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c第1話 名も無き前線基地の名も無き隊長







491 :アナルワイプさん恋をする[sage]:2011/07/30(土) 11:12:25.92 ID:MWNQ7mxZ0

第1話 名も無き前線基地の名も無き隊長

―1937年 6月 ウラル方面 名も無き扶桑軍前線基地

智子「わぁーっ…ここら辺は本当に広いわねぇ……。」

加東「そうね。こんな景色は扶桑ではなかなか見られないわよ。」

武子「こんな辺鄙な所にもちゃんと前線基地があるのねぇ。」

智子「隊長さんはどういう方なのかしら?」

江藤「フフフッ……きっと見たらびっくりするわよ?」

黒江「久しぶりだなぁ…。」

智子・加東・武子「「「?」」」



俺「ようこそ、飛行第一戦隊のみなさん。扶桑陸軍飛行第五戦隊隊長、俺扶桑陸軍大尉です。よろしくおねがいします。」

江藤「扶桑陸軍飛行第一戦隊隊長、江藤敏子扶桑陸軍中佐です。これからしばらくお世話になります。」

智子・加東・武子「「「男ぉぉぉぉぉぉぉ!?」」」







495 :アナルワイプさん恋をする言い忘れてたんですけど、時系列は零の少し前です[sage]:2011/07/30(土) 11:18:15.23 ID:MWNQ7mxZ0

