『 I LOVE YOU OK ? 』

雷鳴にも似た、鼓膜を揺すり脳天まで響く轟音を伴って.55口径弾が発射された。それと同時に薬莢底部が肉厚になっているのが特徴的なベルティッド型の薬莢が排出された。
あまり銃器に詳しくない俺だが、教官がベルティッド型の薬莢は軍用弾としては非常に珍しいと言っていたのを覚えている。


俺「5発中0発とか……ありえねぇ……」


額の汗を拭って、ボーイズMK1の本体上部に挿し込まれていた箱型弾倉を取り換えながら溜息を1つ溢した。
時刻はもうじき夜の帳も降りようかという夕刻。場所はウィッチ養成学校ローマ校の屋外射撃訓練場だった。
太陽は随分と西側へと傾いて行き、東からは濃紺の夜が徐々に夕焼けのオレンジを侵食していく。ガランとした放課後の学校は、昼間の騒々しさがまるで嘘みたいに静かで既に俺以外の人間が周囲にいない事を教えてくれた。
夕方を過ぎて刺すような日差しもなくなり、少し風も吹いてきた。真夏だというのに比較的に涼しい。今日はそんな日だった。


俺「うしっ!!」


頬を両の掌でパチンと挟むように打ちつけて、気合を充填させた。
毎日の自主訓練、ただ数をこなすだけでは意味が無い。一発一発の問題点をちゃんと明確にさせ、次からは修正をしてこその鍛錬だ。


俺「集中集中……」


毎日の自主練の成果もあり、同期の中でも一番の成績を修めている射撃が只今散々な結果だった理由は解かっている。
「次こそは……」と想いを込めて、ボーイズMK1の銃口を訓練用のダミーへと向けた。
ダミーの位置は遥か90mも先、それでもいつもなら百発百中とはいかなくともそれに近い成績は出せていたのだ。


俺「……」


全長1.5m、重量16㎏と通常の小銃より遥かに重く大きいボーイズ対戦車ライフルも、毎日毎日飽きるほどに訓練を続けていれば手に馴染む物で、まるで自分の体の一部のような感覚だった。
ボルトハンドルを後方に引きこみ、弾薬を装填した。
引き金に手をかけ、意識を集中させて感覚を尖らせる。

グッと指を絞った瞬間、脳裏に彼女の姿がよぎった。


俺「……ッ!」


銃声だけが黄昏に空しく響いた。遥か前方の開けた空間にはダミーが俺の無様を嘲笑うかのようにポツンと立っていた。


俺「今日ダッメだわー」


手にしたボーイズをポイと放り投げ、俺は背中からゴロンと床に転がった。
大の字型に体を開いて、空を仰ぎ見た。
この瞬間にも俺の頭の中はフェデリカの事で一杯だった。


朝、「おはよう」って眩しい笑顔で挨拶するフェデリカ。
授業中、ボーっとしている俺に丸めた紙を投げつけて悪戯っぽい笑みを浮かべ、「コラ」と言うフェデリカ。
夕方、「また明日」ってこれからもこんな日が続くと信じて疑わないフェデリカ……


そのどれもが頭にこびりついて離れない。こないだ彼女と一緒に学校をサボって映画を見に行って、カフェ・グレコで話をした時から、ずっとだった。


「おいおい、惚れたのかよ」と自分に突っ込んで、「それは無い」とすぐに断定した。
惚れた、好意を抱いたと言うよりもフェデリカへの認識が変わったというだけの話だ。今まで幼馴染で、一番仲が良い友達だった彼女に対して強く異性を感じてしまったというだけ。
なんというか、今まで普通の絵本だったのに急に飛び出す絵本になったみたいな……



俺「この例え解かりにくくて微妙だな」



自分の語彙のレパートリーとか、例えのナンセンスさが憎い。とにかく彼女の存在への認識が変わったためにより彼女へ注目してしまっているだけだ。そう自分に言い聞かせた。


俺「だ――――っ!!」


そろそろフェデリカの姿を頭から振り払えないものかと顔の前で手を振った。蚊を払うかの如くブンブンと振られたが当然効果などある訳も無くやがて諦めた手がダラリと地に落ちた。

俺「……」

言葉も無く見上げた空はいつの間にか完全に夜になっていて、まん丸いお月さまが悠然と空に浮かんでいた。
「月は無慈悲な夜の女王」なんてタイトルのSF小説があった事を思い出した。確かリベリオンの作家だったかな?
読んだ事は無い作品だが、このタイトルを見た時には違和感を感じたっけ。俺にはどうしても柔らかい光で世界を照らす月が無慈悲な女王には見えなかったのだ。むしろ「優しいお母さん」みたいな、そんなイメージ。


俺「そういやあの日も月が綺麗だったなー。星も空一面にブワーって広がってて……」


思い出した“あの日”とは俺がウィッチになる事を決めた日。何か悩んでいる様子だったフェデリカの手を取って、俺の固有魔法“飛翔”の力を使って空からローマの街を見下ろした日だった。
もう2年も前の事なのに明確に覚えていた事に少し驚いた。

