Episode5 『女教皇』

最初の試練から3週間ほどがたった。

相変わらずネウロイは週1回のペースで出現していた。

---バルト海上空---

エーリカ「数多すぎだってこれ・・・あと何機いるの?」

ゲルト「黙って戦えハルトマン!このぐらい前にもあっただろ!」

俺「燃えろ!!」ブォン!

そう叫び刀を横に振ると、俺の周りに蒼い炎が現われる。

それはこの前手に入れた、スルトの力だ。

その蒼炎は一つ一つが意思を持つようにネウロイに向かい、打ち砕いてゆく。

ルッキーニ「俺、すっごーい!」

あの日以降訓練を重ね、ようやく炎をコントロールするに至った。

芳佳「やああああああああ!!」シュンシュン!!

宮藤の両手からネウロイのビームが放たれる。

彼女もここ最近の訓練でネウロイの能力の大半をものにし、その力を遺憾なく発揮していた。

シャーリー「宮藤もすごいな・・・」

俺「いた!バルクホルン大尉!!大尉の近くのそいつです!!」

魔眼により俺がコアを持つネウロイを発見する。

ゲルト「よし!まかせろ!!」バラララララララララ!!

パリーン!!・・・

ゲルトが放った弾丸は見事に目標に命中し、コアを砕いた。

ゲルト「よし!」

俺「さすがっス!バルクホルン大尉!!」

ゲルト「いや、お前の指示のおかげだ。ありがとう。」

俺「うっス!」

ミーナ「みなさんお疲れ様。基地へ帰投します!」

全員「了解!」


---格納庫---


エーリカ「しっかし、この前の戦いから一段と強くなっちゃったね、俺。」

ゲルト「ああ、それに宮藤もだ。ネウロイの力をあそこまで使いこなすとは・・・」

俺「いえ、まだまだこれからっス!」

芳佳「わたしも、もっと強くなってみんなを守ります!!」

ゲルト「ああ、頼りにしてるぞ、お前達。」

エーリカ「でも肩に力入れすぎないようにね~トゥルーデみたいになっちゃうから。」

ゲルト「どういう意味だハルトマン!!」

エーリカ「わー、おこったおこった~」タッタッタッタッタ

ゲルト「まてー!ハルトマーン!!」タッタッタッタ

シャーリー「ほんと仲いいな、あいつら。」

リーネ「シャーリーさんもルッキーニちゃんと仲良しですよね。」ニコ

ルッキーニ「にひー!なかよし~!」

シャーリー「そうだな、仲良しだ!」

シャーリー「それはそうと俺。」

俺「なんスか、イェーガー大尉?」

シャーリー「あっと、その堅っ苦しい呼び方やめないか?アタシのことはシャーリーでいいよ。」

ルッキーニ「あたしもー!『しょうい』なんてつけなくていいよ!」

俺「わかったっス。シャーリーさん、ルッキーニさん。」

リーネ「わたしも・・・名前で呼んで欲しいです。」

俺「はいっス、リーネさん。」

シャーリー「そんで俺、明日もしかして暇かい?」

明日は予定では非番になっている。

俺「はい。明日は特に予定ないっス。」

シャーリー「じゃあさ、明日アタシと勝負しないか?」

俺「勝負?」

シャーリー「そう、勝負さ。ストライカーを使ってのスピード勝負だ。」

シャーリー「この前の戦いのとき、目の前であんなスピードを見せ付けられたんだ。ぜひ勝負して欲しいんだけど、どうかな?」

俺「わかりました、その勝負受けてたつっス!」

シャーリー「よし決まりだ!じゃあ負けたほうはは明日の晩ご飯のデザートを勝ったほうにあげる。それでいいか?」

俺「望むところっス!」

シャーリー「よし!じゃああたしらは先に行くよ。また後でな~」

ルッキーニ「あとでね~」

俺「はいっス。またあとで。」

サーニャ「おかえりなさい、俺さん。」

エイラ「おかえり~」

俺「ただいまっス。サーニャさん、エイラさん。」

エイラ「聞いたゾ。明日勝負するんだってナ。」

俺「はいっス。デザートがかかってるから負けられないっス!」ムフー!

