一機の飛行機が飛んでいく。
僚機は居ない。翼には三日月のマーク、そして20ミリ機関砲が備えられている。

その戦闘機のパイロット―キ84と呼ばれている―は、操縦しながら昔のことを思い出していた。

「・・・昔って言うほど年は食ってないよな、はは」

彼はそう自嘲気味に笑うと、再び空想の世界へと戻っていった。
今は戦いの途中でも正式な訓練中でもない。そしてこの近くは彼にとって寝ていても飛べるような慣れ親しんだ空域だった。

そう。差し当たり―今の空は、彼の物なのである。




「―硝煙のコロンを身に纏い、鋼鉄のスカートを舞い上げ、迷彩柄のベールをはためかせながら男達は戦場へと旅立つ・・・」

そう題目のように繰り返し続ける男の名は、546号と言った。正式には、そう呼ばれていた、が正しいか。
それはキ84が、南洋島に居たときのことだった。


現在こそ彼は落ち着いた戦士で、感情を抑えることが出来るが―当時の彼は違かった。若かったのだ。

『フン、お前ら戦闘機乗りはウィッチにばかり役目を押し付けて、南洋島でのうのうと休暇なんて取ってるのか!』

それは、酒場に居たでっぷり太った酔っ払いが発した言葉だった。
次の瞬間彼―酔っ払いの体は、2メートルほど吹っ飛んだ。

気づくとキ84は、何人もの警官に取り押さえられていた。


取り押さえられたときに警吏たちにあちこち警棒で叩かれたせいで、あちこちが痛い。

『よう、随分とやられたようだな。』

拘置所には先客が居た。

『俺か?俺は546号って言うんだ。警吏たちはみんなそう呼ぶ。』

先客の目はあらぬ方向を向いていた。しかし、それは必ずしも彼が気狂いだという証明にはならなかった。彼は不思議な空気をまとっていた。

『俺はまだやれる・・・戦場に行って、そんでネウロイどもを撃ち落して・・・ああ、そろそろ愛機に油をさしてやらなきゃあ・・・』

先客のうわ言を聞いている限り、彼は元飛行機乗りのようだった。
そして、彼は繰り返すのだ。

『男達は・・・』


後から聞いた話だ。彼は何年もの前に従軍していた。そしてそこそこの数のネウロイ(と言っても小型だが)を落とし、そこそこの名誉を手に入れた。
そして、彼は飛んで戦うことに執りつかれていたのだった。






キ84「俺も・・・何時かは、ああなるのか・・・?」

キ84「・・・いやいや、こんなこと考えてもしょうがないか。」

?《ザザッ・・・キ84!ここに居たのか。あたしも一緒に飛んでいいか?》

突然無線機から元気な声が聞こえ、彼の郷愁を打ち消した。

キ84《ああ、いいぞシャーリー。》

シャーリー《ふふっ、ありがとな。》

元気な声の主はシャーリー。彼の相棒のような立ち居地になっていた。
一分もたたないうちにストライカーユニットのエンジン音が聞こえ、彼の乗った戦闘機の隣にシャーリーが現れる。

キ84《・・・そうだ。あそこの山が見えるか?》

シャーリー《お、競争か?》

キ84《察しがいいな。それじゃ、よーい、始め!》

シャーリー《えっ?あっ、ちょっ・・・待ってくれよ!!》

シャーリーが慌ててキ84の後を追いかけた。

キ84《ひゃっほーい!!》

シャーリー(・・・。)

キ84は、笑っている。楽しいのだろう。
しかし、シャーリーには分かっていた。キ84、相棒の笑い顔に・・・どことなく影が差している事を。



シャーリー《あははは、待てよー!!》

しかし、彼女は笑う。彼女には何も出来ないと言うことがわかってしまっていたから。





シャーリー「ふふん、あたしの勝ちだぞ!」

キ84「くそ、次は負けないからな?」

シャーリー「ふふん、それはどうかな?」

軽口を叩きあいながら、飛行場に帰還する。
整備兵達に機体を引っ張ってもらい、格納庫に収納した。

二等兵「あ、お帰りなさい。」

キ84「いつもすまんな、不規則に使っちまって。」

二等兵「いえいえ、俺もその機体にはちょっと興味がありまして・・・。整備しときますね。」

キ84「あ、エンジンだけは残しといてくれ。自分の愛機のエンジンぐらいは自分でやっときたいんだ。」

二等兵「分かりました。油差しぐらいなら俺がやりましょうか?」

キ84「いいいからいいから。そいつは俺の恋人みたいなもんだからな。」

二等兵「ハハ、了解。大事にしてあげてくださいね。」

シャーリー「ふう・・・私にも、あれぐらい優しくしてくれればいいのに・・・」ボソボソ

キ84「ん?なんか言ったか?」ゴシゴシ

シャーリー「はあ・・・。」

二等兵「・・・頑張って下さい。」

シャーリー「はあ・・・ありがとう。」



キ84「・・・不意打ちでもウィッチの機動力には勝てないのか・・・。くそ、少なくとも互角にならないと・・・。」

十分「お戻りでしたか。お帰りなさい中尉殿。」ザッ

廊下ですれ違った十分が簡単な敬礼をする。

キ84「なあ・・・十分。ウィッチを超えるのには・・・どうすればいいんだろうな?」

十分(珍しいな・・・。)

