1945年8月中旬 ヴェネツィア上空のネウロイが完全消滅してから1ヶ月半経過後
ノイエ・カールスラント 技術省所属研究所
第501統合戦闘航空団『ストライクウィッチーズ』が解散してから約半月、俺はノイエ・カールスラントから帰国命令が下り
元の所属していたカールスラント技術省にウルスラと共に戻っていた
俺「うー…ウーシュ様…そろそろお恵みを…」
ウルスラ「駄目です、次はこの問題を…」
俺はトゥルーデと本当の結婚をしてから半月
その間に俺にはカールスラントのお偉いさんから様々な命令を受けた
俺「そろそろシャバの空気を吸いたいです先生…」
ウルスラ「そういえば今日で拘束は終わりでしたっけか」
俺「そのはず…」
まずその一つが、先の単独での極秘裏な扶桑艦大和の護衛の件
守秘義務があったのにも関わらずロマーニャの新聞にデカデカと俺の姿が
取り上げられておりその守秘義務が守られなかった為に刑罰としてノイエ・カールスラントに帰国後
すぐさま研究所に軟禁状態にするという命令が下っていた
ウルスラ「私はこのままでも良いのですが」
俺「やめて!ここ(研究所)は葉巻が吸えないから結構きついノ…」
ウルスラ「やめないんですか?」
俺「ん~…本数は減らしたんだけどねぇ、やっぱりたまに吸いたくなるんだ」
ウルスラ「そう聞くと何か贅沢な食べ物に聞こえますね」
俺「実際は苦いんだけどな~、苦いけど旨い」
ウルスラ「非合理的ですね…あ、そこ間違ってますよ?」
俺「あ…またかよ…この問題難しくないか…」
ウルスラ「仕官試験なんてそういう物ですよ、全て終わらないと帰れませんよ?」
ノイエ・カールスラントに帰国しての二つ目の命令は『士官試験』を受けよとの事だった
俺「あ゛~…なんでこんな事しなくちゃならないんだよ~…」
ウルスラ「不貞腐れないでください、俺『大尉』?」
俺「俺はまだ中尉だ…はぁ~…軍のメンツがあるのは分かるけど勝手に大尉昇進を押し付ける代わりに試験を受けろってのもなぁ」
ウルスラ「試験を受けていないのに中尉なのが異例なんですよ」
俺の階級は中尉だが仕官試験や教育は全く受けていなかった
だが『パ・ド・カレー撤退戦』の時に戦時中行方不明扱いで軍曹から准尉へ特進、しかも俺が生きてることが発覚した為
しばらくノイエ・カールスラントに身を隠してもらう代わりに特務少尉に昇進
その後は
ガリアへの臨時航空部隊への応援に行って再び撃墜…そこで中尉になっており、俺の昇進は全て『特進』だった
そしてこの間の『ダイナモ作戦』のおり、守秘義務どころか新聞に取り上げられロマーニャでは英雄扱い
ばれてしまっては仕方が無いとばかりに俺に仕官試験を受けよとの辞令とカールスラントのお偉いさんの推薦状が届いたのだ
仕官試験合格後は即大尉に昇進するって命令に近い内容と一緒に…流石にこれ以上の異例の特進は無しみたいだ
ウルスラ「この問題が終わったら今日は終わりにしましょう、バルクホルンさんが待ってますよ?」
俺「ん?トゥルーデはたしかカールスラントの前線に居るんじゃ…」
ウルスラ「休暇を取ってこちらに来ているみたいです、一昨日お会いしました 今日も俺さんの借家に居るみたいですよ」
俺「ナンダッテ…そう言われちゃ早く帰らないと、カールスラントの規律の問題をクリアしなければ…!」
◆
ノイエ・カールスラント領内 技術省所属開発室付近 俺の家
俺「ただいまー」
バルクホルン「おかえり、遅かったな俺」
俺の家は開発室付近に隣接しており、501のように基地内にあるのではなく基地外の本当の借家で家というよりは
