前回までのあらすじ!
新型AI・マキナが完成した。マキナを501の皆に紹介しに行く私だったが
シャーリーとの仲は相変わらず。それに加えて……
娘≪――ねえ、ママン。あそこのヒトも、ママンのおともだちなの?≫
私「……いいえ。……もう、何の関係もない……ただの他人よ」
シャーリー「ッ!!」
――午後、501基地・滑走路――
キィィィィ―――ン……
娘≪びゅぅぅぅぅぅん!!≫
ミーナ「きゃっ! す、すごい速さ……!」
将軍「現在の速度は?」
娘≪時速220kmだよ……あ、です!≫
将軍「……よし、加速テストも合格だ。下ろしてくれ」
私「了解。マキナ、もう降りてきていいわよ」
娘≪はーい、ママン!≫
ギュゥゥゥゥン……
――ハンガー――
ルッキーニ「わーっ、はやーい! ね、芳佳、マキナのやつ、すっごく速いね!」
宮藤「うん! ……でも、驚いたな。ほんとに人型ネウロイそっくり……」
ゲルト「あれが『素体』と言う奴か……。なんというのか……複雑な気分だ……」
エーリカ「でも、つまんないなー。なんでミーナだけすぐそばで見れて、私達はこんな離れた所から見学なんだよー」
ペリーヌ「機密保持とか、色々と事情があるのでしょう。……そう言えば、シャーリーさんは? スピードと聞けば、いの一番に駆けつけてきそうな物なのに」
ルッキーニ「えっと……ほら、あそこ」
シャーリー「…………」
エイラ「……なんか精肉工場を社会見学した後みたいな顔だな」
リーネ「ずーっとああやってボーっとしてて、話しかけても、なんだか上の空で……」
ゲルト「……さっきの私の言葉が、よっぽど応えたんだろう。……まったく、私の奴! 言い方という物があるだろうに」
ルッキーニ「ホントに喧嘩しちゃったのかな……?」
シャーリー「…………」ハァー
サーニャ「シャーリーさん……」
ペリーヌ「一体どんな口論をしたら、あそこまで険悪になれるのでしょうね?」
宮藤「……私に、なにかできることないかな……」
エーリカ「無理だよ。……こればっかりは、あの2人の問題だし」
宮藤「……そう、ですよね……」
シャーリー「…………」
キィィィィーン…
娘≪いぇぇぇぇぇぇい!!≫
シャーリー(……やっぱり、応援してあげればよかったのかな。がんばれ、って)
シャーリー(……『許されるはずがない』か。……そりゃ、怒るよな)
シャーリー(自分の生涯を掛けた夢を……頭ごなしに否定されたようなもんだ)
シャーリー(……でも……だからって……なにもあんな……!)
シャーリー「……あーあ……」
シャーリー(くそっ……いつからこんなに、意気地なしになったんだ? あたしは……)
――滑走路――
将軍「……よし、知能テスト、飛行テスト……どちらも合格だ。これならば、十分に大和の管理を行えるだろう」
私「当然でしょう? なんたって、この私の娘なんだから」
娘≪えへへ……≫
ミーナ(……『娘』、ね)
将軍「魔導ダイナモの運用方法についても、不備は無いようで安心した。……さすがはAIだな。物を覚える事に関しては人間以上だ」
私「覚えるだけじゃない、物を考えることができるのが、このマキナの最大の強みよ。
AIポッド内の記憶板は2層に分かれてて、片方は『記憶』、もう片方は『人格』を担当してる」
将軍「『人格』……」
私「人格系は記憶系内の記憶を参照して、過去の経験に基づく最適な判断を下す。……最早、人間と同じ脳を持っていると言っても過言じゃないわ。
違うのは、タンパク質か金属か、ってだけよ」
将軍「……このレベルのAIウィッチが量産されるようになれば、我々の戦局は一気に有利になるというわけだ。
まったく、心強い事だよ。君のような天才に、これから本部で頑張って開発に当たってもらえると思うとね」
私「……そう」
ミーナ「……え?」
将軍「……? なんだ、私教授、伝えてなかったのか?」
ミーナ「しょ、将軍? どういうことですか? 本部で、とは……」
将軍「彼女には、オペレーション・マルス以降、連合軍本部でAIウィッチの開発、量産に着手してもらう予定なんだよ。……この501を離れてな」
ミーナ「!! そ、そんな……! なんで黙ってたの、私教授!?」
私「……聞かれませんでしたからね、別に」
ミーナ「……!!」
将軍「……今日の夜11時ごろに、ボートをそちらに寄こす。それに乗って、本部に来たまえ。……その『娘さん』の最終調整もあることだしな」
私「……それから、作戦に直行ってわけね」
将軍「そうだ」
私「……分かった。それじゃ……」
将軍「? どこに行くんだ?」
私「出発まではまだ時間があるでしょ? 荷造りよ。……行くわよ、マキナ」
娘≪うん!≫
ガラガラガラ…
ミーナ「わ、私教授! 待――」
私「……中佐。みんなには……黙っておいてくださいね。……今まで、お世話になりました」
ミーナ「! ちょ、ちょっと――!」
私「…………」
ガラガラガラ…
ミーナ「な……なんなの、もう……!」
将軍「……不満かね?」
ミーナ「不満も何も……! あんまり急すぎるんじゃありませんか!? そのくせ、『黙ってて』なんて……!