エイラ「でもシャーリーは早いゾ~大丈夫なのカ?」

俺「やってみなきゃわかんないっス!」

エイラ「あしたの夕飯はサーニャが作ってくれるんだからナ。負けたら承知しないぞ。」

俺「もちろん負ける気はないっスよ!」

エイラ「だってさ、サーニャ。」

サーニャ「う・・・うん。がんばってください・・・ね///」

俺「はいっス!!」ニッ!



翌日・・・

---バルト海上空---

シャーリー「よっし、じゃあはじめよう!」

俺「うっス!」

レースのルールは至って簡単だ。

スタート地点からエイラのいる折り返し地点までいき、そこからまたスタート地点にもどる。ただそれだけ。

ルッキーニ「いちについてー、よーい・・・・・」

2人がエンジンの出力を上げる。

ルッキーニ「ど―――――ん!!」

ビュン!!

ルッキーニの合図と同時に2人が急発進する。


---基地バルコニー---

坂本「ほぉ・・・やってるな。」

基地から望遠鏡で2人の姿を見る坂本。

ミーナ「ええ、なんでも今晩のデザートをかけてるそうよ。」

坂本「はっはっは。食べ物の魔力は恐ろしいな。」

ミーナ「まぁ、理由はそれだけじゃないのでしょうけど。」

坂本「一応、今回も記録はとっているんだよな?」

ミーナ「ええ、新しい記録が出るかもしれないしね。」

---バルト海上空---

ブロロロロロロ

俺「クッ・・・はやい・・・」

シャーリー「どうした?あのときのお前の速さはこんなもんじゃなかっただろ?」

俺「まだまだぁ!オルフェウス!!」

もっと速く・・・そう念じる。

ブォン!!

とそれに応えるようにストライカーが唸りを上げる。

ブロロロロロロ!!

