘っぱち。中身はどう仕様も無い程の屑だったんだよ」

明け方の森に、肉を打つ音が鋭く響く。

男の前には、その手を振り切った少女の姿。

シャーリー「……見損なったよ、オレ」

オレ「…………」

少女が踵を返して去っていく。

男は少女が走っていった方向に背を向け、槍を構える。

オレ「……仕方ねぇだろ」

風切り音と共に、槍が繰り出される。

オレ「仕方ねぇだろ。人類の未来と個人の誇りを比べたら、どっちを優先すべきかなんて……な!」

3段突き。突きが連続した長い一音に聴こえる程、刺突間隔は短い。

オレ「そうさ、間違ってなんかいない――」

先程の少女の最後の顔、そして、今までの記憶が脳裏に浮かび――、

オレ「――ッ!間違ってなんか――!」

目の前の木へと、全力で突き込んだ。

撃音。

穂がその刀身を10cm程食い込ませた所で折れる。

同時に、衝撃と音に驚いた鳥たちが木から飛び立っていく。

そして、その音を聞きながら、突き込んだ姿勢のままで俯く男。

オレ「俺は……、俺は間違ってなんて……」


あれから程なくして、501の皆は基地を離れていった。

見送るような真似はしない。

裏切り者は、最後まで裏切り者であるべきだ。


そして今、俺は基地の管制室にいる。

ウォーロックの稼働状況を、この目で見る為だ。

ガリア方面のネウロイを殲滅に向かったウォーロックは、当初こそ、その任務に忠実であった。

しかし――、



技師官「ネウロイを殲滅しました!」

技師官の報告と共に、管制室内がざわめきに包まれる。

マロニー「――素晴らしい!この力があれば世界のイニシアチブを取ることなぞ容易いものだ!」

――なに?

オレ「オイ、ちょっと待て」

堪らず、オッサンに問う。

オレ「そりゃ一体どういう意味だ。……ウォーロックってのはウィッチを含む、兵士の代替戦力になる代物じゃなかったのか?」

オレ「量産の暁には、一般兵がネウロイに立ち向かうような、ただ戦死者を増やすだけの状況にケリをつけられるって――」

マロニー「…………」

マロニー「…………ク、ハハハハハハハハ!」

何か珍しいモノを見たような表情から一転。オッサンは、さも面白いというように笑う。

マロニー「――これは傑作だ。あの魔女共を追い出すための方便を、まさか本気で信じていたなんてな。
      ク、ククク……、全くもっておめでたい奴だ」

オレ「テメェ……」

――それじゃあ、俺が取った行動は。

マロニー「兵の生死なぞ私にとって然程重要ではないのだよ。――特にウィッチなどという下らん連中のはな」

オッサンの脇に控えていた衛兵が、俺に銃を向ける。

――アイツらにあんな顔させてまで選んだモノは。

マロニー「……貴様ももう用無しだ、ここいらで退場してもらおう。――恨むのなら、あんな話を信じた自分を恨むのだな」

――……全部嘘だったってのか?

オレ「クソが……!」

ギリ、と歯が音を立てる。

技師官「か、閣下!」

と、ウォーロックの機体状況をモニターしていた技師官が叫ぶ。

マロニー「何事だ、騒々しい」

技師官「ウォーロックがこちらからの制御を遮断、――空母赤城に攻撃しています!」

マロニー「何!?」

技師官「ウォーロック制御不能!暴走しています!」

と、外から轟音が響く。

それに気を取られたのか、衛兵の視線が俺から一瞬、外れる。

好機。

2人の衛兵と、俺を結ぶラインを一直線にして射線を制限しながら一気に駆け寄る。

衛兵A「貴様、うご――」

衛兵がなにか言いかけるが、遅い。

殆ど棒立ちのそいつの股を、すくい上げるように蹴撃。同時、足先に妙な感触。

――潰れたか?まあいいや。

堪らず前屈みになったそいつの顔面に、引き戻した右足で今度は膝蹴り。

――まず一人!

仰け反るようにして倒れるそいつから、銃をもぎ取る。

自分の前にいた仲間が倒れたことにより射線が開け、もう一人の衛兵がこちらに狙いを定める。

その衛兵の銃目がけて、奪い取った銃をアンダースロー気味に投げつける。

衛兵B「――な!」

金属同士が衝突する音が響く。

衛兵B「く、くそ!」

狙いを逸らされた衛兵が、もう一度俺を補足しようとする。

――遅ぇっての!

