501宿舎 俺自室 朝
俺「クカー…カァー…」
エイラ「スゥ…スゥ…」
ネウ子「…ムニャ…」
いつの間にかダブルベッドになっている俺のベッドで、俺・エイラ・エフィの三人が一緒に寝ていた
俺とエイラがエフィを挟むようにして寝る。いわゆる川の字だ
エイラは俺からもらった枕を使い、エフィはエイラの胸に顔をうずめている
俺は手をエイラの腰に回し、エフィごと抱き寄せている
時間がゆっくり流れる、平和な時間
<トントン ガチャ
リーネ「俺さん?エフィちゃん?おきてまs……あ…」
リーネが起こしに来たが、三人は起きる気配がない
三人が身を寄せ合って寝ているのを目にしたリーネは、静かにベッド際に近寄った
リーネ「…幸せそうな寝顔」
まるで親子みたい、と素直に思った
リーネ「もうすこし、寝かせてあげよう」
三人はどんな夢を見ているのだろうか
第五話 "We want to say I LOVE YOU"
エイラが良く俺の部屋で寝るようになった
といっても、一緒に夜間哨戒したあとか、休みの日ぐらいだけど
それ以外は大抵自分の部屋で寝ている
サーニャが哨戒から帰ってきたときに、ベッドの上で出迎えたいんだそう
俺と恋人関係になっても、エイラのサーニャへの溺愛は相変わらずだ
あの溺愛っぷりは……そうだな、親バカという言葉がぴったりだと思う。過保護ではない
サーニャに嫉妬等はしていない。ちょっとうらやましいな、と思うことはあるが
見てて面白いというか、理想の信頼関係の一つだと思うし、
エイラを独占しようという気はない。嫉妬とか浮気とかそういうんじゃない
そもそも、エイラとサーニャの関係は、そう易々と壊れるものじゃないだろう
今回は、その二人が喧嘩しちゃうお話です
空 戦闘空域
俺「あーめが降っても?」テュンテュン!!
エイラ「キニシナイー」ダダダダ
<キィィン!パリン!キィィン!パリン!
俺「やーりが降っても?」テュンテュン!!
エイラ「キニシナイー」ダダダダ
<パリン!キィィン!?パリン!キィィン??
俺「なーにがあっても?」テュンテュン!!
エイラ「キニシナイー」ダダダダ
<パパパパリーン
俺とエイラが背中合わせで飛び、お互いの予知で敵の攻撃を回避、息の合ったロールの間に射撃
射線に敵が飛び込んでいく様とはこの事か。放たれた光弾と弾丸は正確に敵を撃ち抜いていた
ここまで、二人ともシールドは使っていない
この攻撃形態は、多数の小型相手の乱戦にはとても有効だった
未来予知系の固有魔法の持ち主で、互いがとても硬い信頼関係に無いとできない芸当だが
宮藤「エイラさん、俺さん。シールド使わないと危ないですよ」
『シールドだけが取り得』といわれている宮藤が近寄ってきて言う
エイラ「アー?どこ見てんだお前ー」ブォォン!!
宮藤「あ!」
俺「よっと」ブォォン!!
急上昇したエイラの背中にぴったり付き、周りの子機へ光弾を打ち込んでいく。正確には、子機の未来位置へ
エ・俺「ほ~らよっと!」ダダテュン!!
<キン!!キン!!キン!!キン!!キン!!キン!!キン!!パリーン!
殲滅!
宮藤「す、すご~い…!」
…まずはその常時展開してるシールドをしまおうか?