シャーリー「なんだ!?」

横を見るとすでに隣には俺がいた。

俺「追いついたっスよ!」

シャーリー「へ・・・へぇ・・・やるじゃないか。でもまだこっからだ!!」

2人が並走する状態でエイラのいる折り返し地点で折り返す。

エイラ「俺~負けんなヨ~!」

エイラの声援を受け取り、俺は親指をグッっとたてる。

シャーリー「一度は音速を突破したんだ・・・マーリン!!」

シャーリーがさらにスピードを上げる。

俺「まだ上がるってのか・・・でも、やるしかない!」

さらに強く念じる。もっと、もっと速くと・・・

ストライカーが爆音を上げさらにスピードが増す。

シャーリー「なに!?」

俺「これで・・・追いついたっ・・・スよ・・・」ハァハァ

再び2人が並ぶ。

お互いに譲れないものがあった。

意地と意地がぶつかり合う。

そして・・・

ルッキーニ「ゴール!!」

結果は・・・



---食堂---

シャーリー「はっはっは!あたしの勝ちだな。」

俺「はぁ・・・後ちょっとだったんスけどねぇ・・・」

ルッキーニ「ふたりともすっごく速かったよ!ビューンっていってドーンってかんじだった!」

シャーリー「ははは、そうだな。しかし俺の根性には恐れ入ったよ。あんな息切れするぐらい魔力使うんだから。」

俺「どんな勝負も全力で受ける。それが俺のモットーっス!まぁ負けたけど・・・」

シャーリー「そっかそっか!ま、その根性に免じて今回は罰ゲームは無しにしといてやるよ。」

俺「マジスか!?ありがてぇ・・・でも、次こそは勝つっス!」

シャーリー「あたしだって負けないよ!」

ミーナ「あのシャーリーさん・・・ちょっといいかしら?」

シャーリー「どうしたんだ、ミーナ中佐?」

ミーナ「実はね、さっきのレースのとき・・・」

ミーナ「ほんの一瞬だけれど、あなた、音速を超えてたの。」

全員「えええええええええええええええ!?」

こうしてシャーリーはレシプロストライカー音速を突破したウィッチとして、公式記録に残されることになった。

その後しばらく後・・・

今日はサーニャとエイラが料理当番だ。

目の前にはオラーシャ料理がたくさん並んでいる。

俺「これは・・・ピロシキにボルシチ、それにビーフストロガノフも・・・」

芳佳「俺さん、詳しいですね。」

俺「はいっス。小さいころおふくろによく作ってもらってましたから・・・」

俺の母親はオラーシャ人であった。

俺「!?こ・・・これは・・・」

彼が目をやった先には彼の好物である・・・

俺「シャルロット!!」

苺のシャルロットがあった。

サーニャ「気に入ってもらえましたか?」

俺「サーニャさん・・・は・・・はいっス!とっても!」

サーニャ「よかった・・・この前俺さんの好きなデザートを教えてもらったので、作ってみました。」

サーニャ「それと・・・」

俺「え?」

サーニャ「お誕生日おめでとうございます。」ニコ

全員「おめでとー!」

パチパチパチ

よく見るとシャルロットの周りに何本かロウソクが置かれていた。

そう、今日は俺の誕生日だった。

俺「あ・・・ああ・・・」ウルウル

エイラ「ど・・・どうしタ!?」

俺「グスッ・・・いや・・・お・・・おれ・・・こんなんしてもらえると思ってなくて・・・ヒグッ・・・」

坂本「はっはっは!感動のあまり泣いてしまったか。」

俺「は・・・はいっス・・・グスッ・・・み゛なざん・・・・本当に゛・・・あ゛・・・・・あり・・・・がとうっ・・・・ス・・・うわあああああぁぁぁ!」

感極まって俺はついに泣いてしまっていた。

その刹那・・・

ギュッ・・・