アパートに近い物であり部屋の数も少ない
開発室にも寝泊りをする場所はあるが俺はウィッチという事で扱いに今まで困っていたが既婚者になったことで
基地外の借家に住む許可が出ている
俺「悪い悪い、士官試験の問題が結構難しくてな…」
バルクホルン「全く、そこまで難しい問題があったか?カールスラント軍人として過ごしていれば当たり前な…」
俺「ま、まぁトゥルーデやミーナ中佐の偉大さが今になって身に沁みてるよ」
ウルスラ「私も士官試験はクリアしてるんですよ? あ、お邪魔します」
バルクホルン「来たかウルスラ、上がってくれ」
ウルスラ「はい、それとバルクホルンさんこれを…」
俺と共にこの家に来たウルスラは茶色い紙袋のような物をトゥルーデに手渡す
その中身を確認するため紙袋に手を入れて本を2冊取り出しトゥルーデは少しだけ笑顔を見せる
バルクホルン「ありがとう、助かるよ しかし二つも…ん?」
ウルスラ「バルクホルンさんの頼みですから、それともう一つは…」
目的の本の他に重なっていたもう一つの本の表紙を確認したトゥルーデは顔を赤くして手を横に振る
バルクホルン「い!?い、言わんで良い! しかしこれは…いや…有難く頂こう」
それだけ言ってトゥルーデは部屋の奥へと向かっていく
俺「何を渡したんだ?」
ウルスラ「『カールスラント式! 手料理百貨』ですよ?」
俺「もう一つもか?」
ウルスラ「それは秘密です」
俺「ぇー…」
ウルスラ(『カールスラント式! 子育て百貨』もずいぶん前に頼まれてましたが言わないほうが良いですよね)
◆
家というより部屋といって良いほどの部屋の中に入ると良い臭いが俺の鼻をくすぐられ
誘われるようにキッチンへ足を向ける
俺「おお~、なんか美味しそうな臭いがするぞ?」
シャーリー「お帰り~、もうちょっとで完成みたいだからちょっと待ってろよ~」
俺「シャーリー!?どうしてここへ…確かリベリオンに戻ったんじゃ」
シャーリー「ああ、戻ったよ。そこでバルクホルンから俺が昇進したって手紙を貰ってな 休暇も貰ったし祝いに来たんだよ
本当は501の皆にも来て欲しかったけど私以外皆遠いからなー」
俺「ここ(ノイエ・カールスラント)はサウスリベリオンだからな~仕方ないって…それとシャーリー、俺まだ中尉なんだけど…」
シャーリー「細かい事言うなって! 仕官試験って言っても推薦状があるから形式的なもんなんだろ?」
俺「流石に酷い状態だったら推薦状あっても落とされると思うが…」
シャーリー「なーに、ウルスラと一緒に勉強してれば大丈夫だって ほら、リビングで待ってなって」
俺「りょーかい、ワインでも準備して待ってるよ」
俺はシャーリーにキッチンから追い出され、キッチンの隣の部屋であるリビングで料理にも使う為に取っていたワインを取り出して
四角いテーブルに準備して、先に座っていたウルスラの右隣の椅子に座る
ウルスラ「バルクホルンさんもイエーガー大尉も俺さんが今日軟禁が解かれると聞いてやってきたみたいですね」
俺「ありがたい事だけど、大丈夫なのかねぇ…どっちもエースなんだから軍を放って置いて」
ウルスラ「そこは大丈夫だと思いますよ?」
俺「どうしてだ?」
ウルスラ「俺さんが軟禁されている間にカールスラント奪還に向けて大規模な作戦が現在準備されていますので前線問わずウィッチの
皆さんは交代で休暇を与えられているらしいです」
俺「…ついにカールスラント奪還か」
ウルスラ「そうですね、カールスラントの西のガリア、南のヴェネツィアを開放しましたからね 攻め入る準備が整ってきたと言えます」