「不安な時は、恐れずに一歩踏み出してみればいい。そうすれば後は自分の可能性の世界だから」


その時に、彼女に言った俺自身の言葉だ。今思えば酷く幼稚で夢見がちな台詞だと思う。なんかこう背中がムズ痒くなる。
まだ自分の世界がとても狭くて、目に見えて手に届く範囲だけが全てだと思い込んでいた時代だ。
なんとも無責任で、身勝手な言葉だ。
その言葉を発した当人は、今自分を苛ましている悩みに対して、踏み込んでいくどころか停滞……いや後退すら考えているのに。


俺「……」


大概にして、人間の心の成長は男子よりも女子の方が早いのだと言う。時間にして約2年程。
ならば、2年前に悩んでいるように見えた彼女はきっと今の俺みたいに不安だったのだろう。戸惑っていたのだろう。未来が怖かったのだろう。
そんな彼女は幼く未熟な俺の楽観的な言葉を笑いもせずに大真面目に聞いてくれていた。
あの時、フェデリカは俺の事をどう思ったのだろう。
ガキだと馬鹿にしただろうか?幼稚だと呆れただろうか?



俺「かっこわりぃー」

心臓がキリキリと痛んできた。眼がチクチクして、指先がピリピリして全身がカッと熱くなる。
胸が苦しくて、制服のシャツの上から胸をギュッと握りつぶした。ギリギリと力を込めて握られた制服は皺だらけになっている。

焦点が定まらない視点で見上げた空から、何かが降って来て俺を押しつぶしているかのような、そんな悔しさと不甲斐なさが俺の全身を襲ったのだ。


自分のどうしようもない幼さが。
彼女の自覚の無い優しさが。
ちゃんと成長している彼女と、表面上だけ取り繕ってまるで成長していない自分との差が……。


一緒くたになって俺を攻め立てる。


俺は眼を背けていたのだ。本当はとっくに自覚があったのに。
無様な俺は「あー、あー」と声にならない声を発し続けた。

俺は怖い。今の自分が変わって行くのが。自分を取り巻く幸せな世界が終わってしまうのが。彼女との関係が変化していくのが……いや、彼女に否定されてしまうのが。
だから俺は逃げ続けていたんだ。自分の本当の気持から。


そんな俺は今もなんのアクションを起こすでもなく、時間だけが次の一秒、次の一分を刻んで進んでいく。止められない時間だけが、俺の大人への残された時を奪っていくのだ。
世界は停滞など許す事なく、例外無く刻一刻と進んでいく。
どれだけ時間が経ったのだろうか?自分の中ではかなりの時間が経ったようにも感じたが、実際はそうでも無いのかもしれない



とにもかくにも、俺を襲った衝動はようやく喉元を過ぎ去って、後に残ったのは明確な、確固たる意志だけだった。
体が吊糸で引っ張られたかのように上に引っ張られた。
まず足が最初に地面を踏みしめて、手が体を支える。
グッと力を込めて勢いよく立ちあがった。



俺「あああぁぁぁぁああああぁああああ!!!!!」



思いきり叫んだ。臆病で無様でカッコ悪い自分を追い出すように。
獣が慟哭するかのように、咆哮の臨界を試すかのように、叫んだ。

やはり俺はあまり頭が良く無いみたいだ。頭で色々と考えて見るけれど、単純だから求められた解決法はいつだってシンプルな物になる。
俺は昔「一歩踏み出そう」と彼女に言ったんだ。なら次はきっと俺の番のはず。



俺「ああああああぁぁぁああぁぁぁああああぁあ!!!!」



是非も無く、行動をしたくて、何かアクションを起こさなければならない時はその衝動に従えばいい。

俺の全身を、魔力発現の証である蒼光が包み込んだ。いつものボンヤリとした鈍い光じゃなくて、キラキラとした暖かい光だった。
ピコンと音がして、頭から使い魔である鷹の羽が生えた。




俺「行っくぞぉぉぉぉおおおおおお!!!!!」




かってない程の勢いで、俺は固有魔法の力を行使した。
“飛翔”の効果によって重力という枷から解き放たれた俺の体は、信じられない速度で大空へと上昇を始めた。
ゴウッ!!と風を切る音だけが聞こえた。視界は何も捉えていなくて、俺の体はグングンと飛翔を続ける。

蒼い燐光を纏って、後方に魔力で形成された光の尾を引いて上昇する俺の姿は、地球から宇宙へと上昇していく天邪鬼な流星にも見えるのかもしれない。
俺の魔力ではあり得ない程の速度を得て、今までの限界高度すら軽々と超越してしまった。

「魔法効果は精神状態に大きく左右される」

養成学校に入学したばかりの頃、授業で習った事を思い出した。今の俺のこの状況がまさしくそうなのだろう。
絡みつく弱気な心を振り切るように、熱く滾る意思を抱いて新しい世界を望んだ俺の精神が、限界以上の力を引きだしているのかもしれない。





夜空を裂くように。
雲を突き抜けて
大気の壁をブチ破った。





眼下の世界に見下ろす風景は、ローマの街からロマーニャ公国に、次にヨーロッパ大陸へと段々と規模を大きくしていった。
矮小で臆病で不甲斐ない自分の心を置き去りにしたくって、まだ俺は上昇を続ける。