俺「!?」

暖かい何かが俺を包み込む。

ペリーヌ「な・・・」

エイラ「さ…さささサーニャ!?」

ミーナ「あらあら。」ウフフ

サーニャ「よしよし・・・」ナデナデ

サーニャが俺を抱いていた。

俺「うわあああああぁぁぁん!」

その姿はさながら子供を慰める母親だった。

久々に感じた優しいぬくもりに、さらにとどめなく涙があふれる。

俺はしばらくサーニャの腕の中で泣いた。


数分後・・・

サーニャ「落ち着きましたか?」

俺「グス・・・は・・・はいっス・・・///」

サーニャ「よかった。」ニコ

ミーナ「さぁ、俺さんも落ち着いたようですし、ご飯をいただきましょうか。」

全員「いただきまーす!」

この日は俺にとって忘れられない一日となった。


もう少しであの試練の日から1ヶ月が経とうとしていた、そんなある日。



---俺の自室---

深夜0:00

また不意に目覚める俺。

窓のほうを見ると月がもう少しで満月になりそうだ。

アニマ「やあ。」

俺「!?」

ベッドの近くには前に試練の宣告をした少年、アニマが立っていた。

俺「アニマ・・・」

アニマ「そんなに怖い顔しないでくれよ・・・別に君に何かしようってわけじゃないんだ。」

俺「・・・何のようだ?」

アニマ「そっけないなぁ。ま、来た理由を簡単に言えば、また試練がやってくるってことを伝えに来たんだ。」

俺「またか・・・もう勘弁してもらいたいな。」

アニマ「そうだよね。ホントなら僕もやめさせてあげたいんだけど、僕は生憎そんな事が出来る立場じゃないんだ。ごめんよ。」

俺「お前が襲わせてるんじゃないのか?」

アニマ「そんなわけないだろ。それにそんなことをしたって僕には何の得にもならない。」

アニマ「僕はあくまでも宣告者。君に試練を告げるのが僕の役目さ。」

俺「・・・・・・・」

アニマ「ちょっと話しすぎたね。僕はもう行くよ。じゃあ、頑張ってね・・・」スゥー…

アニマは消えてしまった。

俺「頑張れ・・・か・・・簡単に言ってくれる・・・」

翌日

---基地の外---

早朝

芳佳「坂本さん、おはようございます。」

坂本「宮藤か、おはよう。」

芳佳「あの・・・坂本さん・・・」

坂本「どうした、宮藤?」

芳佳「坂本さんは・・・もう戦わなくてもいいのに、どうして毎朝訓練しているんですか・・・?」

坂本「宮藤。」

芳佳「はい・・・?」

坂本「訓練とは何のためにするのか、考えたことはあるか?」

芳佳「それは・・・強くなるため・・・ですか?」

坂本「うむ。確かに戦いの技術や体力をつけるという目的もある。だがそれだけではない。」

芳佳「はい。」

坂本「訓練とは、己との闘いだ。私はそう考えている。」

芳佳「己との・・・闘い・・・」

坂本「そうだ。戦いの中では時に己の弱くもろい部分が見えてくる。これを克服するために訓練をするのだ。」

坂本「その弱さは力だけではなく心の弱さもだ。」

坂本「特に心の弱さを克服するのは難しい。人にとって大きな壁の一つといえるだろう。」

坂本「この壁を越えるために私たちは訓練をする。訓練の中で己と向き合い心も鍛え上げるのだ。」

坂本「私は教官である以上、皆に自分の弱さを露呈するわけにはいかない。それが教える者としての礼儀だ。」

坂本「だから私は訓練を続ける。そうでないと、お前達に示しがつかんからな。」

芳佳「そうですね・・・坂本さんが訓練する理由、わかりました。」

坂本「といっても、もはや日課になっているというのもあるんだがな。はっはっは!」

芳佳「あはは・・・」

坂本「・・・宮藤。」

芳佳「・・・はい?」