十分「私はあくまでも少佐のサポート役なので・・・。」

キ84「それでもお前は何機か小型を落としているだろ?」

十分「機関砲の力押しで落としたようなものですがね・・・。それに、あの機関砲は重過ぎる。」

キ84「機動力が犠牲になってしまうのか・・・。」

十分「はい。私の任務は少佐を目標までお連れする事です。機動力をカバーするためにも大火力の機関砲が不可欠なのです。」

キ84「・・・。」

十分「しかし、中尉殿は今でも充分すぎるほどのネウロイを落としているではありませんか?」

キ84「駄目だ・・・足りないんだ。ウィッチの代わりを担うには・・・」

十分「・・・。」



同志「―3日後、1200時に決行する作戦を発表する。」

ゲルト「三日?随分慌しいな。」

同志「・・・それについても後で説明する。」

同志「ここ最近、基地の半径10キロ圏内をネウロイどもがうろついているのは知ってるな?」

二等兵「はい。偵察部隊からの報告が上がっています。」

同志「よろしい。今回の作戦はその飛行型ネウロイの・・・掃討作戦だ。」

シャーリー「それで、数は、タイプは?」

同志「数は2。しかし侮ってはいけない。先日カールスラント空軍の同志達がそれを撃ち落す任務を負ったが・・・」

同志「4機居たフォッケウルフの小隊が、ものの15分で壊滅した。・・・不幸中の幸いにもパイロットは生きていたが。同志メディック。」

メディック「はっ。その乗員が昨晩目を覚まし、我々に報告をしてくれました。目標はとても速く、並みの航空魔女では追いつけないそうです。そして、小型の飛行タイプを射出するそうです。」

