前回までのあらすじ!
お酒を飲んでまたまた暴走しちゃった坂本少佐。しかも今度は強化戦闘服に身を包んでしまったからさあ大変。
なんとかして少佐を止めるべく、私はペリーヌにも強化外骨格を渡し、とある秘策を講じるのだが……。
ペリーヌ「こ、これで……少佐を止められるんですの?」
私「……少佐と戦って、少佐の隙をついて、背後のAI部分を破壊できれば」
――501基地・ハンガー――
坂本「よし、97、98! 99、100!」フンフン
整備兵2「せ、整備兵に筋トレなんてさせな……」ガクガク
父「い、犬は腕立てできな……い、いや俺は犬じゃないんだけど、しかし……」
坂本「なんだ、まだたったの100回だぞ! さぁ次! 腕を使わずに腕立て伏せだ!」
整備兵3「え……は、ハァァァァ!?」
坂本「……できんのか?」ギロッ
整備兵3「えっ! え、えーっと、普通は……ハハ」
坂本「鍛え方が足りん! 腕立て伏せあと100回!」
整備兵2「し、少佐はできるって言うんですか……」
坂本「当たり前だ、見ろ」ウィーンガシャンウィーンガシャン
父「あ、アームで腕立てなんて反則――!」
坂本「ん?」ギロッ
父「あ、い、いえ……何でも」ハハハ
整備兵2「……畜生、なんだってこんな事に……」ヒソヒソ
整備兵3「あれだよな、部活やってたら突然OBが来て練習に乱入する感じ」ヒソヒソ
整備兵2「ああ、あるある」ヒソヒソ
坂本「1、2! 3、4! ……そこ! 無駄話をしない!」ブンッ!
父「おぶぅっ!」(何で俺?)
坂本「全員、気合が足りん! 私がいいと言うまで腹筋だ!」
整備兵2「ええっ!?」
整備兵3「んな無茶な……!」
坂本「ほら、始め!」
コツッ…コツッ…
坂本「……ん?」スック
ペリーヌ「……少佐」
整備兵2「……?」フッキンフッキン
整備兵3(……何だ、あのハイレグ……?)フッキンフッキン
坂本「おお、ペリーヌか。なんだ、お前も訓練に付き合いたいか?」
ペリーヌ「……ええ、勿論。少佐との訓練ですもの、ぜひご一緒させていただきたくて」
坂本「はっはっは! いい心がけだペリーヌ! ……ところで、その背後の風船は何だ?」
ペリーヌ「……少佐。貴女に……」
スーッ…チャキッ!
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――数分前――
私『いい、ペリーヌちゃん。あのAIは、少佐の言動を聞く限り、少佐の"ひたすら訓練をしたい"という欲望を増長させている』
私『つまり、今の少佐は"訓練"と名の付くものに飛びつかないではいられない。そこを利用するのよ』
ペリーヌ『……? つまり、少佐に訓練を申し込む、と?』
私『そう! 察しがいいわね。どこぞのリベリアンにも見習わせたいわよ』
私『……冗談よ冗談。で、話を戻すけど、まずは少佐に白兵戦の模擬戦を持ち掛ける。この風船を互いの背後に付けて、それを割られた方が負け、とかのルールでね』
ペリーヌ『でも、なぜ風船を背後に?』
私『そこが重要なんだけど……少佐の動きを止めるためには、背中にあるAI部分を壊せばいい、ってのは話したわよね?』
シャーリー『……! ああ、そっか! 風船を背後に付けるなら……』
私『そう、ルールに則った上で、上手くAIを狙えるってわけ』
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坂本「……よし、付けたぞ。これでいいな、ペリーヌ?」
ペリーヌ「はい。ルールは……」
坂本「大体分かる。この風船を割られた方が負けなんだろう?」
ペリーヌ「……ええ。その通りですわ。さすが少佐……」
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ペリーヌ『……しかし、それだったら最初に『少佐が負けたらAIを止める』と約束してもらえば……』
私『……申し訳ないけど、あのAI……セキュリティの為に、主人の命令以外は聞かない設定になってるのよ。そして、あのSOLIDASの主
人――所有者は……』
シャーリー『……少佐か』
私『AIへの命令は、所有者とAIが完全に分離している状態で行って、
初めて効果がある。……AIにいわば意識を乗っ取られてる状態
の少佐では……AIに命令を下せないのよ』
ペリーヌ『……全く、なんだって貴女は毎回毎回、厄介事しか持ってこないんですの?』
私『……ごめん』
ペリーヌ『……!?』
シャーリー『え……!?』
私『……私達も、できるかぎりのサポートをする。……お願い、少佐を……』
ペリーヌ『…………』
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ペリーヌ(……初めてでしたわ。私さんが……あんなに素直に謝るなんて)
坂本「……よし。準備は出来た。そちらは?」
ペリーヌ「大丈夫ですわ。……それでは」チャキッ!