このまま、宇宙の果てにまでも辿りつけるような、そんな気がした。
どれだけ上昇しようが俺の体を覆う燐光が気圧の変化も、酸素量の変化さえも関係無しに俺の体を保護してくれるから魔力が続く限り上昇を続けてしまうのだ。


気付けば対流圏すら越えて、海上から11キロ地点を目安とする成層圏へと達していた。
ガリアの気象学者ティスラン・ド・ボールが1900年代初頭に発見した対流圏と異なる構造を示すこの層は気象の変化が非常に少なく、風が無いと言われている。

だが、全世界で……恐らく全人類で初めて成層圏に達した俺は確かに今風を受けていた。
偏西風の影響を受け、強い西風が吹いている。



俺「うわぁ」



高度15キロを超えた時点で、俺が眼にしたものは青々と煌めく地球の輪郭だった。
見下ろす限り遥か彼方へと続いて行くかのようにも見える青の地平線は、海と雲の壮大なグラデーションで彩られ、宇宙と空の境界線を描いていた。


グルリと辺りを見渡してみる。青く輝く俺達の星より上の漆黒の世界には、虚無を束ねたかのような暗黒の世界だけがただ広がっていた。
耳を澄ましてみても、何も聞こえない。誰かに呼びかけて見ても、誰も答えない。
人間じゃない何物かなら存在しているのかと思って探してみたけれど、極少数の人々が信仰する“神”とかいう万能の存在も、勿論いない。



ここは世界中の何処よりも、誰よりも高い場所。頂きの世界。



そこで俺が感じた物は孤独感と虚無感だけだった。
全てを置き去りにしようとして空と宇宙の狭間までやってきても、結局俺はどうしようもなく俺なのだ。
寂しがりで、情けなくて、無様で……

カッコ悪い俺は、宇宙への到達とか、外から見た地球の美しさとかなんてどうでもよくって。
そんな俺が心から求める物……いや者は、只1人だけだった。



俺「会いたい」



スッと、上昇が止まった。
頭の中では、生まれてから今まで共に生きて来た彼女との想い出が何度も何度もリフレインしていた。
俺の名を呼ぶ心地よい声。心を掻き乱すイイ匂い。暖かい温もり。
心休まる笑顔……



俺「会いたい、会って話がしたい」



そこから、急降下を開始した。目的地は彼女がいるウィッチ養成学校ローマ校女子寮二階の角部屋。そこに向かって俺は思いきり落下して行った。
本能が告げる。求めるままに、意思のままに行動せよと。
理性が告げる。「後悔するぞ」と、「もう以前までの俺達でいられないかもしれないぞ」と。

この期に及んでまだ逃げようとする俺の臆病な心に、「それでもいいんだ」と優しく告げて決別をした。
やるべきという意思はたった一つで、心の奥底から途切れる事なく湧いてくる。
衝動は滾る心を抑えきれず、言魂となって宙に発せられた。



俺「フェデリカに会いたい!!!」



彼女に会って、ちゃんと向き合えばきっと俺の何かが変わる。そんな気がしたのだ。
進まなければならない、進みたい未来が、きっと見える筈なのだ。

宇宙と空の境界線から、心求める人の元へ蒼く煌めく流星となって飛行する。
真っ直ぐに、ブレない軌道を描いて、地上をめがけて落下する。
世界地図の様だった景色の規模が段々と小さくなっていく、ヨーロッパ大陸からロマーニャ公国へ、そしてローマを経て目的地である場所へと縮尺が狭まって行った。


ウィッチ養成学校ローマ校女子寮を目指していた俺だが、遥か上空からの急降下だったため誤差も大きかったようだ。
テヴェレ河沿いのリペッタ通りの女子寮からは通りを東に三本挟んだ位置にあるコルソ通りへと俺は降り立った。
地面に直撃しないようにブレーキをかけたもののやはり衝撃は大きかったらしく、足元には体を覆う直径2メートル程の、俺の体を包んでいる蒼く輝く魔力の燐光とほぼ同じ大きさのクレーターが出来上がっていた。

「なんだ!」、「俺じゃねーか!」、「何やってんだ、あの野郎」、「フェデリカと一緒にまた何かやりやがったか?」
と最初に驚きの声、次にざわめきが起こり、昔からの知り合い達が「また何か面白い事やっている」と集まって来たが今は彼等にかまっている余裕は無かった。


俺「わりぃ、今から女子寮に突撃するから遊ぶのはまた今度な」


そう告げて再び魔力を行使して“飛翔”を開始する。フワリと爪先が地面を離れ、体が宙に浮かび西にある目的地へと再び全速力で飛び立った。
「なんて大胆な覗きなんだ」と何かを勘違いした声が聞こえた気がしたが、気にしない事にした。




夏真っ盛りのローマは観光シーズン真っ最中で、夜だというのに通りは人で溢れかえっていた。街灯に照らされた明るい街の低空を、蒼光を纏って飛行する俺の姿を見た街の人々の反応は様々だった。


シャッターを降ろしていたパン屋のエンリコは「俺、久しぶりじゃねーか!」と笑ってくれた。
屋台を引いていたジェラート屋のジョルジュには「危ねーだろ!コラ!!」と怒られた。
家の前で孫の手を引いていた、お菓子屋のドーラおばさんは「フェデリカによろしくね!」と微笑んでいた。