十分「・・・物理法則を無視してやがる。」

同志「同志十分、ここがどういう場所か忘れたのか?・・・正直私も信じたくは無いがね。」

坂本「・・・今回の作戦の概要を早く話して欲しいのだが。」

同志「失礼。報告にもある通り、普通の航空魔女では目標に追いつくことは出来ない。なので、同志キ84。同志イェーガー大尉。あなた達にお願いしたい。」

同志「・・・頼めるか?と言っても貴官達は拒否しないだろうがね。」

キ84「そいつは最高にワクワクする話だな同志大尉。分かった。やってみよう。」

シャーリー「あたし達の速さを見せてやろう!」

ミーナ「今回は地上部隊と二人以外の出撃はありません。ただし衛生担当の方達は万一に備え、地上で待機していてください。」

同志「同志バルクホルン。あなたは衛生兵達の乗る装甲車の周りで警護に当たってくれ。」

ゲルト「了解した。」

同志「サーニャ、同志ヴィルケ。あなた方の空間把握能力は貴重だ。司令室にて待機をお願いしたい。」

サーニャ「はい!」

ミーナ「わかったわ。」

リーネ「私達は・・・」

同志「今回は防空隊達が基地を離れてしまう。同志ビショップ、同志クロステルマン、同志ハルトマン、同志ユーティライネン、同志フランチェスカ。君達は待機だ。」

エイラ「エー・・・。」

同志「帰る場所がなくなるというのはなかなかきついぞ、同志ユーティライネン。」

エイラ「ワカッタヨ・・・。」

同志「十分少尉、坂本少佐。貴官達はこの後偵察をして、ネウロイのコアの場所を特定してください。」

坂本「だが、気づかれたら逃げられてしまうのでは?」

十分「動きののろいハトヤマ式では満足な速度を出せないかと思うのですが・・・。」

同志「そこは問題無い。奴は攻撃圏内に入らなければ何もしてこないようだ。」

十分「・・・了解しました、大尉。」

同志「それでは作戦開始だ、同志諸君。」



キ84「始まるまで後三日か・・・あそこにあれを取り付けて、プロペラはこうで・・・」ブツブツ

シャーリー「変わらないね、あんたも。」

キ84「ん?だって、久々にネウロイ相手に腕試しが出来るんだ。コンディションは最良にしておかないとな。」

シャーリー「そうか・・・そうだ、後で一杯やらないか?」

キ84「すまんな。整備しなきゃいけない点が幾つかあるんだ。」

シャーリー「ふーん・・・そうか・・・残念だな。」ショボン

キ84「その代わり、作戦が終わったら付き合うよ。」

シャーリー「本当か!?」パアア

キ84「ああ。本当さ。」

シャーリー「絶対だぞ!?絶対だからな!?」

キ84「わ、分かってるって・・・。そんなに詰め寄らなくても良いだろ?」

シャーリー「・・・。」



【格納庫】

格納庫では、キ84の乗機―ハチヨンの整備が行われていた。

十分「へー。この機体は誉エンジンの改良型を積んでいるんですね。」

二等兵「ええ。俺もこんな機体を見るのは初めてでしたよ。」

十分「どのような名前のエンジンなのですか?」

二等兵「扶桑からは誉四二型エンジンだと聞いています。」

十分「誉四二型エンジン・・・確か史実では開発中止になったはず・・・こんなに早い時代から・・・」ブツブツ

二等兵「・・・どうかしましたか?」

十分「あ、すみません。しかしこの機体、かなりのスピードが出そうですね。」

二等兵「ええ。2200馬力、リベリオンの技術屋が言うには、最高速度は800キロも出るとか出ないとか・・・」

十分「それは凄い!それだけあれば並みのストライカーユニットにも勝てるのでは?」

キ84「その通り。だから俺は勝たなきゃいけないんだ・・・ウィッチに!」

十分「し、失礼しました!」

キ84「良いんだ。あんたの機体・・・ハトヤマ式はどれくらいの速度なんだ?」

十分「正式な記録はとった事が無いので分からないのですが・・・恐らくかなり低速な部類に入ると思います。複座式の上、無理矢理機関砲まで付けましたから・・・。」

キ84「ふーん。それでもウィッチとは共闘できているんだろ?」

十分「坂本少佐の力があってこそ可能なことです。恐らく少佐が居なければ・・・機体だけでは勝負にならないでしょう。」

キ84「そうか・・・。どんな機体にも欠点はあるんだな。」

二等兵「ですが、間違いなくこいつは最高傑作ですよ。」

キ84「そうだな・・・。」

十分「何か問題が?」

キ84「今まで俺は、上昇力と機動力でネウロイたちと戦ってきた。だが、20ミリ機関砲では威力不足な敵も居るんだ・・・。」

二等兵「戦闘機には戦闘機の仕事、航空魔女には航空魔女の仕事があるのでは?そこからはウィッチに任せれば―

キ84「・・・っ!!それじゃ駄目なんだ!!」ドンッ

十分「!」ビクッ

二等兵「・・・。」

キ84「・・・すまん。頭を冷やして来る。」スタスタ




【酒場】

シャーリー「ん?機体の整備をするんじゃ無かったの?」

キ84「・・・気が変わったんだよ。」

キ84「・・・オヤジ、扶桑酒をくれ。」

ウルボン「あいよ。」

シャーリー「・・・何かあったのか?」

キ84「・・・何か無くちゃいけないのか?酒を飲みたくなることぐらい俺にだってある。」

シャーリー「・・・おじさん、あたしにも扶桑酒を。」

ウルボン「ん?勝負でもするのか?」

シャーリー「ははは、そんなんじゃないよ。ちょっと乾杯したくなったのさ。」

ウルボン「何だ、つまらねえな・・・ほらよ。」

シャーリー「ありがとう。・・・あ、そうだ、おじさん、テーブル席に移ってもいいか?」

