異世界のウィッチその5
――――――それから数週間の間の出来事――――――
新たに手に入れた紫色の魔力。他の11人の、青色のとは違う色。
この力で飛ぶと、凄く気分がいい。ストライカーもご機嫌なようで、俺の思うとおりに動いてくれる。
どんな攻撃でも避けれる気がするし、どんなネウロイでも倒すことができる気がしていた。
俺は一度もシールドを張っていなかった(つーか張れない)し、やってきたネウロイを全て一撃で仕留めていた。
 ・・・このことについて、坂本から忠告を受けた。
『お前のその力が強いのは確かだが、思い上がりはいかん。独りで突っ走ってはならんぞ』とのことだ。
 ・・・この言葉を無視して戦ってたら、一度撃墜されそうになった。(その時はハルトマンに助けられた)
このことを帰還後報告したら、当然怒られた。・・・それからは、自重するようにした。


―――――――ある日

ミーナ「ネウロイ出現!」

坂本「小型機が12体だ」

ミーナ「俺さん、宮藤さん、リーネさん、ペリーヌさんが出撃します。他は待機」

『了解!』

いつものメンバーでの出撃。坂本に怒られて以来、俺は出撃時は普通の魔力でストライカーを起動させるようにした。
戦闘中の場合によって切り替えるようにしたほうが安全だからな。どうしても避けきれない攻撃もあるし。
――――――
キュイイィィィィイィン・・・

ネウロイ発見。というわけで、いつもの戦闘になるはずだった。だが・・・

キュイイィィィィン・・・

宮藤「・・・このネウロイ、変じゃない?」ガガガガガ

ヒュンッ

リーネ「そうだね・・・」ズギュンッ

ヒュンッ

ペリーヌ「全然攻撃してきませんわ・・・弾を避けるだけ」

俺「素早いな・・・」

キュイイイィィィン・・・

先程から、目の前のネウロイが攻撃をしてこないのだ。コアをこちらに向けて、観察するようにしているだけ。

俺「・・・」

なんだか、嫌な感じだ。まるで心を見透かされたような・・・

俺「っ!」フオオオオォォォォン

この不快感をどうにかするには、こいつらをとっととぶち壊さなくちゃいけない。
というわけで、俺は例の紫色の魔力を発現させ、腰の刀を抜いた。

宮藤「とにかく、なんとかしなきゃ!」

リーネ「そうだね!」

俺「・・・行くぞ!」

そう俺が言った瞬間、

キュイイィィィィン・・・バラッ

ペリーヌ「・・・!?」

ヒュンッ

ネウロイ達が、俺達の目の前に4体だけを残し、猛スピードで俺達の横を通り抜けた。

宮藤「え!?」

ペリーヌ「な、なんですの!?」

通り抜けた8体は、物凄い速度で俺達の後方に・・・

リーネ「ネウロイが、基地に向かってる・・・!?」

俺「んだと!?」

このネウロイ共、攻撃もしないで何を考えてる・・・?


―――――――
『ミーナ中佐!』

ミーナ「リーネさん、どうしました!?」

『8体のネウロイが基地に向かっていきました!』

ミーナ「・・・こちらもネウロイを確認。散開していますね。了解しました、こちらで迎撃します」

『は、はい!それで、あの・・・そのネウロイが、ちょっと変なんです』

ミーナ「変・・・?どういうことかしら」

『全然攻撃してこないで、避けるだけで、それ以外だと私達のことをじぃっと見つめるような行動しかしないんです』

ミーナ「・・・?攻撃してこない?」

『はい!・・・あれ?』

ミーナ「どうしました?」

『8体の動きが止まりました・・・』

ミーナ「え?」

『・・・8体がこちらに戻ってきます』

『リーネちゃん!4体が来た方向に逃げてっちゃった!』

『どういうことですの!?』

ミーナ「・・・」


――――――――
なんか知らないが、4体は逃げていっちまった。ならば、残りの8体は倒さなくては。
幸い、4体と同じ方向へ逃げてきているので、迎え撃てる。俺は刀を構え、

俺「くらえっ!」

突進しながら突いたのだが・・・

ヒュンッ

俺「!?」スカッ

宮藤「避けた!?」

ペリーヌ「本当に、何がしたいんですのこのネウロイ達は!?」

リーネ「逃がしません!」ズギュウウゥゥゥン

ヒュンッ

リーネ「・・・外した」

俺「・・・」

キュイイィィィィン・・・

宮藤「凄い速さ・・・もう見えない」

あの速度じゃ、紫色の魔力の機動力でも追いつけなそうだ。シャーリーなら追いつけたか?


