異世界のウィッチその7
――――――――――それから数日後・夕暮れ
・・・ベッドに寝転がって、俺は悩んでいた。
テーマは同じく「元の世界に戻りたいのか」だ。だが、状況が違う。
本当に戻れるのだ。俺が決めさえすれば。
・・・でも。どうしても決まらないのだ。以前は、周りとの関係を拒絶するほど戻りたかったのに。
戻るか?と思うと501のみんなの顔が頭に浮かぶ。戻らないか?と思えば両親の顔が頭に浮かぶ。
その時、ふと、以前サーニャと
シャーリーの言っていた言葉を思い出した。
『相談しろ』
・・・少々気が引けるが、このまま一人で考えても答えは出なさそうだ。
俺は部屋を出て、みんなを探した。・・・決断の後押しを、してもらおう。
数歩。数歩だけでいい。答えまでの全部の距離を押してもらおうなんて思ってない。
数歩だけ、後押ししてもらおう。そう思って。
―――――――
・・・相談できそうな人物と言ったら・・・
ミーナ、坂本、バルクホルン、ハルトマン、シャーリーって感じか?
というわけで、まず俺はバルクホルンとハルトマンの部屋へ向かった。
―――――――
コンコン
・・・二人の部屋のドアをノックした。
『誰だ?』
バルクホルンの声。
俺「俺だ。・・・相談したいことがある」
『入りなよ~』
ハルトマンの声だ。
俺はドアを開けた。
―――――――
ガチャ
俺「・・・」
エーリカ「やあ俺、いらっしゃい」
ゲルト「・・・で?相談とは何だ?」
・・・なんか白々しいな。
俺「・・・俺が、元の世界に帰れるかもしれないってことについてだ・・・」
エーリカ「・・・」
ゲルト「・・・それで、なんだ?」
俺「わからないんだよ・・・」
ゲルト「・・・」
エーリカ「・・・何が?」
俺「どうすればいいのか、自分でもわからないんだ・・・」
ゲルト「・・・お前は、」
・・・俺は。
ゲルト「以前から、帰りたいと思っていたのではないのか?」
俺「・・・」
ゲルト「お前が、帰るのが良いと思うなら、それでいいのではないのか」
俺「・・・前は、そう思ってたさ・・・前までだったら、それでよかったんだ。そのために戦ってきたんだから。
でも、・・・」
エーリカ「・・・今はどうなの?」
俺「・・・本当に、帰りたいのかすら、わからないんだ」
エーリカ「そう、なの?」
俺「以前はあんなに帰りたかったのに・・・今は・・・」
少しだけ間があり、
エーリカ「今は?」
エーリカに促され、俺は次の言葉を紡いだ。
俺「・・・考えてみたら、帰って、それで俺はどうするんだろうって。
離れていた両親になんて言えばいいんだ?また、つまらない学校生活を送れれば、満足なのか?って。
・・・でも・・・その生活も・・・安心できる気がするんだ。・・・だから、迷ってるんだ」
ゲルト「お前に決められないことを、私達が決められるわけがないだろう」
確かに、その通りだ。でも、俺が相談しに来た理由は、そうじゃない。
俺「俺は、お前らに決めてもらおうなんて思ってない。決めるための後押しを頼もうってだけなんだ」
ゲルト「・・・そうか。ならば、・・・言うぞ?」
俺「・・・言ってくれ」
ゲルト「好きにしろ。・・・その結果について、私達はとやかく言わない。全て受け止める」
・・・そうか。好きにして、いいんだな。受け止めてくれるんだな。・・・なら、安心だ
俺「わかった、ありがとう」
そう言って、部屋から出て行こうとしたその時、
エーリカ「・・・待って!」
と、ハルトマンが俺を呼び止めた。
俺「・・・」ピタッ
エーリカ「言わなくちゃいけないことがあるんだ。・・・俺」
俺「なんだ?」
エーリカ「君に居なくなられると、やっぱり寂しくなると思う」
俺「・・・」
エーリカ「それは、みんな一緒だよ。俺も、そうでしょ?寂しくならないんだったら、
悩まずあの場でネウロイについていったはずだよ。・・・だからね、君が、考えるって言ったとき、
正直、嬉しかった」
ゲルト「・・・」
エーリカ「俺の中に、私達があるってわかったから。言った通り、私達を受け入れてくれたみたいだから。
私は、もうそれで充分。それ以上を求めたりしない。
だから、君が帰っちゃっても、寂しくなっても、君を非難したりしないよ。安心して選択してね」
・・・ハルトマンのあの言葉がなかったら、俺は今でもこいつらを受け入れないままだっただろう。本当に、感謝している。だから。
俺「わかった。好きに選ばせてもらう。・・・絶対、非難するなよ?」
エーリカ「うん」
考えて、選択しなくちゃな。
―――――――――
バタン
ゲルト「・・・行ったか」
エーリカ「ねえ、トゥルーデ」
ゲルト「なんだ」
エーリカ「正直、俺にどうしてほしいって思ってる?」
ゲルト「フン。わかりきったことを聞くんじゃない。行ってほしくないに決まっているだろう。
あいつは、・・・生意気な弟分なんだ。私が、あいつを世話してやらなくては」
エーリカ「だよねー」ニシシ
ゲルト「だが、・・・あのネウロイの言っていた通り、引き止めるのはよくない」
エーリカ「うん。俺もわかってたみたいだけど、私達が決めることじゃないしね。
・・・俺にとって、大切な選択だと思うし」
ゲルト「ああ。だからこそ、楽をさせるわけにはいかないんだ」
エーリカ「俺には、頑張って、この辛い問題を乗り越えてもらいたいね」
ゲルト「ああ」
―――――――――――
次は・・・どうしよう。談話室にでも行ってみるか。
あそこなら人居るだろうし。
―――――――談話室
談話室に入ると、坂本とミーナがいた。これは都合がいい。
俺が談話室に入った途端、二人は俺のほうを向いて、言った。
坂本「・・・噂をすれば、だな」
俺「あ゛?」
ミーナ「さっきまで、俺さんの話をしていたのよ、みんなでね」
みんな・・・
俺「宮藤達か?」
ミーナ「ええ」ニコッ
俺「・・・どんな話だ?」
ミーナ「うふふ、秘密よ」
俺「・・・そうか」
さっきまでは、みんなここに居たのか。・・・
俺「あいつら、どこに行ったんだ?」
坂本「風呂だ」
俺「ふーん・・・」
そんな俺に対し、坂本は少し表情を崩しながら言った。
坂本「なんだその反応は?覗きにでも行くつもりか?」
はぁ?