坂本「ああ……」スゥゥゥッ
「「お願いします」」
ペリーヌ(先手……必勝!)ビュオッ!
坂本「……!」(正面から突撃か。大した度胸だ、ペリーヌ!)ヒュオッ!!
ペリーヌ「ッ!」(上段突き……! 少佐もいきなり風船を!? でも……このスピードならっ!)
坂本(……フッ)
ババッ!!
ペリーヌ「!!」(に、二段突き……!)
坂本(二刀流なのを忘れてもらっては困る。……さて、早速だが……)
坂本「終わりだ、ペリーヌ!」
ペリーヌ「くっ!」
ババッ!!
坂本「……ほう」(……まさか、あの二段突きを避けるとはな。あの服のお陰か?)
ペリーヌ(あ、危ない所でしたわ……でも、凄い……体が軽い! これなら……!)
ペリーヌ(二段突きの直後で……左手は伸びきっている! ここから左へ回り込んで……!)
ペリーヌ「はぁっ!!」(貰いましたわ、少佐!)ビュンッ!
坂本「…………」ニヤッ
ペリーヌ「……!?」
ガキィィィンッ!!!
坂本「……フッ」
ペリーヌ(……アーム……! あそこまで速く動かせるなんて……!)
坂本「腕が四本なのを、忘れてもらっては困るな」
ペリーヌ「……ええ、勿論……!」(でも、打ち破る手段はある……あとは、タイミングですわ……!)
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私『ペリーヌちゃん、戦闘が始まって少し経ったら、私達が少佐の気を引く。その隙に、少佐を背後から……』
ペリーヌ『え? でも、アームには熱源感知機能が付いているんでしょう? たとえ背後から行っても、アームが……』
シャーリー『いや、それでいいんだ。まずはアームを無力化させる。そうだろ、私?』
私『ええ。アームが反撃する瞬間、すかさずサーベルに電流を流しこんで斬って。上手くいけば、アームを二本同時に壊せるわ。
……だから、私達が気を引くまでは、サーベルの超振動機能を使わずに戦ってちょうだい。手の内がバレたら、この作戦は失敗よ』
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ペリーヌ(……なんて言ってましたけど……気を引くって、どうやって……)
――ハンガー入り口付近――
シャーリー「……で、どうするんだよ? 気を引くって、どうやって……」
私「……シャーリー、ストリップって興味ある?」
シャーリー「~~ッ!?」バッ
私「冗談よ、冗談」
シャーリー「笑えない冗談が多いぞ、今日……」
私「ま、それはまた次の機会に……ね。今回は、コレとコレにちょっくら活躍してもらう」スッ
シャーリー「……? カッターナイフと……時計か? なんか、どっかで見覚えが……」
私「こっちはヒートカッター。ほら、あんたのかわいいP-51Dに穴を開けたアレよ」
シャーリー「あ、ああー! お前が初めて来た日のか! いやー、懐かしいなー。……あ、思い出した。こっちの時計っぽいの、エイラに
渡した奴だよな」
私「そうそう、偽シールド展開機。思わせぶりなボタンが付いただけの、カラッポの機械よ」
シャーリー「……この2つで、どうやるって言うんだ?」
私「……ま、見てなさいって」スタスタ
私「少佐ぁぁ――!!」
坂本「!?」
ペリーヌ「!」(私さん、遅いですわよ……!)
坂本「なんだ、私! 今ちょっと取り込んでいるんだが」
私「コレコレ、これ見てください少佐ぁー!」ブンブン
ペリーヌ「……?」
坂本「んん……? なんだ、時計……いや、何かのスイッチか?」
私「そうそう。……SOLIDASの自爆スイッチですよ」
坂本「!?」
ペリーヌ「!?」
シャーリー「えっ……!!?」
私「こんなこともあろうかと、秘密裏に作っておいたんですよ。こいつを一発押せば、そのスーツは一瞬で爆発四散! 瞬く間にこの世の
チリとなるわけです。
……少佐と一緒にね」
坂本「……ッ!」バッ!!
