――――――3日後
次に俺が目を覚ましたのは医務室のベッドの上だった。

 ・・・なんで医務室?何があったんだっけ?

腹に何か締め付けられるような感覚がある。服をめくってみると、包帯が巻いてあった。
それと、左耳が妙に温かい。触ってみたら、

俺「・・・痛っ!?」

軽くだが痛みが走った。

その痛みで、段々記憶が戻ってきた。
確かネウロイとの戦いで・・・そうだ、耳は銃弾で、腹は不意のビームでやられたんだったな。

俺「・・・クソッ!」ドスッ

倒せると確信したのに、
 ・・・彼女の能力と「危機」の時まで計算していたネウロイの技術に上を行かれたのだ。
悔しさがこみ上げてきて、俺はベッドを殴った。

「・・・ん・・・」

その衝撃に反応したかのように、横から声がした。
誰かいたのか?

 ・・・誰だ?

そう思って視線を向けると、

「・・・俺・・・さん・・・?」

白い肌に銀色の髪。まさに「雪」を体現したような儚げな少女が、
細く綺麗な声で俺の名前を呼んだ。

俺「サーニャ?」

サーニャ「・・・っ!」ギュッ

俺の呼びかけには答えずに、サーニャは俺の右手を握ってきた。

俺「・・・」

俺は黙ったまま手を握り返す。

サーニャ「・・・良かった・・・」

サーニャが呟く。

俺「・・・」

サーニャ「・・・このまま目を覚まさなかったら・・・どうしようって・・・」

うっすらと目に涙を浮かべている。

 ・・・心配させてしまったみたいだな。

サーニャの頭を撫でようと右手を動かそうとしたら、
サーニャは、握った俺の右手を自分の左胸に持っていった。

俺「・・・?」

ドクン・・・ドクン・・・

右手の柔らかい感触の奥に、サーニャの心臓の鼓動が伝わってくる。

サーニャ「俺さん・・・私は、生きています・・・俺さんは?」

すぐに言葉の意味を理解できた俺は、空いている左手でサーニャの片手を掴み、
俺自身の左胸に、・・・心臓の位置に持っていった。

俺「生きてるよ」

その言葉に、サーニャは、涙を伝わせて俺の目を見た。

サーニャ「・・・はい・・・」

俺「・・・」

そのまま俺たちは、何も喋らずに見つめ合っていた。

「あーーーーっ!!」

俺・サーニャ「「!」」

不意に響いた声に、咄嗟に俺たちはお互いの胸から手を離した。だが、

「どうしたんだルッキーニ!」

ルッキ「シャーリー!俺がサーニャのおっぱい触ってたー!!」

俺・サーニャ「「・・・」」

手遅れだった。
 ・・・あのクソガキ・・・ぶん殴ってやりたくなった。


―――――――――
ミーナ「あらあら」ニコニコ

シャーリー「二日寝て起きたと思ったら早速それかぁ~?」ニヤニヤ

俺「ち、違う!そうじゃなくて・・・」

ゲルト「言い訳するのか?見苦しいぞ、俺」

ペリーヌ「そうですわ!過程はどうあれ触ったのは事実でしょうに!」

宮藤「全く、俺さん何考えてるんですか!」

リーネ「芳佳ちゃん・・・」

宮藤「え?」

リーネ「・・・ううん、なんでもない」

エイラ「オイ俺・・・この二日間・・・サーニャがどれだけお前のこと心配してたと思ってんダヨ!
ずっと傍につきっきりだったんダゾ!なのにお前は・・・」

俺「・・・そうだったのか?」

サーニャ「・・・はい」

俺「・・・ありがとう、サーニャ」

サーニャ「いえ・・・///」

エイラ「ムゥ・・・」

坂本「俺よ、宮藤にも感謝しておけ。懸命に治療してくれたのだからな」

俺「そうか・・・宮藤も、ありがとうな」

宮藤「えへへ・・・できることをしただけですよ」

シャーリー「しかし、バルクホルンに続いて、俺まであのネウロイに撃墜されちまうとはなぁ・・・」

ゲルト「・・・」

ミーナ「そのネウロイについてですが、この二日間でわかったことがあったので、
次の出撃の時のために例のネウロイへの作戦を立てたのだけれど・・・
俺さん、寝起きで悪いけれど、今ここで話してもいいかしら?」

俺「俺はどこだろうと構わないが・・・みんなは?」

エーリカ「私達はもうミーナから聞かされたからね。あとは俺だけなんだ」

ゲルト「そして、この作戦において不可欠なのは、俺、お前の存在なんだ」

俺「・・・そうか」

ミーナ「・・・前回、あのネウロイを撃破するために背後から攻撃しシールドを解除させて無防備状態を作らせるという作戦を行いましたが、
失敗に終わりました。理由は、背後にまわったシャーリーさんの銃撃が、返ってきた弾丸に阻止させられたからです」