――――――――
坂本「思ったより接近を許してしまったようだな」

ミーナ「ええ。・・・ネウロイが滞空していた場所から判断すると、訓練をしていた坂本少佐のところへ一体、
外で虫取りをしていたルッキーニさんとシャーリーさんのところへ二体、
サーニャさんとエイラさんのところへ二体、バルクホルン大尉とハルトマン中尉のところへ二体、
基地の少し上空へ一体。私の担当ってところかしら?ウィッチ達を見ていたと思われます」

シャーリー「一体につき一人、か」

バルクホルン「・・・見ていた?」

エーリカ「なーんか変だね・・・ネウロイって洗脳とかできるって聞いたんだけど、それもなかったんでしょ?」

ミーナ「ええ。・・・何もしてこないからこそ、なんだか不気味ね」


――――――俺の部屋
俺「・・・」

結局、あのネウロイは俺達を観察するだけで、他は何もしてこなかった。
 ・・・ま、それだけなら別にいいがな。いくらでも観察するがいいさ。俺に危害さえ加えないならな。

コンコン
またノックだ。最近多いな。・・・相手は決まっている。

俺「サーニャか?」

サーニャ「はい」

 ・・・やっぱり。


――――――
ガチャ
俺「どうした?」

サーニャ「・・・俺さん、お話しませんか?」

最近こればっかりだ。・・・まあ、悪い気はしないんだけど。

俺「ああ、いいぞ」

当然、こう答える。

サーニャ「良かった」ニコ

 ・・・サーニャの笑顔を見ると、なんだか癒される。元の世界に、帰らなくてもいいような気さえしてくる。
そう思っていると、

「サーニャ~、何処ダ~?」

という声が聞こえてきた。その声はすぐ近くまできているようだ。

エイラ「ウ~・・・何処ダヨサーny・・・ア!」

見つかった。

サーニャ「どうしたの、エイラ」

エイラ「ど、どうしたジャネーヨ!サーニャ、最近変ダゾ!」

 ・・・そうなのか?

サーニャ「何処が?」

エイラ「自分で気付いてナイノカ!?そ、その・・・最近・・・」

サーニャ「・・・」

エイラ「その、そ、ソイツにばっかり構って・・・わ、私には」

サーニャ「何言ってるの?」

エイラ「エ」

サーニャ「エイラは変に思うのかも知れないけど・・・私にとっては別に変わったことじゃないよ」

エイラ「そ、ソンナ・・・」

俺「・・・」

なんかギスギスしてんな。

サーニャ「行きましょう、俺さん」ニコ

俺「あ、ああ・・・」

なんか、ヤッべえ予感がする。うわぁ、すげー視線感じる・・・俺、大丈夫なのかな・・・
 ・・・後ろから声が聞こえた。

エイラ「ウウウ・・・あんのヤロー!私からサーニャをとりヤガッテ!」

前言撤回。全然ヤバくないな。あいつ、怒ったようなこと言っても全然怖くない。
何かするとしてもそんな大したことはしてこないだろう。

 ・・・それにしても。
初対面のときは、俺はサーニャのことを「エイラとイチャイチャしてる根暗な奴」って印象を持ってたけど・・・
親しくなってみると、そんなことないってことがわかった。
人間、第一印象は大事だけどそれが全てじゃないんだよな。・・・そりゃそうか。もしそうだったら、俺は今頃こうしていられないだろうな。


―――――――――
サーニャ「俺さんの世界にも・・・魔女っているんですか?」

俺「いや、いないな。残念ながら」

サーニャ「そうですか・・・」

俺「創作の中だったらしょっちゅう出てくるんだけどな」

サーニャ「どんなですか?」

俺「お姫様に毒リンゴ食わせたり、ホウキに乗って空飛んだり」

サーニャ「やっぱりホウキですか」

俺「ああ。・・・流石に脚にはめる機械をつけて妙な生命体と戦う魔女はいなかったけどな」

サーニャ「・・・でしょうね」クス


俺「この世界の魔女って、お前達みたいに戦ってるやつ以外にもいるのか?」

サーニャ「はい、もちろん。・・・芳佳ちゃんのお家だと、治癒魔法を使って診療所を開いてるそうです」

俺「そんなのあるのかよ」

サーニャ「だそうですよ。・・・大抵の魔女は二十歳を超えると魔力を失うそうですが、そうじゃない人もいるみたいです」

俺「へぇ・・・ん?そういう魔女もストライカー履いてるのか?」

サーニャ「いえ、ストライカーはそんなに古くからあるものじゃないです。・・・昔の魔女は、ホウキで飛んでいたそうですよ」

俺「・・・デッキブラシは?」

サーニャ「それは聞いたことないですけど・・・昔、近所のホウキに乗った魔女のおばあちゃんによく遊んでもらってましたよ」

俺「へえ・・・」


――――――
とまあ、俺とサーニャの会話はこんな感じである。
サーニャはこの世界のことを、俺は俺の元いた世界のことを話す。
 ・・・この世界は俺の世界と似通ってはいるけど、やっぱり魔力の有無が大きな違いなんだな。
 ・・・俺の世界って、つまんないとこだな、と思った。

