トゥルーデ誕生日SS
今日は3月19日。
一月や二月と違って外を歩いても石畳みから寒さは浸透してくるわけでもない頃合いだ。
地中海とはいえ冬というとフィレンツェでは降雪があったりと、いろいろと想像しにくいこともある。
しかし三月なので基地から離れた所に位置するロマーニャの市街ではすでに軽装な人もいるし、陽気に道端で会話をしている人もみかける。
そんな中俺は、宮藤芳佳、リネット・ビショップ、シャーロット・E・イェーガー、フランチェスカ・ルッキーニ、エーリカ・ハルトマンの一行ととともに街へと足を運んでいた。
何をしに来たかと言われれば当然明日のことに備えるためにきたわけだ。
明日の3月20日はゲルトルート・バルクホルン大尉の誕生日。
ここにきているのはそのためである。
軍のトラックを拝借して、
シャーリーの運転ではだめだというリーネがいったので、自分が運転を申し出たのだ。
そしてここに到着したという状況である。
芳佳「それじゃあどうしますか?」
エーリカ「各自散開だ!適当に好きなものを買ってこよう」
シャーリー「それでいいな。じゃあ三時までにこの喫茶前に集合な」
ルッキーニ「シャーリー、あたしも一緒にいっていい?」
シャーリー「もちろんさ。あのカタブツにイイモノをくれてやろうじゃないか」ニヤリ
リーネ「芳佳ちゃん、一緒にいこ」
芳佳「うん!いいよ!じゃあみなさんまたあとで」
そういうわけで各自いつもの二人組に分かれてぱらぱらと別方向に散っていった。
取り残されたのは俺とエーリカ。
エーリカ「一緒にいこうか、俺」
俺「そうだな。ここにいても仕方がないし」
エーリカ「じゃあまずはお菓子を買いに行かないと……」
俺「私用か。まぁエーリカについていくよ。俺はこれといってあげたいものがないからさ」
エーリカ「ダンベルでもあげたら?」
俺「確かに喜びそうだな……。まぁ何にしようか歩きながら考えるよ」
エーリカ「そっか、それじゃあいこ」
そういって俺はぱたぱたと小走りするかわいらしい悪魔のあとをぽてぽてとついていく。
くるくると回っては道端の芸道に目を囚われて、表情をコロコロと変える。
元気だな、と思いつつ頭をフル活動させ全俺勢力を結集し脳内会議をする。
いったい何をあげればいいのだろうか。
~雑貨屋~
俺「そういやエーリカはなにをあげるつもりなんだ?」
エーリカ「私?私は~、このぬいぐるみとか!」
俺「うん、似合わないな」
エーリカ「わかってたけどね。まぁ私は秘密ってことで」
俺「常套句だな」
エーリカ「にしし、それが一番に思い浮かんだからまねされるわけにはいかないからね」
俺「それほどのものか。まぁ真似はしないけどな。でもいったい何にすればいいんだろうか」
エーリカ「昔は握力鍛えるやつあげてなかったっけ?」
俺「いや、さすがに今回はそういうわけにはいかないぞ……。あ~!!!人に真面目にプレゼントなんてしたことないからわからん!」
エーリカ「別に物じゃなくてもいいんだよ?」
俺「物じゃないって?」
エーリカ「つまり、形に残るものじゃなくてもいいんだよってこと」
俺「ふむふむ、それでもいけるのか」
エーリカ「トゥルーデが喜びそうなものでいいんだよ」
俺「クリスの人形とかあげたら喜びそうだ」
エーリカ「そうそう。あ、このお菓子おいしそー」
俺「ほらほら、なんでも籠にいれな。今日は俺が払うよ」
エーリカ「やった!じゃあこれとこれとこれとこれと!これも。あ、これも、それとこれも」バサバサバサ
俺「多すぎだろ」
エーリカ「男に二言はないよね~?」ニヤ
俺「こんなの絶対おかしいよ」
エーリカ「お菓子もジュースもあるんだよ。ほらトゥルーデのためだよ、トゥルーデのため」バサバサ
俺「……もう何も怖くない」
雑貨屋で恐ろしく大量にお菓子を買わされ、さらにはトラックまで運ばされた。