坂本は烈風丸を鞘に納め、それを宮藤に渡す。

芳佳「坂本さん?」

坂本「これをお前に託そうと思う。」

芳佳「どうして・・・ですか?」

坂本はまっすぐ宮藤を見つめこう告げる。

坂本「お前はすでに一人前のウィッチだ。私を超えるほどのな・・・」

芳佳「そんな・・・私はまだまだ半人前で・・・」

坂本「いいや、ロマーニャでお前が私を救ってくれたとき確信した。お前はすでに一人前だ。」

坂本「だから、今のお前になら安心してこれを托せる。」

芳佳「坂本さん・・・」

坂本「それに今の私が持っていても、これはただ人を斬る事しかできない諸刃の剣だ。」

坂本「だが、魔力を取り戻し前よりもさらに強くなったお前なら、この刀の真の力を引き出せるだろう。」

坂本「どうか、受け取ってほしい。」

芳佳「・・・わかりました、ありがたく頂戴します。」

芳佳「坂本さん・・・わたし、坂本さんの分まで戦います!」

芳佳「そして、いつか平和な空の下でみんなが笑って暮らせるように・・・わたし、頑張ります!」

坂本「ああ、頼りにしているぞ、宮藤。」

芳佳「はい!」

坂本「よし、そうと決まれば早速訓練だ!お前が烈風斬を使えるようにビシバシ、鍛えてやるからな!」

芳佳「はい!・・・え?」

この日は早朝から宮藤はシゴかれまくった。

昼ごろ

---基地内廊下---

坂本「ん?俺じゃないか。」

俺「坂本少佐。どこかお出かけっスか?」

坂本「いや、今は暇をもてあましていたところだ。俺、今暇か?」

俺「はいっス。」

坂本「そうか。お前とは一度手合わせ願いたいと思っていたんだ。頼めるか?」

俺「俺なんかでよかったらお付き合いしますよ。」

坂本「それはよかった。では少し準備をしてくるから先に中庭へ出ていてくれ。」

俺「了解っス。」


---基地中庭---

坂本「すまない。待たせたな。」

俺「いえ、大丈夫っス。」

坂本「ほらこれを使え。」

そういって木刀が手渡される。

俺「なかなか年期が入ってますね・・・」

坂本「ああ、私の父上が子供のころから使っていたものだそうだ。」

俺「なるほど・・・」

坂本「では、構えろ。」スッ

坂本が正面に木刀を構える。

対して俺はいつものように木刀を腰あたりに据え、構える。

坂本「ほぉ・・・お前は抜刀術を心得ているのか。」

俺「これが俺の戦いかたっスから。」


---基地内バルコニー---

エーリカ「トゥルーデ、あの二人なんかやってるよ?」

ゲルト「ああ、どうやら扶桑の武道のようだな。」

ルッキーニ「なになに?なにしてんの?」

シャーリー「ルッキーニ、あまりでかい声だしちゃだめだぞ。あの2人の邪魔になるからな。」

ルッキーニ「えー、なんで~?」

シャーリー「今の2人はそれだけ真剣なんだ。まぁ見てれば分かるだろうよ。」

ルッキーニ「ふ~ん・・・」

エーリカ「あ、始まったよ。」


---基地内中庭---

坂本「フッ・・・!」

先手を打ったのは坂本だ。

素早い踏み込みで一気に俺の元へと間合いを縮める。

坂本「やぁっ!」

縦一閃。素早い斬撃が降りかかる。

しかしそれを俺は紙一重でかわす。

俺「はぁっ!」

回避からの素早い抜刀。しかし坂本はそれを予期していた。

カンッ!

俺(反応が速いッ・・・!)

俺の一撃は坂本に防がれてしまった。

再び下がり間合いを取る。

坂本「どうした?その程度なのか?」

俺「まだまだっスよ。」

お互い再び木刀を構える。

次に先に動いたのは俺だ。

坂本よりも素早い速度で間合いをつめる。

坂本(!?)

俺「たぁっ!!」フォン!