俺「!」

あのネウロイ、そんなことまで・・・

ミーナ「シャーリーさんの報告によれば『近づくたびに弾のスピードと精密さが増していく気がした』とのことですが・・・
俺さんにも尋ねておきます。シャーリーさんの言うとおりでしたか?」

俺「・・・シャーリーも気付いてたか」

シャーリー「そりゃ気付くさ。近づくにつれてヒヤッとする場面が多くなってたしな」

坂本「ふむ・・・しかし、精密さがあるとはいえ銃弾と銃弾をかち合わせるなんて離れ技をしてのけるとはな・・・」

ミーナ「前回と同じ作戦はもう使えません・・・ですが、あの戦闘が全くの無駄だったわけではありません。
俺さん。あなたの攻撃がそれを証明してくれました」

 ・・・なんのことかは分かっている。

俺「俺の攻撃でシールドが解除されたことだな?」

ミーナ「そのとおりです。・・・次の出撃時にあのネウロイと遭遇した場合、
あなたに・・・正確にはあなたとエイラさんに、再び同じ役目をしていただきます」

俺「・・・」

ミーナ「ですが、今度は『確実に破壊するため』ではなく、あくまで『シールドを破るため』の役割です」

俺「じゃあ、肝心の攻撃は誰がやるんだ?」

坂本「サーニャだ。お前はシールドを解除させたら、脚部の攻撃を即回避し、
それからサーニャがフリーガーハマーでネウロイを撃破する。リーネでも良かったのだが、コアが小さい上に攻撃が激しいからな。
その点、フリーガーハマーなら炸裂するからな。
火力と確実性を考慮してサーニャに任せることになった。・・・以上がこの作戦の内容だ」

俺「・・・了解」

ミーナ「・・・ごめんなさいね、俺さん。あなたが眠っている間に、また辛い役目を任せることを勝手に決めてしまって・・・」

俺「いや、気にしてない」

坂本「・・・何だと?」

俺の言葉に、みんな意外そうな顔をする。非難されるとでも思っていたのだろうか?

シャーリー「・・・平気なのか?返ってくる弾丸は全部お前が引き受けることになるんだぞ?」

俺「シールドを破る役目は俺にしかできないことだろ?」

坂本「・・・その通りだが、しかし・・・」

俺「俺がそれをやることで道が開けるんなら、希望が見えるなら、喜んでやってやるさ」

坂本「・・・怖くはないのか?」

俺「俺が何もしないで、その結果ネウロイに好き放題させるほうが怖い」

サーニャ「俺さん・・・」

ミーナ「・・・引き受けていただけますか?」

俺「勿論」

即答だった。

そんな俺を見てバルクホルンは呟いた。

ゲルト「・・・やられたばかりだというのに、何故そんなにお前は余裕なんだ・・・」

 ・・・

俺「それに関しては、なんていうか・・・やられたからこそ余裕ができてきたんだ」

ゲルト「何?」

この世界に来てから、俺は命だけは『ツイてる』みたいだからな。

俺「いつ死んでもおかしくないはずの世界にいるのに、俺は今こうやって生きてる。死なずに済んでる。
今回だって、ネウロイに撃墜されはしたけど、それでも俺はまだ生きてる。・・・だから、これからも、きっと大丈夫だと思うんだ」

ゲルト「・・・」

俺「それにさ、死ぬことを想定して戦っちゃ意味無いだろ?俺たちは、生きていくために戦ってるんだから」

ゲルト「・・・フッ。確かにな」

俺の言葉に、バルクホルンは笑った。

ハルトマンが微笑みながら口を開く。

エーリカ「・・・俺。前に比べたら、随分と前向きになったね」

 ・・・それはハルトマンのおかげだ。

俺「そうなるように仕向けた張本人が言う台詞か?」

エーリカ「・・・ホント、変わったね。良い方向に」

ゲルト「うむ」

バルクホルンは嬉しそうに頷いた。

それから、数秒間の静寂があった。・・・伝えるべきことは全部伝えられたのだろうか?
ミーナに尋ねる。

俺「・・・話は終わりか?」

ミーナ「ええ」

俺「そうか・・・」

俺は窓の外の空を見上げた。

 ・・・『生きるために戦っている』。自分で言った言葉に、ふと思った。
俺は・・・戦いが終わったら、どうなるんだろう・・・。

サーニャ「・・・?」


最終更新:2013年01月28日 16:06