馬鹿正直に先程まで俺がいた場所に銃口を向けるそいつに、少し軸をずらした位置から首を刈るような回し蹴り。

クリーンヒット。

蹴鞠のように吹っ飛んだそいつは、倒れたままピクリとも動かない。

俺「――ふぅ、これでよしと」

マロニー「き、貴様何を……!」

俺「……まったく。短い間だったとはいえ、背中預けて戦った奴らを裏切って、」

溜め息。

俺「それでも信じたものは嘘でした、か。……道化もいい所だな、オイ」

転がっている銃と、未だ気絶したままの衛兵から銃を回収。

取り外した弾倉から弾丸をバラし、ボルトを引いて強制排莢。完全に無力化させる。

俺「ふーん、ネウロイのコアを利用ねぇ……。ネウロイって撃破したらすぐに塵になると思ってたんだが……」

山積みになっていた資料を流し読む。

マロニー「貴様、人の話を――!」

俺「――黙れ、殺すぞ」

マロニー「な……!」

俺「正直今すぐにその首引っこ抜いてやりたいが……、処分を決めるのは連合軍本部の役目だ」

運良くそこいらに転がってた縄を使って、オッサン以下副官数名を縛り上げる。

俺「それじゃ、軍法会議までお達者で」

マロニー「貴様ぁ!何処へ行くつもりだ!」

俺「アレを潰すに決まってんだろ?責任は俺にもあるしな、尻拭いはしてやるよ。――もっとも、首の世話までする気はねえがな」


バルクホルン「全員動くな!――って、なんだコレは」

管制室に乗り込んだバルクホルン以下3人の目の前には、縄で縛られた目標人物が転がっていた。

マロニー「クソ……。あの狗畜生め……!空軍大将であるこの私にこんな真似をしてタダで済むと思うなよ……!」

バルクホルン「何故コイツらは簀巻きにされているのだろうか」

エーリカ「トゥルーデだってやろうとしてたじゃん」

バルクホルン「自分ですることに意味があるんだ」

エーリカ「何それ」

ミーナ「こんな事が出来るのは……、いえ、それよりも――」

ミーナ「トレヴァー・マロニー大将。連合軍への連絡義務違反、及びこの度の兵器暴走について何か申し立ては」

ミーナ「……もっとも、申開きの余地はないと思われますけど」

パラパラと資料をめくりつつ、マロニーを見下ろす。

マロニー「ぐ……」

ミーナ「この件についての責任は後ほど、然るべき場所で追及させて頂きます。お覚悟を」

突如、大きな金属を叩いたような音が辺りに響き渡る。

バルクホルン「な、何だこの音は!?」

エーリカ「見て!ハンガーが……、あ!」

ミーナ「あれは……!」


俺「……にしても、あのオッサンの部下ってのはどいつもこいつも阿呆ばっかりなのか?」

目の前には、ハンガー入口を塞ぐ巨大な鉄骨。

これでは、ストライカーを発進させることが出来ない。

――丸ごと塞いだらウォーロックも入れねえじゃねえか。……新兵器を雨ざらしにする気だったのか?

鉄骨の幅は割と広い。

断面形状が四角なら厳しいが、幸いH型。穿てない事もない。

俺「さて……、いつもの槍じゃないから多少不安だが……」

鉄骨の前で槍を構え、

俺「――シッ!」

魔力を乗せた切っ先を叩き込む。

快音三発。

鉄骨の根元には横一直線に3つの貫通痕が形成され――、

――このまま外へ蹴り飛ばす……!

俺「だぁらっしゃああああああああああ!!」

己に空いた隙間を埋めるかのように、その身を垂直に落とす鉄骨に蹴りを入れる。

が、

俺「つ~~~~~~~~~ッッッ!!」

流石に無理があった。右足に激痛。

俺「……お」

それでも多少の効果はあったのか、鉄骨がゆっくりと滑走路側へと倒れていく。

「……まぁ、結果オーライ、と」

痛む右足を堪えつつ、駐機してあるストライカーへ。

ストライカーにはサイドバッグが取り付けられており、中には予備の槍だの予備弾倉だの、色々と突っ込んである。

エンジンを掛ける。アイドリングは安定、アクセルレスポンスも良好。ゴーグルもいつもの位置にちゃんとある。

内心で彼女に感謝と謝罪をし、発進。

……何だか視界の隅にいつもの銀髪2人組みが見えたような気もするが、まあ気のせいだろう。

――――暗い格納庫から飛び出した先には、突き抜けそうな青空が広がっていた。
最終更新:2013年02月07日 14:12