最後にありがとー、といって笑顔を見せてきたので許したが、エーリカの旦那になる人がこうやってコキ使われるのだろうかと思うと不憫でな
らずに涙したのは内緒だ。
時間は進み、時計はすでに三時を占めていた。
あのあといろいろ店をまわってプレゼントを探していろいろと買ってみたのだが。
ちょっと値段に恐怖したが、トゥルーデの笑顔を想像して即決で購入を決めたのだ……。
はたして喜んでくれるだろうか。
もう一度赤い日が差す夕暮れの中黒い排気ガスを出しながらトラックを運転し基地へと戻った。
そのあとエーリカの言葉を思い出しピンと頭に閃いたことがあるので、それを実行するためにも急いでハンガーへと向かった。
その前に執務室で、飛行許可をもらって、と。
ブリタニアへ出発、ロマーニャからだと最短で1900kmほどのはずだから……音速でいけば標準大気中で1225km/h。
ブーストを使えば一時間半ちょいか。途中で休憩もいれていけば大丈夫か。
行き帰りの往復で約6時間と多く見積もって……明日までには楽に帰ってこれるだろう。
~501基地、朝、ハンガー~
俺「うぐあ……魔法力使いすぎた」
整備兵「おら、コーヒー」
俺「ありがとよ。さすがにブリタニアまで行ったら疲れるな」
~回想~
ブリタニアへストライカーユニットを使って向かった。
場所はとある病院。トゥルーデの妹クリスティアーネのいる病院だ。
部屋をノックしてドアをあけて入室する。
クリス「えーと……俺さん?」
俺「そうそう、俺だよ。覚えてたのか」
実はトゥルーデと非番が被った日、連れ出されてクリスに紹介されたことがあったのだ。
一方のクリスは困惑していたようだが、話しているうちに多少なかよくなった。
そのつもりだが。
俺「今日はトゥルーデの誕生日なんだが、クリスティアーネはこっちにくることができないしさ、何かできないかと思ってな」
クリス「あ、そうだったんですか。じゃあこれお願いできますか?」
俺「プレゼント?」
クリス「はい!お姉ちゃんへのプレゼントです」
俺「わかったよ。あ、でも暇だったらここから連れ出してトゥルーデのもとへと連れて行ってもいいぞ」
クリス「それはさすがに病院の方に怒られてしまうので……」
俺「わかった、ちゃんと届けておくよ」
クリス「俺さんこんなところまでありがとうございます。どうしようかなと思ってて」
俺「将来の義妹のためなら!」
クリス「ふふ、俺さんてば冗談うまいです」
俺「えっ?」
クリス「えっ?」
~回想終了~
そういうわけでブリタニアからクリスティアーネのプレゼントを持って帰還。
帰りはブーストをかけて音速で帰ってきたのでジャケットがぼろぼろだ。
時間が来たので食堂へ、朝ごはんを食べに。
すでに全員集まっており俺が最後だった。
いつもの風景。
そしてこの後訓練との命令。いつもの命令。
ご飯をたくさん食べた後、もちろんお約束の訓練。
基地周り20周、滑走路50本、筋トレたくさん、坂本少佐と木刀での試合、飛行訓練、
模擬戦、最後に基地回り20周。
すべてをこなした後、美しい夕陽が水平線へと垂れ下っているのを滑走路で横になってみていた。
俺「はぁ……はぁ……しんど」
バルクホルン「俺、終わったのか?」
俺「トゥルーデか、今さっきね」
バルクホルン「ふふ、ずいぶんとばててるな」
俺「あれは本当に鬼教官だな。もうあんまりうごけねぇ」
バルクホルン「今夜の晩御飯は宮藤が奮発してくれるそうだ」
俺「トゥルーデの誕生日だからだろ?また後でも言うけど、誕生日おめでとう」
バルクホルン「あ、ありがとう。だが歳をとるのはウィッチとしてはあまり喜ばしくはないな」
俺「歳をとるってことは、生きてるってことだよ。だから喜ばしいことだと思うけどな」
バルクホルン「ふふ、俺がそういうならそうなんだろうな」
俺「(今日はずいぶんと機嫌がいいな)」
バルクホルン「ほら、ここじゃあなんだから談話室でもいこうじゃないか」