バルクホルン「あらかた撃墜したようだが…妙だな手応えがない」
坂本「敵の本体を探しているんだが…」
少佐が魔眼で周囲を索敵。隊のメンバーが集まっている
そこにエイラと俺と宮藤が合流
宮藤「いつあんな技覚えたんですか?」
エイラ「スオムスにいた頃ダ」
俺「ある作戦のときに、ぶっつけ本番でな」
宮藤「ぶっつけ!?」
エイラ「俺から、『背中合わせで飛ぼう』って言われただけで、練習とかは一切なし」
俺「今思えば、良くうまくいったもんだよ」ハハッ
ペリーヌ「少佐、まだ、健在だと?」
ルッキーニ「いつの間にかやっつけちゃったんじゃない?」
リーネ「コアを倒せば子機も消えるはずだよ」
坂本「…っ!」
少佐が振り返る。その先には
バルクホルン「なんだあれは…!」
ペリーヌ「雲を突き抜けてますわ」
とんでもなくデカイタワー型ネウロイがいた
宇宙エレベーターを連想したのは多分絶対俺だけだろう
俺「どこまであるんだ、あれ?」
エイラ「さぁ?」
坂本「お前たちはここに居ろ」ブォォン
ペリーヌ「少佐!」
少佐がタワー型にそって上昇していく
俺「っ」ブォン
赤目を使って、タワー型をスキャンする
一番上を見上げようとしたとき、
<キィィンッッ
俺「ぐぁっ…」ズキ
エイラ「俺!?」
俺「大丈夫だ…大丈夫」
久々の頭痛。それも、電気が流れるようなものではなく、物理的に殴られるような痛みだった
俺(それと……何かが流れ込んできたような…)
もう一度タワーを見上げる
……頭痛は来ない。何かが流れて込んでくるような感じもしなかった
俺(何かの勘違いか……?)
坂本「一時撤退だ。帰って作戦を練り直す」
戻ってきた少佐が言う
ペリーヌ「ですが、まだ敵が…」
坂本「今日は遠出をしすぎた。そろそろ戻らないと、基地に辿り着けなくなるぞ」
帰り道 基地周辺の空 夕方
エイラ「…ニヒッ」
手に持っている何かを見ながら、エイラが笑う。かわいい
宮藤「なんですか、それ?」ブゥゥン
それに気づいた宮藤が近寄る
エイラ「ナ、ナンダヨ」ブゥゥン
距離をとるエイラ
宮藤「何かの葉っぱですか?何でそんなの持ってるんですか?」ブゥゥン
質問と一緒にさらに近づく
エイラ「うるさいナァ!関係ないダロ!」ブォォン
回避
宮藤「見せてくれたって、いいじゃないですかぁ!」ブォォン
決着:エイラの逃げ勝ち
俺「お前ら元気だナァ…」ブォォン
エイラ「大丈夫カ?」
俺「基地までは持つよ…疲れた」
宮藤「エイラさんも俺さんも、なんでそんなにすばしっこいんですか?」
エイラ「フフーン、すばしっこいだけじゃこうは行かないサ」
俺「エイラは未来予知の魔法が使えるんだ。俺も似たようなのが使えるが、エイラには負ける」
俺のは敵機の攻撃予測と未来位置予測限定だからな
エイラ「ヘヘーン、自慢じゃないが私は実戦でシールドを使ったことが一度もないンダ!」
俺「俺は……対アカギ戦の時に使ったか」
無被弾ってやっぱりすごいんだな
宮藤「へぇ~…」
エイラ「私に言わせりゃ、あんなの頼ってるのは二流ダナ」フフン
宮藤「そ、そんな~!私はシールドだけが取り柄だって言われてるのに~!」
自覚してたんか……メイン盾?