私(かかった!)「ほーら、こっちですよー! 欲しけりゃ力ずくでも構いませんよー! どーせ私がポチっとやれば全部終わるんですか
らねー!
だーっはっはっはっはっは!!!」ダダダダダッ!
シャーリー「あ、お、おい、私!」タッタッタッ
坂本「ま、待てぇぇぇ! 私ぃぃぃぃぃッ!」ビュオッ!!
シャーリー「ひっ! は、速っ!」
私「うわーっはっはっはっはっは!!!」(……ヤバい、こりゃ思った以上にヤバい……)
坂本「さぁぁせぇぇるぅぅかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」ビュオオオオッ!!!
ペリーヌ「…………」
ペリーヌ「き、気を引くには引いてくれましたけど……大丈夫かしら?」
ペリーヌ「……ハッ、お、追い掛けなくては!」
――中庭――
坂本「止まれええええええええええええ!!!!」ギュゴオオオオオ!!!
私「嫌でぇぇぇぇ―――――――――――すッッ!!!」ドダダダダ
シャーリー「くそーっ! この前はワニ、今度は少佐かよ! ……っていうか、なんで私まで逃げてるんだぁぁ―――!!??」ダッダッ
ダッ
私「じゃぁ止まってみるぅぅ―――!!??」ドダダダダ
坂本「スイッチを渡せぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」ギュッゴゴオオオオ!!
シャーリー「止まったら止まったでとんでもない事になるんだろぉ!? あの様子じゃ!」
私「大丈夫大丈夫、危害が及ぶようなことは絶対にないから!」
シャーリー「さっきもそんな事言ってたけどさ、どういう事なんだよ!?」
私「『ロボット工学三原則』って知ってる!?」
シャーリー「知らない! 何の話だよこんな時に!!」
私「ロボットに必要不可欠な原則! お母さんが考えたんだけど、けっこう有名になってんのよ?
ちょっと前にだって、アシモフとかいう物好きなオラーシャ人の作家が取材を――」
シャーリー「だぁかぁらぁ! それがどうしたって――!」
私「AIを搭載――つまりはロボットである以上、SOLIDASにもちゃんと三原則を組み込んだわ!
だから、これに則る限り、少佐は決して人に危害を……!」
坂本「追いついたぞっ!」バッ!
シャーリー「うあっ来たっ!」
私「ロボット工学三原則第一条! 『ロボットは人間に危害を加えてはならない』――」
坂本「ぜいっ!」ドギュアッ!!
私「がぬふっ!」ドガッ ゴロゴロゴロ…
シャーリー「早速則ってないじゃないかぁー!!」
私「あ、あははは……」ボロッ
坂本「……さぁ、スイッチを渡してもらおうか」
私「ま、まだよ……第二条! 『ロボットは第一条に反しない限り、人間の命令を聞かなければならない』! すなわち、『止まれ』と一
言命令すれば――!」
坂本「応ッ!!」バギョッ!!
私「」
シャーリー(……き、木が……一瞬で折れ……)
私「……止まるんだけどなぁ……少佐が命令しさえすれば」
シャーリー「それ無理だってさっき自分で――!」
坂本「……もう一度だけ尋ねる。スイッチを渡せ」
私「は……ハハ……に、逃げるッ! ……って、あれ……? 壁?」
シャーリー「……えっ?」
坂本「……悪いが、そこで行き止まりだ」
私「……え、マジ? これっていわゆる……」
シャーリー「……絶体絶命?」
坂本「……渡す気は無いようだな。仕方ない……『力ずくでもいい』と言ったのは、そっちだしな」スッ
私「は、ハハ……ハハハハハ……」
シャーリー「な、なんとか……なんとか生き残る一言を……私!」
私「……わ、分かった! 金ね! 金が欲しいんでしょう!? いくらでもあげるわ、だから……!!」
シャーリー「ああああ絶対死ぬってその台詞ぅぅぅ!!!」
坂本「……その言葉、宣戦布告と判断する……当方に迎撃の用意あり。
何か、言い残す事は?」
私「せ、せめて三原則を最後まで……ロボット工学三原則、第三条! 『ロボットは――』」
ピピピピピッ!!
