チリ車の俺 第二話「F.N.G.」前編
俺「本日付けで第32統合戦闘飛行隊陸戦部隊に配属になりました、俺中尉であります!」
そう言うと俺は背筋を伸ばし踵を揃えて肘を貼り出しつつ右の手を額の前に掲げた。
扶桑陸軍式の敬礼だ。
加東「あー、楽にしていいわよ。
ここじゃ規律にうるさい佐官はいないわ」
俺「は、はぁ・・・」
ここは31st JFS「
アフリカ」前線基地、カイロのすぐ側だ。
スフィンクス作戦発動を目前として、全アフリカ中の戦力を集結させている。
そして、今俺は31st JFS隊長である加東圭子大尉の執務テント、という名の書類倉庫で着任報告中だ。
加東「それで、あなたウィッチなのよね・・・?」
俺「はい、魔法適性を持っていますし使い魔とも契約してます。
ストライカーも問題なく使えますよ」
加東「珍しいわねぇ」
俺「はっ、恐らく幼少期の魔力への露出の影響だろうと言われました」
加東「ふぅん・・・」
ペラッ
圭子が手元の資料を捲る。
加東「原隊が―――戦車第二師団戦車第11連隊?」
俺「はっ、数カ月間でしたが第11連隊所属でありました」
加東(また今度は硬っ苦しいのよこしたわねぇ・・・)
第11連隊といえば扶桑海事変でウィッチの支援無しに押し寄せるネウロイ達を撃退した伝説の戦車隊だった。
部隊番号から十と一を取って、通称「士魂部隊」。
扶桑陸軍戦車隊最先鋭と言われる部隊だった。
ペラッ
加東「それから陸上装甲歩兵として第4陸軍技術研究所に志願・・・」
俺「自分は珍しい男のウィッチだったので、ある程度自由に志願することが可能でした」
加東「それで研究所に志願したってことね。
分かったわ、それで今回の派遣はどういった目的なのかしら?」
俺「えー、新型歩行脚の熱帯地試験ということになっておりますが・・・」
加東「が・・・?」
俺「なんというか厄介払いのようなもので。
開発は終わってるんですが、不採用の線が濃くて・・・」
加東「それは大変だったわねぇ・・・とにかく歓迎するわ。
第31統合戦闘飛行隊『アフリカ』へようこそ」
俺「はっ、よろしくお願いします!」
加東「だからここでは固くならなくても大丈夫よ」
また律儀に気を付けから敬礼する俺に少々呆れながら圭子が言った。
加東「それで、この隊でのあなたの扱いだけども・・・
戦闘部隊としてはマイルス少佐指揮下の統合陸戦隊の配属になるわ」
俺「(マイルズ・・・まさか、な)わかりました。」
加東「ただ所属としては扶桑陸軍アフリカ派遣独立飛行中隊―――通称砂隊と第31統合戦闘飛行隊の所属、ということになるわ。
その場合は私が直属の上官になるわね」
俺「はっ、了解しました」
加東「それは良かったわ。それじゃぁ行きましょうか」
俺「どちらへですか?」
加東「あなたの宿舎と格納庫に案内するわ」
そう言って圭子は俺を連れて外に出た。
―――格納庫
加東「ここが格納庫ね。と言っても仮設なのだけれど」
氷野「ああ、加東大尉。お疲れ様です」
加東「お疲れ様、氷野曹長。
俺中尉、こちら整備班長の氷野曹長。
氷野曹長、新任の俺中尉よ」
俺「よろしくお願いします」
こういう先任の下士官はそこいらのペーペー尉官よりよっぽど発言力が大きい。
そこで俺は先に敬礼して挨拶をした。
氷野もそれに返礼する。
氷野「いえ、こちらこそ。
―――それにしても男性のウィッチですか。
始めて見ました」
加東「なんだ、知ってたの?
先に言ってくれれば良かったのに。焦ったわよ」
氷野「はぁ・・・すみません。なにぶん大尉が急いでたもんで。
それはそうと、俺中尉。ユニットを拝見しましたが―――
一体ありゃなんです?
あんなユニットは見たことがありません」
俺「先行試作型ですからね。
チリ車、正式採用されれば五式中歩行脚になります」
氷野「しかし・・・ここでは整備は出来ないのでは?」
俺「基本的な車体の整備は俺がやります。
魔道エンジンはご覧になりましたか?」
氷野「まだです」
俺「じゃぁちょうどいい。こちらへ」
そう言って俺はチリの収納ユニットに歩み寄り、整備用のハッチを開けた。
氷野「これは・・・マ9型ですか?」
俺「ええ、そうです。
航空機用をデチューンして約550呪力に押さえて搭載してあります」
氷野「これならカールスラントのBMW VI型からパーツの流用も効きますな」
俺「ええ、なのでエンジン部分の整備はお願いできますか?」
氷野「任せてください。それで、武装ですが―――」
俺「KwK 36 L/56、VI号試作重歩行脚
ティーガーと同型の8.8cm対装甲砲です。
元々は四式高射砲改76mm砲を積む予定だったんですが、火力強化に九九式八糎高射砲を戦車砲化して携行する計画が出ましてね。
そこからさらにアフリカに派遣されるって言う事で供与品のコイツを持たされまして・・・」
加東「ええと・・・お二人さん?」
氷野「ふむ・・・しかも半自動装填装置と固定弾倉付きですか。
装弾数は?」
俺「今のところ固定弾倉内に5発と薬室に1発です」
~10分後~
氷野「・・・これはいろいろといじれそうですな。
カールスラント式の航空用対装甲75mm砲が12発装填できますからね。
コイツもちょいと拡張すれば10発は・・・いや、マガジン装填式にも・・・・」
加東「おーい?」
俺「ええ、ユニット自体に搭載量に余裕がありますからね。
弾薬の増加は可能でしょう。弾倉交換式になれば継戦時間も跳ね上がりますし。
それにですね、多分イジリ方次第では完全自動装填に出来るとおもうんですよ」
氷野「この半自動装填式だと排莢は自動ですが装填は手動ですからね・・・
それに砲身も削れますね。厚すぎてこれじゃ重い。
マズルブレーキもカールスラント式に換装すれば駐退距離も抑えられて作動がより確実に・・・」
俺「確かに砲身を削るのもいいですが、やや長距離での弾道がブレるんじゃ・・・」
氷野「いや、カールスラントの鉄鋼ならかなり削っても十分な強度を確保できます」
俺「なるほど・・・それなら・・・」
加東「もしも~し!」
氷野「更にですね、なんとか砲身内部のライフリングを切り直してより安定化を・・・」
~30分後~
氷野「―――て、所っすかね改良箇所は」
俺「それじゃぁよろしく御願いします、曹長」
加東「終わったの・・・?」
俺「どうもお待たせしました」
加東「よく喋るわねぇ・・・」
俺「こういうの好きなもんで」
加東「そうなの?
まぁ氷野曹長も楽しそうだったものねぇ」
俺「研究所に配属してもらったのもこれがやりたかったからなんですよ」
加東「変な趣味ねぇ。
それじゃ、次行きましょうか。
次はあなたの寝床ね」
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最終更新:2013年03月31日 01:06