サーニャ『そんな言い方したらダメよ、エイラ』
エイラ「ん?」
インカムから歌姫の声がー
サーニャ「おかえりなさい、みんな」ブォォン
エイラ「サーニャ!」
宮藤「サーニャちゃん!」
一度すれ違い、反転。サーニャが編隊に合流する
エイラ「~♪」パタパタ
尻尾ブンブン……かわいい
宮藤「そっか、これから夜間哨戒なんだ」
サーニャ「うん」
俺「今日と明日の連続だっけか?すまないな、俺も出らればよかったんだが」
サーニャ「良いんです。慣れてますから」
坂本「待て、サーニャ。今夜はいい。一緒に基地に戻れ」
サーニャ「? はい…」
坂本「…俺、ちょっと」
俺「あ、はい」
少佐が手招きする
坂本「お前と、エフィの力を借りたい。後で部屋に来てくれ」
俺「…了解」
タワー型の件だろうか
談話室
ピアノが置かれ、談話室らしさが出てきたというかなんというかな部屋
今はブリーフィングルームの役目を果たしていた
部屋の明かりが消され、スクリーンにプロジェクターの画像が映し出される
坂本「空軍の偵察機が撮ってきた写真だ」
バルクホルン「ノイズしか写っていないようだが…?」
坂本「これが今回現れたネウロイの本体だ。全体を写そうと思ったらこうなった。全長は30000mを超えると推測される」
バルクホルン「30000!?高さ、30kmってことか!?」
宮藤「え~と、それって富士山の…」
ネウ子「約7.944915254237288倍……タワーの、正確な、高さは、33333mだから……約8.827595338983051倍……もっと、正確には、」
宮藤「それぐらいで大丈夫だよ、ありがとう…」
少佐が一つ咳払いをしてから話を続けた
坂本「ゴホン…こいつが、毎時10kmという低速でローマ方面に向かっている。それよりやっかいなのは、こいつのコアの位置だ」
ここ、と指示棒で写真の一箇所――タワー型ネウロイの先端を指した
バルクホルン「てっぺん?」
坂本「ああ、私がこの目で確認した」
俺(…)
タワーの先端……コアを見上げたとき、俺の頭に何かが流れ込んできた
あのあと、T-RIPチップのログやプログラムをあさってみたが、それらしいものは見つからなかった
俺(……何かの勘違いか…持病の頭痛がぶり返したか…)
ペリーヌ「ですが、私たちのストライカーユニットの限界は、せいぜい10000m…」
バルクホルン「ジェットなら話は別だが……ん?」
ジェット、に何か引っかかるところがあったのか、大尉がエフィに振り返る
エフィは中佐が操作しているプロジェクターに興味津々のご様子
バルクホルン「エフィ、お前なら30000mまで上がれるんじゃないか?」
ネウ子「キュ!?」
シャーリー「そうか!エフィのネウロイユニットなら楽々…」
俺「そいつは無理だ」
シャーリー「な、なんでだよ!」
俺「忘れたか?エフィはあくまで保護対象だ。前線に出すわけには行かない。それに」
エフィのほうを見て、アイコンタクトを送る
ネウ子「急進派に、私の…穏健派の生き残りの、存在が、知られては、ダメ」
バルクホルン「なに?」
俺「急進派…ヴェチツィアの巣のネウロイの目的は、穏健派の掃討とロマーニャ占領。
トラヤヌス作戦で穏健派は掃討されたはずだった」
ネウ子「でも、私だけ、生き残った…」
俺「生き残りがここに居ると分かったら、エフィを始末しに攻撃を仕掛けてくる。この基地をピンポイントで」
シャーリー「マジかよ…」
バルクホルン「なぜ黙っていたんだ、エフィ?」
すこし怒気の混じった声で大尉が問い詰める
俺だってついさっき、少佐と作戦を立てているときに聞かされた
エフィが俺にまで隠した理由…そいつは単純だった
ネウ子「………――で…――と………て……」
バルクホルン「?」
ネウ子「……自分で、何とかしようと、思って……皆に、迷惑、掛けたくなくて……でも、出て行く、勇気も、なくて…」
一同「!」
ローマから帰ってきたあと、少し落ち着きがなかったのはこのせいだったのかもしれない
自分のせいで、ウィッチーズの皆に被害が出るのでは……逃げたとしても、何かしらの形で隊や街に被害が出る
不安に押しつぶれそうになり、一人でなんとしようと抱え込んで、悩んで……
俺(なんで、手を差し伸べてやれなかったのだろう…俺はエフィの保護者で、理解者で……兄、家族も同然なんじゃないのか!?)