俺(それでも北にある故郷、カイザーベルクは…遠いな)
ウルスラ「…カールスラントを奪還すればカイザーベルクも開放されますから大丈夫ですよ?」
俺「うぉ!?心が読まれた…」
行き成り心を見透かされたような台詞に俺は驚いたがウルスラはくすくすと笑いながら続ける
ウルスラ「そんな暗い顔をしていたら誰でも解ります、今日は俺さんの昇進祝いなんですし笑っていたほうが良いですよ」
俺「笑うって言ってもなぁ…」
バルクホルン「今日位なら腑抜けた笑顔でも構わんぞ俺?」
俺「ぬぉお…複雑な気分になる台詞だなトゥルーデ」
シャーリー「あっはっはっは、難しい事を考えないで笑えって事なんだよ なあバルクホルン?」
バルクホルン「そ、そうとも言うな」
リベリオンの赤い軍服を着たシャーリーと緑の服を着て、首にはチェーンに通された螺旋模様の入ったシルバーリングと薬指に結婚指輪をつけたトゥルーデが
大量のフライドポテトと豚肉を長時間香辛料と共に煮込んだアイスバインを持ってキッチンから出てきて料理をテーブルに並べていく
俺「おお~、旨そうだな…アイスバインなんて久し振りに食べるかも」
バルクホルン「そうなのか?」
俺「普段は軍から支給される豆とか米だったし、501では扶桑料理とかが主だったからなぁ」
シャーリー「これ作ってるところみたけど結構時間かかるみたいだしな~」
ウルスラ「アイスバインはカールスラントでの家庭料理ですが下準備に時間がかかりますからね」
俺「そうなのか…旨い物ほど手が掛かる物なんだなぁ トゥルーデの愛情を感じるよ」
俺の言葉にトゥルーデは少しだけ頬を赤らめて取り皿を配り始める
バルクホルン「そういう事は食べてから言うんだな、勿論愛情も…」///
シャーリー「おいおい、惚気るなら二人だけの時にしてくれよ~ こっちまで恥ずかしくなるぜ」
俺「あ、ああ…悪い悪い、それじゃあワインを空けてっと…」
バルクホルン「あ、おい俺、私達は未成年だz」
シャーリー「硬い事言うなって、今日は特別なんだから無礼講と行こうぜ~」
ウルスラ「私もその意見に賛成ですね」
バルクホルン「う、ウルスラまでそう言うのなら仕方ないな…今日だけだからな!」
シャーリー「はいよ、それじゃあかんぱ~い!」
◆
俺の昇進祝いの乾杯から数時間後
シャーリー「…む~ん」zzz
バルクホルン「シャーリー…床で寝るな服が汚れるぞ?」
シャーリー「や~ら~…」
ワインを3本も空けた席の中でシャーリーはすっかり出来上がっており、床に寝転がって今にも寝そうな状態だった
バルクホルンとウルスラも酒が入ってる為か顔は赤いが量は少なかった為か一応自我を保っている
俺「昨日もこんな調子だったのか?」
バルクホルン「いや、酒が入ったからだろう 昨日はまともだったのに…」
シャーリー「ん~ん…」zzz
甘ったるい声を上げながらシャーリーはすっかり眠ってしまった
俺「今日はこんな所で良いだろ?寝かせよう」
バルクホルン「しょうがない奴だな…」
ウルスラ「それでは私はこれで失礼しますね」
バルクホルン「泊まっていかないのか?」
ウルスラ「これ以上人が増えると俺さんの寝る所が無くなっちゃいそうですし」
バルクホルン「しかしだな…もう遅いから泊まっていっても」
ウルスラ「大丈夫ですよ、開発省はすぐ近くですから それでは…」
俺「送っていこうか?」
ウルスラ「え…でも…」
バルクホルン「そうしてもらえ、いくらウィッチと言えど夜道は危険だ」
ウルスラ「…わかりました、俺さんお願いします」
俺「了解だ、まかせとけ~」
◆
