芳佳「当たって!」
リーネ「えいっ!」
芳佳とリーネが連携攻撃を仕掛ける。
だが、その攻撃はあっさりと避けられた。
エイラ「ほいっと。へへん、楽勝楽勝」
いかにも余裕そうに攻撃を避けるエイラ。
しかし、その視覚外から更なる攻撃が加えられる。
俺「隙あり!」
エイラ「そんなもの無いんダナ」
完全に死角からの攻撃だったが、まるで見えていたかのように俺の攻撃は回避された。
坂本「ふむ、今の攻撃はなかなかよかったが……。エイラには通じんか」
バルクホルン「エイラの固有魔法にかかれば、どんな攻撃も当たらないからな」
ルッキーニ「あたしもあれ苦手〜」
基地の滑走路上で双眼鏡を片手に
模擬戦の様子を見守っているのは坂本達だ。
今日の訓練は新人達の強化を中心としているため、地上にいるメンバーは皆完全に観戦側に回っている。
シャーリー「それにしても……いくらエイラだって3人がかりじゃきついんじゃないか?」
坂本「そうでもないさ。見てみろ」
坂本が視線で示す先、そこでは俺達が再度攻撃を仕掛けようとしているところだった。
エイラの後ろを取り、逃げるエイラを追いかけながら3人同時に攻撃していく。
だが、
俺「当たらない……! 未来予知ってやつか!」
芳佳「もっと近づかなきゃ……!」
ここからでは埒が明かないと判断した芳佳が距離を詰めていく。
しかし、それでもエイラに攻撃が届くことはない。
それに業を煮やした芳佳は、さらに接近しようと速度を上げていった。
俺「待て! 迂闊だ!」
俺の忠告は一足遅かった。
芳佳の攻撃の途切れたタイミングを見計らい、エイラが急減速する。
芳佳「ふぇ……?」
気付いた時には、既にエイラは芳佳のすぐ後ろに位置していた。
エイラ「貰ったー!」
芳佳「きゃあっ!」
ペイント弾が降り注ぎ、芳佳のストライカーユニットが鮮やかな色に染まる。
芳佳を撃墜後、エイラは素早く向きを変え、一気に反撃へと転じてきた。
俺「くっ!」
リーネ「え? あっ……」
咄嗟に俺は回避行動をとったが、リーネは迎撃すべきか回避すべきかを迷って行動が遅れた。
その一瞬を見逃すはずもなく、エイラがすれ違い様にリーネにペイント弾を叩き込んでいく。
わずか数瞬の出来事ではあったが、二人が撃墜された瞬間は地上の坂本達からも確認されていた。
坂本「よし、撃墜された二人はこっちに降りてこい」
芳佳&リーネ『は〜い……』
バルクホルン「流石はエイラだな。わずかな隙を狙って二人を連続で撃墜してしまうとは」
バルクホルン達は再び空を見上げた。
上空では俺がエイラに追いかけ回されているところだ。
坂本「俺のやつ、中々粘るな」
ルッキーニ「俺ー! がんばれー!」
シャーリー「おお、今のは危なかったな」
エイラが放った攻撃を俺がギリギリのところで回避すると、俺がすぐさま反撃に転じる。
だが、俺の反撃はエイラにあっさりと回避された。
そして、攻撃を回避したエイラが上へと上昇していくのを見た俺は、それに追随するように上昇していく。
芳佳「はわ〜……」
リーネ「すごい……」
坂本「俺は咄嗟の判断力に優れているな。攻撃の気配を感じとるとすぐ回避機動をとる。だが……」
バルクホルン「……ああ。俺のやつ、そろそろ限界のようだ」
上空の俺は相変わらずエイラに攻められっぱなしだったが、追いかけ回されたことによる疲労からか、先程と違って回避機動にキレがない。
程無くして俺は全身にペイント弾を浴びせられ、撃墜と相成った。
エイラ「ま、ざっとこんなもんなんダナ」
俺「はぁ……はぁ……」
意気揚々とエイラが滑走路に降りて来る後ろから、撃墜された俺が疲れた様子で降りてくる。
バルクホルン「俺、おつか──」
ペリーヌ「俺さん、お疲れさまですわ」
バルクホルンが話しかけようとしたところ、先ほどまではいなかったはずのペリーヌが割り込んできた。
どこからともなくタオルを取り出し、俺のペイント弾で汚れた顔を拭き始める。
ペリーヌ「ああもう、顔にまでかかって……。ちょっと、エイラさん。ここまですることはないんじゃなくて?」
エイラ「うるさいなぁ。俺がちょこまか逃げ回るんだから仕方ないだろ〜」
実際、エイラは芳佳やリーネにはうまくストライカーユニットに被弾させている。
と言っても、それはただ単に二人の隙が多かったから当てやすかったということなのだが。
ペリーヌ「固有魔法があるじゃありませんの!」
エイラ「私のはどっちかっていうと回避が得意なんダ!」
坂本「二人とも、そこまでだ。俺、宮藤、リーネの三人は後でブリーフィングルームに来い。模擬戦の反省会をやるぞ」
三人『了解しました』
ペリーヌとエイラの言い争いを収め、坂本が基地へと戻っていく。
坂本に続いて他のメンバーが歩き始めたが、バルクホルンは立ち止まったまま、中々動こうとしなかった。
バルクホルン(もやもやする……)
バルクホルンが視線を俺とその隣を歩くペリーヌへ向ける。
最近、あの二人の距離がどんどん近くなっていっている気がする。
それが妙に気になって仕方がない。
以前、一度だけその事をエーリカに相談したことがあった。
エーリカによると、