重い沈黙を破ったのはエフィだった
ネウ子「ごめんなさい……」
バルクホルン「…謝らなくていい……」
ネウ子「でも………――っ」
バルクホルンがエフィの頭に手を乗せ、ゆっくり、やさしく、撫で始めた
バルクホルン「私たちは、ウィッチだ。何があってもお前を守る。追い出したりなんかしない」
ネウ子「キュゥ……でも、私が、居たら…みんなに、迷惑が……」
エイラ「…迷惑なんかじゃない」ガタッ
ピアノの椅子にサーニャと二人で座っていたエイラが、突然立ち上がり言った
エイラ「信用してなかったり、迷惑だと思ってたら、最初から基地に入れないはずダ」
そうダロ?と言いたげな視線を俺に向ける。とりあえず微笑み返しておいた
ネウ子「でも………でもっ………」
今にも泣きそうな声でエフィが言う。体の構造上、実際に涙は流せないが、泣きたい気分には違いない
俺「エフィ……」ギュッ
ネウ子「…!」
エフィをそっと抱きしめる
俺「一人で抱え込まないでくれ…軽々しく出て行くなんて言わないでくれ……俺は、お前の…保護者で………」
くっそ!うまく言葉が繋がらない!こんなときに!戦闘技術以外の教育を受けていない自分の語彙力が恨めしい!
なんて言えばいい?俺とエフィ……いや、俺たちとエフィの関係を表す的確な表現……
エイラ「家族、ダロ?」
俺「!?」
俺の心を見たのか?というくらい的確な言葉だった
ネウ子「家族………」
ネウロイに家族という言葉、関係の重みが理解できるかは分からないが、
バルクホルン「そうだ。家族だ」
そうとしかいいようがなかった
俺「そう…家族は助け合うもんだ。何がどうなろうと、俺はお前を見捨てない」
ネウ子「キュ…」
俺「一人で悩んだり、抱え込んだりしないで…俺たちに甘えてもいいんだぞ」
ネウ子「……キュゥ…」ギュ
エフィが俺に抱きついてくる。俺はそれをしっかり受け止めた
なぜだが分からないけど、今のエフィは、泣いている様な気がした…
エイラ(ぐぬぬ…)
悪いこととは分かっていても、エイラはエフィへの嫉妬心を抑えられなかった
エイラ(俺とエフィは兄妹みたいなもの…恋愛感情はない……嫉妬する必要もない……)
はずなのだが、エフィを抱いている俺の顔は、今まで見たことないくらい優しくて…
私に向けたことのない顔をエフィにするのが、なんだか悔しくて…
あの二人は、兄妹や恋人を越えた関係で結ばれているようで……その関係がちょっとうらやましくて
エイラ(あれ?そういえば私…俺に愛してるって言われたことない…)
自身から俺に言ったこともないが、恋人同士になって早八ヶ月ほど。電話越しでも愛してると言い合ったことがない
エイラ(……大丈夫カ?私たち……?)
メインヒロイン()の心配をよそに、俺とエフィ、少佐を中心にブリーフィングが再開された
坂本「それでだ、タワー型を撃破する具体的な方法なのだが…こいつを使う。ロケットブースターだ」
プロジェクターからまた新しい画像――ブースターの設計図が表示される
宮藤「これがあれば、コアのあるところまで飛べるんですか」
バルクホルン「いや、そんな単純な話ではないはずだ」
ミーナ「ええ、ブースターは強力だけど、一度に大量の魔法力を消費するから、短時間しか飛べないわ」
シャーリー「だったら、あたしたち皆で誰かを30000mまで運べばいい」
俺「当たりだ……俺は使えんがな」
エイラ「な、ナンデ?」
俺「俺の魔力はごく微量。すぐに魔力を使い切っちまう」
ストライカーは省魔力と生体電気の助けを借りて動かしていたが、ブースターはそうは行かない
エイラ「つまり、作戦には不参加ってことカ?」
俺「いや、別の形で関わらせてもらう」
プロジェクターがまた別の画像を映し出す
バルクホルン「これは?」
坂本「対タワー型ネウロイ用に俺が急遽開発した武装だ」
俺「開発というよりは改造ですね。ハマーの弾頭にプラズマガス詰め込んだだけの簡単なものですし」