ウルボン「何だ?告白でもするのかぁ?」ニヤニヤ

シャーリー「そ、そんなんじゃ無いよ!//」

シャーリー「・・・キ84、ちょっと話がある。付き合ってくれ。」

キ84「・・・ああ。」



【基地から10キロ程度先の上空】

十分「異常ありませんか?」

坂本「・・・今のところは、な。」

ハトヤマ式が、ゆっくりとした速度で空を飛んでいた。後部座席には坂本が座り、ガラス越しに空を見ている。

十分「後部機銃の使い方は分かりますか?」

坂本「はっはっは!私を誰だと思っている。仮にも航空魔女だぞ?それくらい分かっているさ。」

十分「それじゃ、いざという時はお願いします。・・・あ、尾翼は撃ち抜かない様に注意して―「もういい!」

十分「・・・申し訳ありません。」

伝声管越しに謝ると、十分は再び操縦桿を握り前を見据えた。



坂本「・・・なあ、十分。」

十分「何でしょうか?少佐。」

坂本「あれは・・・・何だ?」

そこには、奇妙な円盤型の物体が浮いていた。

十分「昼間の新月・・・な訳ありませんね。恐らく・・・」

坂本「例の飛行型ネウロイか。」

十分《ザザッ・・・こちら偵察部隊。目標を発見。コアの場所の特定を急ぐ。》

同志《ガガッ・・・でかしたぞ!引き続き監視を・・・》

坂本《コアを発見。》

同志《・・・早いですね。》

坂本《コアは円盤のど真ん中にある。》

同志《・・・お待ちください、本当にど真ん中ですか?》

十分《少佐、測量計を。》

坂本《ちょっと待て・・・うーん、本当にど真ん中にあるぞ。しかも露出している。》

十分《えっ!?・・・痛っ!》グキッ

坂本《そんなに急に後ろに振り向くからだ、まったく。》

同志《・・・同志十分、君の目にもそう見えるかい?》

十分《あー、ええ。とても良く見えています。》

同志《・・・分かった。行く前に写真機を渡したよな?それで一枚写真を撮ってきてくれ。》

十分《・・・了解。撮影後帰投します・・・通信終了。》

十分「少佐、撮影をお願いします。」

坂本「はっはっは!すまんな、私はこういうものには疎くてな!」

十分「・・・手順を説明しましょうか?」

坂本「ああ、頼む!」ニコッ

十分「・・・それじゃ、説明します。まず・・・」




ウルマン「報告します。十分少尉が帰還しました。」

同志「了解。」



同志「おかえり、同志十分、坂本少佐。」

十分「ただいま戻りました・・・。」

同志「随分と時間がかかったな・・・それに疲れているようだ。」

十分「ええ、まあ色々とあったんですよ・・・」

坂本「写真はこれだ。」

同志「うーん、本当にコアが露出しているようですね・・・疑って申し訳ありません。」

坂本「いや、いいんだ。私だって少し驚いたからな。」

十分「しかし、何故コアを晒しているのでしょうか?彼らにとって何の得にもならない筈ですが。」

同志「私にもヤツらの考えは分からないよ・・・」

十分「・・・案外、理解しようとしてはいけないのかも知れませんね。」



【酒場】

シャーリー「それじゃ、乾杯。」

キ84「乾杯。」

シャーリー「次の作戦の事なんだが・・・」

キ84「何か良い戦法が?」

シャーリー「ああ。まずあたし達で編隊を組み、目標近くまで近づく。それで・・・撃つ。」

キ84「それじゃすぐに小型を射出されて逃げられちまうぞ?」

シャーリー「まだ続きはあるよ。あたしはそのまま直進、あんたは急上昇する。これで小型が二手に分かれるはずだ。」

キ84「・・・ケツに食いつかれたまま戦えってか?」

シャーリー「小型じゃあんたの上昇速度には追いつけないよ。あんたを追いかけてた方は追撃を諦めて、あたしの方に来るだろう。」

キ84「ふん。それで。」

シャーリー「あたしは本体達にぴったりくっ付ける。あんたはいつも通り急降下銃撃で奴らを破壊してくれ。」

キ84「お前が横から銃撃すればすぐにカタが付くんじゃないのか?」

シャーリー「報告によると敵は円盤みたいな形をしているらしい。で、コアは中心部にある。横からは私一人の銃撃じゃ倒せない。上から狙う必要がある。」

キ84「だから、お前の上昇速度で上に移動すれば・・・」

シャーリー「・・・残念ながら、奴らの上昇力はあたしの機体とほぼ同じらしい。」

キ84「・・・確かに、上昇速度なら俺の機体の方が上だな。」

キ84「しかし、それじゃお前が集中砲火を浴びてしまう事になるぞ?」

シャーリー「私はウィッチだぞ?シールドを張るなり回避するなりでなんとかするさ。」

キ84「だが・・・」

シャーリー「・・・あたしを、信じてくれ。」

キ84「・・・分かった。」



【作戦当日】

同志「総員、空の同志達に敬礼!!」

同志の一声で、滑走路に整列した兵士達が一斉に敬礼する。

キ84「こりゃまた随分な見送りだな・・・」

二等兵「彼らは普段地上で散々ネウロイたちに苦しめられて、ウィッチに助けられてばかりですからね。」

キ84「そこまでの期待に答えられるかどうか・・・」

二等兵「貴官なら必ず出来ると、その機体が言ってますよ。ご武運を。」ビシッ

キ84「・・・有難う。」ビシッ

シャーリー《ザッ・・・準備は良い?》

キ84《ガガッ・・・ああ。》

シャーリー《じゃ、行くか。・・・グラマラス・シャーリー、出るぞ!》ゴオオオ

キ84《士魂一番、発進する!!》

プロペラが始動し、風が巻き上がる。整備兵がさっと散った。
先に上昇したストライカーユニットを追うように、戦闘機が発進して行った。


同志(頼んだぞ、同志諸君。)



