【学園都市 零時間 港湾地区】
ミーナさんとアギトさんと共に、先程の水柱が上がった位置まで駆ける
2人共、何がなんやらと言った面持ちだ
俺「固有魔法ってあんなんもあるんすか!?」
ミーナ「今までに聞いた事は無いわね」
アギト「常識は期待しないほうが身のためだ」
七不思議の虫男が言うと説得力が違いますね!!
確かに、学園都市に来てから「常識?あぁ、そんなモノ母親の胎内に置いてきたゼ」ってレベルで常識が無くなっていく
だがそれは俺の望んでいた事、俺の欲していたモノだった
さぁ、今回はどんな出来事が起こるのだろうか?
もう少しで埠頭…といった所で、世界が歪み始める
ミーナ「零時間が終わるわね…」
どうやら零時間は毎回同じ長さという訳ではなく、その時その時によって変わるものらしい
まぁ時計も全部止まってるんだから正確な時間なんて計れないんですけどね
世界が輝きと喧騒を取り戻す
怪異はこびる暴力の世界から、人間の世界へ
街が輝きを、喧騒を取り戻す
深夜0時の港湾地区は、2人だけの世界を作り出しているカップル達で溢れていた
周りを見渡せば人・人・人…まるで人がゴミのようだ!
ミーナ「ダメね…これではさっきの少年を特定できないわ」
ミーナさんの表情が曇る、アギトさんも苛立ちを隠せないようだ
アギト「ならばもうここに用は無い、学校へ戻るぞ」
ミーナ「そうね、この事は部室で話し合いましょう」
そう言って2人は学校へと歩を進める
だけど、俺は埠頭にいたあるカップルがどうにも気になっていたんだ
男の方は身長の低い赤毛の少年、女の方は栗毛をお下げにしている気弱そう美少女
なにが気になったかと言うと少女が肩に背負っていたバッグが、ヘイヘがライフルを入れて背負っていたモノに非常に似ていたからだった
俺「まさか…ね…」
【私立フミカネ高校 部室棟3階 501特別課外活動部室】
部室に集合しそれぞれのグループが巡回の報告をする
報告を聞いた所では、今晩の零時間は小・中合わせてかなりの数のネウロイが出現したらしく、風紀委員会も
アフリカの自警団もドンパチやっていたらしい
卿「でも酷い話だよね~大型の相手を俺達に丸投げするなんてさ」
坂本「そういうな。私達は別に共同戦線を張っているわけでもないのだからな」
シャーリー「大型を放っておけば被害が大きいのは目に見えているんだ
それでも私達に丸投げしたのは、それだけ私達の実力が買われてるって事じゃないか?」
シャーリー先輩が悪戯っぽい笑みを浮かべながら提案する
こういう表情がとても似合う人だよな
卿「うん、シャーリーちゃんが言うならそうかもね」
卿先輩も微笑み返す、この人普通にしてたら単なるイケメンなのに…
なんかこっちも2人の世界が凄いな
この部活に入って色々と人間関係が見えてきた気がする
そこいら中に甘酸っぱい空気が漂っていやがる
その中であぶれているのはサーニャちゃんと新参者の俺だけ
サーニャ「?」
いきなりサーニャちゃんの方を振り向いた俺に対し、戸惑いの表情を浮かべながらも微笑んでくれた彼女はとても可愛かった
一瞬マジで惚れかけて、義兄様がとても怖い人だった事を思い出して2秒で切り返す
ミーナ「俺さん?話聞いてるかしら?」
ニコリと微笑んでいるのに、底冷えするような表情でミーナさんが俺を呼ぶ
俺「あ、すいません」
まったく恐ろしいバ○ァ…
あれ?伏字になってる…
俺「…」
ミーナ「ニコッ」
モノローグに介入してきやがった
なんて人だ…
俺「もうしません」
ミーナ「それで話の続きですが、明日からはその少年の捜索をします」
ゲルト「水流操作の固有魔法とは珍しいな、もちろん発見しだい勧誘するのだろう?」
ミーナ「ええ、もちろん今までに例を聞かないタイプですしね」