詳しい解説をしていこう
フリーガーハマーの弾頭にプラズマガスを詰め込んだだけ。確かにそうなんだが、それ以外の機能もある
一つは誘導機能
魔力が動力の誘導装置を無理やり載せた
ノイエカールスラントで開発中だった物で、名前は「ルールシュタールX-4」。Me262と一緒に開発されていたらしい
もう一つは近接信管
タワー型のコアは小さくて狙いづらく、確実に当てられる保証はないためつけた
ガスのおかげで単純な威力は大幅に上がり、誘導機能と近接信管で直撃させられる可能性は上がった
しかし、さまざまな機能にスペースを取られ、推進用燃料の搭載量は少なくなってしまった
つまり、使用者はかなり敵に近づいて撃たなければいけない
エイラ「それで…フリーガーハマーってことは、今回の攻撃担当は」
坂本「お前の思ってる通りだ…サーニャ、お前が適任だ」
サーニャ「!」
俺「危険なのは承知の上だ…頼めるか」
サーニャ「…はい」
エイラ「ハイハイハイ!だったら私も行く!」
光の速さでスタンダップしたエイラが身を乗り出して言う
坂本「うむ…時にエイラ、お前、シールドを張ったことはあるか?」
エイラ「シールド?自慢じゃないが私は実戦でシールドを使ったことが一度もないんだ」ドヤァ
坂本「なら無理だ」
エイラ「ウン、ムリ(・x・)ダナ…………あれ?」
ミーナ「そうねぇ、こればっかりは…」
エイラ「ナ、ナンデ…」
俺「さっきも言ったろ?ブースターは一気に魔力を消費する。飛行と攻撃に魔力を取られて、防御に回す分がないんだ」
坂本「
おまけに成層圏という極限環境における生命維持も必要…そこで、サーニャを守る盾となるものが必要なんだ」
エイラ「わ。私は別にシールドを張れないわけじゃないゾ!」
俺「でも実戦では?」
エイラ「使ったことがない!」ドヤァ
俺・坂・ミ「…はぁ」
沈黙
エイラ「…ナ、ナンダヨ!ナンカ言えヨ!///」
俺(………焦るエイラかわええ)ホッコリ
ナチュラルにイチャつく二人を尻目に、坂本は視線を宮藤に移した
坂本「宮藤、お前がやれ」
宮藤「は、はい!………へ?」
坂本「もっとも強力なシールドが張れる、お前なら適任だ」
宮藤「は…はい………ん?」
視線を感じ、振り返った正面には
エイラ「ぐぬぬぬぬぬ……」
宮藤「え?え~!?」
餌を横取りされた野良犬状態のエイラが居た
ネウ子「エイラ姉さん、落ち着いて…」オロオロ
俺「そうだ、とりあえず落ち着け………って、姉さん?」
エイラ「姉さんって…ナンダヨ急に…」
ネウ子「ダメ………?」
エイラ「ウッ///…………ダメ…じゃ、ないけど……ナンカむず痒いィィィ!!///」
真っ赤になって悶えるユーティライネン家の次女
俺「…」ホー
この人にとっては目の保養みたいです
ちなみに、サーニャのことは、サーニャお姉さんと呼ぶみたい
サーニャ本人はそう呼ばれて、ちょっと戸惑ってたけど、嫌ではなかった様子
…あ、バルクホルンのことは相変わらずお姉ちゃんって呼んでる
数時間後 俺自室
俺「ふぃ~」ワシャワシャ
サウナ上がり、濡れた髪をタオルで拭きながら自分の部屋に入る
ここのサウナはちょっと狭い。それと、やっぱりというか、トントが居た
俺(俺の事知ってたみたいだし、エイラが連れ込んだのかな)
今度サルミアッキを持って行こう
俺「さて、そろそろ寝るか…ってエフィはもう寝ちゃってらぁ」
ネウ子「…ムニャ…」
俺のほうのベッドで寝てるのは、もはやいつものことなので気にしない
俺「よいしょっと」ドサ
タオルを首にかけ、ベッドに腰掛ける
俺「良く寝てる」
エフィの頭を軽く撫で、起こさない程度にほっぺをムニムニする
俺(抱きしめたときも思ったけど、やわらけぇ、人のものとしか思えん)
形状記憶合金とか液体金属の類なの?どうやって人の皮膚の柔らかさを再現してるの?