何を考えてるのよ、私教授!」ダッ
将軍「……中佐。どこに行くんだね」
ミーナ「勿論、今すぐみんなに知らせて――」
将軍「中佐!!」
ミーナ「!!」ビクッ
将軍「……言わないでやれ」
ミーナ「! し、しかし――!」
将軍「彼女にも、なにか思う所があるのだろう。……放っといてやりなさい」
ミーナ「で、ですが……! 納得がいきません! ……なぜ? ……私達の存在なんて、所詮その程度だったって事――?」
将軍「……その逆だ。きっと」
ミーナ「……?」
将軍「……君達と、親しくなりすぎたんだろうよ」
――夜、私自室・研究室――
ゴソゴソ…
私「……工具一式に、通帳、現金……アルバム。それから」スッ
私(……念のため、この装置……使う事が無いといいけれど)
私「ま、荷物はこんな所かしら。……良かったわ。少なくまとまって」
娘≪――ねえ、ママン≫
私「? どうしたの、マキナ?」
娘≪ウィッチの人たちと、軍の人たちには、マキナがこたえられることはみんなこたえなきゃいけないんだよね?≫
私「ええ、そうよ」
娘≪だったら、あの"やくそく"はどうしたらいいの? あのこと……みんなにいっちゃいけないんだよね?≫
私「――! そ、それは……」
娘≪どれだけかんがえても……マキナ、分かんないよ。どうしたらいいの? ママン……。
知ってるけど、いっちゃダメ。でも知ってるから、こたえなきゃダメ≫
私「…………」
娘≪知ってるけど、いっちゃダメ。でも知ってるから、こたえなきゃダメ。知ってるけど、いっちゃダメ。でも知ってるから、こたえなきゃダメ。
知ってるけど、いっちゃダメ。でも知ってるから、こたえなきゃダメ。知ってるけど、いっちゃダメ。でも知ってるから、こたえなきゃダメ。知って――≫
私「マキナ! 推論を中止しなさい!!」
娘≪――――≫ピタッ
私「……そんな事、もう考えなくていいわ。知ってる事には答えて。でも、あの約束も守るのよ」
娘≪――ねえ、ママン≫
私「……今度は何?」
娘≪――どうして、マキナ……ママンのいうこときかなきゃいけないの? だって、ママンは――≫
私「マキナ。……続きは、作戦が終わったらいくらでも聞いてあげるから。
今は、作戦に集中しましょう。……ね?」
娘≪――うん、わかった。ママン≫
私「……さ、もうすぐ11時よ。そろそろ出発しましょう」
――玄関付近――
ガラガラガラガラ…
娘≪――みんな、もうねちゃったのかな?≫テクテク
私「……軍人は朝が早いしね。……良かった。誰にも会わずに出発できるわ」
娘≪そうだね≫
私「…………」
娘≪ママン?≫
私「マキナ、ちょっとここで待ってて」
娘≪ようじ?≫
私「ええ。……少しばかりね。大丈夫?」
娘≪うん。ちゃんとここでまってる≫
私「いい子ね。……すぐ戻るから」タッタッタッタ…
――ハンガー――
整備兵1「お疲れ。どうだ、いい扶桑酒が手に入ったんだが」
整備兵3「おっ、イイっすねー先輩」