俺「あははっ!!」


クソガキだった頃からの俺を知るみんなの、変わらない反応に何故か嬉しくなって笑ってしまった。
世の中、変わって行くものばかりでもないらしい。
そんなみんなの反応を楽しみながらスクロファ通りを抜けて、前を見据えれば目的の建物が目前に見えた。

ローマの街並みには余りマッチしていないアールデコ風の現代建築で建造された女子寮。
漂白されたかのような白はウィッチの純潔のイメージにピッタリだった。
ポツポツと明かりが灯っている。その二階の角部屋に、俺が会いたくてたまらないフェデリカの部屋はある。
薄緑のカーテンが閉められた窓からは光が漏れているから、今彼女は部屋にいるのだろう。


俺「しゃぁあ!!!」

門限をとっくに過ぎているため、固く閉ざされた重い鉄扉を軽々と突破し、そのまま彼女の部屋に突撃しようとした俺に突如異変が起こった。

俺「お……おろ?」

速度が急激に落ちたのだ。体を覆った燐光の層は段々と薄くなり、後方に放たれた光の粒子で形成された尻尾は徐々にその長さを縮めていく。

恐らく、魔力切れ。
飛行魔法は只でさえ魔力を大きく消費させるのだ。ストライカーも無しにこんな無茶をすればそれも当然の結果だろう。
かってない程の感情の爆発によって奇跡的な出力を得ていたとはいえ、限界はやがてやってくる。そしてそれは今だったようだ。


俺「ちょっと待てぇ!もうちょい!もうちょいだから!!」

流星の様だった速度は、いつの間にか歩くよりも遅くなり、やがてただプカプカと浮かんでいるのと相違ない程失速してしまった。
空中でクロールをするようにもがく俺と、フェデリカの部屋の窓までの距離は後1mも無い。

ほんの後少しだけ……

性交渉を拒む女の子に「先っぽだけだから!先っぽだけだから!」と懇願する男の気持ちが少しだけ解かった気がした。


しつこく無様に足掻き続け、ようやっと後10cm程。
思いっきり手を伸ばせば届く距離……

俺「あ……もうムリ……」


完全に魔力が底を尽いたのが解かった。使い魔の羽が強制的に収納され、体を覆っていた燐光はボシュンと音を立てて消えてしまった。

そして、落下。
本当の意味での、万有引力に従った自由落下を始めた。
風を肌で感じる間もなく、俺はドシンと大きな音を立てて重力に引かれるまま地面に叩きつけられた。


俺「イテテ……」

フェデリカ「外がウルサイと思って覗いて見れば……なーにやってんのよ?ダイナミックな覗き?」


蛙のように地面にへばり付いた俺に、二階の窓から待ち望んだ聞きたくて聞きたくて仕方がなかった彼女の声が投げかけられた。
顔面を強打し、血の滲んだ唇をかみしめて顔をあげれば、フェデリカが窓に片肘をついて、本当に楽しそうにニヤニヤしながら俺を見降ろしていた。


俺「違ぇーよ、君に逢いに来たのさジュリエット」

フェデリカ「まぁ、嬉しいわロミオ」


クスクスと彼女が笑うのが俺も嬉しくって、つられて俺も笑ってしまった。
魔力を使いきって、疲弊ここに極まれりって感じの体をなんとかして立ち上がらせようと力を入れる。目の前に、あれだけ心焦がれた彼女が目前にいるのだ、立てないはずがない。
女子寮敷地内の良く管理された芝生を握って引きちぎりながら体を奮い立たせる。
青々とした地面からは夏特有の青臭い土の匂いがした。


フェデリカ「でもロミオ、残念だけどあなた先に行かなきゃいけない所があるみたい」

俺「え?」

フェデリカ「ほら」


彼女が指さす方へ目を向ければ、俺が世界で最も恐れる鬼教官が顔を真っ赤にして立っていた。
手にはバールのような物を所持し、額を始め、肌の見える部分には幾筋も青筋が浮かんでいた。
扶桑にはオーガと呼ばれる恐怖の生命体がいると聞くが、きっとあんな感じなんだろうと想像するのが容易だった。


フェデリカ「きっと他の寮生が連絡したのね。ほら、ここ真面目な子多いし」

俺「さようならジュリエット、死ぬ前に君に逢えてよかった」

フェデリカ「あはは」


鬼教官に怒鳴られ首根っこを引かれて連れて行かれる俺を見ながら、フェデリカは腹を抱えて大爆笑をしていた。
その夜の彼女の声は遠くコロッセオまで届いたとか……





          *          *          *





俺「失礼しました」

ジンジンと痛む頬をさすりながら、俺は教官室のドアを静かに閉じた。
立てつけの悪いドアは耳障りな、軋んだ音を静寂な夜の校舎に残していった。


俺「痛ってー」


女子寮敷地内への不法侵入の罰は鉄拳制裁と「反省文に加え、停学二週間とする」との事だった。
本来ならば退学措置もあり得たのだが、来年の春に卒業を控え第20航空群第151飛行隊へと配属が内定している事と、成績優秀、さらに初犯であるという事も考慮され上記のような寛大な処置を受ける事になったのだ。