江藤「そうよ。俺くんはとても珍しい男性のウィッチ。」

加東「うわぁ…初めて見た……。」

黒江「お久しぶりです、俺さん。」

俺「うん、久しぶりだな、黒江。元気にしてたか?」

黒江「はい、おかげさまで。」

江藤「俺くん、海軍の娘達が来るまでの短い間だけど、世話になるわね。」

俺「こちらこそよろしく。長旅で疲れたろう。今日はもう休むといい。」

武子「あのぅ…お二人はどういったご関係で…?」

江藤「俺くんとは入隊した時期は違うけど、同い年だからそれなりに親交があるのよ。同じ部隊に所属していた時もあったし。」

黒江「そして、私の剣の師でもある。」

智子「それじゃあ、俺大尉も凄い腕前なんですか!?」キラキラ

俺「そ、そんなキラキラした目で見ないでくれ…。俺が教えられるのは剣の基礎だけだよ。黒江には初仕合で負けちゃったし…。」

智子「なぁんだ…。」

武子「ちょっ…ちょっと智子…!? 隊長さんに失礼でしょ!」

俺「いいっていいって。それじゃあ、今日はもうお休みになって、訓練は明日からにしましょう。」




497 :アナルワイプさん恋をする[sage]:2011/07/30(土) 11:24:12.80 ID:MWNQ7mxZ0

智子「模擬戦をしませんか!?」

武子「ちょっ…智子、あなたまた――」

俺「いいよ? 短期間とはいえ、共同戦線を張るんだから、お互いの実力も知っておきたいだろうし。うちの隊員にもそう伝えとくよ。」

智子「よろしくお願いします!」

江藤「ハァ…アンタねぇ…。」

智子「いったいどんなウィッチがいるんだろう…。」キラキラ



―翌日

「俺さん、なんだか凄そうな人達ですね!」ワイワイ

「あの隊長さん、新聞で見たことある気がします。」ガヤガヤ

俺「ああ、扶桑陸軍の精鋭さん達だ。すっごく強い人達だよ。しっかりと胸を借りてきなさい。」

「「「「はーい。」」」」

智子「………。」

加東「妙に垢抜けてない娘達ね。」

武子「模擬戦なんかして大丈夫なのかしら…。」





498 :アナルワイプさん恋をする[sage]:2011/07/30(土) 11:30:15.06 ID:MWNQ7mxZ0

黒江「隊長も俺さんも参加しないんですか?」

俺「ああ、今回は見学させてもらうよ。」

江藤「アンタ達、負けたら承知しないからね?」

俺「ハハハッ! いくらなんでもウチの娘達じゃ陸軍のエース級には勝てないよ。」

江藤「でも…君が指揮している部隊でしょ?」

俺「………関係ないってば。」

江藤「謙遜しなくてもいいって。あっ、みんな準備できたみたいね。

   それじゃあ、模擬戦開始!」



「俺さん、凄かったんですよ! 目の前からパッといなくなってですね…!」ワイワイ

「まるで私が飛ぶ方向が分かっているような射撃で…」ガヤガヤ

俺「うん、イイ経験をさせてもらったな。」

江藤「私達の圧勝…か…。」

加東「悪くはないんだけど………全体的に基本の動きしか出来ない感じね。」

黒江「基本はしっかりしていたんだがな。」






499 :アナルワイプさん恋をする[sage]:2011/07/30(土) 11:37:10.09 ID:MWNQ7mxZ0

智子「………。」ムスッ

江藤「智子、そんな顔しないの。みんながみんなエース級ってわけじゃないのよ?」

智子「それは…分かってるんですけど…。」

俺「いやぁ、ありがとう。あの娘達にもイイ経験になったと思うよ。」

智子「………。」ジーッ

俺「? どうした、穴拭少尉?」

智子「俺大尉は模擬戦をされないんですか?」

俺「…………………別にしてもいいけど、多分君が満足できるような仕合にはならないと思うよ?」

智子「そう……ですか…。」

江藤「まったく…アンタって娘は…。」



―数日後 ウラル上空

加東「11時方向にネウロイ7機です。こちらの方向に向かってきているようです。」

江藤「了解。それで…編隊についてなんだけど…」

俺「迎撃は俺達第五戦隊がする。第一戦隊は上空支援を頼む。」





500 :アナルワイプさん恋をする[sage]:2011/07/30(土) 11:42:49.65 ID:MWNQ7mxZ0

智子「ちょっ、ちょっと! どういうことですか、隊長!?」

江藤「どうしたの、智子?」

智子「私達の方がその…実力があるから……迎撃は私達が…。」

俺「君達はまだここに来て間もないだろう? そんな君達に任せるよりは、我々がやった方が無難だ。」

智子「でも…あの娘達で大丈夫なんですか…?」

俺「なぁに、ウチの娘達だってずっと頑張ってきたんだ。そう簡単にはやられんよ。」

江藤「そうよ。今回だけは、大人しく見学させてもらいましょう?」

智子「………。」

俺「行くぞ。第五戦隊、攻撃開始!!」

「「「「ハイッ!!」」」」

加東「第五戦隊と敵編隊の接触確認!」

江藤「ええ、私も肉眼で確認したわ。」

智子「さすがに、7機を5人で落とすなんてキツイんじゃないですか…?」

江藤「まぁ、よく見ていなさい。」






501 :アナルワイプさん恋をする[sage]:2011/07/30(土) 11:48:11.67 ID:MWNQ7mxZ0

俺「降下開始!」グンッ

黒江「俺さんが仕掛けるか…。」

武子「いや…」

俺「1番!」

「ハイッ!」グンッ

俺「2番、3番!」

「「ハイッ!」」グンッ

俺「4番!」

「ハイッ!」グンッ

加東「一人ずつ時間差で降下して……波状攻撃?」

俺「撃てぇ!」ダダダダダ

加東「射撃も時間差か…。」

俺「1番!」

「ハイッ」ダダダダダタ






504 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/07/30(土) 11:56:21.27 ID:MWNQ7mxZ0

俺「2番!」

「ハイッ!」ダダダダダダ

俺「3番、4番!」

「「ハイッ!」」ダダダダダダ

ダァァン ギィィィィィィ!

俺「敵撃墜確認! 上昇!」

武子「部隊全員の連携による一撃離脱戦法か…。波状攻撃で1機ずつ確実に落としていくっていう戦法ね。」

加東「射撃も時間差でしてるから、ほぼ確実に命中する。すごく合理的な戦法ね。」

黒江「しかし、尋常じゃない連携だな…。」

江藤「それを可能にしているのが…」

俺「降下開始!」

江藤「部隊の先頭で引っ張っている俺くんの指揮よ。」

智子「………。」







505 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/07/30(土) 12:01:07.21 ID:MWNQ7mxZ0

江藤「敵と味方の状況をしっかりと把握して、完璧なタイミングで指示を出す。」

俺「撃てぇ!」

江藤「それぞれの隊員が教科書通りのことしか出来ないとしても、彼一人いれば、その部隊は常勝無敗の最強の部隊と化す。

   『飛将軍』の腕に衰えはないみたいね。」

智子「………。」



俺「撃墜確実6機、残存敵機なし。これより帰投する。

  みんなお疲れ様!」

「俺さんもお疲れ様で~す!」

「久しぶりの戦闘緊張しました~!」

俺「うん、帰ってしっかり休もう。」







506 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2011/07/30(土) 12:04:18.42 ID:MWNQ7mxZ0