エーリカ『それは恋だね、間違いないよ。でも、まさかあのトゥルーデがねぇ〜』
と、ニヤニヤしながら言われたものだ。
だが、
バルクホルン「そんなわけがない……」
自分だって恋が何なのかくらい知っている。
昔読んだ小説によれば、恋とはこの世で最も甘美なものであり、恋に落ちればそれだけで世界が薔薇色に見えるほどの幸福に包まれる、とかなんとか言っていた。
しかし今自分が抱いているのは、もやもやとしたわけの分からない苛立ちなのだ。
だから、この気持ちが恋であるはずがない。
バルクホルン(でも……)
だとしたら、この気持ちは何なのだろう。
バルクホルンが疲れたようにため息を吐いた瞬間、敵襲を告げるサイレンが響き渡った。
●
芳佳「……ふぁ〜、このお茶おいし〜」
リーネ「本当? 良かった。この茶葉は実家から送られてきたものなの」
俺「ああ、それは鶏肉を焼く時に──」
サーニャ「すぅ……すぅ……」
俺達は談話室でまったりとアフタヌーン・ティーを楽しんでいた。
敵が来ているのに何故こんなにくつろいでいるかというと、今回俺達は基地待機を命じられているからだ。
メンバーは訓練を終えたばかりの4人の他に、夜勤明けで仮眠をとっていたサーニャ、指揮を任されたバルクホルンの2人が基地に残っている。
バルクホルン「………………」
俺「大尉? どうかしたんですか?」
バルクホルン「いや、なんでもない」
そうは言われたが、俺はバルクホルンの様子が少し変な感じがしてならなかった。
何となくそわそわしているし、たまに自分と目が合うと顔を逸らすし。
俺(待機中なのにリラックスしすぎで怒ってるとか? でも一緒にサンドウィッチ作ってくれたし……)
俺が頭を捻っていると、突然の悪寒が体を貫いた。
反射的にその悪寒が走った方向──窓の外を振り向く。
芳佳「俺さん?」
俺「……敵だ」
そう言った直後、俺は内心で『何故そう言いきれる?』と自問した。
考えてみたが答えは分からない。ただ、理由の無い確信だけが心の中に浮かんでいる。
俺「……サーニャ、固有魔法であっちの方を探ってみてくれ」
サーニャ「ふあ……あっちですか……?」
半分寝ていたサーニャを起こし、敵を感じた方向を指し示す。
悪いとは思ったが、これで自分の勘が正しいかどうかはっきりするはずだ。
サーニャはとろんとした目のまま魔導針を発現させ、俺の示した方向を探ってみた。
サーニャ「……何かいます。みんなが戦っている空域のはずれを迂回して……こっちに向かってきてます!」
敵を感知し、完全に眠気の覚めたサーニャが声を張り上げる。
その声を聞くや否や、俺は談話室を飛び出していた。
リーネ「俺さん!?」
バルクホルン「私達も行くぞ!」
バルクホルン達は走る俺を追ってハンガーへ向かい、発進準備を進めながら各所へ連絡し状況を確認する。
すると、状況は俺が感知した通りのものだった。
バルクホルン(何故敵を察知できた……? 俺の固有魔法なのか?)
隣で発進準備を進める俺を横目で伺う。
真剣そのものといった表情を見て、『疑問に思うのは後回しだ』と自分に言い聞かせた。
バルクホルン「……よし、発進準備完了。全機出撃!」
空に舞い上がり、フォーメーションを組む。
バルクホルンと芳佳、エイラとサーニャ、俺とリーネでロッテを作り、敵のいる空域へと向かう。
敵のいる空域へ向かっている最中、インカムから坂本の声が響いてきた。
坂本『と……か……こちら坂本。聞こえているか、バルクホルン』
バルクホルン「少佐か!?」
坂本『そちらの状況は聞いている。こちらの方はもう少しかかりそうだ。こちらが片付き次第そちらに向かうから、無理だけはするなよ』
バルクホルン「了解した。皆、聞こえていたな? 少佐達が到着するまでやつをここに足止めするぞ」
芳佳「……バルクホルンさん! 敵が見えてきました!」
芳佳が指差した先には、まっすぐに基地へ進んでくるネウロイの姿があった。
リーネ「なんだか変わった形ですね……」
リーネの言う通り、そのネウロイはまるで二つのピラミッドの底辺同士をくっつけたような正八面体の形状をしていた。
大きさも本物と同様にかなり大きく、その巨体が迫ってくる光景は中々の迫力がある。
バルクホルン「大型か……。まずは私とエイラの隊が仕掛ける。俺とリーネは後方から──」
俺「大尉! あれを!」
俺が指差した先では、敵ネウロイが奇妙な動きを見せていた。
敵の各頂点部分が分離し始めたのだ。
計六機の小型のピラミッドに似た形状をした子機は、本体を守るように周囲に展開した。
サーニャ「何なの……?」
エイラ「ッ! 来た!」
本体の周囲にいた子機が弾かれたようにこちらへ向かってきた。
バルクホルン「気を付けろ!」
だが、こちらの周囲を取り囲むように展開した子機は何もせず、代わりに本体から幾筋ものビームが放たれた。
しかし、敵との距離はまだまだ遠い。
全員が余裕を持って回避運動をとった。
俺「……ッ!? ダメだ! 避けろ!」
異変に気付いた俺が声を上げる。
俺が叫んだ直後、リーネとサーニャのストライカーユニットが同時に被弾していた。
最終更新:2014年10月22日 23:45