――――――
人型ネウロイが出現し、出撃した三人の内、
一人は重傷、一人は軽傷、無傷なのは一人だけで、
重傷者のバルクホルン大尉は医務室に運び込まれた、宮藤の治療もあって大事には至らなかったが、
目を覚ますまで医務室の世話になることになった、ということがウィッチーズに知らされた。
リーネ「バルクホルンさんがやられるなんて・・・」
ルッキ「うじゅー・・・」
坂本「俺。・・・例の、『召喚された彼女』で間違いないんだな?」
・・・能力からしても、心の会話からしても、間違いない。
俺「・・・ああ」
エイラ「・・・もう、完全に『敵』ダナ」
俺「・・・その通りだ。・・・放っておくことはできない。絶対に」
そう言って、俺は拳を握り締めた。
・・・居場所のためなら人類に敵対しても平然としていられるようなやつに、
もはや同情なんてできなかった。
サーニャ「・・・」
俺「なんだ」
シャーリー「そのネウロイは『能力』を持ってるんだよな?」
俺「ああ」
シャーリー「・・・詳細、教えてくれないか」
ミーナ「・・・俺さん。説明をお願いします」
俺「・・・俺が観察した限り」
ミーナ「・・・」
俺「・・・ネウロイの能力は『異世界の魔力でシールドを作る』ことだ」
ペリーヌ「・・・ネウロイが・・・」
リーネ「シールド・・・?」
俺「あのネウロイはシールドを展開できるんだが、シールドに銃撃すると、撃った弾がこっちに返ってくる」
シャーリー「なんだって・・・」
エーリカ「・・・」
俺「返ってくる弾はどこから飛んでくるかわからない。上下左右、前後・・・
どこからでも、360度、全方向から返せるみたいだ。バルクホルンは二方向から返されたから撃墜された」
シャーリー「・・・とんでもない力じゃないか・・・」
・・・シャーリーの言葉に、ウィッチーズは同意した。
ルッキ「うじゅぅ・・・やばそう・・・」
宮藤「迂闊に攻撃できないってことですか!?」
ペリーヌ「そういうことになりますわね・・・」
ミーナ「・・・」
・・・みんな動揺するのはわかるが、その前に、ふと思ったシールドの「特徴」をミーナに報告しておきたかった。
俺「ミーナさん」
ミーナ「・・・なんでしょう?」
俺「・・・気になることがあるんだが・・・あのネウロイ、シールドを張るときは必ず動きを止めていたんだ」
坂本「・・・」
俺「動くときは、いちいちシールドを解除してから動いていた。・・・あのネウロイを撃破するには、そこが突破口になりそうな気がする」
シャーリー「・・・弱点があるってことか?」
俺「ああ。・・・俺があの魔力でシールドを張れないのと同じように、あのネウロイも『できないこと』があるはずなんだ」
リーネ「シールドを張っている間は動けないってことですか!?」
俺「恐らくな・・・」
ミーナ「・・・報告ありがとう、俺さん。参考にしてみるわ」
俺「・・・」
それと、一つ、サーニャに尋ねなくてはならないことがある。
俺「・・・サーニャ」
サーニャ「はい?」
俺「報告だと、ネウロイは『小型機が3体出現した』らしいが・・・」
サーニャ「・・・そのとおりです。俺さん達が戦っていた空域には、ネウロイの反応が3つありました」
そのサーニャの言葉に、今まで思いつめたような顔をしていたハルトマンが声をあげた。
エーリカ「・・・おかしい」
エイラ「ハ?」
エーリカ「どうみても1体しかいなかったよ」
サーニャ「・・・え?」
俺「・・・俺の記憶違いじゃなかったみたいだな。あれはどうみても1体しかいなかったぞ」
サーニャ「・・・それはおかしいです。3体の反応が確かにありました。確かに、です」
珍しくサーニャが強い口調で言う。
エイラ「おい俺、サーニャを疑ってんノカ?」
俺「違う。・・・まだ隠されてる秘密があるかもってことだ」
エーリカ「・・・」
坂本「・・・慎重に戦う必要がありそうだな」