智子「あの…俺大尉……。」

俺「ん? 何だ?」

智子「帰ったら、私と模擬戦をしてください。」

武子「ちょっと、智子!? あなたいい加減に――」

俺「いいよ。」

武子「俺大尉!?」

江藤「俺くん、戦闘の後なのに……大丈夫なの?」

俺「ああ、俺は大して頑張ってないからな。」

江藤「俺くんがそう言うならいいけど…」

智子「俺大尉、よろしくお願いします。」





336 :アナルワイプさん恋をする[sage]:2011/08/05(金) 03:30:13.99 ID:e6EGUHd80

俺「ルールは昨日と同じで、相手にペイント弾を当てるか……。」

智子「………。」チャキッ

俺「腰に付けた吹流しを刀で切ったら勝ち。模擬戦で扶桑刀を使うなんて何年ぶりかな…。」ブンッブンッ

智子「お手並み拝見しますね、飛将軍さん?」

俺「ハハハッ、そんな渾名をよく知ってるね。そんなの江藤中佐しか使ってないって。」

智子「ご謙遜を。」

俺「別に俺自身は大したことはしてないのになぁ…。他の皆が頑張ってくれているだけだよ。」

智子「………。」

俺「そろそろ始めようか。それじゃあすれ違ったら模擬戦開始、ということで…。」ギュィィン

智子「………。」ギュィィン

加東「始まったわね。」

武子「まったく智子ったら…。」





337 :アナルワイプさん恋をする[sage]:2011/08/05(金) 03:35:55.91 ID:e6EGUHd80

俺「………ッ!」クンッ

智子「………。」

黒江「最初に後ろを取ったのは俺さんか…。」

江藤「ていうか、わざと背後を取らせたわね、あの娘。」

俺「………。」ダダダダダ

智子「………。」ヒョイッ

江藤「機体はどっちも同じ95式だから…勝負を決めるのは当人達の腕だけね。」

武子「智子は上手く俺大尉の射線から逃れていますね。」

黒江「それにともなって俺さんとの距離も詰まっているけど…。」

江藤「狙ってるわね、あの娘。」

「「「「キャーッ! 穴拭少尉頑張ってくださーい!」」」」

加東「いや、自分達の隊長も応援してあげなさいよ…。」

武子「昨日の模擬戦で智子のファンになっちゃったのかしらね…? あの娘は昔から妙に女の子からモテたから…。」





338 :アナルワイプさん恋をする[sage]:2011/08/05(金) 03:40:26.02 ID:e6EGUHd80

俺「………!」ギュンッ

加東「俺大尉が一気に距離を詰めた!」

智子「今だっ!!」グワッ

「「「「キャァァァァァ!!」」」」

武子「出たっ! 智子の十八番、『ツバメ返し』!」

江藤「でもそれくらい俺くんにも予想は付いてるわよね…。」

俺「それが来るのを待っていたぁぁ!」ジャキン

智子「フッ…!」チャキン

俺「って近っ!?」

スパッ

江藤「決まり……ね。」

武子「ツバメ返しのタイミングを調整して、上手く俺大尉に密接したのね…。」

黒江「俺さんもツバメ返しの瞬間を狙ってたみたいだけど、あれだけ接近されたら狙い撃ちをする暇もないか。」

加東「あの娘また腕を上げたわね。」

「「「「穴拭少尉ィィィ! 素敵でしたァァァァ!!」」」」






339 :アナルワイプさん恋をする[sage]:2011/08/05(金) 03:45:50.19 ID:e6EGUHd80

俺「いや~見事見事! 急制動の間に狙い撃とうと思っていたのに、まさか直に俺の方に向かってくるとは……。完敗だよ、うん。」

智子「どうですか? これが私の実力です…………………………………………ってあれ?」

俺「?」

智子「私は……何がしたかったんだっけ…………?」



―夜 基地外れ

智子「ハァ………何してんだろ…私………。」

俺「こんな夜遅くに何してんだ? もう初夏とはいえ夜は冷えるだろ? これでも着とけ。」ファサッ

智子「え? あ、ありがとうございます…。」カァァ

俺「隣、いいかな?」

智子「…………………………ハイ…。」

俺「よっこいしょっと。

  で? こんな所で地べたに座り込んで何してたんだ?」

智子「俺大尉……あのっ…先程は本当に失礼しました…。」

俺「? 何がよ?」





341 :アナルワイプさん恋をする[sage]:2011/08/05(金) 03:51:27.86 ID:e6EGUHd80

智子「戦闘後でお疲れの所、無神経にも模擬戦を申し込んだりして……。」