夕陽をバックにすっと手を差し伸べてくるトゥルーデの手をとりぐっと起き上がる。
すべすべとした手が心地いいのと悪戯心で立ち上がった後もぎゅっと握ったままにしていた。
バルクホルン「お、おい!///」
俺「?」
バルクホルン「くっ……」
俺「ちょっとした悪戯だ、すまないな。ほら、基地へ帰ろう」パッ
バルクホルン「あ……」
俺「どうかしたか?」
バルクホルン「い、いやなんでもない」
顔が赤くなっていたのでいたずらが過ぎたと思い手を離したが、一瞬だけ残念な表情になったのを視界の端で捉えた。
ちょっと気になって聞いてみるが、素知らぬふりをされてしまった。
そんな顔を見てほっておくほど俺はできない人間でもないので急いでトゥルーデへと近寄った。
驚くトゥルーデに少し気恥ずかしくも笑いかける。
俺「ほ、ほら帰るぞ」
バルクホルン「あ、ああそうだな!」
俺「基地の入り口までだから、な」
バルクホルン「わ、わかってるさ。まったく……片手が使えなくて歩きにくいな」
俺「そりゃ悪かったな」
バルクホルン「べ、別に悪くはない」
俺「トゥルーデは握力が強いな」
バルクホルン「あ、すす、すまない……。痛かったか?」
俺「いや、全然。それより、温かいよ」
バルクホルン「俺の方が、温かい」
俺「いやいやトゥルーデのが温かいよ」
バルクホルン「俺のだな」
俺「もうどっちでもいいや」
バルクホルン「そう、だな」
俺「……トゥルーデ、もう少し握力弱めてくれ」
バルクホルン「す……すまない……///」
俺「どうする?もう基地だぞ?」
バルクホルン「私はすでに力を弱めているぞ、俺が力をいれてるせいで離れないじゃないか」
俺「いや俺の方が力を抜いてるぞ。離さないのはトゥルーデのほうだぞ」
バルクホルン「みてみろ、私はこんなに力を弱めてるぞ」
俺「俺なんてもうありも潰せないほどの握力しか入れないぞ」
バルクホルン「お、俺が離さないのなら仕方ないな」
俺「よ、よく言うよトゥルーデ」
つながった影は表情はわからないものの、なぜかうれしそうだった。
つないだ手は基地についてからも廊下でペリーヌに見つかるまでしばらくそのままだったのは余談。
思う所、どっちも離そうとしなかったのは秘密。
談話室でエーリカやペリーヌ、エイラやサーニャたちと雑談したあと芳佳がご飯ですよと俺たちを呼んだのでがやがやと賑わいながら食堂へ向かった。
食堂に入った瞬間目を奪われる、テーブル上の豪勢な料理の数々に。
扶桑料理だけではないようだ、カールスラントの料理もいくらか混ざっている。
もちろん、定番の芋も。
リーネ「疲れた~」
シャーリー「うお~、すっげー。これリーネと宮藤が作ったのか?」
リーネ「あ、はい。うまくできているか不安ですけど」
ペリーヌ「さ、さすがですわね」
芳佳「えへへ、バルクホルンさんの誕生日ですから!」
ハルトマン「これ宮藤とリーネがトゥルーデのために作ったって言ったら卒倒するんじゃない?」
俺「ありうるかもな」
エイラ「うまそうダナ~」
サーニャ「主役がまだだから待ちましょう、エイラ」
エイラ「わ、わかってるぞ」
ざわざわと並べられた料理に声を立てる皆であったが、食堂に主役が入ってきた途端にぴたりと会話を一旦止める。
きょとんとするバルクホルンにぎゅっと全員が近寄る。
芳佳「バルクホルンさん!!誕生日おめでとうございます!!」
リーネ「おめでとうございます、バルクホルン大尉!」
バルクホルン「ああ、ありがとう、二人とも。この料理二人が作ってくれたのか?」
芳佳「はい!えっと、うまくできているかわかりませんけど」
バルクホルン「そんなことないぞ、きっとおいしいに決まっている!ありがとう、二人とも」
エーリカ「トゥルーデ誕生日おめでとう!いや~、また大人になっちゃったね~」ダキッ
バルクホルン「お、おい離せハルトマン。ま、まぁありがとう」
エイラ「おめでとナー、大尉。これプレゼントだゾ」スッ