ミーナ「そうね・・・」
―――――――三日後
二日のうちにバルクホルンは回復し、本人が言うにはもう出撃するのに問題はないそうだ。
すげえ回復力だな。宮藤のおかげもあるんだろうけど。
そして今日、またネウロイが出現した。・・・小型機が3体。恐らく『彼女』だろう。
坂本「ミーナ中佐・私・シャーリー・ハルトマン・エイラ・ルッキーニ・宮藤・俺が出撃する。その他は基地で待機だ」
『了解』
―――――――
反応があった辺りに向かってみると、やはり『彼女』はいた。
・・・一人で。
俺「・・・本当に三体の反応があったのか?やっぱり1体しかいないじゃねえか・・・」
俺の言葉に、ミーナがハッとしたような顔をして言った。
ミーナ「・・・ネウロイの脚部に違和感があります・・・
おそらくあの部分が小型機と判断されたものと思われます。原因はわかりませんが・・・」
エーリカ「あのストライカーみたいな部分?・・・無くても良さそうなあの部分が?」
エイラ「・・・変なヤツだ」
ルッキ「ホントに人型だぁー」ブウゥゥン
シャーリー「あ、おいルッキーニ!」
ルッキーニはネウロイに接近しようとするが、やはりそれに合わせてネウロイは後退していく。
ルッキ「うじゅー・・・」ブウゥゥン
ルッキーニが諦めて俺達の陣に戻ると、彼女は元の位置に戻る。やはり一定の距離を維持しようとしている。
坂本は魔眼で彼女を観察する。
坂本「・・・コアは腹部にあるが、小さいな。狙撃したいところだが、
・・・俺、ネウロイの能力は、確かにあるんだな?」
俺「なんなら試すか?」
坂本「・・・頼む」
俺「了解っ」ガガガガ
接近しながら、また4発、弾丸を放つ。ネウロイは俺が接近した分の距離を高速で後退し、弾丸を確認してから、
ブオン
静止して例のあのシールドを張る。
スゥウゥゥ・・・
やはり弾丸がすり抜けていく。
そしてすぐにネウロイはシールドを解除する。
エイラ「・・・!」
エイラが叫んだ。
エイラ「宮藤!下から来るゾ!」
宮藤「えっ!?は、はい!」
エイラの指示で、宮藤は下を向きシールドを張る。
その後一秒も経たないうちに、
バシュンバシュンバシュバシュン
俺が放ったはずの4発の弾丸が宮藤のシールドに行く手を阻まれていた。
宮藤「・・・これって!」
ミーナ「・・・報告どおりというわけね」
坂本「・・・ネウロイの魔力の流れから判断するに、彼女に一発でも弾を当てればシールドを無理矢理解除させられそうだが・・・」
シャーリー「本当か!?」
坂本「だが、背後に回る必要がありそうだ。
つまり背後から腹部を狙い打てればすぐに済むのだが・・・」
宮藤「その前に、あのネウロイを足止めしなくちゃいけなかったんじゃ?そうしないと攻撃できないんですよね?」
シャーリー「そうだったな。俺によれば『シールドを張っている間は動けない』らしいからな」
宮藤「ずっとシールドを張り続けさせるってことですね?」
俺「・・・言っておくが、絶え間なく攻撃し続けなくちゃいけないってことだぞ」
ルッキ「でも、撃った弾丸が返ってくるんでしょ?びしゅーんって・・・うじゅ~、撃ちたくないよぉ」
エーリカ「それはしょうがないよ。・・・避けては通れない道なんだから」
あれこれ言っている俺達を横目に、ミーナが言った。
ミーナ「リーネさんに増援を頼みますか?」
エーリカ「色んな方向から飛んでくる弾を避けながら狙撃させるの?・・・かなりシビアじゃない?」
坂本「ふーむ・・・」
数秒の静寂のあと、ミーナが口を開いた。
ミーナ「・・・作戦を伝えます!シャーリーさん!」
シャーリー「おう!」
ミーナ「あなたはネウロイの裏に回り、銃撃でシールド展開を阻害、
可能なら腹部を狙いネウロイを撃破してください!」
シャーリー「了解!」
ミーナ「俺さん!」
俺「なんだ」
ミーナ「あなたはネウロイの正面へ向かってください!