俺「ああそれか。別にいいって。こっちもイイ経験させてもらったしさ。ウチの隊員達も喜んでただろ?」

智子「………。」

俺「あんな空戦機動初めて見たよ。さすがエースは違うな。」

智子「そう言っていただけると……安心なんですけど………………でも……」

俺「でも?」

智子「ハァ………ひどく自己嫌悪です…。何ムキになってるんだろうって……。」

俺「ムキになってたのか?」

智子「ハイ…。今日の戦闘で、私達に出番がなくて……それが悔しくて……。」

俺「………。」

智子「気に食わなかったんですよ……模擬戦では私達が勝ったのに、活躍の機会を奪われて……しかも、見事に敵を倒しちゃうし……。」

俺「………。」

智子「でもそれって当然のことですよね…。あなた方はこの地でずぅっと戦ってきた。ずっと死と隣り合わせで訓練をしてきた。
そんな部隊が平和な扶桑からやって来た私達に引けを取るわけがないんです…。」

俺「…………ありがとう。」






342 :アナルワイプさん恋をする[sage]:2011/08/05(金) 03:55:27.67 ID:e6EGUHd80

智子「それに気付いたのが、模擬戦が終わった後です…。自分の傲慢さに嫌気が差します…。」

俺「………。」

智子「陸軍の精鋭だなんだって持てはやされて調子に乗ってたけど……私はまだまだ子供のままなんですよね…。」

俺「ん~……君は今のままでいいんじゃないかな?」

智子「へ…?」

俺「そのまま傲慢でいた方がいいって言ってるんだよ。」

智子「いや………………………………はい?」

俺「君はさ、選ばれた人間なんだ。皆に希望を与える存在なんだよ。」

智子「そんなこと……」

俺「あるよ。さっきの模擬戦でウチの隊員達を見ただろう?」

智子「………。」

俺「君は傲慢でいていい………いや、傲慢でいなければいけないんだ。
  いつも俺達の星であり続けて、俺達の心の支えであり続けないといけないんだ。」

智子「………。」





343 :アナルワイプさん恋をする[sage]:2011/08/05(金) 04:00:06.99 ID:e6EGUHd80

俺「自分で傲慢だと自覚しているんだ。君はもう立派なエースだよ。」

智子「そう……なんですかね…?」

俺「そうだよ。だからこんな所で体育座りしてないで、基地に戻って皆の前で高笑いでもしときな。」

智子「そ、そんなことしません!!」

俺「しても違和感なさそうだけどなぁ。」

智子「どんなキャラですか、私は!?」

俺「けっこう様になると思うよ?」

智子「まったくもう…。でも、ちょっと元気が出ました。ありがとうございます。」

俺「どういたしまして。そうだ! もっと元気が出るように、俺が渾名を付けてあげよう!」

智子「渾名…ですか……?」

俺「うん! 俺が世界で一番好きな言葉なんだけどね――」





344 :アナルワイプさん恋をする[sage]:2011/08/05(金) 04:01:18.90 ID:e6EGUHd80

―1940年 3月 スオムス カウハバ基地 ウィッチ宿舎

エルマ「その人が今度このスオムス義勇独立飛行中隊に来られる俺中佐なんですか…。」

智子「ええ、そうよ。扶桑海事変で指揮した部隊において、一人も被撃墜を許さなかった伝説の部隊長。扶桑皇国陸軍の英雄、『飛将軍』俺中佐。」

エルマ「へぇぇ……一人も撃墜されなかったんですかぁ…。ものすごい人なんですね…。」

智子「うん。扶桑皇国陸軍の男性の中では、間違いなく一番の人気ね。

   彼は私が最も尊敬する扶桑皇国軍人で、」

エルマ「………。」

智子「世界で最も嫌いな男よ。」




345 :アナルワイプさん恋をする[sage]:2011/08/05(金) 04:02:08.68 ID:e6EGUHd80


ハルカ「結局私の出番来ないまま終わっちゃいましたよ…。」

俺「まあ、次からはちゃんと出番あるって。それにしても、この俺はずいぶんとハイスペックだな。俺と同一人物とは思えん。」

ハルカ「そうですね、何か天性のものを感じます。」

俺「俺に編隊指揮の才能が与えられた感じか?」

ハルカ「そういえば、何かを得るためには何かを犠牲にしないといけないって言いますよね? ということは、この俺さんも才能の代わりに何か大切なものを犠牲に……。」

俺「何それこわい」

次回「アナルワイプさん恋をする」第2話 『アナルワイプさん』
最終更新:2013年02月07日 14:57