ある日の夜明けの出来事でした。

サーニャ「・・・ふぁ」

夜明けの光と、ひんやりとした心地良い風を背に受けて、
私は夜間哨戒から基地に戻ってきました。

 ・・・眠いなぁ・・・早く部屋に戻ろう・・・

そう思い、格納庫に向かおうとしたら、

サーニャ「・・・?」フオン

一瞬だけ、魔導針に何かの反応がありました。

 ・・・なんだろう?・・・位置は・・・
 ・・・俺さんの部屋辺り?

俺さん。先日、空から突然現れた異世界の男性。・・・一瞬だけ見せた笑顔が、とても素敵だった男性。
 ・・・魔導針の反応の元が気になり、私は進路を俺さんの部屋へと変更しました。


――――――――
 ・・・俺さんは、部屋の窓を開けて、そこに佇んでいました。

サーニャ「俺さん?」

私は俺さんに声をかけます。

俺「・・・なんか用か」

私に気付いた俺さんは、そう尋ねてきます。

サーニャ「・・・俺さんの部屋から何かの反応があったので」

正直に私は答えます。

俺「・・・」

その「何か」に心当たりがあるのか、俺さんは背後のテーブルに目を移し、
 ・・・テーブルの上にあった機械を手にとりました。

サーニャ「それは・・・?」

俺「・・・携帯電話」

サーニャ「携帯電話?」

俺「・・・ああ」

サーニャ「・・・」

俺「・・・あっちの世界の物だ」

サーニャ「電話・・・」

これで納得がいきました。この電話の電波が魔導針に反応したんですね。

俺「・・・たった今、電池が切れた」

サーニャ「・・・そうですか・・・」

俺「・・・」

サーニャ「・・・繋がらなかったんですか?」

俺「・・・ああ」

サーニャ「・・・」

俺「・・・もう用はないな?」

サーニャ「・・・いえ、あと一つだけ」

俺「・・・なんだ」

サーニャ「俺さんは・・・」

俺「・・・」

サーニャ「・・・いつも、この時間に起きるんですか?」

俺「・・・」

サーニャ「・・・」

俺「・・・こっちの世界に来てからはな」

サーニャ「・・・来てから?」

俺「・・・」

サーニャ「・・・眠れないんですか?」

俺「・・・」

サーニャ「・・・」

俺「・・・」

この問いには、俺さんは答えてくれませんでした。

俺「・・・」

サーニャ「・・・」

私達はお互い黙ったままでした。・・・そのまま、ただ時間だけが過ぎていきます。

 ・・・この沈黙を破ったのは、私の声でした。

サーニャ「・・・あの」

俺「・・・」

サーニャ「・・・携帯電話、私にいただけませんか?」

俺「・・・?」

 ・・・私、何を言っているんだろう、と自分でも思いました。
この時は、なぜこんなことを言ったのか、自分でもわかりませんでした。
口が勝手に動いた、としか思えませんでした。・・・

俺「・・・構わないさ。もう使えないものだしな」スッ

そう言って、俺さんは携帯電話を私に手渡してくれました。

サーニャ「・・・ありがとうございます」ギュッ

俺「・・・俺が元の世界に帰るときが来たら、返してくれ」

サーニャ「・・・わかりました」

俺「・・・」

サーニャ「・・・あの」

俺「・・・」

サーニャ「・・・寝ないと、お身体に障りますよ?」

俺「・・・言われなくてもわかってる。お前こそ、俺に構ってないで早く戻って寝たほうがいいんじゃないのか」

サーニャ「・・・」


最終更新:2013年01月28日 15:58