―――――――基地・医務室
基地に帰った俺は、医務室に運ばれた。
検査を終えた俺はベッドに寝かされた。

女医「傷はほぼ塞がっています。宮藤軍曹のおかげですね」

宮藤「えへへ・・・」

サーニャ「良かった・・・」

女医「ただ、体力を消耗しているので大事をとって今日はここで安静にしていてください」

俺「了解・・・」

 ・・・俺は窓の外を見た。

ミーナ「俺さん。・・・召喚された女性については・・・」

俺「・・・」

坂本「責任を感じているのか?」

俺「・・・」

坂本「思うところもあるだろうが、『その子』が敵として我々に向かってくると予想される以上、・・・わかっているな?」

宮藤「坂本さん!そんなの・・・」

俺「宮藤」

宮藤「・・・はい」

俺「坂本の言うとおりだってことはわかってる」

宮藤「・・・辛く、ないんですか?なんとも、思わないんですか」

俺「そんなわけないだろ。・・・でも、辛いから戦わない、ってわけにはいかないだろ?」

宮藤「・・・」

坂本「・・・わかっているんだな?」

俺「言われなくてもわかってたさ」

坂本「そうか。・・・なら安心だ」

サーニャ「・・・」

ゲルト「・・・成長したな、俺」

俺「・・・そうか?」

シャーリー「・・・正直、お前が『戦えない』って言い出したらどうしようって心配してたよ」

俺「・・・フン」

エーリカ「すねるなよ、俺。みんな、君が戦えるって聞いて安心してるんだから」

俺「・・・」


―――――――
ミーナ「それじゃあ俺さん、今日は大事にね」

俺「了解・・・」

サーニャ「俺さん。・・・また後で来ます」

俺「ああ・・・」

用は済んだようなので、みんな医務室から出て行った。

と思いきや、エイラだけは残っていた。

俺「・・・エイラ?」

エイラ「・・・」

俺「まだ用があるのか?・・・あるならさっき話せば良かったじゃねーか」

エイラ「あんまりみんなには聞かれたくない話だからナ」

俺「・・・なんだ?」

エイラ「お前・・・あんまり無茶スンナヨ」

俺「・・・」

エイラ「お前が居なくなったら、サーニャが悲しむんだカラナ」

俺「・・・心配してくれてんのか?」

エイラ「そんなんじゃネェ。・・・サーニャが悲しむのを見たくないから言ってンダ」

 ・・・結局はサーニャか。ちょっと複雑な気分だ。

俺「わかった。・・・無茶はしないさ」

エイラ「フン」

 ・・・言いたいことは言った、と言わんばかりに、エイラは早足で医務室を出た。


――――――
血を流したので疲れたのか、エイラとの会話の後俺は眠っていたようだ。
目を覚ましたら時間が飛んでいた。基地に戻ってきたのは、確か午後二時くらいだったが、今は午後六時。

 ・・・今更ながら思うがエイラは時間を飛ばす能力は持っていないのだろうか?
そんなくだらないことを考えていたら、

グゥ~

 ・・・腹が鳴った。

俺「・・・」

「・・・くすっ」

 ・・・笑い声がした方向・・・医務室の入り口を見た。

サーニャ「俺さん・・・」クスクス

俺「・・・サーニャか」

何の用だろうか。

サーニャ「俺さん、・・・お腹、空きましたよね?
芳佳ちゃんとリーネちゃんが作ったお夕飯、持ってきましたよ」ニコニコ

そう言って、サーニャは俺のベッドの横の机に盆を置く。

俺「・・・ありがとう」

サーニャ「・・・一人で、食べられますか?」ニコニコ

なっ・・・!?