ミーナ「では無職さんはいつも通り学外の方への情報収集をお願いします」
無職「解かりました」
なるほど、確かに人当たりがよくて良い意味でも悪い意味でも絡まれやすそうな無職さんは聞き込みとかめっちゃ向いてそうだよな
ミーナ「他のみなさんは、学内での捜索をお願いします
少年の特徴は低めの身長で童顔、赤髪です」
ヘイヘ「チビで童顔で赤髪…それってトビウオじゃないか?」
もさなじみ「知ってんのか?」
ヘイヘ「知ってるって程でもないですけど、有名人ですよ
中学の時に競泳で全中3連覇したとか?で
でも最近部活辞めたって聞きましたね、もしかしたら固有魔法の件が関係あるかもしれません」
アギト「なるほど、なら明日水泳部の方へ行ってみるか…卿、俺、付き合え」
アギトさんの提案に一瞬嫌な顔をした卿先輩だったが、何を思いついたのかすぐにノリ気になって快諾した、多分女子も練習場所が一緒なんだろうな
坂本「では私達はアタシ教諭の方に聞いてみよう、彼は全校の少年に詳しい」
エーリカ「ちょっと怖い話だけどね」
ミーナ「また風紀委員にその少年の事が知られれば厄介な事になるわ、事はできるだけ内密に行ってください」
その後にミーナさんが「解散」と告げて大型ネウロイとの決戦の夜は終わりを告げた
また新たなドラマを生み出して
【私立フミカネ高校 中央棟3階 風紀委員長執務室】
あまり物の無い質素な造りの部屋で、この部屋の主はデスクワークに取りかかっている
窓から差し込む月明かりに浮きあがっているのは端正な顔立ち
零時間が終わり、今日も激しい戦いを終えてこの街を守り抜いた仲間達を先に返した後のこの空間には彼の繰るペンの音とアントニオ・ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲第1番ホ長調「春」の華やかなヴァイオリンの音色だけが響いていた
ふと、彼のペンを動かす手が止まる
魔人「御苦労さま」
労いの言葉を贈った人物はいつの間にか、まるで初めからそこに存在していたのかのように彼の背後に立っていた
その姿はまさに時代錯誤の扶桑忍者そのもの
鋭い眼光を隠そうともせずに輝かせていた
忍者「これが今日の分だ」
そう言って忍者が魔人へと手渡したのはICレコーダー
受け取った魔人はすぐに再生を始める
《ミーナ「・・・・・風紀委員には内密に事を・・・・」》
どうやら録音されているのはつい先程の特別課外活動部での会話のようだ
魔人「つれないじゃないか、こんな良い話を昔の仲間に内緒にしておくなんてさ」
ククッと笑みを漏らす
忍者「これで契約料分は働いた」
短い言葉で、多少不機嫌であると言う事を言葉の端に滲ませて忍者が告げる
立ち去ろうとする忍者に背後から声がかかる
魔人「つまらない仕事だったか?」
忍者「それが契約なら内容は問わない」
そう言葉では言うが、表情が本心では無い事をモノ語る
そんな忍者を一瞥して魔人はなお笑みを浮かべながら続ける
魔人「契約を伸ばそう…そうだな、明日の零時間終了までだ
面白い事が起こる、ぜひ君の力を借りたい…天駆忍者の力をね」
忍者「それが契約ならば」
魔人「だったら頼もう、契約料は同じでいいかい?」
振り返りもせずに無言のまま忍者は月明かりの差し込まない影からその姿を消す
まるで煙のように
魔人「無言は肯定…か」
クラシックの音に混ざって、レコーダーから特別課外活動部の面々の騒々しくも楽しげな声が部屋に響いている
魔人「…いつもいつも、なぜお前達はそうも楽しそうでいられるんだ」
ミーナやアギト、もさなじみ、坂本といった3年生達も同じようにみんな笑っている
同じ苦しみと悲しみを味わったはずなのに
続いてレコーダーから聞こえてきたのは最愛の義妹の声