ノイエカールスラント 夜
俺とウルスラは並んで電灯が並んでいる開発省までの夜道を歩いていた
ウルスラ「俺さんは幸せですね」
俺「ん?何がだ?」
ウルスラ「昇進をあんなに祝ってくれる人が居て…」
俺「確かに幸せだな、でもウーシュにも居るだろ?両親とかエーリカとか…」
ウルスラ「俺さんも喜びますか?」
俺「勿論だ、
ずっと一緒に…数年も一緒に過ごした仲間の昇進を喜べないはずがないだろ?」
ウルスラ「そうですか…」
ウルスラはそう答えて少しだけ二人は沈黙する
俺「ありがとうな、ウーシュ」
ウルスラ「何がですか?」
俺「仕官試験の勉強見てもらったり、撃墜された時に世話してもらったり…その、今まで色々と」
ウルスラ「その時私に出来る事をしたまでですよ」
俺「それでも助かったし、今の俺があるのはウーシュのお陰だ」
ウルスラ「その言葉、私にとっても言えるんですよ? 今こうやって話したり過ごしているのも俺さんのお陰なんですよ」
俺「そ、そうなのか…?」
ウルスラ「ええ、昔からは考えられない位の成長ですよ、褒めてくれますか?」
俺「お、おおう…偉いぞウーシュ」スッ…
俺の顔を眼鏡越しに真っ直ぐ見つめるウルスラの瞳に催促されるように俺の右手が癖のようにウルスラの頭に伸びそうになる
だが俺は彼女の頭を今まで通り撫でて良いのか迷い、右手が少しだけ上がった所でピクッっと体を震わせて止まる
ウルスラ「…」
俺の右手が止まった事を確認したのかウルスラは寂しそうな目になり俺と視線を外す
その表情を見て、止まっていた手を再び上げて彼女の頭に手を載せて優しく撫でる
ウルスラ「あ…」
俺「…悪い、ちょっと迷っちまった」ナデナデ
ウルスラ「撫でなくても、良いんですよ…?」
俺「俺がそうしたいからしたんだ」
ポンポンと優しく彼女の頭に手のひらを乗せて『終わり』の合図を送り、手を離すと
ウルスラの瞳は寂しそうなものからとても嬉しそうな瞳に変わり
彼女は
初めて俺に涙を見せた時のようにはにかんだ笑顔を見せた
ウルスラ「俺さん?」
俺「なんだ?おかわり要求なら高くつく…」
ウルスラ「婚約者は一人ですけど愛人なら大丈夫らしいですよ」
俺「ぶっ!?あ、愛人!?そんな言葉どこから…」
ウルスラ「はい、この『カールスラント式!愛人百貨』に載って…」
軍服のポケットから取り出した、今までの『カールスラント式!』より小さく軍服のポケットに収まるほどの大きさの
本を取り出して俺に見せる
俺はその表紙を見ながらため息をつく
俺「なぁ…前々から思ってたけどそのカールスラント式ってやっぱ怪し…ん?」
『カールスラント式!愛人百貨』の表紙には著者の名前が書かれているがその横に見知った名前がある
著者:ユウメイ・ジーン 編集:ウルスラ・ハルトマン
俺「…これウーシュが編集したの?」
ウルスラ「はい、最近になって本を書く側にもなったので息抜きの過程で編集させて頂きました とても勉強になりますね」
俺「そ、そうか…そうか…」
ウルスラ「子供もまだのようですし、私で良ければ…」
俺「ストップ、ストップーーー!話が飛躍してますウルスラ先生!確かに子供はまだだけど…」
結婚という最大の幸せを手にした俺は幸運のストックを全て使ってしまったのかトゥルーデの間には未だ子供は授からなかった
結ばれてから一ヶ月とあればまだまだなのだろうが、最初に彼女の月ものが来た時は真剣に打ち明けられたっけ…
子作りをしたのに子供を授かれなかったと本気で落ち込んでた、いつも厳格なトゥルーデとは違ってなお愛おしいかったけど