俺「覗きじゃねぇって言ってんのに」


ブツブツと独り言を呟きながら、木造校舎の廊下を歩く。
一歩足を進ませるたびにギシリと歪な音を立てる廊下は今にも腐り落ちてしまいそうなほど老朽化が進んでいた。伝統といえば聞こえはいいが、要は古いだけである。

昼間の喧騒に満ちた校舎と違い、夜の校舎には俺の足音だけが世界の音のすべてだった。
よく清掃が行き届いているピカピカに磨かれたガラス窓からは、天空に座する月の光が降り注ぎ、月明かりの絨毯を作っていた。
そんなロマンティックな光に導かれるままに歩き、靴を履き替えて昇降口にさしかかった辺りで、静寂を裂いて耳に聞こえる声があった。いや、声というか歌。
決して上手だという訳ではないが、昔から聞き慣れた耳に馴染んだ歌声だった


フェデリカ「Il sole mio♪sta in fronte a te!♪♪」


校舎に背を向けて校門前の階段に腰を降ろしたフェデリカは、退屈そうに足をパタパタとさせながら空を見上げて「オー・ソレ・ミオ!」とナポリ民謡である「私の太陽」を陽気に口ずさんでいた。
肩が丸出しの黒いキャミソールにズボンだけのシンプルなスタイルに、サンダルといった部屋着のままのファッションで、傍らには飲みかけのコカ・コーラの瓶が置いてある。
どうやら教官に連行された俺の帰りを待ってくれていたようだ。


フェデリカ「II sole,il sole mio♪sta in fronte a te!♪♪」


この曲はロマーニャ人なら知らぬ者などいない人気曲で、最近ではリベリオンのポップ歌手がカヴァーし、ヒットチャートにランクインした事でも記憶に新しい。

「私の太陽、君の顔に輝く、私の太陽」と明るく前向きな曲は昔からフェデリカのお気に入りで、昔から事ある毎に口ずさんでいた。
柔らかな月明かりに照らし出された彼女の姿は美しく、どこか浮世離れして見えた。
例えばこのまま世界が終わってしまっても、彼女だけはこのまま歌い続けているのでは?と思わせる程神秘的であったのだ。


フェデリカ「くちゅん!!」


そんな幻想的で現実離れした雰囲気も、彼女の可愛らしいくしゃみ一つでブチ壊れてしまった。
フェデリカが「寒っ」と言いながら己の肩を抱いた。今日は風も吹いている、いくら八月とはいえ夜にそんな裸みたいな恰好すれば寒いのは当たり前だろう。
俺は制服のシャツを脱いで、背後から彼女に歩み寄って背中に羽織るようにかけてやった。



フェデリカ「お、気が利くね~。こういうさり気ない気遣いはポイント高いよ」

俺「これ以上モテても困るんだけど」

フェデリカ「ぬかしおるわ」


フェデリカはそう言って笑うと、羽織った俺のシャツに包まるように襟元をギュッと抱き合わせ、顔を埋めた。
やはり寒かったようだ。


フェデリカ「俺の匂いがする」

俺「イイ匂いだろ?」

フェデリカ「汗臭い」

俺「返せこの野郎」

フェデリカ「ふふふ」


俺も彼女の隣に腰掛けた。腕時計に眼を落とせばいつの間にか時刻は深夜一時を過ぎていた。日付も変わり、街は眠りに落ちたかのようだ。住宅街から離れた位置にあるからか、車の音どころか人の気配すら感じない。
隣にいるフェデリカの息遣いすら聞こえてきそうな静寂は、どこか心地良いものだった。


フェデリカ「で、どうだったの?」

俺「停学だって。後で反省文も書かなきゃいけない」

フェデリカ「停学かー、俺がいない間退屈だなー」


彼女の言葉にドキリとした俺は火照った頬を風に晒す様に夜空を見上げた。それは「俺がいないと嫌だ」という意味にも聞こえたからだ。童貞フィルターは困った事のように今日も快調だ。
空にはいつのまにか薄い雲が浮かんでいて、さっきまでフェデリカを柔らかく照らしていた月は姿を隠してしまっていた。
少しぼんやりとして、口も半開きのまま目を凝らして雲の隙間から見える搾りカスみたいな月の明かりをみつめた。それから視線を感じて、横を向いた。
俺の隣では、傍らに置いてあったコカ・コーラの瓶を両手で握ったフェデリカが微笑む。それだけでまた頬が熱くなってきた。


フェデリカ「なんであんな馬鹿な事したのよ、まさか本当に私に会いたかっただけって訳じゃないでしょ?」

俺「本当だよ、無性にフェデリカに会って話がしたくなったん……だよ」


俺の瞳を覗きこむように見つめてくるフェデリカの眼力に耐えきれなくなって、視線を前に向けて、言葉尻を濁した。
目前に立っている街灯の光が地面に張り付いて、俺達の足元を照らしていた。そこに写る細く長い二人の影法師は寄り添いあって、まるで恋人同士のようにも見えた。

クビレが特徴的なコカ・コーラ瓶に口をつけたフェデリカはそれを飲むと、一呼吸置いてから口を開いた。
心無しか、彼女の頬も少し上気しているかのように見えた。


フェデリカ「いきなりそういう恥ずかしい事言うの、禁止ね」

俺「恥ずかしい事って……」

フェデリカ「いいから、禁止」


フェデリカの肘に、脇腹を軽く小突かれた。まったく痛く無くてじゃれ合うかのような感じの一撃は幼いころから何度も繰り返されてきたコミュニケーションだ。
彼女がこうするのは決まって恥ずかしがっている時だった。