俺「バ、バカにすんな!」

俺をなんだと思ってるんだ?・・・いや、確かに利き腕の肩を撃ち抜かれてたが・・・
箸を持つくらいならそんなに問題はないはずだ。

サーニャ「ふふっ・・・俺さんさえ良ければ・・・」

俺「なんだよ・・・」

サーニャ「あーんって・・・してあげたいんですが・・・///」

俺「んなっ・・・」

 ・・・俺の顔が熱くなるのが自分でもわかる。サーニャも顔を赤くしている。

ガタッ
不意に響いた音に反応して、俺は音の方向をちらっと確認したら。

コツコツコツ・・・

机に向かって何か書いていた女医さんが立ち上がって出口のほうへ向かっていくのが見えた。

 ・・・ちょ、ちょっと待って女医さん!

心の中でそう叫び、左手を女医さんのほうへ伸ばしたら、
女医さんは首をこちらへ少しだけ向けて、

ニコッ

横顔だけの笑顔を見せた。
そのまま女医さんは去っていった。

 ・・・何だよ今の笑顔は!?

サーニャ「俺さん?」

俺「・・・っ」

首を傾げるなよ・・・断るに断れなくなるじゃねーか・・・

俺「・・・一口だけ」

サーニャ「はい?」

俺「一口だけ頼む」

サーニャ「・・・はい」ニコッ

サーニャは肉じゃがの芋を箸でつまみ、手皿を添えて俺に差し出した。

俺の口は芋に向かっていき、

 ・・・パクッ

 ・・・食った。

俺「・・・///」モグモグ

サーニャ「ふふ・・・///」

俺「・・・なんだ」ゴクン

サーニャ「幸せです・・・///」

俺「・・・」

サーニャ「俺さんは・・・どうですか?」

俺「・・・」

そんなの、決まってる。当然、

俺「・・・幸せ、だよ・・・///」

自然と頬が緩むのを感じながら、俺は言った。

はにかむ俺を見て、サーニャは言った。

サーニャ「やっぱり・・・俺さんは、笑顔が似合います」

俺「・・・そうか?」

サーニャ「はい。・・・心配そうな顔は似合いません」

俺「・・・」

サーニャ「心配しないでください、俺さん。例の『あの子』は、きっとなんとかなります」ニコッ

 ・・・お前に笑顔でそう言われると・・・本当にそんな気がしてくる。
サーニャのこの笑顔は・・・まるで魔法のようだ。

俺「・・・サーニャ」

サーニャ「はい?」

俺「お前も・・・笑顔、似合うぞ」

サーニャ「・・・そう、ですか?」

俺「ああ」

サーニャ「ありがとう、ございます・・・///」

俺「・・・」

サーニャ「・・・」

 ・・・俺とサーニャの距離が縮まっていき、

チュッ

 ・・・キスした。

サーニャ「・・・///」ニコッ

顔を離した後、サーニャは俺に笑いかけてきた。
そのとき突然、俺の中に例えようの無い衝動のようなものが湧き上がり、

ガバッ

サーニャ「きゃっ!?」

俺はサーニャを抱きしめていた。

サーニャ「お、俺さん・・・!?///」

俺「サーニャ・・・」

サーニャ「な、なんでしょうか・・・?///」

俺「俺は・・・」

サーニャ「は、はい・・・」

俺「・・・お前の笑顔を見るとな、・・・以前は『帰らなくてもいいか』って気分にさせられたんだ」

サーニャ「・・・」

俺「今はな、『この世界に来て良かった』って思わされるんだ」

サーニャ「・・・」

俺「お前がいるから・・・お前のその笑顔があるから、俺は今この世界にいるんだ」

サーニャ「・・・」

俺「・・・俺さ、元の世界には居場所がなかったんだ」

サーニャ「・・・」

俺「でも、今は・・・この世界は、違う。こんな俺にも、居場所ができた。
お前たちが居場所を作ってくれた。本当に、・・・心からお前たちには感謝してる」

サーニャ「・・・」

俺「お前は・・・お前たちは、俺の生きる希望なんだ」

サーニャ「・・・私達、俺さんのお役に、立てましたか?」