俺「」ムニムニツンツン
ネウ子「ん…ムニュ……ふぁ……や…///」
ちょっと色っぽい声を出しながら身もだえする
俺「……」
その時
<ガチャ
エイラ「俺ー、いるかー」
俺「うぉぅ…あ、なんだエイラか」
エイラ「ナンダとはナンダヨー」
エイラが入ってきた。なんつータイミングだ…エフィに発情しかけちまったぜ
俺「エフィがもう寝ちゃってるから、静かに頼む」
エイラ「オッケー。それで、話があるんだけど、いいカ?」
俺「話?いいけど…まぁ、座れや」
ベッドの上をぽんぽんと叩く
エイラ「アリガト。で、話なんだけどさ」
俺「うん」
エイラ「シールド張る練習、手伝ってくれないカ?」
俺「…お前、あきらめてなかったのか?」
エイラ「だって…考えてもみろよ!ミヤフジがサーニャを取っちゃうかもしれないダロー!」
俺「取る取られるって…お前らそういう関係じゃないだろ」
エイラ「じゃあ俺は、エフィがバルクホルン大尉と一緒にローマに出かけてもいいのカ?」
俺「………エフィが危ない」
エイラ「ダロ?どうしたらその結論に至るのかは置いといて」
俺「まぁ、練習の手伝いをするのに異論はないけど、具体的にどんな練習をするんだ?」
エイラ「ソウダナ……私を撃ってクレ」
俺「…………はい?」
翌日
俺「……危なくないか?」
エイラ「このほうが本気で練習できる」
俺「確かにそうだけど…」
基地上空。中佐に飛行許可をもらい、シールドの特訓中だ
俺が防御対象で、攻撃役の攻撃をエイラが防ぐ。というもの
で、その攻撃役が、
ネウ子「いくよー」ブンブン
数十メートル向こうで元気良く手を振っている彼女である
足をネウロイユニット化させて空を飛び、手先もネウロイ化し、いつでもビームが撃てる体勢だ
シールドの特訓をするんだ、と言ったらすぐに、手伝わせて欲しいと言ってきた
俺(……訓練とはいえ、身内に撃たれるのはいい気分じゃないな)
エイラ「ドンとこーい!」
ネウ子「キュィィン!!」ビームッ!
前に突き出したエフィの手からビームが放たれる
赤い光線はまっすぐこっちに向かってくる
当たる直前にエイラがシールドを張り……
エイラ「ヒョイ」ブォォン
俺「よっと」ブゥゥン
<ビィィム!!
エイラ「ホッ」ブゥゥン
俺「そらっ」ブォォン
<ビィィム!!
エイラ「ヨッ」ブォォン
俺「ていっ」ブゥゥン
全弾回避
俺「さすがだな、エイラ!」
エイラ「いつも通りダナ、俺!」
思わずハイタッチしようとした瞬間
ネウ子「避けちゃ、特訓に、ならないでしょ!!」クワァッ
俺・エ「……サーセン」シュン
エフィに本気で叱られました
基地 テラス
エーリカ「うわぁ~、あんなの私にもできないよ…」
バルクホルン「その才能が仇になるとわな」
エーリカ「あ、またやるみたいだよ」
<ネウ子「今度は、真面目に!」
そういってから、もう一度ビームを放つ
<ビィィム!!
<エイラ「……………ヨッ!」ブォォン
<俺「……………フンッ!」ブゥゥン
息ピッタリの回避
<ネウ子「……」
<俺・エ「……」
<ネウ子「……」ビィィム!ビィィム!!ビィィム!!!ビィィム!!!!
<俺「無言で乱射してきたぞ!」ブォォン!
<エイラ「さっきより威力上がってないカ!?」ブゥゥン!
それでも避ける二人。さすがは未来予知能力持ち
そんな三人を見て、地上の見学者がふと漏らす
エーリカ「ねぇ、トゥルーデ」
<俺「エフィ!落ち着けって!」
バルクホルン「なんだ?」
<エイラ「ソウダゾ!おちつけよ!」
エーリカ「あの三人って、なんか家族って感じだよね」
<ネウ子「キィィィン!!」
バルクホルン「……不真面目な両親に説教をする娘…?」
<俺「本気で怒ってるぞ!」
エーリカ「そうそう。その言葉だけならまだ微笑ましいかもしれないけど」
<エイラ「ウェ!?今のはやばかったぞ!?」
<ビィィム!!