≪後方に強力な熱源を感知! 迎撃を開始する!≫
ウゥィィ――ン!!
坂本「!?」バッ
ペリーヌ「全く……遠くに行きすぎですわよっ!」ゴオッ!!
シャーリー「ぺ、ペリーヌぅぅぅ!!」
坂本「来たか! だが何度挑んでも同じ!」バッ!!
ペリーヌ(両方のアームで防御……予想通り!)「もらいましたわっ!」バリバリバリッ!!
坂本(!? 剣の刀身に……電気!? 何を――!?)
私「……『ロボットは、第一条、第二条に反しない限り、自己を守らなくてはならない』――!!」
ペリーヌ「『血と雷』<サングレ・イ・フェーゴ>!!」
バリリュリュリュリュリュッ!!!
バギッ…ゴシャッ!!
坂本「!? アームが……っ!!」
≪被ダメージ率85%。制御不能……アーム駆動系をカットする≫
シャーリー「や、やった! これでもうアームは使えない!」
私「SOLIDASの性質上、背面からの攻撃には常にアームが防御する。
……逆に言えば、アームを壊せる手段があるならば、これ以上ないチャンスってわけよ。……上手くいってよかった……もうダメかと……」
坂本「く……っ!」(腕は再び2本か……だが、刀はまだ2本あるっ!)バッ!
ペリーヌ「遅いですわよ、少佐っ!」ブォン!!
スパァァッ!!
坂本「……!!!」(し、竹刀が……!)
私「……これで、戦力はほぼ対等……ここまでは作戦通りね」ポイッ
カシャン…
坂本「……! そのスイッチ……そうか、最初から……!」
私「あ、気付きました?」
坂本「……ふ、フフ……あっはっはっはっはっは!! そうか、そうか……まんまとしてやられたよ。流石だな……。
……私も少々、浮かれ過ぎていたようだ……油断大敵だな。反省しなくては」
スッ…ビシッ!!
ペリーヌ「……!」(正眼の構え……)
坂本「二刀流も中々面白かったが……やはり、これが一番しっくりくるな」ヒュオオオオ…
シャーリー「……? あの竹刀、何か光って……まさか、魔力が籠ってるのか?」
私「ええ、魔素還元機能を使い始めた! いよいよ本気ってわけね……」
坂本「……講道館剣術道場、坂本美緒。……推して参る!」ヒュバッ!!
ペリーヌ「ッ!」(ぐっ……か、風!? 前が……!)
シャーリー「こ、この風……確か、『剣圧』だっけ?」
私「ええ、しかも今回は魔力まで加わってる!」
坂本「……」タタッ!!
ペリーヌ「ハッ!?」(し、しまっ――)
坂本「貰ったっ!」ブンッ
ペリーヌ「くっ!」ガキィィン!!(か、間一髪でしたわ……!)
シャーリー「い、一気に距離を詰めたぞ!」
私「そうか、さっきの剣圧はこうやって隙を作るために……!
エーテルを竹刀に集め、そして一気に放つ……。烈風斬の劣化版、いや、『殺傷力より抑止力を優先し、攻撃範囲を限界まで広げた』烈風斬……!」
シャーリー「……なんでさっきから解説してるんだろうな、あたしたち」
私「……そういやそうね。……何でかしら」
バリリリリリリリ!!
ガガガガッ! ガギッ!! ガギンッ!!
ペリーヌ「……ッ」(そんな……! 高周波サーベルでも斬れないなんて……! なんですの、この竹刀は!?)
坂本「扶桑剣術奥義・『雲耀』! そう簡単には砕けんぞ……」
坂本(最も、あくまで竹刀……刀身の硬化が精一杯だ。黒江のようにはいかんな……)
ペリーヌ「……なんの、まだまだですわっ!」ビュンッ!!
坂本(刺突撃か!)「遅いっ!」ガキャンッ!
シャーリー「受け流した!?」
ペリーヌ「なっ……!?」(し、しまった……!)
坂本(刺突の弱点は、外すと次の攻撃に急には移れないこと……残念だったな、ペリーヌ)
坂本「終わりだっ!」ブンッ!!
ペリーヌ「……まだですわ!」
ビュンッ!!