キ84《士魂一番からグラマラス・シャーリーへ。調子はどうだ?》

シャーリー《ばっちりだ!》

キ84《お、調子良さそうだな。》

シャーリー《・・・。》

キ84《・・・どうした?》

シャーリー《あたしはさ、嬉しいんだよ。あんたと一緒に戦えることが。》

キ84《・・・何故だ?俺みたいな通常兵器じゃお前達の足を引っ張るだけだぞ。・・・同情ならやめてくれ。》

シャーリー《違うッ!!》

キ84《・・・じゃ、何だっていうんだ。》

シャーリー《お前が初めてなんだ。私の早さについて来れたのは。》

キ84《・・・。》

シャーリー《・・・あたしは・・・確かに固有魔法のおかげで、頑張れば1000を出せる。》

シャーリー《だけどね、それはあくまでも固有魔法のおかげであって、あたし自身の力じゃないんじゃないかと思えてきたんだ。》

キ84《・・・魔法力はお前固有の力だろ?》

シャーリー《でもね、男で車の記録を更新し続けている奴はさ、固有魔法も身体強化も使わずにそれをやってるんだよ。》

キ84《俺にはそんなに考え込むことでもないような気がするんだがな・・・。》

シャーリー《・・・やるならフェアにやりたいんだよ、あたしは。》

シャーリー《ともかく、一緒の景色を見てくれる奴が居なかった。まあ、当然だよな。どれだけ素晴らしいか主張しても、速度と高度の問題で無理なんだから。》

キ84《そうか・・・良く分からんが・・・俺が役に立ててるならそれでいいよ。》

シャーリー《・・・ありがとう。だから、あたしは・・・あんたの側で・・・あんたと一緒に戦いたいんだ。》

キ84《・・・それは駄目だな。俺は逆だ。お前たちウィッチを戦わせたくない。戦って死ぬのは男だけで充分だ。》

シャーリー《なあ、キ84。あたしはさ、祖国や友人、家族を守るために自分の意思で戦ってるんだぞ?》

キ84《だったら尚更だ。お前はまた16だろうよ。自分の意思で戦うのには早すぎる。・・・殆どのウィッチがそうだがな。》

シャーリー《じゃ、そのまだ16歳の立てた作戦を信じてるのはどこの誰だ?》

キ84《・・・俺だよ。》

シャーリー《信用してくれ。あたしを信じてくれ・・・。あたしだって、ただ黙って見ているだけなのは嫌なんだ。戦えるなら戦いたいんだ!》

キ84《・・・俺の幼馴染も同じようなことを言っていたよ。だがそいつは死んじまった!!》ガンッ

シャーリー《だが!お前の幼馴染だって後悔していないはずだ!!》

キ84《ふざけるな!!お前にあいつの何が分かる!?》

シャーリー《じゃあ逆に聞く!!ウィッチじゃないあんたにウィッチの考えていることが分かるのか!?》

キ84《くっ・・・》

シャーリー《同じなんだ。皆やりたいことを我慢している。でも皆・・・何かを守りたいとも思っているんだ。》

キ84《・・・分かった。》

同志《・・・ザザッ・・・同志諸君、任務に集中しろ!》

シャーリー《へへ、怒られちゃったな。》

キ84《・・・ふっ、はっ・・・ははははは!!》


【指揮所】

スピーカー「「「「ははははは!!!!」」」」

サーニャ「」ビクッ

同志「・・・気分が高揚しているらしいな。」

ミーナ「ふふふ、若いっていいわね・・・。」

同志「・・・ん?キ84中尉は確か・・・貴女よりも年上のはずでは・・・」

ミーナ「黙ってろ」

同志「はい」



【目標地点近く、地上】

メディック「何も起こらなければ良いんだがな・・・」

衛生兵「何か起こったときに何とかするのが俺達の任務だろ?」

メディック「まあ、そうなんだが・・・」

ジョン「それで、納得の行かない事があるんだが・・・」

衛生兵「どうかしたのか?」

ゲルト「・・・//」

ルッキーニ「ここはあたしの席なの!」

ジョン「なんでメディックの横にバルクホルン大尉、衛生兵の隣にルッキーニ少尉が座ってるんだ?特にルッキーニ少尉なんか・・・」

ルッキーニ「えへへー。」

ジョン「膝の上に座ってんじゃねえか!俺は一人だよ!へいへい、機銃担当ですよ!!」

メディック「そう言われてもな・・・。バルクホルン大尉、俺と面識ありましたっけ?」

ゲルト「お前は・・・覚えてないのか?」

ジョン「お、おい、どう言う事だ!?」

メディック「いえ、申し訳ありませんが・・・何も・・・」

ジョン「てんめえええええええ!!」

ゲルト「そうか・・・覚えてないのか・・・私にとっては大きな事だったんだがな・・・」

ジョン「うがあああああああ!!!!!」


ジョン「・・・ルッキーニ少尉は?」

ルッキ「ん、あたし?えへへ、あたしは衛生兵のことがだーい好きなの!」

衛生兵「こら、大人をからかっちゃいけません!」

ルッキ「うじゅー!あたし、もう子供じゃないもん!」

衛生兵「あとせめて6年ぐらいは・・・」

ルッキ「もうあたしが子供じゃないって・・・試してみる?」

衛生兵「あ、ちょ、そんな所、うおっ、ぬふう、やめっ、おっ、あっ」

ジョン「・・・同志大尉、撃ってもよろしいでしょうか?」

ジョン「・・・ロリコンめ」ボソッ

同志《ぐふっ・・・》

サーニャ《た、大変・・・!同志さんが急に・・・》

ジョン「ああ・・・そういや大尉もそうだった・・・。」




キ84《ザザッ・・・こちら士魂一番。目標発見。》

シャーリー《こちらグラマラス・シャーリー。コアの位置を目視で確認。》

同志《よろしい。作戦行動に移ってくれ。》

キ84《そういや、あの作戦は伝えてるのか?》

シャーリー《一応ね。『私は空戦に関しては素人だから、貴官たちに任せる』だ、そうだ。》

キ84《有難いな。昔俺も上官に作戦を具申した事があったんだがな・・・》

シャーリー《あはは、却下する奴に限って素人だったりするんだよな。》

キ84《そうそう!貴族出身の嫌な奴で・・・》

同志《・・・ゴホン。通信が筒抜けだということを忘れないでくれよ、同志諸君。》

シャーリー《コホン・・・じゃ、始めようか。》

キ84《士魂一番、了解!》

操縦桿を引き、機首を上げる。エンジンがうなり、空気を取り込んでいくのが分かった。

キ84《行くぞ、ハチヨン。お目覚めの時間だ!!》

体に一気に重力がかかり、腹に貯めていた空気が口から流れ出て行く。
意識せずとも口の端が苦痛に歪むが、高揚感の前ではそんなもの気にならなかった。
19.25m/秒という上昇速度で、機体がぐんぐん上がっていく。

シャーリー《おー、早い早い。》

シャーリー《それじゃ、あたしも行くぞ!!》

BARを構え、円盤型ネウロイに照準を合わせる。

シャーリー(一応、やってみるかな?)