ネウロイを確実に破壊するため、シールドが解除されたらあなたの力で攻撃をお願いします!」
俺「了解」
ミーナ「エイラさん!あなたの力で、二人に向かってくる弾丸の位置の伝達を!」
エイラ「ワカッタ」
ミーナ「私達は・・・、ネウロイに向けて、攻撃します!銃撃を途切れさせてはなりません!」
『了解』
ミーナ「シャーリーさん!俺さん!辛い役割を押し付けますが、お願いします!」
シャーリー「エイラ!頼むぞ!」
エイラ「私は指示をするダケダ・・・避けれるかは、お前達次第ダゾ。・・・俺!」
俺「なんだ」
エイラ「絶対当たるなヨ!サーニャのためにも!」
俺「・・・」
だったら当たるわけにはいかないな。
俺「了解!」
―――――――――
エイラ「俺!右下カラ!」
俺「っ!」ヒュン
宮藤「あわわ、お二人とも、大丈夫ですか!?」ガガガガガガガ
仕方が無いとはいえ、銃撃しながらそんなこと言われると複雑な気分だ。
だって、今、俺とシャーリーが避けているのは、お前たちが放った弾なんだから。
さっきから返ってくる弾丸が俺とシャーリーにばかり向かってくるのは、ネウロイがこちらの作戦に気付いたからなんだろうか。
なんとかなってはいるが、こちらはシールドを使えないという点が痛い。
この弾幕だ、シールドしてしまったらそのまま解除できずに押され続けるに違いない。
エイラ「大尉!真上から、次左下!」
シャーリー「っ!」ヒュンッ
シャーリーは左に移動して避けた。
エイラ「俺!真下右下真上!」
俺は右上に避けようとするが、
俺「うおぉっ!?」ピッ
あぶねえ、真上から来たのが頬にカスった。血が一筋滲み出る。少し移動が遅れていたら脳天を撃ち抜かれていただろう。
・・・肝が冷えた。紫色の魔力に救われた。
ルッキ「シャーリー!俺!後ろから見てるとすんごい光景だよ!カッコイイ!!」ガガガガガ
様々な方向から次々に飛んでくる弾丸を高速で避け続ける俺達を見てルッキーニが叫ぶ。
シャーリー「ありがとなルッキーニ!」ギュンッ
俺「んなこと言ってる場合じゃないだろっ!!」ドヒュン
この弾幕の中で隙を見つけては徐々にネウロイに近づいていくが、近づくたびに返ってくる弾丸のスピードと精密さが増しているような気がする。
エイラ「大尉!右上・左・右上・真上!」
シャーリー「おうっ!」ギュンッギュンッ
エイラの指示を受け、シャーリーは的確に見極めて異常な弾幕を華麗に身体を翻して避けきっている。
エーリカ「たった一体でこんなに弾幕張れるネウロイが出てくるとは想像してなかったよ!」ガガガガガガ
俺「元はお前たちの弾丸だろぉ!」ヒュンッ
俺もなんとか避ける。ギリギリで避けまくる。先程切れた頬に冷たい風が当たってピリピリする。
エーリカ「んもぅ!もっと気の利いた返ししてよ!」ガガガガガ
俺「どんなだよぉ!?」ヒュオンッ
エイラ「俺!左・左下・右下・真上!」
また指示が飛ぶ。右下に向かい初弾と第二波を避け、身体を回転させて上へ避け、次に左へ移動する。
この弾幕の真っ只中で、シールド無しでギリギリで避け続けていて、
・・・迫ってくる恐怖とそれを避ける興奮のせいでなんだかハイになってきた気がする。
ブシュッ
エイラ「・・・ア」
俺「・・・うぅぉっ、・・・ぅっ」ピッ グラッ
次は首の皮に掠った。少量の血が噴き出る。少し体勢を崩してしまった。
その隙を見逃さず、さらに四発の弾丸が俺の額に向かってくるのが見えた。
エイラ「俺ッ!?」
(・・・このときエイラは、俺の顔の左側からさらに血が噴出すのを予知した。)
高速で飛んでくる
死の恐怖に、ついに俺は耐え切れなくなり、
・・・プツン
・・・俺の中の何かが切れる音がした気がする。
俺「っうおおぉぉぉぉぉぁぁぁぁあああああああ!!!!!!!」
無理矢理体勢を立て直して叫んだ。
坂本「俺!?どうした!?」
ヒュンッ ブチッ
全身を右に振って、着弾する直前で避けることができたが、
完全に避けきることはできず、左耳が千切れた。
エイラ「お、オオッ!?」
この恐怖を作り出している根源に対し、首と耳から血を散らしながら、俺は再び叫んだ。
俺「あああああああぁぁぁぁぁっっッッくそォッ!!このネウロイッ!!絶対にぶっ殺してやるううぅぅゥゥゥゥゥッ!!!!」ビュンッ
坂本「何を叫んでるんだ!」ガガガガガ
ミーナ「俺さん!冷静に!」ガガガガガ
エイラ「なんだアイツ・・・サーニャが見たらなんて思うカナ・・・」
エーリカ「私の知ってる俺じゃない・・・」ガガガガガ
ルッキ「もっと別な何かだね!」ガガガガガ
宮藤「本当、別人みたい・・・」ガガガガガ