先ほどとは段違いの速さで木刀が抜かれる。

カンッ!・・・カランカラン

振りぬいた一閃により木刀がはじかれ地面へと落ちる。

そして・・・

俺「勝負ありっス。」

坂本の首には木刀が突きつけられていた。

坂本「・・・はっはっは!完敗だ。見事な一閃だったぞ。」

俺は突きつけた木刀をおろす。

俺「いえ、少佐もかなりの腕前をお持ちで。正直焦りました。」

坂本「む?その様子だと私は少し舐められていたようだな?」

俺「いえ、とんでもないっス。ただ手合わせで本気を出したのは親父以来でしたんで。」

坂本「そうか・・・ところでお前の流派は何というのだ?」

俺「えっと、流派名は『至天金剛流』っス。たしか『柳生新陰流』から派生したとか言う話をきいたっス。」

坂本「ふむ。それではなかなかに歴史がありそうだな?」

俺「いえ、たぶん祖父が見栄張ってでっち上げただけだと思います。流派自体は俺の曾祖父あたりから始ったんじゃないかと。」

坂本「そうなのか?おかしな話だな。」

俺「全くっス。ただ、教えだけはいっちょまえっスけどね。」

坂本「どういうものだ?」

俺「『抜かば斬れ、抜かずば斬るな』」

坂本「なるほど・・・」

俺「もう1つは『不討、不退(うたず、さがらず)』」

坂本「ふむ・・・」

俺「そして・・・」

俺「『刀は人を斬る物に非ず、己を斬る物なり。』」

坂本「己・・・?」

俺「はいっス。刀を振るうにはそれ相応の覚悟がいるっス。」

坂本「ああ、そのとおりだな。」

俺「刀はそういった意味で誰かを傷つけるものじゃなくて、己の内の迷いやそういったものを断ち切るものだと教えられたっス。」

坂本「ふむ・・・なかなか奥深い教えだな・・・」

俺「ほんと、無駄に奥深いっス。むしろ何も考えないで決めたんじゃないかと思うくらい。」

坂本「それはないだろう。私も未練を断ち切らねばな・・・」

俺「?」

坂本「こっちの話だ、気にするな。それより手合わせありがとう。また時間があれば手合わせして欲しい。」

俺「もちろんっス。」

お互いに一礼する。扶桑の武道共通の礼儀である。

坂本「その木刀は貸しておこう。練習にでも使ってくれ。」

俺「ありがとうございます。」


---基地内バルコニー---

ゲルト「・・・・・・・」

エーリカ「何が起こったかぜんぜん分かんなかったね。」

シャーリー「あいつ陸の上でもあんな速く動けるのか・・・」

ルッキーニ「もう終わっちゃったの~?つまんなーい!」

シャーリー「じゃあルッキーニ、遊びにいこうか。」

ルッキーニ「うん!かくれんぼしたい!」

エーリカ「あたしもやる~」

エーリカ「トゥルーデは?」

ゲルト「私は遠慮しておこう。」

エーリカ「え~?つれないなぁ、もう。」

ゲルト「つれない奴ですまなかったな・・・」ツカツカ…

エーリカ「トゥルーデ・・・?」

ゲルトは足早に去っていった。

シャーリー「なんかあいつ様子がおかしかったな。」

ルッキーニ「はやくいこーよ~」

シャーリー「そうだな、いこう、ハルトマン。」

エーリカ「う・・・うん・・・(今はそっとしたほうがいいかな・・・)」

---ゲルト&エーリカの部屋---

エーリカ「今日元気なかったけど、どうしたのさトゥルーデ?」

ゲルト「・・・・・」

エーリカ「黙ってちゃわかんないよ。」

少し沈黙した後、観念したゲルトは胸中の思いを明かす。

ゲルト「・・・・・お前には嘘をつけんな。」

エーリカ「良かったら話してくれない?トゥルーデの悩み。」

ゲルト「そうだな・・・」

ゲルト「今日坂本少佐と俺が訓練しているのを見てな、思ったんだ・・・」

エーリカ「何を?」

ゲルト「うん、私も少佐のように魔力を失ったらどうするんだろうな・・・と。」

エーリカ「・・・・・」

ゲルト「最近、戦っている内に分かってきたんだ、私の魔力が以前よりも衰えていることに・・・」

エーリカ「・・・・・うん。」

ゲルト「いずれ私の魔力も消えてしまうだろう。でも今は・・・今だけは失うわけには行かないんだ・・・」

ゲルト「このカールスラントを取り戻すまでは・・・絶対に。」

エーリカ「そうだね・・・」

ゲルト「今までは考えないようにしていたんだ・・・自分が戦えない姿なんて、想像したくなかったから・・・」

ゲルト「でも・・・今日、少佐を見て・・・急に・・・怖くなってしまったんだ・・・」ボロボロ

ゲルトの頬に涙が伝う・・・

ゲルト「このまま・・・戦えなくなってしまうのが・・・恐い・・・嫌なんだ・・・私は・・・私はもっとお前やみんなと・・・」

ギュッ

そんなゲルトをエーリカが抱きしめる。

エーリカ「そっか、気づいてあげられなくてごめんね・・・」

エーリカ「でもね、トゥルーデ一人で背負うこと・・・ないんだよ?」

ゲルト「ハルトマン・・・」

エーリカ「トゥルーデにはあたし・・・ううん、あたし達がいるんだから。」

ゲルト「!!」

エーリカ「もっとあたし達を信じてよ、頼ってよ。」

エーリカ「この国を取り戻したいって気持ちは、みんな一緒なんだから。」

ゲルト「う・・・うぅ・・・フラウ・・・あぁ・・・」

ゲルト「うわあああああああああぁぁぁ!」ボロボロ

ゲルトの涙をエーリカが力強く抱きしめ、受け止める。

エーリカ(今はいっぱい泣いていいんだよ・・・トゥルーデ・・・)