<俺「乱射の次は極太かよ!?」
バルクホルン「……あれはもはや、説教とか喧嘩以上の何かだな」
エーリカ「ねー」
その後、エフィは気が済むまでビームを撃ち続け、
エイラと俺はそれを全部回避し、
着陸後に三人仲良く中佐にこってり絞られたそうな
エイラ・サーニャの部屋
エイラ「はぁ…」
結局一度もシールドを張れずに終わってしまった
エイラ(このままじゃ、本当にサーニャをミヤフジに取られる…)
自分の部屋に入ると、椅子にコートがかけられているのが目に入った
エイラ「これって…」
サーニャ「エイラの、コートでしょ?」
思わず手に取ったら、クローゼットをあさっているサーニャが話しかけてきた
サーニャ「成層圏は、寒いから」
エイラ「そっか、そういやこいつも久しぶりダナ」
ヨロイネン観測所に居た頃、よく着ていたものだ
サーニャ「それで、どうだった?」
エイラ「?」
サーニャ「俺さんとエフィちゃんの特訓」
エイラ「ナ、ナンダ、知ってたのカ」
まぁ、あれだけ騒げば当然なのだが
サーニャ「うまくできた?」
その、わずかに期待の混じった、何の疑いもない、純粋な目を、私は直視できなかった
エイラ「あはは…ムリ、ダメだった…」
サーニャ「そう…」
少しがっかりした顔をする
その彼女の手には、いくつかのマフラーが握られていた。首にも一本かけている
エイラ「あれ、マフラー、そんなにもって行くのカ?」
サーニャ「これ?エイラと私と、芳佳ちゃんの分よ」
エイラ「ミヤフジの!?」
できれば聞きたくない名前が出てきた
サーニャ「芳佳ちゃん、扶桑から何も用意しないで来ちゃったから、貸してあげようと思って」
エイラ「そうか…」
このとき、サーニャの首にかけられているマフラーが、
去年のクリスマス。俺に告白したあの夜にプレゼントした、赤いマフラーだと気づいていたら、
少しは、嫉妬と苛立ちを抑えられたのかもしれない
サーニャ「エイラも、張れるようになるといいね…シールド」
エイラ「ムリだよ…」
サーニャ「え…?」
エイラ「やっぱり、慣れないことはするモンじゃないナ」
サーニャ「エイラ、諦めるの?」
エイラ「…できないことを、いくらがんばったって、仕方ないじゃないか…」
サーニャ「できないからって、諦めちゃだめ!…諦めちゃうから、できないのよ…」
悪気なんてこれっぽっちもない、素直な労いの言葉。私を元気付けようとかけた言葉なのは分かる
でも、今の私には、その言葉の本当の意味は分からなくて、ただ心に堪えただけで…
耐え切れなくなり、私はサーニャに背を向ける
積もり積もったイライラと、心の奥の黒いものが合わさり、思わず感情的な言葉を吐いてしまった
エイラ「だったら最初からできるミヤフジに守ってもらえばいいダロ!!」
言った後、なんて馬鹿なことを言ってるんだ、と思った
サーニャ「!……エイラのバカ!」
振り向き様に一言、
エイラ「サーニャの分からず屋!………――っ!」
その言葉に返ってきたのは、
エイラ「!」バフッ……ドサッ
俺に無理を言って買ってきてもらって、サーニャにプレゼントした枕だった
避けようと思えば避けられたのかもしれない
でも、私は避けなかった…避けられなかった
サーニャ「……………!」
愛しの彼女が、辛そうで、悲しそうで、怒りの混じった、今にも泣きそうな顔をしていたから
サーニャ「!………――っ」ダッ
エイラ「あ……」
逃げるように部屋から出て行ったサーニャの目に涙が浮かんでいたのを、私は見逃さなかった
――………追えよ…
――追うんだ……追って、謝って、抱きしめるなり何なりしろ!
――ほら、追えよ!追えってんだ!!