ストライカーユニット特有のむちゃくちゃな起動で上に少しづつ上昇し、ネウロイの上を取ろうとする。
しかし、事前に教えられていた通り、上昇しようとするたびにネウロイも動いてしまい、上を取ることが出来ない。

シャーリー(あいつに任せるしかなさそうだね。)

シャーリー「あたしはあたしで、精精暴れさせてもらうよ!」

ガガガガガッ!!

BARが振動し、魔法力を伴った弾丸が吐き出される。
耳障りな着弾音を立ててネウロイの装甲を穿った。

しかし、穿った場所もすぐに再生されてしまう。

シャーリー「ふん、簡単に落ちちゃくれないよな。」

キュオオオオオオ

円盤型ネウロイの表面から、沢山の小型が生み出される。その数およそ30。
小型ネウロイたちは、シャーリーを見つけて周りを取り囲もうとしてきた。

シャーリー「相手にとって不足は無し!だな。」

不敵に笑い、小型の群れに突っ込んでいった。



【キ84視点】

あいつが、心配だ。

キ84「・・・。」

航空眼鏡をかけているせいで表情は分からないが、彼は明らかに不安そうな空気を出していた。
確かにウィッチにとっては数十匹の小型など朝飯前の相手だろう。
その小型数匹にさえ苦戦する航空士が心配するのはとてもおこがましい事なのかもしれない。

キ84「だが、それでも心配なんだ・・・」

誰に向けるわけでもなく、呟いた。
キ84には、先ほどの言葉が気になっていた。

―『・・・ありがとう。だから、あたしは・・・あんたの側で・・・あんたと一緒に戦いたいんだ。』

キ84「俺が?何故?」

―『信用してくれ。あたしを信じてくれ・・・。あたしだって、ただ黙って見ているだけなのは嫌なんだ。戦えるなら戦いたいんだ!』

キ84「俺だってお前と同じような能力があったら、もっと上手く・・・」

・・・。

―『相手の立場に立って考えるんだ。』

これは・・・誰の言葉だったか?

―『彼らから見れば・・・俺達はそりゃあ、遊んでるようにしか見えんさ。』

懐かしい言葉だ。

―『一つ教えといてやる。お前が殴ったあの太ったオヤジ・・・あいつの娘もウィッチだったのさ。』

こいつは・・・あの時の!!


囚人「え、何で俺が知ってるかって?そりゃ、あいつは昔の同僚だからな。お前に名前を聞いたときにすぐぴんと来たさ。」

囚人「あいつも昔はいい腕の持ち主だったんだがな・・・ま、俺は今も負けるつもりは無いけどな。」

囚人「それよりもだ。まずむかっ腹を立てる前に・・・相手が何故そうしたのかを考えるんだ。」

囚人「どんな事にも理由があるはずだ。何?理由なんて無かった?本当にそうか?本当に?」

囚人「もう二度と会うことも無いかも知れんが・・・この言葉を良く覚えておけよ。先輩からの宿題さ。」

囚人「お前、気狂いじゃなかったのかって?失礼な。俺はパイロットさ。」


その後、店主に謝るために再び酒場に戻ると、頬を腫らした例のオヤジが酒を飲んでいた。
しかし、その表情に怒りは無く、あるのは悲しみだった。奴が持っている写真は有名なウィッチのものだった。名前を思い出してピンと来た。

・・・そうか。そういう事だったのか・・・。



キ84「俺が・・・シャーリーなら?」

キ84「戦う・・・戦いたい・・・見ているのは嫌だ・・・」

キ84「あいつも、俺と同じなのか・・・?」



【シャーリー視点】

シャーリー「・・・っ!!」

小型たちは、予想以上にしつこかった。
群れの中に打ち込んでも、一匹落とせるか落とせないかで逃げられてしまう。

シャーリー「負けるか・・・っ!」

ストライカーユニットの能力は、気合や練度に左右される。
練度なら普通の戦闘機でもそうなる。しかし気合というものは普通の戦闘機の概念にはなかった。

普通の戦闘機であれば。

シャーリー「うおおおおおおおっ!!」

無茶苦茶に加速し、無茶苦茶な起動で曲がり、振り向きざまに弾丸を叩き込む。

ネウロイ「キュオオオオオ!!」

シャーリー「マイナス、ツー!!」

気合の弾丸を避けたネウロイには、シャーリーのシールドで押しつぶされるというゴホウビが待っていた。

シャーリー「シックス!!」

そして、急速に止まる。

勢いを殺しきれ無かったネウロイが、止まろうとするネウロイに衝突し、さらに数を減らす。

シャーリー「エイト!ナイン!テン!イレブン!」

そして今度は急加速。ネウロイたちは慌ててシャーリーに追いすがろうとし、背後からビームを仕掛けてくる。
そして、また止まった。
先ほどのことで学習していたネウロイは衝突こそはしなかったが、シャーリーを追い抜いてしまった。