流石に意地悪するのは気が引けた為、人間は元々妊娠しにくい体質なんだという事、子作りは定期的にしないといけない事を教えると
彼女はすぐに元気になったが、これは神様が与えてくれたチャンスなんだといって結局それ以降トゥルーデが20歳になるまで
彼女を求めるのは禁止になってしまった
ウルスラ「私では不満ですか?」
俺「う…不満という事じゃなくてだな…」
下から顔を覗かせるのは反則だ…
ウルスラ「私ならいつでも…いざとなれば寝ている間に全て終わりますよ?」
そう言われ、俺は瞬間的に頭にお腹をぽっこり膨らませてほっこりと笑いながらそのお腹を撫でているウルスラのイメージを思い浮かべ
その父親は…と考え始めた辺りから首を左右に振って考えを強制中断させる
俺「怖い事言わないでくれ…はぁ…」
俺はトゥルーデとの間に子供が出来る頃には一悶着あるかもしれないと
今までの経験で予感しながらため息を付いた
ウルスラ「ふふふ…半分冗談ですよ、でも」
俺「半分って…」
ウルスラは少しだけ俺の前に出て俺へ振り向く
ウルスラ「私はまだ俺さんの事、好きですよ?これから5年、10年先も」
俺「ん…むぅ…面と向かって言われると何も言い返せないな…」
ウルスラ「こう言って拒絶しない俺さんも好きなんだと思います、いつか聞かせてください」
俺「何をだ?」
ウルスラ「誰かを好きだったからではなくて、純粋に私を俺さんがどう思ってるのか…私がお墓に入る前までにで良いですので」
俺「気の長い話だな」
ウルスラ「それまで、今まで通りに接してくださいね? この辺で良いですので 見送りありがとうござました」
俺が慌てふためいている間に気がついたら開発省の門のすぐ近く、衛兵が見えるところまで来ていた
俺「ああ、了解だ 気をつけて帰るんだぞ?」
その言葉にウルスラは肯定して俺に背中を向けて歩いていく
もし何かが違っていれば俺はウルスラとどうなっていただろう
俺は彼女の願いに対して少しだけそう考えて、小さくなってゆく軍服の上から白衣を着た女神様の背中を見つめる
俺「嫌いな訳ないだろ…ウーシュ、ごめんな、そしてありがとう」
何年もの間一緒に居た相棒の背中に聞こえないほど小さな声で俺は感謝し、開発省を後にして自宅へ向かった
◆
俺の自宅 夜
俺「ただいまーっと」
バルクホルン「おかえり、俺」
俺「待ってたのか…もう遅いから寝ても良かったのに」
バルクホルン「家族を待つのは当然だろう?」
俺「家族…か」
6年以上前に突然この世界に飛ばされ、突然として失った家族
元の世界に帰る方法も無く、飛ばされたどり着いた場所は既にネウロイの勢力圏内
生まれ育った故郷にも帰れなくなった俺に、家族と呼びかけてくれるトゥルーデに
心を温められすぎて少しにやけそうになる頬を頑張って引き締め、リビングに入って備え付けの椅子に座る
俺「家族といえば、クリスはどうだった?」
バルクホルン「クリスか?ここに来る前に面会してきたよ、入院しているというのに俺の事ばかり
聞いてくるくらい元気だったよ」
俺「ノイエ・カールスラントの病院に移っても元気にしてそうで何よりだ」
バルクホルン「そろそろ退院出来るかもしれないな」
俺「その時までにカールスラントを奪還出来ると良いんだけどな」
バルクホルン「するさ、今だってカールスラント奪還の為に各国のウィッチが集まってきている
その準備も今進んでいるんだからな」
俺「大規模奪還作戦か…無理はするなよトゥルーデ?」
バルクホルン「それは私の台詞だな、俺は一人で無茶をするから困る」
俺「おいおい…あの時の約束忘れたのか?」
バルクホルン「あの時?」