しばらくした後・・・

ゲルト「・・・ありがとうフラウ・・・もう大丈夫だ・・・」

エーリカ「うん。」

抱いていたその手を離すエーリカ。

エーリカ「あのね、トゥルーデ。」

ゲルト「なんだ?」

エーリカ「実は、この前ミーナも同じこと言ってたんだ。」

ゲルト「ミーナも?」

エーリカ「うん。ほら、ミーナももう少しで20になっちゃうでしょ。」

この世界ではウィッチは20歳を超えると魔力を失うのが一般的だという。

エーリカ「だから悩んでるのはトゥルーデだけじゃない、みんな一緒。」

ゲルト「そうだったのか・・・私は自分のことばかりで周りが見えていなかったな・・・」

エーリカ「たぶんミーナのほうが先に魔力なくなっちゃうと思う。だからさ・・・」

エーリカ「その前にあたし達の手で絶対に取り戻そうね、この国を!」

ゲルト「ああ、もちろんだ!」

2人は再びこの国を取り戻す決意をした。

絶対に自分達の手で取り戻すと・・・


2日後

俺「今日で1ヶ月か・・・」

あの戦いからちょうど一ヶ月がたった。

俺「また来るかもしれないな・・・」


---ブリーフィングルーム---

ミーナ「それでは、ブリーフィングを始めます。」

一通りの説明を終えシフトの発表へと移る。

ミーナ「それで、今日の夜間哨戒は・・・」

俺「隊長。」

ミーナ「どうしましたか俺一等兵。」

俺「今日の夜間哨戒任務に自分を加えて欲しいっス。」

ミーナ「どうしてかしら。」

俺「いえ、ただ今日は行かなきゃいけない気がするんです。お願いします、隊長。」

俺の目は真剣だった。

ミーナ「・・・わかりました。では今日の夜間哨戒任務は俺一等兵とリトヴャク中尉、そしてビショップ曹長にお願いします。」

俺&サーニャ&リーネ「了解。」

ミーナ「それでは解散とします。各自任務に当たってください。」

全員「了解。」


---基地内廊下---

リーネ「あの、俺さん!」

俺「どうしたっスか、リーネさん。」

リーネ「今日の哨戒任務、よろしくお願いします。」

俺「こちらこそ、よろしくっス。」

リーネ「私、もしかしたらお2人の足をひっぱちゃうかもしれないですけど・・・」

俺がリーネの唇の前に人差し指を立てる。

俺「そういうことは考えちゃダメっス。それに、リーネさんの命中精度と火力はすごく心強いっスよ。」

俺「だから、一緒に頑張りましょう、ね?」

リーネ「はい!」ニコ

俺(う~ん・・・ここの子はみんな笑うと可愛いんだよな・・・///)

リーネ「それじゃあ、また後で。」

俺「はいっス。また。」ニッ



---バルト海上空---

今日も夜の海上は静寂に包まれている。

リーネ「静かですね・・・」

サーニャ「何も無いといいんですけど・・・」

しかし、サーニャの言葉は見事に裏目に出てしまった。

俺「!!」キュイイイイイン

突然俺とサーニャの魔導針の色が変わる。

ふと反応の有る月のほうに目を向ける。

そこには女性の聖職者のような姿をしたネウロイがいた。

俺「あいつ・・・いつの間に・・・」

サーニャ「!」

突然上空からネウロイがビームを放つ。

サーニャ「リーネさん!あぶない!!」

リーネ「え・・・?」

俺「チッ・・・!」ブォン!

俺が咄嗟に蒼炎を纏った刀でネウロイのビームを両断する。

俺「大丈夫っスか、リーネさん!?」

リーネ「は・・・はい、なんとか・・・ありがとうございます。」

俺「よかった・・・サーニャさん基地に連絡を!」

サーニャ「わかりました!・・・本部、応答願います・・・」

俺「リーネさん!」

リーネ「は・・・はい!」

俺「ここからあいつを狙うこと・・・できますか?」

リーネ「や・・・やってみます!」

リーネは対装甲ライフルを構える。

リーネ(集中して・・・)

慎重に狙いを定める・・・

リーネ「そこ!」ドンッ!

弾丸は見事に命中し装甲を抉り取る。

リーネ「やった!」

俺「さすがっス、リーネさん!」

しかし装甲は次第に再生を始める。

リーネ「そんな・・・早い・・・」

俺「大丈夫っス、今度は俺があいつの装甲を剥ぎ取ります。リーネさんは俺の合図でコアを狙い打ってくださいっス。」

サーニャ「応援、まもなく到着するそうです。」

俺「ウィルコ。応援が来る前にかたづけて、驚かしてやりましょう!」

サーニャ&リーネ「はい!」

俺「いくっスよ!」ブロロロロ!!

