【男子学生寮『大和』 俺自室】

俺の部屋は6畳一間の極普通の作りのワンルーム
窓は東側にあり、昇ってきた太陽の強烈な朝日がカーテンを閉めていてもなお瞼に突き刺さるはずだ
昨日の帰宅時間は3時過ぎ、それほど朝に強くないと自覚していた俺は転校早々の遅刻を覚悟していた・・・

だが、俺は今窓から庭を見下ろしている
時計を見れば時刻は朝7時前・・・4時間しか寝てないよ・・・実質4時間しか寝れてないよ・・・


ギシ・・・ギシ・・・


この想像を絶する程オンボロの男子学生寮は今にも倒壊してしまいそうな音を立てて軋んでいる

この音の・・・軋みの原因を作っている者は寮生共用の庭で朝も早くから鍛錬をしていた
彼が足を振るたびに、空気が揺れて寮が軋む
彼が腕を突き出すたびに窓が震えて寮が嫌な音をたてる


俺「アギトさんパねぇっす・・・」


実際そう思った、武道の心得などなにも無い俺だけど、きっと想像もつかない程の長い年月を鍛錬に費やしてきたのだと言う事は理解できた

素直に、美しいと思う・・・あれ?俺ってそっちの気あったっけ?


俺「でも、近所迷惑っす」 


最後に率直な感想を述べて、あと少しだけでも睡眠時間を稼ごうと2度寝の体制に入る
2度寝程の至福の時間を俺は他に知らない
人間の3大欲求の中では睡眠欲が1番強いものだと思っている俺のような人種の人には同意を得られると思う

俺「あと・・・40分は寝れるな・・・」

早速意識がまどろんできた・・・
この状態・・・最高・・・


『・・・ゃん・・・よぉ・・・・』


お隣から聞きたくない声が聞こえてくる
オイ!やめろ・・・


『・・・ちゃ・・・の・・・目・・・・し・・・・』


頼むから!朝っぱらからは勘弁してくれ!!


『マルちゃんの!!その目つきサイコォーだよぉぉお――!!!足で!!最後は足でぇぇええ!!』





拝啓母上殿、俺の頼りになる先輩達はみんなとても個性的です。







【朝 通学路】

アギトさんと卿先輩のおかげで遅刻せずに寮をでる事ができた、あぁでも感謝したくねぇ
昼飯は管理人の杉田さん謹製の手作りお弁当
おっさんの手作りお弁当、美味しいらしいよ

少し、朝からテンションが低いのはきっと寝不足のせいだと自分にいいきかせて通学路を行く
さすがは学園都市、とでも言うべきだろうか?道には学校へ向かう学生で溢れていた
朝練のために運動服を着ている者や、学生服の者、理系の学生だろうか?白衣で登校している人もいる
っつーか、白衣の子あの飯屋のウェイトレスじゃん、何気に憧れているのは内緒


ほんの少しだけテンションを取り戻した俺は、何度も繰り返した転校の挨拶を頭の中で再びシミュレートする
転校生的にはこれがガチで肝心、これで俺の印象が8割決まるといっても過言ではない
ネタに走り過ぎず、なおかつ暗い奴と思われない程度に爽やかな笑顔で自己紹介
よし!俺ならできる!!


そんな事を考えながら歩いていると、通りにある一軒家から昨日会ったばかりの見知った顔が2人仲良く出てくる

1人は口にサンドウィッチを咥えて靴を直している、白い髪に透き通るように白い肌
少し独特な喋り方が特徴的な美少女のエイラ

もう1人はきっちりと学生服を着こなした、酷く無愛想な男
こちらもまた肌が白くて綺麗だ
エイラが靴をきっちりと履き終わるまで彼女のカバンを代わりに持ってやっているようだ
さらに型には野球部がバットを持ち運ぶ時のような細長いバックを担いでいる
なにが入ってんだ?