俺「行かねーよ」
ミーナ「・・・そういえば、あなたって年頃の男の子なのにそういったこと全然しないわね」
俺「する余裕なんてなかったんだよ」
坂本「ほう、そうか。私はてっきり、興味がないのかと思っていたぞ。はっはっはっは」
俺「・・・そもそも、行けるわけないだろ。後が怖いし」
坂本「はっはっは、そうか!」
ミーナ「ふふふ・・・」
俺「・・・」
坂本「・・・」
ミーナ「・・・」
坂本「変わったな、俺」
変わった?
俺「そうか?」
ミーナ「ええ。以前に比べれば、かなりね」ニコッ
俺「・・・」
坂本「俺よ」
俺「なんだ・・・」
坂本「ありがとう、私達を受け入れてくれて」
・・・感謝するのは、こっちのほうだ。
俺「・・・こっちこそ・・・あんな態度だった俺でも、見放さないでくれて・・・感謝してる」
・・・正直に、俺の思っていることを伝える。
ミーナ「ふふ・・・そう言われると、なんだか照れくさいわね」
坂本「そうだな・・・」
俺「・・・」
ミーナ「・・・俺さん」
俺「なんだよ」
ミーナ「私達は、あなたが私達と打ち解けてくれたのを見れただけで、充分満足しています」
俺「・・・」
坂本「私達は、お前のことを信頼している。だから、あとは、お前の好きにするといい」
俺「・・・」
ミーナ「あなたなら、間違った選択はしないと、私達は信じています。だから、どんな選択をしても私達は何も言いません」
俺「・・・そうか」
ミーナ「ええ」
・・・そうなのか。
俺「・・・わかった。ありがとう」
・・・俺は談話室を出た。
――――――
二人と会話して、ようやく俺が悩んでいる本当の理由がわかった。
怖いのだ。『別れ』というものが。・・・こんなにも世話になったのに、いざ帰れるとなったら
あっさり『ハイサヨナラ』だなんて、・・・俺だってしたくない。できるわけない。そうするのが、怖いんだ。
・・・シャーリーは、多分あそこだな・・・
―――――――――ハンガー
俺「・・・」
居た。やっぱり。
俺「シャーリー」
シャーリー「ん?」
シャーリーがこちらを向いた。
シャーリー「おぉ、俺か。こんなところに来るなんて珍しいな」
俺「・・・まあな」
シャーリー「・・・相談事か?」
俺「・・・ああ」
シャーリー「・・・嬉しいよ、お前が、前に私が言ったことの通りにしてくれて」
俺「・・・そうかよ」
シャーリー「ああ。で、どうした、俺。言ってみろ」
俺「・・・わかってるんだろ?」
シャーリー「ハハハ、まぁな」
俺「・・・」
シャーリー「俺。そんなに悩むほど迷うのは、なんでなんだ?そんなに踏ん切りがつかないのか?」
俺「なんでかって・・・
・・・正直に言うと、・・・情けないって思われるかもしれないけど・・・」
シャーリー「・・・」
・・・他の奴らには言えなかったこと。
・・・俺が思っていることを、全て言う。
俺「怖いんだ。帰ることが。帰ることで、お前たちとの繋がりが途切れるのが。
俺は、・・・この世界に来たときと同じように、両親と離れ離れになったのと同じように、
また・・・別れるのが、怖いんだ・・・でも、両親に会いたいってのは、変わりない。
だから、・・・どうすればいいのかわからないんだ」
俯いて言う俺に対し、シャーリーは、安心させるような声色で、言ってきた。
シャーリー「俺。心配するな」
俺「・・・え?」
シャーリー「私達の繋がりは、途切れたりしない」
俺「・・・なんで・・・そんなこと・・・」
シャーリー「私達は、仲間だろう?」
その言葉に対し、・・・俺は、頷いた。
シャーリーは一瞬嬉しそうな顔をして、・・・言葉を続けた。
シャーリー「・・・仲間なんだから、どんなときだって、繋がってるんだ。例え、世界を隔ててもだ」
俺「!」
そのシャーリーの言葉に、俺は、頭を思い切りぶん殴られたような衝撃を感じた。
・・・世界を、隔てても・・・
シャーリー「だから、安心しろ。お前が帰ったとしても、私達が仲間じゃなくなるわけじゃない」
俺「・・・ああ」クスッ
シャーリー「・・・やっぱ、お前は笑ってるほうが、いいぞ」ニコッ
・・・そうか。
俺「余計な、お世話だ」ニコッ
最終更新:2013年01月28日 15:52