 ・・・サーニャに、尋ねてみた。

俺「なあ、サーニャ」

サーニャ「はい?」

俺「俺の話、楽しいか?」

サーニャ「?・・・はい。興味深いです」

俺「・・・興味深い、ね。なあサーニャ。俺の元いた世界って、未来なんだよ」

サーニャ「・・・はい」

俺「こんなにも似通ってる世界なんだから、この世界もそのうちあれくらいできるだろう。
それにさらに魔力ってものがあるんだから・・・もっと、凄い、理解できない文明ができるんだろうな」

サーニャ「・・・俺さん」

俺「なんだ?」

サーニャ「俺さんの世界は、・・・魔力がないからこそできたものがあったと思いますよ」

 ・・・

俺「・・・無いからこそ?」

サーニャ「はい。・・・私達の世界には、魔力という便利なものがあります。
 ・・・あるんだから、きっと魔力に頼ってしまいます」

俺「・・・」

サーニャ「それに頼ってしまうから、この世界にはできないものがあるかもしれないって、俺さんと話してて思いました」

俺「・・・」

サーニャ「・・・俺さん。『自分の世界はつまらない』って、思ったんじゃないでしょうか?」

俺ってそんなにわかりやすいのか?

サーニャ「そんなことありません。私から見れば、やっぱり凄い世界だと思います」

俺「・・・そう、か」

サーニャ「・・・俺さん。あなた自身があなたの世界を貶すようなことは、思っちゃダメです」

俺「・・・」

サーニャ「・・・元の世界のご両親が、悲しみますよ?」

俺「・・・気をつける」

サーニャ「はい」ニコ


―――――――俺の部屋
俺「・・・」

ベッドに寝転がり、俺は考え事をしていた。
俺は、本当に元の世界に戻りたいのだろうか。最近のテーマはずっとこれである。
 ・・・まだ、踏ん切りがつかない。戻りたいような気もするし、このままこの世界にいてもいいような気もするのだ。
 ・・・戻りたい。両親に会いたい。別れの言葉も告げられずに世界から消えちまって・・・心配させてるだろう。
 ・・・戻りたくない。何故って・・・そこで俺の頭に浮かぶのは、決まって、一人の少女の顔。

俺「何考えてるんだ、俺は」

異世界の人間が、その世界の人間に、・・・恋だなんて、許されるのだろうか。
この想いが実らなければそれでいい。
でも。もし、実ってしまったら。
そしてもし、俺が元の世界に戻るときが、来るときと同じように突然だったら。またもや、別れを告げられなかったら。
その人に、辛い思いをさせてしまうのではないか。・・・それだけは、したくなかった。
あいつには、笑顔が似合うんだ。だから・・・
 ・・・サーニャ。


