―――――――――ある日・俺の部屋
ブウゥゥウゥゥン
俺は、飛んでいくみんなを窓から眺めながら考え事をしていた。
ネウロイがまた襲来してきたらしい。・・・異世界の人間という戦力を失ったばかりだというのに、ご苦労なことだ。
ちなみに俺は、肉体的にも精神的にもまだ本調子ではないという理由で、ミーナから自室での待機を命じられた。
・・・余計なお世話だ、と言おうとしたが我慢した。
俺「・・・」
コンコン
俺の部屋のドアがノックされた。・・・こんな時に基地にいる隊員は限られている。だから、誰なのか予想はつく。
俺「・・・サーニャか?」
「はい・・・」
起きてたのか。
―――――――――
ガチャ
俺「・・・」
サーニャ「・・・こんにちは」
俺「ああ」
サーニャ「・・・」ニコッ
・・・やっぱり、サーニャの笑顔には癒される。
俺「・・・なんか用か?」
サーニャ「俺さんと、お話がしたくて」ニコニコ
俺「そうか・・・入ってくれ」
サーニャ「失礼します・・・」スッ
俺「・・・」
バタン
サーニャが部屋に入ったのを見届けてから、俺はドアを閉めた。
――――――――
サーニャ「・・・」スッ
それからサーニャは、こちらを振り返り、
ギュッ
俺に抱きついて、俺の胸に顔を埋めてきた。
俺「っ」コン
その勢いで、俺は背後のドアに軽く頭をぶつけた。
サーニャ「・・・俺さん」
俺「ん」
俺はサーニャの頭を見下ろす。
サーニャ「・・・あの、・・・抱きしめてもらって、いいでしょうか?///」
俺「・・・」
断る理由なんてないよな。
ギュッ
言われたとおり、俺はサーニャのことを抱きしめる。
俺「・・・あったかいな・・・///」
サーニャ「・・・そう、ですか?///」
俺「ああ・・・///」
・・・サーニャが夜間哨戒を終えて寝ている間は、俺はいつも訓練をしているので、
こうして二人きりになれるときは少ない。だからこそ、この二人だけの時間を俺たちは大切にする。
他のみんなは今ネウロイと戦っているというのに、俺たちだけこんなことをしているというのはなんだか申し訳ない気もするけど、
こんな時くらいしか一緒になれないのだから仕方ない。
スッ
俺たちはどちらともなく抱擁を解く。
サーニャ「・・・俺さん」
俺「ん」
サーニャ「私・・・ずっと心配だったんです」
俺「何がだ」
サーニャ「こんな、戦いばっかりの世界、俺さんは嫌いにならないかな、・・・って」
・・・
俺「・・・戦いは好きじゃないけどさ」
サーニャ「・・・」
俺「戦ってるときのほうが、楽だよ。何も考えなくて済むから」
サーニャ「・・・だからって・・・」
俺「・・・」
サーニャ「後先考えずに、自分から傷つきにいくようなこと、しないでください・・・」
俺「・・・もうみんなに心配かけたくないから、気をつけようとは思ってるさ。
だから今は、そういう意味では、傷つくのは怖くなったかな。・・・もっと怖いこともあるけど」
サーニャ「・・・なんです?」
・・・
俺「・・・その、さ・・・俺がこの世界にいることで、・・・、
俺の元の世界の誰かがこの世界に呼ばれる可能性がある、ってことが、怖い」
サーニャ「・・・ネウロイが召喚した、あの女の子のことですか?」
俺「・・・」
あの子は特別だ。俺みたいに、中途半端に望郷の念を持っていたわけではなく、向こうへの未練が完全にない人間だった。
俺「・・・それは別だけど」
俺とあの子はたまたま元の世界に居場所がなかっただけであって、
もしまた誰かが召喚されても、・・・その人は、向こうに居場所のない人間だとは限らない。
・・・もし、そんな人と対峙したときに、・・・俺は何を思えばいいのか、何を言えばいいのかわからない。だから怖い。
・・・俺の選んだ道が、正しかったのか、間違いだったのか、今度こそわからなくなる。だから怖い。
俺「もし、・・・また、誰かが召喚されたら」
サーニャ「・・・」