魔人「何を弱気になっている、俺は守るんだ
全てを犠牲にしてでも、サーニャを…」
ICレコーダーも、クラシックを奏でていたレコードも止まり、静寂に支配された空間でこの部屋の主は虚空を見つめながらすでに姿を消してしまった忍者に対し言葉を紡ぐ
魔人「守るべき者がいない忍とは、哀れなモノだな
“全てを懸けてでも守りたい”そんな人が君の前に現れる事を、俺は願うよ」
【帰り道】
五月の柔らかな夜風が通り過ぎる中、大和組の3人の先輩達と共に帰宅する
今回は特に絡まれる事も無く平穏に歩を進めていた
しかし今日は本当に盛りだくさんな一日だった
初めての大型ネウロイとの決戦
みんなで行った共同作戦
試作先輩の超火力
明らかに怪しいダルシム理事員
そして、水を操る謎の赤髪の少年…
童顔で…赤髪…
俺「あ―――――――――――――――ッ!!!!!」
もさなじみ「どうした?財布でも落としたか?」
卿「なになに?尻に異物突っ込まれたみたいな声だして」
アギト「騒々しいぞ」
いきなり奇声を上げた俺に対する反応はまさしく3者3様
しかし俺は冷静に突っ込む事もできずに気付いてしまった事実を先輩達に告げる
俺「き!今日いたんすよ、トビウオ君」
もさなじみ「はぁ?」
アギト「お前は何を言ってるんだ?」
卿「まぁまぁ、もさなじみちゃんもアギトちゃんも落ちついて
ここは俺ちゃんの話を詳しく聞こうよ」
卿先輩が俺に続けるように促してくれる
俺「いたんすよ!埠頭に!!零時間終わった後!!俺見ました!!」
もさなじみ「マジか!?こいつは偶然にしちゃできすぎじゃねぇか!?」
アギト「だがまだあくまで可能性の話だ」
卿「で、そこでトビウオ君は何してたの?」
俺「女の子と居ました、栗毛の美少女!だから覚えてたんですよ、羨ましいなーって」
卿「その女の子、巨乳だった?」
俺「あ、はい多分…服で隠そうとしてましたけどあれは間違いなく…」
卿「なるほどね…リーネちゃんか、噂は本当だったんだね」
先程の質問にどれほどの意味があったのかは解からないが、卿先輩は何か納得した様子だった
卿「アギトちゃん、その女の子の方から当たってみるのも悪くないかもよ?」
アギト「お、女?…そ、そ、それはお前に任せるッ!!!」
はい、なんとなく気付いてたけどアギトさんってやっぱ女性に弱いんすね
卿「オッケー、んじゃそっちに関しては俺に任せてよ」
アギト「ま、ま、任せたッ!!!!」
部の女の人達とは普通に喋ってるのに、変なの
そんな新たな発見をした所で我等がオンボロ寮へと到着する
もさなじみ「あ、最上も今帰り?」
入口でばったり会ったのは身長が低めの男性、制服の腕には風紀委員の腕章を巻いている
最上「うん今仕事終わったとこ、そっちは今日大変だったみたいだね
みたよ、“青い光”相変わらず馬鹿げた威力だなあれは」
3年生だろうか?しかしよく風紀委員の人に会うな
卿「まぁ試作ちゃんはエーリカちゃんと並ぶウチのエースだからね
ところで最上ちゃんに聞きたいんだけど、今日は港湾地区の海に潜った?」
最上「あぁ潜ったよ、一週間前くらいから港湾地区にあるクルーザーや貨物船が破壊される事件が度々起こってたからな
信じがたいが…恐らくネウロイの仕業だ」
聞いた事がある、ネウロイはなぜか海には出現しないと
もさなじみ「海中のネウロイ…か、今更驚きやしないが厄介だな
となると急いで噂の小僧見つけないとな」
アギト「…一週間前…か、関係があるのか?」
卿「クルーザーねぇ…リーネちゃんの家は多分持ってるよね…」 ブツブツ
最上「え?何どうしたの?」
卿「あ、いやこっちのお話、ありがとう、5月の海は寒いだろうけど頑張ってね」
最上「う、うん は…は…ハックショイ!!