―――――――――――
エイラ「な、なあサーニャ」

サーニャ「なあに、エイラ」

エイラ「アイツと何話してたんダ?」

サーニャ「俺さんと?」

エイラ「・・・」コクン

サーニャ「・・・お互いの世界の話をしてた」

エイラ「なんでそんなコト・・・」

サーニャ「俺さんのこと、もっと知りたいの。・・・それと、俺さんに、この世界を好きになってほしいの」

エイラ「・・・」

サーニャ「・・・」

エイラ「ナア、サーニャ。お前、アイツのことどう思ってるんダヨ?」

サーニャ「どう、って・・・///」カァ

エイラ「教えてくれナイカ、正直に」

サーニャ「・・・好きなの」

エイラ「・・・!」

サーニャ「俺さんのこと、好き。あの人の、笑顔が好き。
だから、一緒にいたいの。一緒にいて、笑ってほしいの。あの笑顔を、・・・私に向けてほしいの」

エイラ「・・・」プルプル

サーニャ「ねえエイラ。・・・私の言ってること、おかしい?」

エイラ「・・・」ギリギリ


――――――――ある日の午前
ミーナ「皆さん。ネウロイが出現しました。・・・が」

坂本「中型が一機のみなんだが・・・まるで、何かを待ってるかのように、海上で待機しているだけなんだ」

ミーナ「不気味ですので、念には念を入れておきます。総員、出撃!」

『了解』

――――――――――
ブウゥゥゥゥゥゥン
 ・・・この辺り。多分、俺が初めてこの世界にきたときの・・・。

ミーナ「・・・ネウロイ発見!」

坂本「あれか!コアは奴の中心部」

ミーナ「攻撃、かいs・・・」

そのとき突然、俺達の耳に、聞きなれない声が聞こえてきた。

「やあ、人類の皆さん。こんにちは」

『!?』

ゲルト「だ、誰だ!?」

「君達の目の前にいるじゃないか。無視するなんて酷いなぁ」

全員「!?」

もしや、と思い、目の前の『敵』を見た。

ネウロイ「やあ」

宮藤「・・・もしかして」

シャーリー「・・・ネウロイが・・・」

ルッキ「喋った!?」

衝撃。俺達の敵が、俺達に話しかけている。人間の言葉で。

ネウロイ「うん。ようやく気付いたみたいだね」

ミーナ「・・・どういうこと?」

ネウロイ「僕は、僕達・・・
君達人類でいうところの『ネウロイ』が、君達の文化を研究した結果として、
君達とのコミュニケーションを持つことが可能になった者だよ」

エイラ「・・・信じらんネー」

サーニャ「・・・」コクン

そのとおりだ。信じられない。・・・でも、現実みたいだ。

ネウロイ「そうだろうね。僕は最近作られたばっかりだから。
 ・・・一昨日くらいかな、言葉を送れるようになったのは。
そして今日が、君達と言葉でのコミュニケーションをとる最初の日ってことさ」

俺「・・・どうやって声出してるんだ?」

ネウロイ「声って言うか、君達が情報を処理する器官に直接、僕の意思を送り込んでるって感じだよ。
 ・・・こういうの、なんていうんだっけ?」

シャーリー「テレパシーか?」

ネウロイ「そう、それだ」

リーネ「・・・思ってたのと違う・・・」

エーリカ「随分、飄々としてるね」

ネウロイ「あれ、思ったより驚かないんだね。もっと、混乱したり叫んだりすると思ってたのに」

ゲルト「ふん。こっちは異世界からやってきた人間とここ数ヶ月暮らしてきたんだ」

エーリカ「正直、俺に比べるとインパクトに欠けるんだよねー。なんか、すんなり受け入れられるって言うか」

 ・・・なんだかなぁ。

ネウロイ「へえ、そうかい。少し傷つくな。ま、いいや。驚かせるのが目的じゃないしね」

坂本「・・・なんの用だ」シャキィン

ネウロイ「おっと、その武器をしまってくれよ。僕に、攻撃能力はないんだ。
今日は戦いにきたわけじゃないんだよ。今日は、代表して、君達に話したいことがあるんだ。聞いてくれるかい?」

『・・・』

ネウロイ「うんうん。それでいいんだよ。・・・この間、君達のところに艦隊を送っただろ?」

俺「・・・あれがどうしたんだ」

ネウロイ「君が、あの艦隊をやったんだろ?」

俺「・・・ああ」

ネウロイ「君のおかげで、こっちの苦労が、全部消し飛んじゃったよ」

俺「・・・そうか」

ネウロイ「あの艦隊を全部作るのに三ヶ月もかかったのにさ・・・
適当な小型だけをちょっとずつ君達のところに送ってごまかしてたら、
いつのまにか、君っていうイレギュラーができちゃっていてさ・・・
君の一撃で艦隊は壊滅。全部台無しさ。今度こそ、人類の希望を叩き折ってやれると思ってたのに。
惜しかったよ」

ペリーヌ「・・・」ギリッ

エーリカ「・・・ふん」

 ・・・話すことはできても、やっぱりネウロイは敵なんだな。今の台詞で理解できたよ。

そう俺が思ったら、ネウロイは声色を少し明るくして、言ってきた。

ネウロイ「でも、君に関して、面白いことがわかったんだよ。
 ・・・君は異世界の人間で、元の世界に戻るまでの暇つぶしみたいな形で戦ってるってね」

『!?』

ミーナ「なんでそれを知っているの!?」

俺「・・・え?」

ゲルト「ミーナ、どうした?」

ミーナ「・・・上層部には、あなたが異世界から来た人だって言わなかったのよ。
動揺していたあなたに、あれ以上迷惑をかけないようにね。
 ・・・それに第一、言っても妄言だって返されるに決まってるわよ・・・」

坂本「・・・つまり・・・」

ペリーヌ「上層部すら知らないことを、このネウロイが知っている・・・!?」

ネウロイ「僕達を馬鹿にしてるのかい?みんながみんなずっと巣の中にいるわけないだろ。
こっちだって、情報収集役くらい作れるのさ。こないだみたいにね」

こないだ?・・・あの十二体か!

リーネ「あの変な十二体ですね?」

ペリーヌ「情報収集役だから、攻撃してこなかったんですのね・・・」

宮藤「あんな短時間で情報を得るなんてできるんですか?」

ネウロイ「だから馬鹿にしないでくれよ。当然だろ」

エーリカ「・・・」

ネウロイ「・・・ここで本題だ。・・・俺君。君を元の世界に戻してあげるよ」

『!?』

最終更新:2013年01月28日 15:51