俺「俺は、どうすればいいんだろうな・・・?」
サーニャ「・・・」
俺「・・・」
サーニャ「・・・」
―――――――――――――
俺「・・・そういえばさ」
サーニャ「はい?」
こんな話をしても仕方がない。別な話に持っていくか。
俺「ネウロイって、突然現れたんだよな?」
サーニャ「はい」
俺「じゃあさ、ネウロイ以外にも、突然現れたものって、あるか?」
サーニャ「・・・」ジッ
俺「・・・」
・・・あ、除外の対象が足りなかったな。
サーニャ「・・・俺さん」クスクス
サーニャが笑いながら言う。
俺「・・・俺とネウロイ以外でさ」
俺は苦笑しながら言う。
サーニャ「そうですね。・・・この世界には、昔から『怪異』という、変なものがあります。
・・・当時のことは詳しく知りませんが、きっと、それらも『突然現れた』・・・と思います」
俺「・・・怪異」
サーニャ「そしてこの世界の人は、その『怪異』に立ち向かってきました。・・・今回も、同じですね」
俺「・・・」
『ネウロイ』っていう怪異に立ち向かってるってわけか・・・
サーニャ「それで俺さん、あの・・・それが何か?」
俺「・・・突然現れるものが『怪異』なら」
サーニャ「・・・!」
俺「俺も、その『怪異』なんじゃないのかな、って思ってさ」
サーニャ「・・・俺さんが・・・?」
俺「人の姿だから、お前はそうは思ってなかったのかもしれないけど」
サーニャ「・・・」
俺「だからって、俺だけが『怪異じゃない』ってことにはならないんじゃないのかな」
サーニャ「・・・俺さんが、怪異・・・」
俺「もしかしたらその今までの『怪異』ってさ、元は、俺と同じように、別の世界の何かだったのかもな」
サーニャ「・・・じゃあ」
俺「ん?」
サーニャ「世界は二つだけではないのかも、ということですか?」
俺「・・・少なくとも、俺の世界にはネウロイなんていなかったからな。そういうことかもしれない」
サーニャ「・・・」
俺「・・・多分だけど、ネウロイは『別の世界に呼び出される』っていう現象まで、研究したんだろうな。
だから、その怪異を人工的(・・・人工的?)に起こすって段階にまで進歩したのかもしれない」
サーニャ「・・・世界の行き来を可能にする装置、ですか」
俺「ああ。・・・作るのに苦労したそうだけどな」
サーニャ「・・・そう言っていましたね」クス
俺「ハハハ・・・」
サーニャ「・・・」ジッ
サーニャが俺を見つめる。
俺「・・・どうした?」
サーニャ「・・・俺さんが怪異なら」
俺「・・・ん?」
サーニャ「俺さんと私達が、敵同士として戦う・・・そんな運命も、あったかもしれないんでしょうか・・・」
俺「・・・」
俺は、ウィッチーズがネウロイと戦っている真っ最中に空から落ちてきた。
なら、確かに、俺はみんなにではなくネウロイに保護されていたという可能性もあった。
・・・そうなっていれば、サーニャの言うとおり、俺はみんなと戦っていたのかもしれない。
俺の力が、この世界を破壊するという方向に向けられていたかもしれない・・・
・・・あれ?
『そしてこの世界の人は、その『怪異』に立ち向かってきました』
・・・つまり『怪異』は人類の敵として出現していたんだよな。今までずっと・・・
俺「・・・」
もしかしたら・・・
俺は本来、この世界の人間と敵対する立場にあるはずだったってことなのか?
サーニャ「・・・」
・・・まあ、例えそうだったとしても・・・
俺「そんなこと考えたって仕方ないさ。今は、お前たちと一緒に戦ってるんだから」
サーニャ「・・・はい」
俺「・・・それにさ」
サーニャ「?」
俺「違う世界の人間と、一緒に戦う・・・そんな『怪異』がいたって、別に悪いってわけじゃないだろ?」
サーニャ「・・・はい」ニコ
そんな怪異が居たって、構わないよな?・・・きっと。
・・・
・・
・
最終更新:2013年01月28日 16:10