シャーリー「や、やった! かわしたぞ!」
私「電気信号によって強化された腕力、脚力そして瞬発力! RAIDENの何よりの武装は――サーベルではなくその五体自身!
……さて、そろそろね」スッ
シャーリー「ん? ここでヒートカッターか? ……まさか、お前が加勢するとか?」
私「なーに言ってんの。女の子と戦うなんて、1億貰ってもやりたかないわ。……プレゼントよ」
シャーリー「……?」
私「そう、プレゼント。……ちょっとばかし、熱いけどね」
カチチチッ…
シャーリー(……刀身を仕舞ってる?)
私「……オン」カチッ!
……ブゥゥゥゥゥン…!!!
シャーリー「えっ……! お、おいおい、柄が溶けちゃうぞ!? 引っこめたまま加熱したら……!」
私「いいのよ、熱くなれば熱くなるだけ……。さて、仕掛けるとしましょうか」
坂本「一、二!」ダン!ダン!
ペリーヌ「アン、ドゥ!」ヒュン!ヒュアン!
ガキン! ガキキン!!
ペリーヌ「ハァ……ハァ……」(一進一退…さすが少佐、一筋縄ではいきませんわね……!)
坂本(……竹刀で打ち合い、か)
坂本(……思い出すな。舞鶴にいた頃……徹子、醇子……北郷先生)
『……引き分けだ! 自分の魔眼も制御できない奴相手に――』
『ここでこうしてると……なんだか空の上にいるみたいです』
坂本(あの頃は、何をやるにも裏目ばかりで……何もできない自分が、もどかしくて……)
『どうだ坂本、君もそろそろ正式な魔女として……』
坂本(……何で……)
坂本(……何で私は……強くなりたかった?)
坂本(何で私は……飛びたいと思ったのかな……?)
ペリーヌ「せぁっ!」ヒュヒュッ!!
坂本「――! くっ!」ガキンッ!!
ペリーヌ(…………?)
シャーリー「ほ、ホントに上手く行くのか!?」
私「上手く行かなきゃあ……ここでお終いね。……でもまあ、可能性は」
私「……十二分にある! 飛んでけ、カッター!」ブンッ
ポォーン…
ピピピピピッ!!
≪後方に強力な熱源を感知! 迎撃を開始する!≫
私「……アーム無き今、AIが支配するのはスーツ全身の神経系。当然、背後の敵に対処するのも……」
クルッ!!
坂本「なっ――えっ!?」(な、何だ!? 体が勝手に後ろに……!)
ペリーヌ「!?」
ヒューッ…
坂本「ハッ!」バギョッ!
ボギャッ! …プス、プス…
シャーリー「……や、やった! カッターにつられて……後ろを向いたぞ!」
私「……性能が良すぎるのも困りもん、ってワケよ。この場合ね」
坂本「――!!!!!」(し、しまっ――)
ペリーヌ「……少佐……」ユラァ…ッ
バリッ! バリバリバリ……ッ!
ペリーヌ「……目をお覚まし下さいっ!!」
ペリーヌ「『撃破』<フラカッソ>!!!」
ヒュガガガガガガガガガッッ!!!!!
坂本「――――ぁっっ!!!」
バリリリッ! ガギョッ! ドギャッ!!
≪あ、ああ……馬鹿な……! こんな……あと……少し……で……!≫
……バチンッ!
≪――――≫プツン…
坂本「…………」フラッ
ドサッ…
ペリーヌ「……ハァ、ハァ……し、少佐……?」
シャーリー「か、勝った……のか?」
私「AIは壊したから、多分……」
坂本「…………」
坂本(……眩しいな、何だか)
坂本(……もう、昼か……)
坂本「…………空……」
『――君はきっと、舞鶴にいる誰よりも、多くの存在を守れる。私はそう信じているんだ』
『――ほら…空はこんなに広いんだ。君が飛ぶ場所なんて、いくらでもあるさ――』
坂本「……北郷、先生……」
坂本(……そうだ。私は……守りたかった)
坂本(平和な国を、大好きな町を……大切な人たちを……ウィッチとして)
坂本(……それなのに……)
坂本「それなのに……私は……」グスッ
ペリーヌ「……少、佐……」
坂本「……ハハ……強くなったなぁ、ペリーヌ。……もう、大丈夫だな。……私がいなくなっても……」
ペリーヌ「! そ、そんな……!」
坂本「……いいんだ。守りたい物を守れるだけの力も無く、しかも……その守りたいという気持ちすら忘れていた。
……みんなに置いて行かれたくない、そんな我儘だけで……。
……もう、潮時なのかもな。私は……もう……」
ペリーヌ「少佐っ!!」
ヒシッ!