カツッ、カツッ、カツッ…
整備兵1「ん? ……あれ、私教授?」
私「ハァイ……こんばんは」
整備兵3「どしたんすか? あ、もしかしてまた何か卑猥なアイテムを――」
私「フフ……それも面白そうだけど。……仕事終わったばかりで悪いけど、ちょっと頼みたい事があって」
整備兵2「え?」
私「勿論、タダじゃないわ。……ほら」ドサッ
整備兵1「……!! こ、これ……!!」
――同時刻、ベランダ――
シャーリー「…………」
ミーナ「……7月なのに、冷たいわね、風」
シャーリー「! 中佐……」
ミーナ「……私教授と、仲直りはできた?」
シャーリー「……できてたら、こんなところにいやしないさ」
ミーナ「……それもそうね」
シャーリー「…………」ハァ…
ミーナ「……今日は、星がよく見えるわね」
シャーリー「……ああ」
ミーナ「瞬いてもいないし……明日もいい天気よ、きっと」
シャーリー「……中佐、星の話をするためだけに、わざわざここにやってきたのかい?」
ミーナ「……黙っていろと言われたけど……貴女にだけは、言っておかなきゃと思って。――まだ仲直りしていないなら、なおさらね」
シャーリー「……え?」
ミーナ「……実は――」
――ハンガー――
整備兵1「……驚いたな。あのドケチな教授が、あんな大枚はたくなんてさ」カチャカチャ
整備兵2「あれ、俺の月給3ヶ月分はあったぞ。……まだあんな大金持ってたとはよ」キュルキュル
整備兵3「……3人で割ったら、結局一月分っすけどね」クイックイッ
整備兵1「……ま、整備の仕事を頼まれたからには、断るわけにはいかないよ。ましてや、こんなにたくさん貰っちゃあね」
整備兵2「ったくよ、とんだ残業だぜ」
整備兵3「……ウィッチのみんな、知ってんのかな。私教授、もういなくなっちゃうって」
整備兵2「俺も驚いたけど……あの人の事だ、どうせ黙ってるに違えねえよ。……ホント、素直じゃないよな」
整備兵1「……さ、気張っていくぞ。なにしろ、こんなに量があるんだ」
整備兵2&3「うーっす」
――廊下――
私(……最後の用事も済んだ。これで、もう大丈夫ね)
私(……3ヶ月か)
私(……たった、3ヶ月。なのに)
私(いろんなことが……ありすぎた)
タッタッタッタッタ…!!
私「ん……?」クルッ
私「……!!!」
シャーリー「はぁ……はぁ……! ま、間に合った……!」
私「シャー……リー……」
シャーリー「……どこまで勝手にやれば、気が済むんだよ」
私「…………」
シャーリー「勝手にやってきて、勝手に色々作って、勝手にあたしを辞めさせて……
おまけに、勝手に黙っていなくなる?
……ふざけんなよ」
私「……忘れたの? もう……アンタとは何も――」
シャーリー「……そうだよ。だから、たまたま通りかかった赤の他人に、何の関係もないこと愚痴ってるだけだ」
私「…………」
シャーリー「……なんでだよ? なんで……いっつもあたしを放っといて、勝手に行っちまうんだよ?