インカムからそんな声が聞こえてくるが、それらを意に介さず、目の前に徐々に近づいてきているネウロイを俺は見据えた。
俺「シャーリィッ!!」
シャーリー「なんだぁっ!?」
俺「あとどのくらいだぁっ!!??」
シャーリー「あと10mで後ろに回れるっ!もう少しだっ!!」
エイラ「大尉!」
シャーリー「おう!」
エイラ「真下右上真上!」
シャーリー「了解!」ビュンッ
エイラ「隊長!銃撃を止めさせてクレ!」
『!』
エイラの言葉にミーナが返す前に、銃撃部隊は射撃を停止した。
エイラがこう言ったということは、『希望』が見えたということだ、と、全機理解していた。
エイラには見えていた。シャーリーがネウロイの背後に位置取り、俺は刀を振り上げて斬りかかろうとする光景が。
もうここまでくれば銃撃は必要ない、失敗する要素はないだろう、とエイラは判断したのだ。
ルッキ「シャーリー!行ける!?」
シャーリー「ナイス指示だエイラ!ここならバッチリ狙える!準備は良いなァ!?俺、行くぞォォ!!」
シャーリーが銃を構えるのが、視界の隅に見えた。俺は、すぐ目の前まで近づいたネウロイに刀を向けて、
俺「来いよおおおおぉぉぉぉぉォォォォォ!!!!」
また叫んだ。
シャーリー「行けええぇぇぇェェェェ!!!!!!」
シャーリーも叫び、シャーリーはネウロイの腹部目がけて銃撃し、
俺は紫色の魔力を込めた刀を上段に構え彼女に向かっていく。
・・・あとでエイラから聞いた話だが、予知関係無しの勝手な予想だと
作戦通り俺とシャーリーは彼女を撃破できるだろうと思っていたらしい。
だが、銃撃を中止させたあとの予知に現れた光景は、エイラの理解が追いつかないような、
全く予測できない光景だったので『銃撃を中止させなければ良かった』と、後悔し、絶句したそうだ。
エイラの能力で現れた光景は、肩から血を流し呆然としているシャーリーの姿と、
シールドを解除し撤退していくネウロイの姿と、胴体部分を血だらけにしている俺の姿だった。
ビシュビシュビシュビシュッ
坂本「・・・なんの音だ?」
シャーリー「・・・」
ルッキ「シャーリー!撃てた!?」
シャーリー「・・・」
ルッキ「シャーリー!?」
シャーリー「・・・しくじった・・・」
宮藤「え!?」
シャーリー「まさかこんなことまでできるなんて・・・予想外だった・・・このネウロイ、ヤバい・・・」
ミーナ「シャーリーさん!何が起こったの!?」
シャーリー「・・・弾丸で弾丸を・・・止めやがった・・・」
坂本「何!?」
シャーリー「私の撃った弾が・・・返ってきた弾丸に止められた・・・」
宮藤「え!?」
シャーリー「・・・ここまで・・・正確に返せるなんて・・・思わなかったよ・・・くっ!」
ルッキ「シャーリー!?」
シャーリー「被弾した・・・左肩をぶち抜かれた・・・」
ルッキ「そんな!?シャーリー、今行く!」
シャーリー「頼むよルッキーニ・・・中佐、ネウロイが撤退してる・・・作戦は失敗だ・・・
・・・俺も、ヤバい状態だ、助けてやってくれ・・・」
宮藤「そうだ!俺さんは!?」
俺「・・・」
宮藤「俺さん!?」
俺「・・・かはっ・・・」
エーリカ「どうしたの俺!?」
――――――十数秒前
シャーリーがネウロイに攻撃したのを見てから、俺はシールドに刀を振り下ろした。
バシュウゥゥゥウンッ
少し重い手応えがあり、シールドの魔力が消える感覚があった。・・・俺の魔力ならシールドを破れるのか?と、少し驚いた。
シャーリーはどうなったのだろうか?姿が見えない。
シャーリーを探すのを諦めて目の前を見ると、ネウロイは体勢を崩して仰け反っていた。この状態なら反撃できないだろう。
彼女の脚部が空を蹴った。
トドメの突きをくりだそうと突進した瞬間、
ビュビュインッ
小さくだが、ビームの射出音が耳に届いた。そのビームは俺の両の脇腹を貫いた。どこからそのビームが放たれたかというと。
・・・こんなん・・・避けれるわけ・・・ねえだろ・・・
脚部。先程空を蹴ったと思った脚部から放たれた不意の二撃だった。
仰け反ったと思ったら、それと同時にネウロイはビームの照準を定めていたというわけだ。
・・・勝ったと思ったら、最後に・・・まだ隠していたのか・・・
・・・脚部の『二体のネウロイ』は、このために・・・『彼女の危機的状況』のためにあったのか・・・
・・・あと・・・少し・・・だったのに・・・っ
そう考えたら、ネウロイが背を向けて撤退していくのが見えた。
俺「・・・かはっ・・・」
そして、俺は血を吐き、・・・意識が遠のいていった。
最終更新:2013年01月28日 16:06