エイラ「お!俺ジャン!!」

にへへ、と効果音がつきそうな笑顔で俺に微笑みかけて挨拶してくれるエイラ
サンドウィッチを飲み込み、靴もちゃんと履き終わったようで、側にいるヘイヘに礼を述べた後にカバンを手渡されていた

ヘイヘ「よう」


こちらはエイラとは対照的に、顔の筋肉をピクリとも動かさずに挨拶をしてくれた
多分、感情が表に出にくいタイプなんじゃないかと勝手に推測してみる
だって、まだ出会って1日目の俺にでも解かるほど、この無愛想な男はエイラに付きっきりなのだから
本当に冷たい人間ならさっきだってカバンを持ってやったりしないはずだと思うしね

エイラ「今から通学カ?丁度いいし一緒にいこーゼ」

そう述べて言ってエイラは歩きだす、もちろんヘイヘもエイラに追従し、俺も流れで一緒に歩く事になった
3人で5月の風が吹き抜ける気持ちよい道を並んで歩く


ヘイヘ「お前、クラスはもう決まってるのか?」

彼の方から話しかけてくれた、うん無愛想というか無表情なだけなのねやっぱ

俺「いや、まだだけど?」

なんでそんな事聞くの?って感じの俺の顔を見て察したエイラが続く

エイラ「いやな、私達の部活の1年はサーニャを除いてみんなクラス一緒なんダヨ」

ヘイヘ「まぁ・・・転校生だし、知ってる顔がいたほうが安心するかな?って思ってな・・・で、一緒のクラスなら・・・よかったなって・・・」

ヘイヘが少し恥ずかしそうに目線を斜めに伏せて喋る、あれ?なんかこの人可愛くね?


エイラ「こいつ、こんな面して意外と寂しがり屋なんダヨ、昨日だって「やったー、一年に男の仲間が増えるー!!」って寝る前に言ってたしナ」

エイラが悪戯っぽい表情でヘイヘをからかう、それを聞いたヘイヘは顔を赤くし

ヘイヘ「おいイッル!お前聞いてたのか!?」

エイラ「聞いてたって人聞きが悪いナ、聞こえたんダヨ」

ヘイヘ「相変わらず趣味が悪いな、盗み聞きなんてよ」

エイラ「お前だけには言われたくないね、この狩りマニア!」

ヘイヘ「黙れよ、占いマニア!」

この後も2人の罵り合いの応酬が小気味よく続いて行く
もっとも、軽いジャブの打ち合いだったのは最初だけで・・・


エイラ「うるさいよ、この童貞野郎!!」

ヘイヘ「うっせ!お前いつか絶対犯してやるからな!!」


酷く口汚い言葉へと変わっていた
それでも2人はどこか楽しそうで

「ははっ!」 「ふっ」

って感じで笑ってた



俺が呆然と2人の様子を眺めていたのに、2人も気付いたみたいだ

エイラ「なんだよ、ジロジロ見て」

エイラがこちらをジト目で見てくる

俺「いやー・・・仲良いなーって」

エイラ・ヘイヘ「「仲良くない!!」」

エイラ・ヘイヘ「「あ!」」

そしてお互いに目線を合わせた2人は

エイラ・ヘイヘ「「ふん!!」」

そう言ってそっぽを向き合ってしまった

俺「やっぱ仲良いじゃん、微笑ましいなお前達」






リア充死ね

おっと、本音が・・・




俺「で、昨日から気になってたんだけどさ、2人は同棲してんの?昨日も一緒の家に入っていったし、今日も一緒にでてきたし」

エイラ「ど!同棲って言うなヨ!!同居だ!ど・う・き・ょ!!」

ズイ!とエイラが顔を近づけながら俺に訂正を迫る
いや、それ何が違うんだよ・・・

バシ!っとエイラの頭を叩き、ヘイヘが補足する

ヘイヘ「イッル、俺が困ってる・・・俺達はイッルの姉、アウロラ姉の家に居候させてもらってるんだ」

エイラ「姉ちゃんはフミ高で教師しててさ、んでこいつは私達とは地元が一緒なんダヨ・・・まぁ、腐れ縁って奴ダナ」

ヘイヘ「家賃払うのも楽じゃないしな、まぁ甘えさせてもらってるって訳だ」


へぇ・・・可愛い幼馴染って都市伝説だと思ってた・・・
俺の幼馴染なんてアダ名が「サモハン・キンポー」だったのに


俺「それで仲良いんだな、納得」

エイラ・ヘイヘ「「だから!仲良くない!!」」

俺「もういいって、それ」





そんな微妙に不快なやり取りをしながら、辺りを見回してみれば
学校に向かう生徒の様子が俺の知っているモノとは違うのに気付く

俺「あれ・・・?」

みんな楽しそうなのだ、いやそれがおかしいとは言わないけどさ
でも、憂鬱そうな顔とか、ダルそうな顔してる奴が1人もいないんだ
どんな学校にだって、様々な理由で学校に通うのが嫌な奴がいるはずなのに・・・
みんな学校に通うのがそんなに楽しみなのだろうか?