サーニャ「おめでとうございます、バルクホルン大尉。私からも」スッ
バルクホルン「ありがとう二人とも、プレゼント受け取らせていただく。しかし……エイラのこれはなんだ?」
エイラ「スオムスパーチっていうとても堅い木で作ったコップだゾ。スオムスじゃあ定番なんダ」
俺「(コップの横に扶桑語で小さく妹好きと彫られているのは仕様か……?どうせいたずらだろうが)」
バルクホルン「エイラにしては繊細なプレゼントだな」
エイラ「失礼ダナ……。まぁ壊れにくいから気兼ねなく使ってクレ」
バルクホルン「感謝する」
全員が食堂に集まる間に、トゥルーデにプレゼントを各々が手渡していた。
自分はというと部屋におきっぱなしであるが、別に忘れてきたわけではなく、後で渡そうと思っていただけだ。
正直こういうプレゼントというものを真面目にするのは
初めてなので気恥ずかしい。
ミーナ「あら、みんなもうあつまってたのね」
ペリーヌ「さっきから皆さん騒がしいですわよ」
俺「みんな集まったな。ミーナ中佐はデスクワークでしたか」
ミーナ「ええ、毎日毎日疲れるわ、ほんと」
俺「胸中お察しできませんが、お疲れ様です。まだお若いですのに」
ミーナ「あら、厭味かしら?」
俺「そんな、本気ですよ。まだ、若い」
坂本「そうそう、バルクホルン、誕生日おめでとう。朝は言えなくてすまなかったな」
バルクホルン「ありがとう、少佐」
シャーリー「歳をとってカタブツ加減が和らぐことを祈るばかりだな」
バルクホルン「リベリアン、貴様はもう少し真面目になるべきだな。説教してやろうか?」
シャーリー「うへ~、こんな時までそれか~」
ルッキーニ「誕生日おめでとー!!」ダキッ
バルクホルン「おわっ!」
芳佳「じゃあ皆さん座ってください~、ケーキもありますから」
俺「エーリカさんが手伝ってくださいました」
ペリーヌ「なんですって……?」
俺「盛り付けだけ」
ペリーヌ「安心しましたわ」
エーリカ「ちぇー、クリームとか作って塗ってみたかったよ」
シャーリー「でも盛り付けきれいじゃないか」
エーリカ「へっへーん、全部私がやったんだよ」
エイラ「ほんとカ~?このチョコで書いた文字もか?」
エーリカ「もちろん!あ、みんな信用してないな~」
リーネ「ほんとですよ。ハルトマンさんがバルクホルンさんのために何かやりたいって言ってきてくださってもがもんぐぐ!」
エーリカ「し、しゃべっちゃだめだよ、リーネ」
俺「トゥルーデのためにってそのチョコの文字を五回くらい書き直してたな」
エーリカ「もう!言わないでよ、俺」
バルクホルン「ふふっ、よくがんばったな。ありがとう、ハルトマン」
エーリカ「あぇ……、べ、別にいいけどさ……///」
エイラ「早くたべよう。冷めてしまうじゃないカ」
みんなに囲まれて気恥ずかしそうにするトゥルーデをみて自分もうれしくなっているのを感じる。
やっぱりトゥルーデにはこういう顔が似合うな、笑顔とか気恥ずかしそうな表情とか。
ほかには気難しくしてる表情を好きだ、個人趣味であるが。
古典的に電気を消しケーキにささったローソクへと火を灯す。
暗闇のなかを橙色の火がぼやっと絶え間なく燃え、周りを照らし、消されるのを今かと待ちわびるように揺れている。
俺「どうぞどうぞ」
バルクホルン「ああ。みんなありがとう」
そして息を吹きかけ、灯火をふっとかき消した。
同時に。
おめでとう(ございます)、と改めて基地中に響き渡るほど大きく祝いの言葉を贈った。
其の後、絢爛豪華な食事とともに美味佳肴なケーキを食べながら、愉快適悦な時間を過ごすこととなった。
楽しく騒がしかった食事も終わりを迎えた。今は日が過ぎようとする二時間前。
酔っ払ったものや、机につっぷくして眠ったものたちを抱えて部屋に運び込みベッドに寝かせたりしているうちにも時間は経ってしまった。
