夜
10:59
---基地内廊下---
俺はエーリカに言われた通りバルコニーへと向かっていた。
俺(さっきエーリカさんなんて言ってた・・・?俺を・・・好き・・・?じゃあなんだ?俺・・・告白されんのか!?)
俺(でも・・・俺には他に好きな人が・・・いや・・・それもどうせ叶わない恋だもんな・・・だったら・・・いや、でも・・・ああもう!)
あれこれと考えて居ると、バルコニーの方角から歌声が聞こえてきた。
♪~♪♪~
俺(あれ・・・この歌・・・)
その歌に誘われるかのように、俺はバルコニーへと足を進めた。
11:00
---基地内バルコニー---
たどり着いたバルコニーに、エーリカの姿はなかった。代わりに、別の少女が一人、天に祈りを捧げるかのように手を胸元で組んで歌っていた。
俺「サーニャ・・・さん・・・?」
サーニャ「♪~・・・? 俺・・・さん?」
バルコニーに居たのは銀色の髪の少女。サーニャであった。
彼女はその身に赤いマフラーと、グレーのコートを纏い、頭にオラーシャ帽を被っていた。
俺「なんで・・・ここに・・・?」
サーニャ「・・・エーリカさんに呼ばれて・・・・・」
俺「そ、そうなんスか・・・俺もなんスよ。」
サーニャ「そう、ですか・・・」
それからしばらく、2人はエーリカを待ち続けた。
~5分後~
俺「・・・・・」
サーニャ「・・・・・」
~10分後~
俺「・・・クシュン!」
サーニャ「あ、あの、よかったらマフラー・・・」スルリ
俺「あ、あぁ。すみませんっス。お借りするっス・・・」マキマキ
~15分後~
俺「・・・・・」
サーニャ「・・・・・」
俺(こ、来ねぇ・・・どういうことだってばよ・・・)
いくら待ってもエーリカが姿を現すことはなかった。待ち続ける2人の間にも、どこかもどかしい雰囲気が流れていた。
俺(ど、どうしよ・・・とりあえず何か話すか・・・)
サーニャ(なにかお話しした方がいい・・・かな・・・)
俺&サーニャ「あ、あの!」
俺&サーニャ「ご、ごめんなさい・・・」
俺&サーニャ「・・・・・」
俺&サーニャ「ふっ・・・」
俺「くくっ・・・ははははは!」
サーニャ「ふふっ・・・」クスクス
俺「ははは・・・なんか、前にもこんなことあったっスよね。」
サーニャ「はい・・・なんだか、おかしいです。ふふっ・・・」
以前、一緒にお菓子を作った時にも同じようなことがあった。その時の事を2人は思い出す。
俺「・・・・・」
サーニャ「・・・・・」
しかし、それからまた会話がなくなってしまった。いざ話そうにも、なかなか続かない。
俺(今・・・他に誰もいないよな・・・)
俺には彼女に伝えたい思いがあった。それは、長い間内に秘めてきた淡い恋心。
俺(でも、サーニャさんにはエイラさんがいるし・・・やっぱり・・・)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
芳佳「確かに、エイラさんはサーニャちゃんのことが好きで、サーニャちゃんもエイラさんの事好きかも知れません!いえ、きっとそうです!」
芳佳「でも、想いも伝えないで諦めたら、それこそそこで試合終了なんじゃないですか!?」ドン!
芳佳「俺さんは頑張るべきです!むしろ当たって砕けろです!!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
俺(そう・・・だよな・・・どうせ叶わない恋なんだ・・・)
俺(それに、今言わなかったらたぶん俺、一生言わない・・・だったらいっそ、思いを伝えて砕けた方がいいよな・・・)
俺(何も言わないで終わる方が、悔いが残るもんな・・・うっし!)