確かに体冷えてる…早く風呂入って寝よ」
大きなくしゃみを放った最上さんが急いで自室へと駆けていった
そら寒いわな
もさなじみ「俺達ももう寝ようぜ、明日からまた忙しいし」
そう言ってもさなじみ先輩が、黙ったままアギトさんが部屋へろ戻る
2階への階段を登りながらながら、卿先輩の方を見ればいつになく真面目な思案顔
俺「どうしたんすか?」
卿「いや、なんでもないよ…おやすみ、俺ちゃん」
優しく微笑んでドアを開けて部屋に入る卿先輩
やはりその部屋からは芳しい栗の花の匂いが漂ってきた
【翌日 私立フミカネ高校 昼休み】
昨晩のミーティング通り、501特別課外活動部の面々は噂の少年の影を求めて広大な校舎を駆け巡っていた
【科学棟 4階 兵器開発学科 アタシ教諭研究室】
坂本「失礼します」
エーリカ「おっ邪魔しまぁーす」
世界各地から優秀な人材を集めているこの高校では最先端の科学を用いた新兵器の開発まで行っている
将来研究開発の道へと進みたい学生にとってはこの高校の工学部科学科は世界で唯一の事を学べる場所であった
その中でもアタシ博士の研究室は非常に学生に人気があり、昼休みの今でも多数の学生で溢れかえっていた
その中で目ざとく双子の妹の姿を見つけたエーリカはウルスラに駆けよっていく
坂本「おいハルトマン…しょうがない奴だ…」
坂本の言葉などまるで耳に入っていないようだ
呆れた様子の坂本は、学生の間で甲高い声を上げながら指導をしている目的の人物を見つけ歩み寄る
坂本「お取り込み中失礼します、少し窺いたい事あるのですがよろしいでしょうか?」
アタシ「あら珍しいじゃない美緒ちゃん、こんな所まで何の用かしら?」
美しく妖艶な笑みを浮かべる彼女?は白衣を身に纏い、坂本へと歓迎の意を示す
しかし、取り扱いが危険な物を扱っている生徒への注意の視線は外さぬまま
その辺りが優秀な研究者であり指導者である事の証明であろう
坂本「『トビウオ』という少年をご存じですか?」
アタシ「トビウオ君?そうねー、彼はアタシ的には期待の新人だったわね…
入学式から目を付けていたのに…
早々に彼女なんて作りやがってぇぇえええええ――――――ッ!!!!」
坂本「…」
『リネット・ビショップゥゥゥゥウウウウウウウ―――――――――ッ!!!!!』
と怨念の籠った叫びが響く研究室でエーリカは久々に会った双子の妹と談笑をしていた
エーリカ「えー、そいつバイト先まで押しかけてくるの?」
ウルスラ「…はい、いつもいつも高価なプレゼントを持ってきて、正直困ってます」
と言いつつも満更でもない様子の妹を柔らかな姉らしい眼で見つめていたエーリカは少し嬉しそうにしていた
エーリカ(昔から失恋多い子だったからなぁ~)
突然『ボン!!』と爆発音が研究室にあがる
スタゲ「ゲホ、ゲホ」
ウルスラ「やっぱり稼働効率が低下してでも、発熱・冷却は必要ですね
後はバッテリーの駆動時間のをどれだけ長くできるか…と言った所ですか?」
スタゲ「ゲホ!…内部温度が一定を超えると機能が停止しちまうのは問題だよ
あとちょっとだと思うんだけどな」
ウルスラと爆発を起こした本人であるスタゲが専門的な会話をするのを、エーリカはつまらなそうに聞いていた
エーリカ「つまんない」
スタゲ「ん?キューピッド・フラウじゃないか、どうしたこんな所まで」
エーリカ「ちょっとした野暮用でね、ところでこれ何?」
エーリカが先程からウルスラとスタゲが話題にあげている開発途中である物を指さし訪ねる
スタゲ「あぁ、こいつは『Nライフル』新しい俺の力さ」
エーリカ「何のための?」
エーリカの突っ込んだ質問に、少しバツの悪そうな表情のスタゲ
スタゲ「そりゃあネウロイを…
エーリカ「風紀委員の仕事サボりまくってるのに?