俺「学生にとっての楽園・・・」

それが私立フミカネ高校のキャッチコピーだ、学校案内にも堂々と書いてある

俺「・・・マジっぽいな、これは」


エイラ「ん?どうした俺?」

ギャーギャーといまだに騒いでいたエイラが俺の様子に気付いたようだ

俺「いや、なんでもないよ」

エイラ「ならいいけどさ・・・で、ヘイヘはなんで今回の学内選抜大会でないんダヨ?」

ヘイヘ「去年のIH優勝のスタゲさんが出場しないみたいだからな、あの人が出ないなら俺の優勝に決まってる・・・結果が解かってる大会に出る意味はないさ」

エイラ「どんな自信だよ!!って突っ込みたいけど、お前ならマジで優勝しそうだから怖いよ・・・」

ヘイヘ「客観的に自分の実力を評価したまでだ」


俺「なんの話?学内選抜大会?」

エイラ「んあぁ、ごめん俺には解からない話だったナ、フミ高の生徒の数が異常なのは知ってるダロ?」

俺「うん」

約一万人だっけ?狂ってるよな

エイラ「もちろん部活の数も異常なわけダ、例えば野球部なんて第1から第9まであって対外試合に出れるのはそのうちの1つだけ・・・その代表を決めるのを校内選抜大会なんだよ」

俺「甲子園予選出るのにも予選があるのかよ・・・」

高校球児達の栄光への道は厳しいな

エイラ「んで、こいつはクレー射撃部の期待の新人でもあるんだよ特別課外活動部とかけもちでさ、ジュニアオリンピックでも金メダルとったんだからナ!!凄いダロー!!」

ヘイヘの事を親指で指さしながら、まるで自分の事かのように誇らしげに胸を張るエイラ

クレー射撃ね、肩に背負ってるのは銃だったのか
そういえば昨晩誰かが狙撃してたな、あれはヘイヘだったのか


俺「ヘイヘってスゲーんだな」

エイラ「だろ?もっと褒めロー」

だからなんでエイラが嬉しそうなんだよ




キーン コーン カーン コーン



俺「え!?」

エイラ「うげ!」

ヘイヘ「マジか!?」

どうやらお喋りに熱中しすぎたようで、周りにはすでに他の学生の姿は無い
朝のHR開始10分前を告げるベルが鳴り響いた

ヘイヘ「走れ!この距離ならまだ間に合う!!」

俺「今日はHR開始20分前には教務室きてくれって言われてたのに~!!」

エイラ「はっはっは!転校初日一発目から遅刻とか大物だな!お前」


なんて事いいながら走る
柔らかな朝の日差しの中を笑いながら走るのはなんだか爽やかな感じがした
うん、いいじゃん
青春っぽい





【私立フミカネ高校 正門前】

ようやく、角を曲がればすぐそこに校門って所まできた
しかし、急ぐ俺達を制止する声が

エイラ「ストップ!!校門の前にメンドイのが立ってる!!」

俺「なんでわかんだよ!?」

ヘイヘ「イッルは未来予知ができる、メンドイの・・・風紀委員か・・・持ち物チェックって所か?」

未来予知って・・・
まぁ昨日から散々凄いの見てるから今更驚きやしないけどな

エイラ「おそらくナ・・・回り道して別口から学校に侵入するカ?」

角から顔だけを少しだし、校門のほうを窺っていたヘイヘは、安堵した様子で、俺達にこう言った



ヘイヘ「いや・・・問題無さそうだ、校門から行こう」

エイラ「なんで!?捕まったら確実に遅刻ダゾ!」

ヘイヘ「だからメンドクない人なんだよ、今日の風紀委員」

そう言ってヘイヘが角を曲がって歩き出す

俺「あ、待って」

エイラ「おい!ヘイヘ!!」

ここで突っ立っているワケにもいかないので、彼の後をついて歩きだす
エイラの予知通り、校門前に立っていたのは風紀委員の腕章をした男
しかし、その男は俺達が通りすぎるのをどうでもよさそうに眺めているだけだった