もし、ネウロイに人間と同じような思考があったら・・・すぐにしまった、と思うだろう。
そう。密集して追撃してきていたネウロイの集団は、シャーリーに背後を取られていたのだ。
そして射撃を浴び、過ちに気づく間もないまま飛び散った。

シャーリー「フィフティーン!シッ・・・セ・・・エイティーン!」

一気に五機ほどがかけらを撒き散らして消えたが、それでも危険を察知して散会した者が沢山居る。

シャーリー「着いて来いゴキブリ共!」

シールドを展開し、乱射しながら群れの中に突っ込むと、さらに3機ほどを撃墜できた。
残り十機足らずのネウロイたちが未だシャーリーに追いすがってくる。
これが人間の相手ならいらいらしている事だろう。だが彼らは人間ではない。不気味に統率され、感情も持たずに愚直にシャーリーを追い続けた。

シャーリー「あいつなら、こんな誘いには乗らないんだがな・・・」

相棒の顔を思い出し、小さく笑う。航空機同士の戦闘では、平たく言えば背後を取ったものが勝ちである。
折角取った後ろをみすみす捨てるような真似は、計画が無い限りしないという事だ。

シャーリー「鳥頭だな、あいつら。」

シャーリーは先を悠々と飛んでいる大型の下にもぐりこみ、旋回を始めた。小型たちはなおも追いすがってくる。
しかし、急にビームが止まる。母船が傷付くのを恐れたためだろう。
ネウロイたちは確実にビームが当たる距離まで近づいて射撃しようという魂胆のようだ。すさまじい上昇速度で迫ってくる。

シャーリー「今だっ!!」

急加速し、円盤の下から去る。そう、円盤の下には何も無い・・・
シャーリーの機動力に着いていけなかった小型が円盤にぶち当たるのは物理の問題だった。

シャーリー「へへ、一丁あがりっと。」



【キ84視点】

―今はあいつを信じて、仕事をやらなければ。

シャーリー《ザザッ・・・小型は全部片付いたぞ。攻撃開始を頼む。》

キ84《おい、怪我は無いか!?》

シャーリー《そんなに大声で叫ばなくても大丈夫だよ。・・・でも、まあ、その・・・心配してくれて、ありがと、な。》

キ84《良かった・・・心配したんだぞ・・・》

シャーリー《そ、そんな事より早く銃撃を!//》

キ84《へいへい、了解っと。》

キ84「・・・それじゃ、いい所見せないとな。」

・・・ん?何故そう思ったんだ?別にあいつの前で格好つける必要は・・・

・・・まあ、いいか。


操縦桿を倒し、機体を下に向ける。
ストライカーユニットの無茶苦茶軌道には勝てないが・・・戦闘機だって出来ないことは無いんだぞ。

2200馬力のエンジンが最大まで労働をし、その対価として空気を取り込んでいった。
高度6000では大気が薄く、充分に空気を補充することは出来ない。しかし誉エンジンはその名の通り、操縦者の誉の為に労働するのであった。

キ84「そうかそうか、お前も張り切ってるんだな!」

体に重力がかかり、満足に息ができない。声も満足に出せないが自分ではそう呟いたつもりだ。

キ84「うおおおおおおおおおおお!!!!」

機体がガタピシ鳴り、エンジンが咳き込んで悲鳴を上げる。
施工が甘い航空機なら空中分解してしまうかもしれない。しかし、そんな不安なんて無かった。

無理やり動かした眼球が、航空眼鏡のガラス越しに黒い影を捕らえる。―目標だ!


キ84「いっけえええええええええ!!!!」

コアが見える。照準を合わせている暇は無い。時間が無い。余裕が無い。
だが、失敗する気は無かった。失敗などあり合えないように思えた。

キ84「数撃ちゃ当たるだ、クソッタレ!!」

機銃の発射スイッチをぐっと押す。光を纏う弾道がはっきり見えた。
魔法力がもたらす青白い光ではない。底抜けに明るい―機械の―科学技術が生み出す弾道だ。


数撃ちゃ当たる。その言葉どおり、一つの弾丸がネウロイのコアを捕らえた。
そして―


【シャーリー視点】

―まずい!激突する!