なんだかんだ言ってまだそうやって力求めてるのはハンナに少しでも近づこうとしてるからじゃないの?
だったら諦めたなんて言わないでよ、自分が星に届かないなんて…言わないでよ」
スタゲ「…」
そこまでエーリカがまくしたてた後に、昼休み終了を告げるチャイムが鳴る
果たしてスタゲは時間に救われたのか、それともその苦しみからの救済の機会を逃したのか…それは誰にも解からない
スタゲ「その昔、身の程を知らず太陽の高さに挑んだ英雄はその仮初の翼を焼かれて地に堕ちたよ
星の高さに挑む凡人は、どうなるんだろうな?」
【スポーツ課棟 プール】
俺「な!なんですでに風紀委員の人達がいるんすか!!??」
全世界から優秀な人材が集まるこの学園ではスポーツ(ry
と言うわけで、あまりにその膨大な敷地には各部活のための練習場は世界最高峰の環境が完備されていた
その中でもこの第一水泳部は、全中3連覇の期待の新人『トビウオ』を新入部員に迎え、まさにIH制覇への準備は万全といった様子であった、そう昨日までは
マグロ「だから練習の邪魔だと言っているではないか!!トビウオ君なら知らん!ここ一週間部活に顔だしていない!!」
水泳部の外部コーチであるマグロに詰め寄ってトビウオの行方を訪ねているのは腕に揃いの腕章を巻いた生徒達
アギト「どうやら、風紀委員もすでに彼の情報を掴んでいるようだな」
俺「どうするんですか?ここに居ても情報得られなそうですけど…」
アギト「そのようだな…とりあえず放課後に部室で報告だ、風紀委員まで動いたとなると事情が変わった」
俺「はい……あれ?卿先輩は?」
【女子更衣室】
ロッカーが両壁に立ち並ぶ男子禁制の神聖なる空間に侵入する男が1人
その男は昨晩の扶桑忍者も驚く程の忍び足でロッカーの上の角に置いてあったカバンを何食わぬ顔で回収する
卿「まだそんな事しているのかい?」
突如、ロッカーが開いた、その中には1人の少年が収まっている
特別課外活動部の2年生の彼だ
盗撮「なんか文句があるのか?元リーダー」
卿「オナニーってのは自己完結するものさ、君のやり方は女の子を傷つける」
女子更衣室のロッカーから男性が現れるという、非常事態すら彼等にとってはなんの問題も無いようだ
盗撮「だが俺のやり方を“紳士達”は支持した…そしてあんたはリーダーの座を追われた…違うか?」
卿「それでも俺は認めない、女の子を泣かせる様なオナニーは認めちゃいけない」
盗撮「やっぱり俺とあんたじゃ相容れないな…」
そう言い捨て、盗撮は周囲を窺いながら更衣室から出て行ってしまった
1人、なおロッカーに入ったまま残された卿は呟く
卿「いったいいつから道を違えてしまったんだろうね…
俺は…俺の好きな女の子達の涙を見るわけにはいかないんだ」
昼休みの終了を告げるチャイムが響く中、彼の手は股間に伸びていた
【放課後 部室棟3階 特別課外活動部室】
ミーナ「風紀委員が…これは厄介な事になったわね」
部室に集ったメンバー達から報告を聞いたミーナは悪化した状況に溜息をつく
ヘイヘ「トビウオは一週間前から学校にも来ていないようですね」
ゲルト「一週間前か…先輩方から最上先輩から聞いた話では港湾地区でネウロイの仕業だと思われる事件が起き始めたのも一週間前…」
エイラ「偶然だとは考えにくいナ」
卿「後は関連ありそうな話題が一つ、トビウオ君の彼女「リネット・ビショップ」の件
どうも例のネウロイに破壊されたクルーザーってのはリーネちゃんの家の所有物みたいなの
そうだよね、無職ちゃん?」