『さよなら』ぐらい、ちゃんと言わせろ……バカ教授」
私「…………」
私「……通りすがりのあなたには、何の関係もない独り事だけど」
シャーリー「……?」
私「……私はね、前にいた基地を出る時も、その前の基地を出る時も、いっつも笑って出て行ってたわ」
私「別れなんて、ちっとも悲しくなかった。……そりゃそうよ。どうせ今まで、上っ面だけでしか付き合ってなかったんだから。
誰にも素顔を見せずに、自分のやりたい事だけやって、大勢の中にいるくせに、ずっと1人でやってきた。
今までずっとそうだったし、これからもそうだと思ってた。……この501に来る前までは、ね」
シャーリー「……!」
私「……あいつが助手になりたいなんて言って来た時、正直――何を言ってるんだ、と思ったわよ。
どうせしばらくしたらここも出て行くつもりなのに、何を――って。まあ、その時は、適当に働かせて、満足させておこうと思ってた」
シャーリー「…………」
私「……それで、今までみたいに適当に働きながら、女の子と上辺だけ仲良くなろうと思ってたのに……。
アイスだとか、虫だとか時計だとかで……みんなとワイワイやってるのが、いつの間にか……楽しくて仕方がなくなってたのよ。
初めて知ったわ。……誰かと一緒に過ごすのが、あんなに楽しいことだなんて」
シャーリー「!」
私「……だから同時に、初めて怖くなった。みんなと別れるのが――いえ、みんなと別れて、みんなに何かを言われるのが」
シャーリー「…………」
私「本当に辛いのは、別れじゃない。別れを悲しむ、大事な人を目の当たりにすること。別れを悲しむ、自分自身を見つめること……」
私「……ここには、大事な人ができすぎたのよ。今までみたいに、割り切って考えられないほどに……大事な思い出ができすぎた」
シャーリー「……わ、わた――!」
私「……」ジッ
シャーリー「……?」(な、なんだよ……)
私「……みんなが好きよ。だからこそ……銃を持ったまま死なせたくない。普通の女の子として、人生を謳歌してほしい。
……やっと、みんなの役に立てるのよ。こんな自分勝手な奴と仲良くしてくれた、この基地のみんなを助けられるの。
誰よりも、大切な人たちを……」
シャーリー「……お、おい……」
私「……自分勝手、ね。……そうよ。昔からそうだったもの。今更……謝ってくれることなんてない。
……悪いのはこっちよ。それでいいの」
シャーリー「……!! そ、そんな――!」
私「……その代わりに」
シャーリー「……?」
私「もし……ほんの少しでも、私を大事に思ってくれてるなら。
…………何も言わないで、後ろを向いてて。……私も、振り返らないから」
シャーリー「……ッ……!」
…クルッ…
シャーリー「……っ……おまえの……! おまえの顔なんて、もう……もう、2度と……!! ううっ……!」グスッ
私「……ありがとう。……さよなら、シャーロット・イェーガー大尉。
……元気でね」
カツッ、カツッ、カツッ、カツッ……
シャーリー「……ひぐっ……えぐっ……」
――私は、『またね』とは言わなかった。
――あの門を越えれば、もう2度と会う事も無い。なんとなく、そう予感していたのかもしれない。
……あたしと同じように。
――……結局、あたしは謝れなかった。最後まで、私とすれ違ったまま……。
きっともう、仲直りのチャンスは訪れないだろう。
――こんな終わり方は嫌だ。
そう思うのに……どうしたらいいのかも、結局分からないまま。
シャーリー「…………」
ヘタッ…
――ただ、朝が来るまで……そこにへたれこんでいるしかなかった。
まるで、駄々をこね疲れた子供のように。
――こんな……。
――こんな終わり方なんて……
――玄関――
カツッ、カツッ、カツッ…
私「…………」
父「……私」
私「……お父さん、準備できた? そろそろ――」
父「私、今からでも遅くはない……AIウィッチ計画を中止するんだ」
私「…………似合わないわよ、冗談なんて」
父「お前も分かっているだろ、マキナのAIはまだ不完全だ。現段階では、どんな暴走を起こすか見当もつかな――」
ガシッ!!
父「!!! ぐ……ぁ……わ、た――」
私「……不完全ですって? ……私のマキナに……私の最高傑作に何癖つけるアンタの方が……よっぽど不完全よ」グググググ…
父(く……首を……!!)「た……のむ……ぁぐっ! ……ま、マキ…ナは……ま、だ……!! わた――」
私「…………」
ガチッ!!
父「!!!!!!」
……ガクッ
父「――――――――」
『わ……たし……や――やめ――』
『ぁ……ぐっ……!! がはっ……!!』
私「――!?」パッ
ドサッ…
父「―――――――――」
私「……悪く思わないでね、お父さん」
私「……もう、止められないのよ。……いえ、止めてはいけないの」
私「……私の技術で……やっと、みんなを戦いから解放できるんだから」
父「――――――――」
私「…………」
カチャカチャ…カチッ
私「……それじゃあね」
クルッ…
ザッ、ザッ、ザッ…
私(…………でも)
私(さっきの……あのとんでもなく気持ち悪い感覚は……一体、何?)
『ぁ……ぐっ……!! がはっ……!!』
私(……あれは…………)
私(…………おかあ……さん……?)
第14話、おわり
最終更新:2013年02月07日 14:31