あれ?昨日見た風紀委員の人達とはずいぶん印象が違うな・・・
なんかもっとこう、厳しい人達だと思ったんだけど
この人はなんかやる気無さそう、欠伸してるし



ヘイヘ「相変わらずですね、スタゲさん」

スタゲ「お!死神君じゃん、校内選抜大会がんばってね、俺は君に結構な額賭けてるんだからさ」

ヘイヘ「ご自分で出ればいいじゃないですか?あなたなら自分に賭けて優勝できるでしょうに」

少し、ムッとしたような表情でヘイヘが風紀委員に食ってかかる

スタゲ「買いかぶりすぎ、ジュニア五輪金メダリストの『白い死神』君には敵わないよ」

ヘイヘ「逃げるんですか?俺が挑発してるのは・・・解かりますよね?」


一瞬、スタゲと呼ばれた男の顔が変わる
さっきまで同じ人だとは思えない程に、ピリッとした空気に変わる
しかし、顔が変わったのも一瞬だけ
すぐにさっきまでのやる気無さげな表情へと戻る


スタゲ「煽るの・・・もっと練習したほうがいいな、死神君」

ヘイヘ「次までには練習しときます、あなたが本気になってくれるようにね」

スタゲ「そういう熱血なのは勘弁・・・俺はもう大人なんだからさ」

スタゲ「さぁもう行った行った!!これ以上ここにいると風紀委員権限でしょっぴいちまうぞ!!」



スタゲがシッシッ!と手を追い払うように振る
まだ納得していない表情のヘイヘがエイラに腕を引っ張られて歩き出す

エイラ「ほら!さっさと行くゾ!せっかく見逃してくれてるんダカラ!!」

ヘイヘ「あの人があんな風になってしまったのはなんか理由があるはずなんだ・・・それさえ解かれば・・・ハルトマン先輩に聞いてみるか・・・いや・・・」

ヘイヘがブツブツと独り言を言っている、スタゲさん・・・
あ!昨日のマルセイユとか言う美女とワケありの人か・・・

そのまま下駄箱に入って行く
エイラとヘイヘはそのまま教室へ、俺は教務室へと行くのでここでお別れ
どうやら逆方向のようだ、そのまま振り向かずに歩いていると
後ろから声がかかる


ヘイヘ「俺!!」


驚いて、振り向く


エイラ「一緒のクラスだといいナ!!」


2人が並んで微笑んでいる

俺は、幸せ者かもしれない 





【私立 フミカネ高校 教務室】

智子「いきなり遅刻とはやってくれるわね、転校生君」

穴吹智子と名乗ったこの黒く美しく長い髪を備えた勝ち気な顔立ちの美女は早速俺を正座させて説教をかます
この人が今日から俺が過ごす事になる普通科1-Bの担任らしい
チッ!厳しいのが担任かよ