もう一人の私が心の中で叫ぶが……
エイラ「サー……ニャ……」
私の足は、凍りついたように動かず、
エイラ「……」ジワ
ただ、立っていることしかできなかった
基地 書庫
ネウ子「……」ペラ
窓際の椅子に座り、分厚い本をめくるエフィ
傍らには、平積みされた本が置いてあった
すべて、心理学や人類の歴史、文化に関係する書物だ
一冊だけ恋愛小説が交じっていたのは触れないで置こう
ネウ子「ふぅ…」パタン
読み終わった本は、机の上に無造作に置く…
様に見えて、エフィなりの評価順に置かれていた
今の本は…あんまり面白くなかったみたい
ネウ子「?」
ふと、窓の外を見ると、サーニャが基地外周をとぼとぼと歩いていた
いつもと様子が違う。直感でそう感じたエフィは、
ネウ子「よっと」ヒョイ
何のためらいもなく窓から飛び降りた
基地外周
<ヒューン…シュタッ!
サーニャ「ひっ!?」ビクゥ
歩いていたら空から女の子が降ってきた。な、何を言っt(ry
ネウ子「落ち着いて、私」
サーニャ「え、エフィちゃん…どこから落ちてきたの?」
ネウ子「上」
指差した先には、開けっ放しの窓があった。あそこ三階だよね?
サーニャ「大丈夫なの?」
ネウ子「ネウロイだから」ニコッ
そんな素敵スマイルで言われても…
ネウ子「サーニャお姉さん…何か、あったの?」
サーニャ「え?」
ネウ子「なんか、元気、ない」
…ネウロイにも分かるほど、落ち込んでたのか
サーニャ「……エイラがね」
ネウ子「エイラ姉さんが、どうか、したの?」
話し始めるのと一緒に、再び基地外周を歩き始めた
エフィもサーニャのあとに続く
サーニャ「…エイラと、喧嘩しちゃったんだ」テクテク
ネウ子「喧嘩…」
サーニャ「そう、喧嘩…」
ポツポツと、今日の出来事を話し始めた
エイラがシールドを張るのを諦めたこと
励ましたつもりが、逆に怒らせてしまったこと
プレゼントしてくれた枕を、エイラに投げつけてしまったこと
すべて話し終わったとき、二人は庭園のベンチに座っていた
サーニャ「それで…走って逃げてきちゃって…」
ネウ子「…サーニャお姉さんは、エイラ姉さんと、飛びたいの?」
サーニャ「私は…」
ネウ子「もしかしたら、エイラ姉さんに、どうして、欲しいのか、言って、ないんじゃない?」
サーニャ「あ…」
確かにそうだ。ただ励ますだけで、エイラに自分がどうして欲しいのか、一言もちゃんと告げていなかった
ネウ子「あなたは、やさし、すぎるから」
サーニャ「エイラだって、やさしいもん……///」
照れ隠しに変な事を言ってしまった
ネウ子「………サーニャお姉さんは、エイラ姉さん、のことが、好きなの?」
サーニャ「え?」
どうなんだろう……その『好き』っていうのは多分、恋愛感情のことだろうけど…
サーニャ「エイラは、大切な人よ」
ネウ子「つまり…好きなの?」
サーニャ「ううん、好きとか嫌いとか、そういう単純な関係じゃないの」
ネウ子「?」
友情でも愛情でもない。それらを超越した関係
エフィちゃんは分かってないみたいだけど、
サーニャ(あなたと俺さんも、似たような関係なのよ)
サーニャ「エフィちゃんは、俺さんのことが好きなの?」
ネウ子「キュ?」
想定外の質問を振られ、エフィが首をかしげる
サーニャ「いつも一緒に居るし、お互い信頼しあってるじゃない」
ネウ子「……………わからない」
かなりの間があっての返答
ネウ子「人を、好きになる。というのは、わかる。本で、読んだ。でも、私が、彼を、好きなのかは、分からない」
空を見上げるように顔を上げ、つぶやく様に言う
サーニャ「でも、嫌いじゃ、ないでしょ?」
ネウ子「………言いたいことが、わかった…確かに、単純な、関係じゃ、ない」
そう言ったあと、サーニャのほうを向き、わずかに微笑む
俺との関係を指摘されたことへの照れ隠しなのか、良い話の持って行き方だ、という意味なのか
サーニャ「……フフッ」
ネウ子「……ハハッ」
どちらともなく笑い出し、
気づいたときには、私の胸のわだかまりは、かなり楽になっていた
最終更新:2013年02月15日 12:46