フェデリカ「まぁでも、いいんじゃないかな」

俺「何が?」

フェデリカ「『会いたくなったから、会いに行く』っていうのがさ」

俺「そうかな」

フェデリカ「そうだよ。そんな簡単にできる事じゃないし」


そう言って笑ったフェデリカは、コカ・コーラの瓶を俺に差し出した「飲む?」と訊ねているのだろう。
それを無言で受け取った俺は、以前みたいに「間接キス」と戸惑う事無く口に運び、濃暗色の炭酸水を口に含んだ。いちいちこんな事で動揺していては、前に進む事はできないのだ。
そうは意識したものの、瞳ではフェデリカの艶やかな唇を追ってしまっている。まだまだ修行が足りない。

炭酸の刺激が鼻を突き抜けた後に、柑橘系とスパイス系のブレンドされたフレーバーの香りとシロップの甘みが口内に広がった。その調和は見事な物で、さすがは世界で一番売れている清涼飲料数である。

俺がコーラ飲み干し、瓶から口を離したのを確認したフェデリカは、ニッと笑った。


フェデリカ「で、私と何を話したかったの?」

俺「あー、うん。人を好きになるってどういう事なのかな?って思ってさ。ほら、お前好きな人いるって言ってたし」


少し答える事を躊躇ったが、せっかく彼女と話せるチャンスだったので思い切って言ってみた。
なんというか直球すぎる質問だし、こんな事本来なら人に訊くのも答えるのも羞恥の極みで、出来る事ならどちらの役割も遠慮したいレベルだ。
それでも、今の俺は訊ねざるをえなかった。衝動に正直に、想いに素直に、恐れずに一歩を踏み出すと決めたのだから。

こんな恥ずかしい質問に対してフェデリカがとった反応は、俺の予想外の物だった。
彼女は真剣な表情で、俺を真っ直ぐに見つめていた。


フェデリカ「そうねー、そういえば私も考えた事なかったわ」

俺「理由も無く、好きって事?」

フェデリカ「うーん、そういうのとは違う気がするんだけどなー」


可愛らしく、小首を傾げた彼女は「うーん」と唸った。
そして「そうだ!」と声を弾ませ、手を合わせた。


フェデリカ「互いの好きな所言い合おうよ」

俺「なんで?」


フェデリカ「そうすれば、“好き”の理由解かるかもよ?」


俺「それってどういう意味?」

フェデリカ「内緒。ほらほら、私の好きな所早く言って。まさか無いとか言わないよね」


猫を連想させる、綺麗な瞳をキラキラとさせた彼女は腕をパタパタとさせて「は・や・く・は・や・く」と俺に催促した。
肩をパタパタと叩かれながら、彼女の言葉の意味を色々と妄想して浮かれている脳をフル回転させた。


俺「えっと、いつも明るくて元気がいい」

フェデリカ「お、いいねー。他には?」

俺「次はお前の番だろ?」

フェデリカ「あ、そっか。えーっと俺の好きな所、好きな所……」


ニヘへ、と顔を綻ばせたまま、フェデリカが考える。
考える……


フェデリカ「えーっと」

俺「無いのかよ……」

フェデリカ「あ!あったあった!瞳が黒くて綺麗だよね」

俺「えー、それー?それなら扶桑人は大体そうじゃん」

フェデリカ「違うの、俺のがいいの」



フェデリカが身を乗り出して顔を近づけ、俺の眼を覗きこんできた。彼女の瞳に、戸惑った表情をしている俺の姿が写しだされた。
しばらくジッと見つめて、それから「やっぱり」とフェデリカが頷いた。


フェデリカ「ほら、やっぱり綺麗な黒だよね」

俺「そ、そうか……つうかこれが一番好きな所?」


なんとも微妙なポイントに思わず渋い顔になってしまった。
予想の斜め上過ぎて、自分でもそんな所がアピールポイントだとか思いもしなかった。


フェデリカ「慌てなさんなって、こんなの序の口だから。はい俺の番」

声を弾ませて、彼女が俺の肩に手を置いた。
いつの間にか近づいている距離と、彼女の掌から伝わる体温に俺の鼓動が早くなって行くのを感じた。


俺「えーっと」


期待するようにワクワクしている彼女には悪いが、咄嗟には思い浮かばなかった。いや、正確には「可愛い」とかすぐに思いついたのだけれど、面と向かって言えるはずも無く頭の隅に追いやられてしまった。


俺「イイ奴なんじゃね?」

フェデリカ「うわ、投げやり。しかも嘘臭い」

俺「そんな事ないって!」

フェデリカ「じゃあ、具体的にどの辺りが?」

俺「え……あ!ほら!さっき俺の事待っててくれた所とか!!」


咄嗟に思いついた事を言ってみた。フェデリカは納得などしていない様子で、さっきの俺と同じ渋い顔をしていた。
さっきまでの甘い雰囲気は何処へやらで、気付けばいつも通りのグダグダとした雰囲気が俺達の間に流れていた。
俺はこの流れを断ち切るように、「はい、次!」と彼女にバトンを渡した。