智子「まぁ転校早々あんまり説教するのも悪いし、これくらいにしといてあげる」

ニシシ と漫画ならこういう効果音がつきそうな笑顔で教師が笑う
正直、とても綺麗で可愛いと思った
普通に生徒と教師の過ちがおきてしまいそうな程に

智子「じゃ、教室行きましょ、私に付いてきて」


先導する智子先生の後をついて歩く、道中では俺の中学時代の話や幼馴染のサモハン・キンポーの話などをしていた
意外とウケてびっくりした


ハルカ「智子先輩!その男誰ですか!!」

いきなり大きな声をかけられ驚く

智子「誰って・・・生徒だけど」

智子先生がジト目で声の主を見る
声の主は智子先生より身長がかなり低めに見えるから、150cmくらいかな?
短い髪をした気の弱そうな女性だった、おそらく教師

ハルカ「・・・ん?・・・あ!本当だ!制服着てる」

ズズイと、顔を近づけて俺の事を生徒か確認したこの女性が述べる

智子「あなたド近眼なんだから眼鏡かけなさいよ・・・で、用はなに?」


はぁ、と溜息を吐いて智子先生が訊ねる

ハルカ「あ、えっと授業に使う資料の事で、参考になりそうな本とか・・・」

智子「本だったら司書の流星先生に聞いてきたらいいわ、私より本に詳しいから」

ハルカ「え、あ!でも私は智子先輩に教えて欲しいんです!!」


智子「?」


少し困った顔で逡巡した智子先生だが

智子「わかったわ、じゃあ今日の放課後に。行くわよ俺君、これ以上遅れるとまずいわ」

そう言ってスタスタと行ってしまう智子先生
後ろから続こうとした俺が、ふと邪悪な気を感じて先程の女性の方を見ると


ハルカ「ニヤァ」


こんな感じで世にもおぞましい笑みを浮かべていた




【私立フミカネ高校 普通科教室棟3階 1-B】

ガララ!と音をたてて智子先生が教室に入っていく


智子「はーい!静かに!し・ず・か・に!!」


先生が叫んで、ようやくざわめいていた教室が静かになる
あ、もちろん俺は転校生の定番で廊下待機

智子「この騒ぎ様だし、おそらくもうみんな知ってると思うけど、今日から1-Bに新しい仲間が転校してきます!」

ざわざわと、再びざわめく教室
おおかた、俺が男か女かで盛り上がってしるのだろう
残念ながら俺は非常に凡庸な男だ、この盛り上がりがツライ


智子「じゃあ俺君!入ってきて!」


呼ばれて教室へと入る、教室中の視線が俺に集まる
やめろ、こんなに注目されるの初めてなんだから恥ずかしいだろ


智子「じゃあ、自己紹介よろしく」

俺「群馬高校から転校してきました、俺です。みなさん、よろしくお願いします」


キモくならない程度に、爽やかな笑顔を意識して無難な挨拶をする
よし!シミュレーション通りだ

少し余裕がでてきたので教室も見まわしてみる
1番後ろから2列目の窓側にヘイヘが肩ひじをついて俺に微笑みかけていたのを見つけた
その隣ではエイラもこれまた微笑んでいる、そしてエイラは親指で真ん中の列の1番後ろを指さす
その指の先には、昨晩俺の足を直してくれた宮藤が嬉しそうな顔をして座っていた

どうやら俺は相当なラッキーボーイのようだ


智子「じゃあ、俺君の席は窓側の1番後ろの隣!レジの隣ね、女子列だけどあそこしか空いてないの、ごめんなさい」

レジと呼ばれた生徒の隣の空き席まで歩き、腰を落とす
位置的にはかなりの好スポットだと思う
エイラの後ろ、ヘイヘの斜め後ろ、二つ隣には宮藤もいる

レジ「よ!転校生!」


隣のレジと呼ばれた少年に声をかけられる
一目で解かる、こいつは野球部だ間違いない
短い髪、5月だというのに日焼けした肌、そして何より野球部のエナメルバッグを持っているのが証拠だ

レジ「よろしくな!」

そう言って右手を差し出してくれる
握手か、きっとこの人は外見通り爽やかな人なんだろう

俺「よろしく!」

智子「はい!私語しない!転校生!!」

パァン!と音が鳴る
いつのまにか智子先生の手には竹刀が握られていた
やっぱり厳しい先生みたいだ





【私立フミカネ高校 普通科教室棟3階 1-B HR後】

芳佳「俺君も一緒のクラスとかすっごい偶然だね!!」

智子先生が教室から出て行くと同時に宮藤が俺の席へと駆け寄ってきた
昨晩と同様にとても人懐っこい笑顔を浮ばせながら

ヘイヘ「本当に凄い偶然だと、俺も思うよ」

左斜め前の席から、ヘイヘもその無愛想な顔にほんの少しだけ微笑みを浮かべている

レジ「え?転校生は宮藤とか、このギャルゲカップルと知り合いなの?」



エイラ「カ!カップ!カップル!!誰と!誰が!!」



俺の前の席のエイラが顔を真っ赤に染めながら、レジの方に振り向く
レジはと言えば、コンビニのレジ袋からウィダーを取り出して飲んでいる
きっと朝練で朝御飯食べる時間も無いんだな、野球部が大変なのはどこの学校も一緒だ

そして、ウィダーをまさに10秒で飲み干し、目線でエイラとヘイヘの2人を交互に見る

レジ「お前達以外にギャルゲっぽいカップルを俺は知らない」



エイラ「だ!誰が!!こんな奴ト!!」



なお顔が真っ赤なエイラは大声でまくしたてるが、自分の台詞がギャルゲの定番台詞なのに気付いているのだろうか?