無職「うん、今日一日歩き回って聞いたけど間違いないみたいだよ…それでクルーザーが破壊されたのが丁度…」
アギト「一週間前…と言う事か」
無職「当たり」
一日歩き回ったと言う言葉に結構な人数が憐れみを感じながらも、無職の行動力とその顔の広さを再確認する
もさなじみ「こりゃもう決まりだな」
試作「リネットのクルーザーを破壊された仕返しって所か…」
ミーナ「俺さんの目撃情報によれば、リネットさんもライフルを携帯していたのではないか?という疑いもあるわ」
ヘイヘ「彼女は中学時代にクレー射撃の選手でしたよ、気の弱い性格なので本番で上手に実力を発揮できていませんでしたが…
優秀な選手でした」
シャーリー「カップル2人でネウロイにリベンジってのもスゲー話だな」
卿「で、そのリーネちゃんだけど、実はもうここに呼んでありまーす」
「「「「「「「「「「え!!??」」」」」」」」」」
全員の声がハモリ、目が点になる
卿「いやだって、昨日の段階でもうリーネちゃんが事情に絡んでるの解かってたし…」
シャーリー「その前になんで卿はその子の事知ってるんだ?」
卿「ちょっと昔にね」
シャーリー「お前の昔がいつも私は気になって仕方がないよ…」
コンコンと、部室のドアがノックされる
ミーナ「どうぞ」
短く、許可するミーナ
恐る恐るゆっくりと開いたドアの先にいたのは、先程から話題にあがっていた少女だった
リーネ「はい、おおむね皆さんの推測通りです
私達が出会ったのもその“零時間”だったんです」
彼女が語る話を部員達はみな黙って聞く
リーネ「私達があの化け物と今まで出会わなかったのは本当に奇跡でした
毎日毎日、私達は零時間で逢瀬を重ねていました
そんなある日…一週間前に私のクルーザーは、そのネウロイに破壊されました」
リーネ「家族との思い出がたくさんあった物だったので、私…とても取り乱してしまって…
それでトビウオ君が「リーネを泣かせる奴は俺が許さない」って」
リーネ「それから学校も休んで毎日ネウロイと戦っているんです、昨日は彼を手伝おうと思ってライフルを持ちだしていったんですけど、昨日は現れませんでした」
リーネ「どうか!!どうか彼を助けてあげてください!!あれは、あの敵は1人じゃ絶対に倒せません!!
なんにも関係無いみなさんにこんな事頼むのもおかしいですけど、お願いします!!
他に頼れる人がいないんです!!このままじゃ…きっと彼…」
その大きな瞳にうっすらと涙を浮かべて懇願する彼女の手を、優しく包み込む者が1人
芳佳「大丈夫、絶対助けるから」
リーネ「え!?」
試作「ここまで聞いて見捨てたら寝覚め悪すぎるしな」
ゲルト「元より彼には仲間になってもらおうと思っていたんだ、死なれてはかなわん」
エーリカ「彼女のために頑張るなんてカッコイーじゃん」
ミーナ「決まりね、では今夜は新種のネウロイとの決戦よ!みんな、覚悟はいいわね」
部員全員の顔を確認するかのように見まわすミーナ
部員達の表情はみな覚悟を終え、みな不敵に微笑んでいた
リーネ「みな…さん…」
ミーナ「もちろん、リーネさんも一緒に戦えるわよね?」
リーネ「はい!私も戦います!!泣いてなんていられません!!」
芳佳「よかった、やっと前向いてくれた」
己の手を優しく握ってくれていた少女の言葉にリーネは驚く
確かにリーネはこの一週間程俯いてばかりだった
ここの人達が話を聞いてくれて、やっと希望が見えた、前を見る事ができた
リーネ「ありがとう…ございます」
どことなく、部員達はみんな照れているようだった
最終更新:2013年03月30日 23:31