しかしやることもあるので自分の部屋に戻り放置しておいたものをポケットに入れてから部屋を出て、トゥルーデの部屋を訪ねる。
そしてほろ酔い加減のトゥルーデの手を夕方の時のように引っ張って、外へと連れ出した。
バルクホルン「お、おい、どうしたんだ?」
俺「ここらへんでいいか」
バルクホルン「なにかあるのか?」
俺「そうそう、あるんだよ。えっと……改めて誕生日おめでとう」
バルクホルン「それ聞いたぞ」
基地から外にでて明かりがぼんやりと顔を照らす場所で、トゥルーデに向き直って言い直す。
トゥルーデはなぜ俺が外まで連れてきたかをすぐ悟ったので、ふっと軽く笑って付き合ってくれる構えをしてくれた。
俺「空気を変えてってことだ。……ちょっと身長伸びたな」
バルクホルン「そりゃ、成長はするぞ。俺はもう止まったんじゃないか?」
俺「トゥルーデは160ちょっとだろ?それにプラス15cmぐらいが男はいいって言われるから。だから180ぐらい」
バルクホルン「ふふっ、だけど俺も昔の頃より大きくなったな」
俺「あの頃はトゥルーデより少し大きかったくらいだったな」
バルクホルン「ここに派遣されてきたときはあまりに変ってて気づかなかったぞ」
俺「男は毎日成長するっていうしな、そんなもんだ」
バルクホルン「私は……あの頃に比べて変わったか?」
俺「すごく変わった。月並みだけどきれいになった」
バルクホルン「言いすぎだ」
俺「事実だよ。そうそう、これ。プレゼント」
バルクホルン「こんなものまで用意していたのか……?」
俺「真剣になって誰かへのプレゼントなんて選んだことはないから……だめかもしれないけど」
バルクホルン「いや、ありがとう。俺が一生懸命選んでくれたものなんだろう、大事にするさ。開けてもいいか?」
俺「どうぞどうぞ」
外側は単なる茶袋だが中に入っているものはきれいな包装がされている。俺はぽりぽりと頬を掻きつつトゥルーデの反応をうかがう。
バルクホルン「これは、髪を結ぶ紐か?」
俺「そうだよ、今使ってるのもう古くなってるかと思ってさ。シンプルなのにしてみた」
バルクホルン「ふふ、ありがとう。しかしよく私をみてるな?」
俺「そ、それはおいといて次いこう」
バルクホルン「おい、なんだこの服は」
俺「トゥルーデに似合うかと思って。それはエーリカも一緒に選んでくれた」
バルクホルン「ド、ドレスって……」
俺「ミーナ中佐も赤いの持ってたからいいかもと思ってな。色の深い紺色を選んでみた」
バルクホルン「これ高かったろう……?いいのか?」
上目遣いのトゥルーデ、いったい何を気にしているのだろうか。
かわいいので頭をなでなでとしてやる。
俺「そんなこと気にしなくてもいいって。だからさ、また今度着てくれないか?」
バルクホルン「ああ、もちろんだ。に、似合わなかったらすまない」
俺「いや逆にドレスのほうが見劣りするかもな」
バルクホルン「俺は言いすぎだ///」
俺「あとこれ、クリスティアーネからのプレゼント。昨日ブリタニアにいってたんだ」
バルクホルン「だからいなかったのか……。というかあそこまで飛んで行ったのか?」
俺「ああ、最短コースを飛んで行ったよ。さすがに疲れたけど」
バルクホルン「よく帰ってこれたな。本当に、ありがとう、俺」
俺「誕生日おめでとうだってさ。いい妹だな~」
バルクホルン「自慢の妹だ。あとで部屋でみてみるか」
俺「また今度会いに行こうか。俺がいうのもなんだけど」
バルクホルン「ふふ、クリスは俺相手には緊張するようだぞ」
俺「俺のどこに緊張するって言うんだ」
バルクホルン「わからないが、あれじゃないか、やっぱりまだ知りあって日が浅いからじゃないか?」
俺「う~ん、根気がいるな」
聞こえるのは波音と木がささやく音、そしてトゥルーデの声。
トゥルーデをまっすぐに見据えてから優しく抱き締める、今日ずっとできていなかったことをまず初めにする。
俺「今日できてなかったから」