少女は、焦っていた。
片思いではあったが・・・大切な相棒が乗る戦闘機が、ネウロイと激突しそうになっていた。
ネウロイはシャーリーのストライカーユニットと同じ速度で上昇している。
つまり、16.25メートル/秒。それにハチヨンの急降下の速度が加わって・・・ああ、分からん。

つまり、ものすごくヤバイという事だけは分かる。

シャーリー「くそっ・・・」




パリイイイイン・・・・



シャーリー「な・・・」

キ84《ザザッ・・・こちら士魂一番!我ネウロイヲ撃墜セリ!繰リ返ス!我ネウロイヲ撃墜セリ!!》

シャーリー「あ・・・はは・・・」

羽となって飛び散ったネウロイの残骸から、ハチヨンが出てくる。

キ84《ガガッ・・・どうだ?戦闘機でもやれるだろ?》

シャーリー《あ、ああ・・・。》

キ84《何だ、面白くないな。・・・格好良かったか?》

シャーリー《え!?えっと・・・うん、あんた・・・すっごくカッコ良かったよ!》

キ84《・・・ありがとよ、相棒。》

シャーリー《う、うん///》

同志《ザッ・・・あー、任務が終わった直後ですまないんだが、二人で少しそこら辺を哨戒しててくれないか?》

キ84《何故です?作戦は終了したのでは?》

同志《あー、うん、とにかくそこら辺にネウロイが残ってるといけないからね、頼むよ。・・・通信終了!》ガチャン

キ84《え、ちょっと・・・はあ・・・》

シャーリー《まあまあ、やってやろうじゃないの。》

キ84《珍しいな。お前が任務を真面目にやろうとするだなんて。》

シャーリー《えっ!?そ、そう・・・か・・・?》

キ84《ああ。》

シャーリー《断定しなくたって・・・理由は何でも良いんだ、あたしはお前と二人っきりで居られれば・・・》ボソボソ

キ84《シャーリー?》

シャーリー《えっ!?あ、な、何だ?》

キ84《どうしたんだ、お前。さっきから何かおかしいぞ・・・?》



【司令部】

同志「・・・これでよろしいですか、同志ヴィルケ?」

ミーナ「ええ。少し二人っきりにしてあげましょう。」

同志「これは・・・帰ったら宴会と双方の部屋の周辺から人払いをする準備ですかね?」

ミーナ「そう上手く行くと良いのだけれど・・・」



【上空】

キ84《俺さ・・・今更分かったんだ。》

シャーリー《何を?》

キ84《お前の・・・気持ちが。》

シャーリー《えっ、そ、それって・・・//》

キ84《ああ。お前が戦ってる理由がだ。》

シャーリー《な、何だ・・・そっちかよ・・・》ズーン

キ84《・・・?・・・お前も、何かを守りたいんだな。お前の意思なんだよな。》

シャーリー《ああ。》

キ84《それは分かった・・・でも、俺は一つだけ宣言しておくよ。》

キ84《俺達一般兵は非力で、大型ネウロイに太刀打ちできない。でもな、俺はお前の意思に関係なく、ウィッチを戦場で亡くしたくないんだ。》

キ84《家族を守りたいから?祖国の為?死んだら元も子も無いだろうが!だから俺は戦い続ける。お前らに投げ出したりしない。》

キ84《いつの日かウィッチが・・・お前が、戦場で戦わなくても良いようになるまでな。これが俺の意思だ。》

シャーリー《・・・。》

シャーリー《・・・ふふっ。やっぱりあんた・・・凄く格好いいよ。惚れちゃいそうな位にね。》

キ84《・・・茶化してるのか?》

シャーリー《いいや?・・・あー、やっぱりさっきのは訂正する。惚れたよ。あんたに。》

キ84《何を・・・》

シャーリー《だからさ、あたしにも意思があるんだ。そのあんたの願いが適うまで・・・あたしの相棒で居てくれ。》

キ84《聞いてなかったのか?俺はお前を死なせたく・・・》

シャーリー《死なせたくないなら、お前はあたしを死なせない筈だよな?》

キ84《だからって・・・》

シャーリー《おい、階級はあたしの方が上だぜ?上官に逆らう気かい?》

キ84《普段階級に拘らないお前がそこまで言うとは・・・意志は固いようだな。・・・負けたよ。》

シャーリー《へへ・・・じゃ、これからもよろしくね、相棒。》

キ84《言われなくても。》



一人の少女と一人の青年。片方は鉄の脚を履き、もう片方は鉄に乗る。
変わらないのは、両方とも空を舞い、愛する者を守るために戦ってるということ。
双方の意思は固く、相反している。

―でも、彼らならきっと上手くやって行ける。

―何故なら、彼らは相棒なのだから。



シャーリー「で、さっきの返事が欲しいんだが。」

キ84「何のことだ?」

シャーリー「あ、あたしは・・・あんたにほ、惚れてる。それをあんたに明かした。だ、だからあんたからの答えが欲しいんだ。」

キ84「うーん、そうだな・・・保留で良いか?」

シャーリー「ええっ!?何でだよ!?」

キ84「大事な奴を失うのは悲しいからな・・・そういう事にしておきたいんだよ。」

シャーリー「そ、そうか・・・。」ショボン


でも、分かっていた。もう"失ったら悲しい関係"になりかかっていると言う事が。
最終更新:2013年03月30日 23:28