ヘイヘ「俺とは部活関連でな、昨日知り合った」

そんなエイラを無視してヘイヘが会話を続ける

レジ「げ!特別課外活動部絡みかよ・・・いきなり厄介なのに絡まれて転校生も大変だな・・・」

俺を憐れんだ瞳で見つめるレジ
あぁそういえば昨日ミーナ部長が『うちの部は評判が良くない』って言ってたな
まさにその通りみたいだ



ヘイヘ「いや、俺は依頼主じゃなくて新入部員候補だ」

レジ「マジかよ・・・」



エイラ「無視すんナ―――――――――――――!!!!」



エイラの声は3階中に響いたらしい

そんなエイラの大声に俺は驚いたけど、クラスのみんなはエイラの方を見て笑っていた
あー、これが日常風景なんだ・・・と思い納得する
しかし、そんな中エイラの方を見ずに話しこんでいる2人を見つける

教室の一番後ろの廊下側、何かを熱中して書いている男
それを見つめていたのはいつの間にか、俺達の周りから移動していた宮藤だった

芳佳「で、できましか?例のモノ?」

童貞「あ、うん、書けてるよ。ちょっと待って」

なにやら怪しい会話をしている・・・

男はカバンから原稿用紙をしまうような封筒・・・
正式名称は解からないけど、ほら!あのノリスケがイササカ先生の原稿いれてるやつ!!
あれを取り出し宮藤に手渡す

宮藤「こ!これは!!・・・ほぅほぅ・・・なかなか・・・」

封筒から原稿を取り出し、中を見た宮藤はその顔にさきほどまでの純真な少女からを想像もできないほどの邪悪な笑みを浮かべている

俺「い、一体何が書いてあるんだ・・・」

エイラ「あー・・・多分知らない方が幸せダヨ・・・」





【放課後 私立フミカネ高校 部室棟3階 501特別課外活動部前】

今日の分の授業が終わり、俺は今1人でこの部室のドアの前に立っている
ヘイヘはクレー射撃部の方へ顔を出すといい、宮藤は保健委員の仕事があるらしい
エイラはサーニャを迎えに行った

で、なんで俺がここにいるかと言うと、入部の決意を伝えにきたのだ
アギトさんには、3日考える時間をやると言われたが、俺の覚悟はもう決まっている
俺はここでみんなと一緒に戦いたいんだ
アギトさんは俺に「自分の言葉で、俺の決意を聞かせろ」と言った
だから、伝えにきたんだ、俺の覚悟を!!


ドアに手をかけ、開く


俺「みなさ・・・・」

目を疑った



気合を入れて入ったその部屋では、2年生の先輩が3人いた
ハルトマン先輩とイェーガー先輩、それと試作先輩

で、何が問題だったかというと・・・

シャーリー「こら!おとなしく試作子になれ!!」

エーリカ「大丈夫!またちゃ~んと可愛くしてあげるからさ!」

試作「や!やめろ~!!」



試作先輩が、女2人に取り押さえられて、女装させられている
はっきりいって・・・超可愛い・・・
いやいや、俺にソッチの趣味は無いんだって!!

俺「あ・・・あ・・・」

俺が呆然と突っ立っていると、さすがに向こうも気付いたようで

エーリカ「あ、俺じゃん!どうした?入部しにきた?」

シャーリー「よーう!俺!学校どうだ~!?楽しいか~?」



試作「見られたァ―――――――ッ!!!!」



俺「すいませんマジスイマセン!!」

急いでドアをしめて逃げるように走りだす俺

試作「離せ!!追わせろ!!あいつの記憶を消させろ!!ラオホウまで連れて行く!!」

エーリカ「まだ化粧終わってないからダメ~」

シャーリー「いいじゃんよ、別に減るもんじゃないしさ」



試作「減るんだよォ――――!!」

そんな声が部室棟にこだましていた 



翌日、俺は部室へと行けなかった・・・ちょっと真剣に悩んでね・・・
あの部活に入っていいものかと・・・


まぁ結局考えるのがめんどくなって
3日目に俺の決意を伝えに行ったら、驚くほどあっさり入部できたんだけどね

こうして、俺は晴れて「501特別課外活動部」の一員となりましたとさ
最終更新:2013年03月30日 23:30