坂本「……? おい、ペリーヌ……?」
ペリーヌ「……誰も、少佐を置いて行ったりしません。いいえ、誰が置いて行くものですか……!
貴女は……私の目標であり、そして憧れです。それは……この501に入隊した時から、ひとつも変わっておりませんわ……!」
坂本「……ペ……リーヌ……」
ペリーヌ「少佐の為なら、私はいくらでも血を流し、いくらでも力を尽くします……! 貴女だけでは守れないのなら、私も一緒に守ります。
だから、そんな……そんな弱気な事をおっしゃらないで……! そんな少佐なんて……少佐なんて……!」グスッ
坂本「……ペリーヌ……すまない……すまない……! うっ……ううっ……うぁぁぁっ……!」
ペリーヌ「じょう…ざぁ……! あやまら……な……ひぐっ…えぐっ……!」
坂本「ありがとう……ありがとう……! ペリーヌ……! うぁぁぁぁぁぁぁん……!!」
ペリーヌ「うぇぇぇぇぇん…! じょうざぁぁぁ……!」
私「…………」
シャーリー「……これで、一件落着なのかな」
私「……少なくとも、SOLIDASは完全に機能停止したわ。そういう意味じゃ……そうなるかもね」
シャーリー「まあ、あとは……ヒッ!?」ビクッ
私「え? なに、シ――」
グワシッ
私「!!?」ビクッ!
「……3日ぶりに帰ってきたら……また随分派手にやってくれたわね、私教授?」メリメリメリッ
私「は……ハヒッ……! めり込……あ、頭に……」
ミーナ「……基地は半壊、庭もボロボロ、
おまけに美緒とペリーヌさんが泣きながら抱き合って……。
……ここまでやったんだもの、当然、『覚悟完了』できてるわよね?」メキッメキッ
私「さ、最後のは別に何も――」ガクガク
ミーナ「……」メキョッ
私「あっひゃっ!?」
シャーリー(……今回ばかりは、弁解の余地は無さそうだな)
シャーリー(――こうして、強化服暴走事件は幕を閉じた)
シャーリー(私の突きつけられた処罰は……まず半壊した基地の弁償。これだけで、マネーロンダリングした金を秘密裏に貯金していた口座の1つが、残金ゼロになったらしい)
私「」
シャーリー(……どうりで、預金通帳を見て放心状態になってたわけだ。これでしばらくは、新しいAIが開発されることもないだろう……)
シャーリー(……それから、基地内の清掃活動。今度はトイレだけじゃなく、基地全部を隈なく無駄なく、だ。それに加えて普通の整備の仕事もさせられてるんだから、まったくミーナ中佐は容赦無いと言うか、何と言うか……)
私「…………」ゴシゴシ
シャーリー「よう、やってるか?」
私「ん……ああ、シャーリー。……まあね。今回ばかりは……完全に私の責任だから」
シャーリー「……?」
シャーリー(……それから、気付いたことが1つある。私のやつがこうやってデッキブラシをこすったり、雑巾を絞ったりしているとき――、
あいつは時々、凄く思いつめたような顔をするんだ)
私「…………」
シャーリー(……あたしは思った。やっぱり、今回の事件について、私にも何か思う所があったのかもしれないと……)
ミーナ「ちょっと私さん? 手が止まっているわよ?」
私「……どっちくしょー、サボれなかった……」(あっ! ハイ中佐! 申し訳ございませんッ!)
ミーナ「…………」ゴォッ
私「あっちがっ今のはその」
シャーリー(……別段、そうでもないかもしれないと……)ハァ
――ハンガー――
整備兵1&3「」ピクッ ピクッ
父「い、犬にも腹筋ってあったんだなァ……いや、俺は犬じゃ……あれ、どっちだっけ…ハハハ…」ピクピク
整備兵2「い、17324……17325……し、少佐ぁぁ……まだですかぁぁ……」ゼーハー
第11話、おわり
最終更新:2013年02月07日 14:29