ネウロイに近づく。それと同時にネウロイも逃げ始める。

俺「逃がさない!」ガガガガガガガ!!

しかし命中しても装甲がなかなか削れない。

俺「うわっ・・・硬いな・・・なら・・・」

俺「おおおおお!!」

いつものように切先に魔力を集中させつつ、ネウロイへと肉薄する。

しかしネウロイの速度が幾分か速く、なかなか追いつく事ができない。

俺「くっ・・・サーニャさん!こいつの動き、止められますか!?」

サーニャ「やってみます!」バシュバシュバシュ!!

ネウロイを止めるためにフリーガーハマーを撃ち込む。しかし・・・

リーネ「そんな!?」

サーニャ「また・・・」

またもやサーニャのロケット弾はネウロイの体を通り抜ける。

俺「仕方ない・・・リーネさんお願いできますか!?」

リーネ「あ、はい!やってみます!」

リーネ「当たって!!」ダンッ

ネウロイが先に攻撃を察知し紙一重でかわす。

俺「いくぞ・・・!」

しかし、ネウロイがかわした方向には既に俺が迫っていた。

俺「撥ぁっ!!」ブォン!!

蒼炎を纏った刀は先ほどの銃撃よりも高い威力でネウロイの装甲を剥ぐ。

そしてコアが露出する。

その瞬間をリーネは見逃さなかった。

彼女は自身の固有魔法により、スコープなしで約1km先をも見通すことが出来る。

リーネはすぐさま、ボーイズライフルを構える。

リーネ「当たって!!」ダンッ!

一直線に、一寸の揺るぎも無く弾丸は空を突き進む。

そして、その弾丸は見事にネウロイのコアを砕いた。

リーネ「やった・・・やった!」

俺「やったスね、リーネさん!」

サーニャ「リーネさん・・・すごい・・・」

遠くから声が聞こえてくる。

芳佳「リーネちゃーん、サーニャちゃーん、俺さーん!」

リーネ「芳佳ちゃん!」

リーネが宮藤のもとへと駆け寄る。

リーネ「やったよ芳佳ちゃん!わたし、ネウロイを倒したよ!」

芳佳「リーネちゃんが!?すごいよ、リーネちゃん!」

リーネ「うん、俺さんとサーニャさんのおかげよ!」

その後も次々と仲間が到着する。

エイラ「サーニャー!」

サーニャ「エイラ!」

エイラ「大丈夫だったカ、サーニャ?怪我してないカ?」

サーニャ「大丈夫よ、エイラ。心配してくれてありがとう。」ニコ

エイラ「サーニャ・・・///」

ミーナ「お疲れ様。俺さん。まさか私たちが来る前に倒すとは・・・」

俺「はいっス、今日はリーネさんがいなかったら危なかったっスけどね。」

エーリカ「リーネやる~!」

ゲルト「ああ、お前は501に欠かせない優秀な狙撃主だ!」

ペリーヌ「ほんと、やるようになりましたわね。」

エイラ「ツンツンメガネも頑張れヨナ。」

ペリーヌ「ど・・・どういう意味ですの!?」

リーネ「ありがとうございます、みなさん!」

こうして2番目の刺客はリーネの手によって撃破された。


---俺の部屋---

俺「ふぅ・・・今日も疲れた・・・」

俺はベッドに腰掛ける。

ふと机に目をやるとまたあのカードがあった。

俺「またか・・・」

カードを手に取る。

そのカードには女性の教皇の姿が描かれ下の欄に【PRIESTESS】と書かれていた。

一通り眺めるとカードは砂のように消えていった。

そして俺の頭に声が響く・・・

――私は導くもの―――スカアハ―――

―――――あなたに力を与えましょう――――――

頭の中の声が消えると同時に、俺の体が少し軽くなる。

どうやら前よりも魔力が増幅したようだ。

俺「スカアハ・・・か。」

俺「今日は寝よう。」

二度目の試練はこうして幕を閉じた。

続き→ペルソナ6
最終更新:2013年01月29日 14:12