俺「これ以上ないくらいな」

サーニャ「・・・よかった」

俺「だから、・・・俺はお前たちの目的・・・世界を守るってことを、手助けするって決めたんだ」

サーニャ「はい」

俺「俺のこの力は・・・世界を守るため、ネウロイを倒すために使おうって、思ってたんだ・・・なのに!」

サーニャ「?」

 ・・・坂本達には言わなかった・・・俺の本音をサーニャに打ち明ける。

俺「俺は・・・あの力でとんでもないことをしちまったんだ!」

サーニャ「・・・俺さん?」

俺「敵の罠にまんまと引っ掛かって!あの子を召喚しちまった!元の世界から引きずり出しちまった!」

俺「守るために使うはずが・・・敵の利益になっちまったんだ!」

サーニャ「・・・俺さんのせいじゃ、ありません」

俺「俺のせいさ!気付けたはずなんだ!あの違和感に!まるで攻撃を誘うみたいなネウロイの挙動にさ!」

サーニャ「・・・」

俺「気付いていれば・・・普通の魔力で倒していたら・・・
俺の世界の人が敵になることはなかった!あの子が人殺しの道具にさせられることもなかったんだ!」

サーニャ「俺さん・・・」

俺「そして俺はあの子と戦うんだ!殺すために!」

サーニャ「俺さん」

俺「俺が連れてきた元の世界の人間を!俺が殺しちまうんだっ!」

サーニャ「俺さん!」ハシッ

 ・・・サーニャが俺の背中に手を回す。

俺「・・・最低な人間だって責められても・・・文句は言えないんだよ・・・」

サーニャ「大丈夫」

俺「・・・」

サーニャ「大丈夫です。・・・誰も俺さんを責める人なんて、いません」

俺「・・・言い切れるのかよ・・・?」

サーニャ「・・・みんな、わかっています。多分、『あの子』も」

俺「何をだよ・・・」

サーニャ「・・・悪いのは俺さんじゃないってことを、です」

俺「・・・」

サーニャ「だから、・・・安心してください」

俺「・・・」

サーニャ「安心・・・できませんか?」

俺「・・・」

サーニャ「じゃあ・・・」

 ・・・サーニャが再び顔を近づけてきて。

チュッ

口付けをした。

だが、今度は。

俺「・・・っ!?///」

 ・・・チュッ プチュッ

サーニャ「んぅっ・・・///」チュッ

少し、激しい。
キスして、唇を少し離して、またキスして・・・それを繰り返す。

チュッ チュッ ピチュッ

俺「っ・・・///」チュッ

そのうち、自然と俺たちは唇を離す動作をやめ、キスを維持し、

サーニャ「んっ、ふぅっ・・・///」ヌチュッ

 ・・・サーニャが舌を伸ばした。それに合わせて俺も舌を伸ばし、サーニャのに絡ませる。

不思議だ。こうしてキスしていると、俺の不安がすっ飛んでいく気がする。
サーニャの腰を掴み、安心を得たい一心で、俺はサーニャと舌を絡ませる。

ヌチュッ クチュッ クチュ

そんなキスをしばらく続け、

「「・・・ぷはぁっ」」

お互い、唇を離した。透明な糸がベッドに垂れた。

俺「はぁ・・・はぁ・・・///」

サーニャ「安心・・・しましたか・・・?///」ハァハァ

俺「あ、ああ・・・///」ハァハァ

 ・・・しかし、今のキスって・・・

俺「サーニャ・・・お前どこでこんなこと知ったんだよ・・・」

サーニャ「・・・ハルトマンさんから・・・大人のキスっていうのはこうするんだって教わりまして・・・
いつか俺さんと・・・その、してみろって・・・」

俺「・・・またハルトマンかっ!」

 ・・・ま、それはともかく。

俺「・・・ありがとう、サーニャ。楽になった」

サーニャ「お役に立てて、嬉しいです」ニコッ

俺「だから・・・戦わないと、な?」

俺の言葉に、

サーニャ「・・・はい」コクン

サーニャは頷いた。


最終更新:2013年01月28日 16:05