フェデリカ「髪の色が」

俺「黒いな」

フェデリカ「はい次!」

俺「え!終わり!?」


ガッカリとした表情で「マジかよ」と呟いた俺の事を見て、フェデリカがケラケラと笑った。
箸が転んでも可笑しいお年頃などとうに過ぎているというのに、彼女はよく笑う。


俺「俺、おまえの笑顔好きだわ」

フェデリカ「……」


今度は「ウッ」と言葉を詰まらせて、フェデリカは目を白黒とさせた。
表情をコロコロと変えて、忙しい奴だなと苦笑してしまった。


フェデリカ「い、いきなり恥ずかしい事言うの禁止って言ったでしょ。はい、次!……って私か」

彼女の瞳が宙を見つめフワフワと泳いでいるのが解かった。あれは十中八九「どうしよう」と思っている顔だ。
そう言えばまだ、ちゃんとした俺の好きな所を聞いていない気がする。


フェデリカ「腹が……」

俺「黒くないから。しかもちょっと上手い事言ってるのが腹立つわ」


ドヤ顔しているフェデリカに呆れて、俺は再び空を見上げた。
雲に遮られていた月が一瞬だけ顔を見せて、その柔らかい光で世界を照らした。数秒だけだけど美しく輝いた月に見惚れてしまった。


フェデリカ「俺といるとね、凄い楽しいよ。私が笑顔になれるのも、全部君のおかげ」

俺「へ?」


月に気を取られていた俺は、彼女が言った言葉の半分も聞こえていなかった。どうせ、またふざけた事を抜かすのだろうと油断していた。


フェデリカ「私、解かったかも」

俺「なにがだよ?」

フェデリカ「人を“好き”になるってどういう事かが」

俺「えー、今の不毛なやり取りで解かったの?」

フェデリカ「聞きたい?」


自信満々に胸を張って、フェデリカが尊大な態度で俺に訊ねた。
さっきまでのどうしようもないやり取りを振り返って、「嘘くせー」と想いながらも俺は小さく頷いた。
フェデリカが俺の方へ向き直ったのを見て、自然と俺も彼女の方へと体を向けた。


フェデリカ「あのね“好き”っていうのはね、きっとそれ自体が理由なのよ」

俺「はぁ?」


彼女は自分の発した言葉に自分で赤面しながら答えた。そりゃあそうだろう、聞いてる俺も恥ずかしいくらいなのだから。
それでもフェデリカは俺の眼を見つめて、真っ直ぐな、諭すような口調で続ける。


フェデリカ「“好き”だから会いたい、“好き”だから一緒にいたい、“好き”だから笑顔になる」



続けた言葉も、彼女の端正な造りの顔と組み合わさって更に気恥しいものだった。
だけど、今の俺には彼女の言葉に大きく共感をしていた。

俺の成層圏にまでも達する程の彼女への衝動が……
今こうして向き合っている事が……
一緒にいて、劇的な何かは起こらなくても互いに笑いあう時間を過ごせる事が……
その全てが彼女の言葉の正しさを証明しているかのような気がしたのだ。

フェデリカ「どう……かな……?」

互いに遠慮がちに瞳を覗き合って、同時に起こったこそばゆさ。それは俺とフェデリカの間に微かに……だけど確かに感じる熱さだった。
俺はその熱さの名前を知っている。いや、今日初めて正しく認識した。
それはずっと昔から俺の心にあって、知らんぷりしてきた感情。



まぎれもなく、恋心だった。



俺「うん、俺もそう思う」


俺もフェデリカに負けないように真っ直ぐに彼女を見つめ返した
時が止まったかのような、永遠にも思えるような一瞬の間が空いて、どちらともなく笑みを溢した。


俺「あはは」

フェデリカ「あはははは」


彼女が笑った理由は良く解からないけれど、真剣な顔して見つめ合うなんていう行為が俺達の間に余りにも似合ってなくて、可笑しくってたまらない。


フェデリカ「ねぇ、俺が私に会いたくなったのも、そういう理由なのかな?」

俺「ゲフンゲフン」


突如こんな事を訊ねて来た彼女に、大笑いをしていた途中の俺は思わず咽てしまった。動揺したのが丸わかりで、肯定しているかのようなものだ。
上目遣いで、フェデリカはそんな俺の反応を楽しみながら、慎重に探るように更に訊ねて来た。


フェデリカ「なんて思っちゃうのは、自惚れ過ぎですかね?」

俺「……」


それもある。なんては口が裂けても言えなかった。このまま本心を告げたらフェデリカに上手に乗せられて負けたみたいで悔しいからだ。
俺の理想であるスマートな大人なら、微かに顎を引いて「そうだよ」なんて言うのだろうが、今の俺では到底できそうもない。
人間そう簡単には変われないようだ