俺「ヴェネツィア上空でさ、もう無理はしないって言っただろ? それに俺は大尉に昇進したら
ロータリーストライカーの研究が待ってるんだ」
バルクホルン「『MRE-A01』か…」
俺「あれ、知ってたんだ ロータリーストライカーの名称」
バルクホルン「ウルスラから聞いたんだ、正式名称が決まったってな」
俺がウーシュの助けを借りつつ作り上げてしまったロータリーストライカー
最初こそジェットが作れるんだからロータリーエンジンも作れるんじゃねって簡単な発想から始めたあのストライカーも
にわかの俺にはハードルが高かったが、俺を飛ばせるように…出力が高い事の優位性やエンジンの簡易性による小型化によって
余剰スペースに魔法力蓄積炉の搭載を可能にした事、その魔法力蓄積炉のお陰でストライカーオペレーションシステムが出力を減少
させずに動作させる事に成功した事…
色んな偶然が重なって出来上がったあのストライカーもヴェネツィア上空でその使命を全うし、回収された後で
正式名称『MRE-A01』という名前が付けられた
研究所に扶桑海軍から強い要望で実験機を試験飛行したいとの申し出があったから俺も大尉昇進後は
ウルスラと同じく研究所に後継機を開発する為に引きこもる事になりそうだ…
俺「壊れてから名称を決められてもなぁ…」
バルクホルン「す、すまん…私が撃墜されたばっかりに」
俺「いや、良いんだよ トゥルーデを助けてくれたのもあのストライカーだしさ」
バルクホルン「そうか、ありがとう」
俺「どういたしまして…ってそれを俺が言えるのかはわからないけどw」
バルクホルン「お前の作ったストライカーだ、誇って良いぞ さて、私もそろそろ寝よう」
俺「一緒に寝るか?」
バルクホルン「だめだ、俺と一緒に寝ると何をされるかわからん」
俺「夫婦なのに警戒されてる…俺は悲しいぜ…」
机にうな垂れるようにしてへこんだというアピールをする俺にトゥルーデは慌てて手を横に振る
バルクホルン「い、一緒に寝たくないという意味ではない!シャーリーも居る…だが」
俺「ん?」
バルクホルン「子を授かるのに抵抗があるわけでは無いんだ、ただ待ってほしい」
俺「分かってるよ、カールスラント奪還が目の前なんだ」
バルクホルン「ああ、我がままを言ってすまない…もしカイザーベルクに戻ったら
父上と母上に報告しよう 結婚した事、クリスの事、そして出来れば新しい家族の事を
報告できるように」
トゥルーデの言葉とその真剣な顔に俺は顔から火が吹き出そうなほど赤面する
恥ずかしい訳じゃなく嬉しすぎて…
それを言葉で表しきれなくて椅子から立ち上がり座っていたトゥルーデの背後に回って
優しく彼女を両腕に包み込む
俺「そうだな、それまで無茶しないでやっていこう…トゥルーデ?」
バルクホルン「なんだ?」
俺「愛してるぞ」
バルクホルン「…私も愛してるぞ、俺 んっ…」
6年前にこの世界に前触れなく飛ばされ、家族も友人もそして故郷も何もかも失った人生で最大の不幸
けどそれは、こうしてトゥルーデが、少し恥ずかしそう振り向く最愛の嫁が出来た幸福の始まりだったのかも知れない
俺は多分これからも元の世界に帰る事は出来ないだろう、これだけ長い間この世界に居れば踏ん切りがつく…
それにこの世界に俺の家族が出来た
だから…いや、とっくに決まっていたのかもしれない
これから何が起きようとこの笑顔を守る為に、
家族を守る為にこの世界で生き抜こうと改めて心に誓い、トゥルーデと優しく口付けを交わした
fin
最終更新:2013年01月28日 14:52