バルクホルン「落ち着くな、抱きしめてもらうと」
俺「トゥルーデはこうしてると小さく感じるよ」
バルクホルン「こうしてると俺が大きく感じる。温かいな」
肩におでこをぽんとつけてくるトゥルーデ。
やっぱり女の子だな、と思いつつさらに強く抱きしめた後ちょっとだけ軽く腕を解く。
すでに吐息が当たる距離、目を閉じるトゥルーデ、近づく唇。
そして口づけ。
バルクホルン「.....ん.....ぅむ.....ふちゅ......ン、ふちゅ......」
やわらかい唇をゆっくり丹念に味わっていく。
わずかに酒気が伝わってきて少し心地がいい、さらに貪る。
よだれが垂れることも気にせず、熱に浮いたように舌を絡ませなめあう。
舌の中央、わずかにくぼむところをずるっと舌でなめ上げるとトゥルーデの体がわずかにびくりとしたので執拗にせめてみる。
バルクホルン「んく.....ぅぁ.....お、おれ.......んちゅ......ん、ぁむ、ちゅ........」
トゥルーデがまたびくりと体を動かす。
しかしトゥルーデも負けじと舌を吸ってきたり甘噛みしてきたりしていることにさらにヒートしていく。
どのくらいの時間そうしていたかは知らないが唇を離したときトゥルーデの瞳はうるんでいるのをみてやりすぎたかなと自粛する。
俺「トゥルーデ、ニュルンベルグのうるわしの泉って知ってる?」
バルクホルン「はぁ……はぁ……あの金色の塔だな、知っている」
俺「よかった、ちょっと待っててね」
バルクホルン「?」
俺はトゥルーデをすっと離して魔法力を解放。
あの塔は昔に見たことがあり、さらに構造を記憶するほど気に入ったのを覚えているので、再現することができる。
もちろん魔法で。
俺「瞬間氷結……タワー、うるわしの泉。はっ!」ドガッ
ピシシビキキキビキピキピキピキッ……
数秒にして八角形の高さ17メートルの塔が出来上がる。
本物のように金色ではないが、基地から漏れてくる光を氷が中に閉じ込め反射している。
美しい氷の塔は二人の前にそびえ立ち、輝いていた。
俺「細かいところを調整してっと……。トゥルーデ、どうかな?」
バルクホルン「お、驚いたぞ。こんなに再現できるものなのか……芸術品じゃないか」
俺「能力限界はあるけど、これくらいならな。これについての話を知ってるか?」
バルクホルン「確か……願い事をしながら金環を三回まわしてその願い事を人に言わなければ叶う、だったか?」
俺「その通り。金環じゃないけど。なにか願い事したら……」
バルクホルン「ふっ、俺がかなえてくれるのか?」
俺「その通り。なんでもいいからやってきていいぞ。俺が全力でかなえるよ」
バルクホルン「なんでもか?」
俺「なんでも」
バルクホルン「じゃあ一つだな」
―――………でありますように。
トゥルーデは氷塔に歩み寄り氷で作った柵にかけてある氷環をつかみ取って目をつむる。
そして俺には聞こえない声で何かをつぶやき環を三回まわし俺にぐっとふり向き直った、見とれるくらいの笑顔をともに。
俺はその問いに、ただまっすぐに答えた。
もちろんだと。なんでも叶えてみせると。
そのあと二人でそれを眺めながら基地で部屋から取ってきたワインとグラスで寄り添いながら二人だけの時間を過ごした。
翌日、エーリカとトゥルーデの提案によりみんなで一回、そして俺とトゥルーデで一回写真を撮った。
意図が全く見えなかったが、トゥルーデの部屋を尋ねたところ窓際に飾ってあったきれいな写真たてを見て納得したのだった。
なんだ、エーリカとクリスの誕生日プレゼントは一緒だったのか。
気持ちのいい、仲がよさそうな賑やかそうな写真が一枚。
そして。
全員の誕生日プレゼント抱えて、さらに紺色のドレスを着て立つトゥルーデとそれに寄り添う一人の男の写真。
どうやらトゥルーデの誕生日は成功のようだ。
こんな表情をしているのだから。
終わり
最終更新:2013年01月29日 13:57