俺「残念だけど、自分の為だよ。凄く個人的な理由」

フェデリカ「なーんだ、そうだったら『いやん、私って罪なオ・ン・ナ』って思ったのに」

俺「残念だった?」

フェデリカ「バカ野郎」


フェデリカが俺の膝元に飛び込んできた。俺の膝に頭を乗せて仰向けに寝転がる。
丁度膝枕するかのような姿勢になっていた。


フェデリカ「眠くなってきた~」

俺「だろうね、だってもう向こうの空明るくなってきてるし」

フェデリカ「嘘!?あー、座学中絶対寝るわー」


両手で顔を覆って悲観する彼女の事を微笑ましく思い、今日から停学となる俺は余裕綽綽で朝日が昇り始めた東の空を見つめた。
夜の闇を押し上げて、段々と光に照らし出されるローマの街はとても美しくて、神聖で厳粛な土地みたいに思えた。

夜が明けて、いずれ朝になるかのように時は待ってくれない。それと同時に俺は意思なんて誰にも問われないままに変わって行く。
体が成長する事だったり、恋をすることだったりで、もう色んな形でだ。
それは成長と呼ぶべき物かは解からない。答えなんて誰も教えてくれないんだから、結局は自分で納得のするような形にするのがベターなのだろう。


何も考えないまま、何もしないままでも結局は変わって行くのなら、俺がアクションを起こして行こうと思う。

自分の幼さや、不甲斐なさ、情けなさを受け入れてやって。
愛おしい彼女を精一杯好きになって。
そんな風に自分の納得のいくように変化していけば、きっとその先にあるのが成長って奴なんだろう。
それが、俺がここ数日悩んでいたモヤモヤとした停滞に関する答えだった。

街を照らす朝日の面積は段々と大きくなっていき、いつの間にか世界は光に包まれていた。


俺「これからの俺の人生にも、光と希望がありますよーにっと」


天空で元気に輝く太陽に向かって、小さく呟いた。
俺の膝元で、フェデリカは「んーっ」と伸びをした。


フェデリカ「だいじょーぶだよ。俺ならきっと、だいじょーぶ」


実に彼女らしい陽気で、能天気な答えだった。思わず俺も頬が緩んで能天気になってしまいそうな程に。
あぁ、可愛いな。なんて事を考えてしまうのも彼女の能天気が感染したせいに違いない。

俺「……そうだね」


そう呟いて、俺は膝元に乗っているフェデリカの頭をポンポンと何度も撫でつけた。
根拠なんてなんにも無い彼女の言葉だけど、眠そうに「にへへ」と微笑む彼女をみればそんな事はどうでもいいと思ってしまうのは、きっと俺が思春期だからだろう。
まったく安上がりなお年頃だよ。なんて年齢相応な斜に構えた事を考えながらも、俺の心は今日の青空みたいに晴れやかだった。


俺「続くぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!」



次回予告&おまけ

【1944年 第504統合戦闘航空団基地】

俺「なんでも次から遂に開戦らしいよ。今までダラダラしてた俺達も遂に戦場デビューですって」

フェデリカ「“私も”って事は504結成以前の話って事よね?」


フェル「先輩!つまりそれは赤ズボン隊に入隊した私達と先輩の出会いのお話的な?」

俺「んにゃ、もっと前。マルタ島防衛戦時らしいから……」

パトリシア「私とお兄ちゃんとの出会い的な~?」

俺「うん。多分その辺でしょ」


フェル「出番まだかー、はぁ……」

ルチアナ「隊長、元気出してください」

マルチナ「ちゃんと出番自体はあるみたいだしさー、ボク達は気長に待ってようよ」

フェル「オーケーオーケー、まだこの真のヒロインである私の出る幕では無いって訳ですね!先輩!!」

俺「いや、俺のヒロインはフェデリカだからね」



フェル「私、待ってますから!ちゃんと私が出るまで続いてくれるって信じてますから!!」 ズイッ

パトリシア「私、自分の出番楽しみだよ、お兄ちゃん」 ズイッ

俺「う、うん」(二人共顔近ぇーよ)



フェデリカ(言えない……私の誕生日が4月24日だったから次は私の誕生日短編だなんて、可愛いこの子たちの前では言えない……)





俺「じゃあ予告は……」

フェル「はいはい!!先輩!!私達パンタローニ・ロッシでやります!!」

ドミニカ「おい、私達まだ台詞ないんだからジェーンにやらせろよ」

ジェーン「私は大将と一緒がいいなー、なんて……」////


俺「えー」(誰でもいいんだけど……)


アンジー「ご、ゴホン!揉めているならここは間をとって私が……」////

パトリシア「お兄ちゃん!アンジーが予告やりたいって!」

アンジー「や、やりたいなんて言ってないだろ!」////



ワイワイガヤガヤ



俺(め、めんどくせぇ……)「こういう時は……タケイ!!任せた!!!」



竹井「はいはーい。次回、青春俺二人目第三話!フェデリカ少佐誕生日短編!」


竹井『 You’re My Hero 』



フェル「あー!タケイ!ズルイ!!」

マルチナ「ズルイ!ズルイ!」


ジェーン「大将と一緒にやりたかったなぁ……」

ドミニカ「なに、まだチャンスはあるさ、それよりパブに行こうジェーン」


アンジー「はぁ……」 ションボリ

パトリシア「ほら、アンジーも元気出して」


竹井「それより誕生日短編って……あなた達まだイチャつく気?呆れた」

俺「放っとけ」

フェデリカ「ふふふ」
最終更新:2013年03月30日 01:49