自身に喝を入れ、彼女に向き直る。
俺「・・・あの、サーニャさん・・・・・」
サーニャ「はい・・・?」
俺「その・・・ありがとうございました。」
サーニャ「?」
俺「俺、ここに来ていろんな思い出ができました。誕生日祝ってもらったり、逆にお祝いしたり、お菓子作ったり、祭り行ったり、お芝居とかもして・・・」
俺「本当は戦ってるはずなのに、それを忘れさせてくれるような・・・そんな毎日が、すごく幸せで楽しかったです。それって、やっぱりサーニャさんやみんながいてくれたからっス。本当に、ありがとうっス。」
サーニャ「それは私も同じ・・・俺さんが来てから私、今まで感じたことの無い新しい気持ち、いっぱい知ることができました・・・私のほうこそ、ありがとうございました・・・」
俺「はは・・・じゃあ、お互い様っスね。」ニッ
サーニャ「はい。」ニコ
俺「それで・・・」
そこで一瞬言葉を詰まらせる。
俺「・・・あの・・・サーニャさん・・・今から俺が言うこと・・・どうか、驚かないで聞いてもらえますか・・・?」
サーニャ「? は、はい・・・」
突然、俺の声が真剣なものへと変わる。うつむいた瞳をなんとか彼女へ向ける。
俺「その・・・俺・・・」
意を決して発する。ずっと言いたかった言葉。
俺「俺は・・・!」
思いの丈の、全てを。
俺「サーニャさんのこと、好きです・・・!」
サーニャ「えっ・・・」
俺「仲間とか、友達とかじゃなくて・・・その・・・一人の、女の子として・・・」
サーニャ「!!」
突然の告白。サーニャは驚き、口許を両手で覆った。
俺は恥ずかしくなって再び視線を落とす。
俺「あなたと出会って、一緒に過ごすうちに・・・その・・・好きになっちゃいました・・・」
俺「でも、サーニャさんがエイラさんの事、好きなのは知ってます・・・それでも、この気持ちだけは、どうしても伝えたかったから・・・」
俺(勢いで言っちった・・・でも、これでいいよな・・・覚悟はできてるんだ。後は・・・)
俺が思いのすべてを伝え終わり、もう一度、彼女の顔を覗く。
そんな彼女の瞳には、今にも溢れそうなほどの涙が湛えられていた。
俺「! ご、ごめんなさい!あなたを・・・泣かせるつもりじゃなかった・・・」
俺「そうっスよね・・・こんなこと急に言われて、驚くなって言う方が無理っスよね・・・まして、俺なんかに・・・」
サーニャはその言葉を首を横に振り、否定する。
サーニャ「ううん・・・違う・・・違うの!」
俺「え・・・?」
サーニャ「嬉しかった・・・あなたに、好きって言ってもらえたこと・・・」
サーニャ「だって・・・」
少女も伝える。ずっと伝えたかった思いを。
サーニャ「私も、俺さんの事、大好きだから・・・」ニコッ
彼女が笑顔を見せると同時に、その瞳から大粒の涙が零れ落ちた。
あまりの予想外の返事に今度は俺が驚き、困惑する。
俺「え・・・?なんで・・・?・・・エイラさんは・・・?」
サーニャ「えっ・・・?」
俺「だって、サーニャさんは、エイラさんの事が好きで・・・それで・・・」
サーニャ「信じて、くれないんですか・・・?」
俺「・・・・・」
サーニャ「じゃあ――」
サーニャが、俺の目の前へと歩み寄る。
スッ
それから、俺の肩へ手を添え、少し背伸び。ゆっくりと目を瞑りつつ、俺との距離を縮めてゆく。
俺「え・・・」
そして少女は、自分の持つ精一杯の勇気を振り絞って、
チュッ…
俺「!!」
俺の唇に、そっと口づけた。
それから、ゆっくりと唇を離してゆく。
サーニャ「・・・こ、これで・・・信じて・・・くれますか・・・?///」
俺「サーニャさん・・・」
サーニャ「私も、俺さんの事・・・ずっと・・・ずっと、大好きでした・・・一人の、男の人として・・・」
俺「・・・ホントに・・・本当に、サーニャさんは・・・俺なんかで・・・よかったんですか・・・?」
サーニャ「当たり前です・・・私が好きなのは、俺さんだから・・・」
俺「っ・・・!!」
ヒシッ…
サーニャ「!」
胸の中の抑えきれなくなった思いが弾け、俺はサーニャを掻き抱く。
俺「・・・ありがとう・・・サーニャさん・・・俺、今すごく幸せっス・・・」ポロポロ
サーニャ「うん・・・私も・・・すごく嬉しい・・・です・・・」ギュゥ
サーニャはそう言って、俺の腰へと手を回し、抱きしめ返す。
サーニャ「あの・・・『サーニャ』って・・・」
俺「え・・・?」
ふと、サーニャが顔を上げて言った。
サーニャ「これからは、『サーニャ』って、ちゃんと・・・呼んで欲しいです・・・」
俺「いや・・・でも、サーニャさんは上官っスから・・・」
サーニャ「なら・・・上官、命令・・・///」
気恥ずかしそうに、サーニャが上目遣いで目配せしながら訴える。
俺「・・・わ、わかったっス。じゃあ・・・呼びます・・・」
サーニャ「・・・///」コクッ
俺「・・・さ・・・ささ・・・さー・・・///」ドキドキ
しかし、中々言い出すことができない。女性を名前だけで呼ぶことに、俺は慣れていなかった。
俺「・・・あの・・・俺だけじゃ、不公平っス・・・だから・・・その、俺の事も、よかったら『俺』って呼んでほしいっス・・・」
サーニャ「・・・そうしたら、呼んでくれますか・・・?」
俺「は、はい・・・」
一呼吸置き、決心した後、サーニャは呼ぶ。
サーニャ「お・・・俺・・・・・///」ニコ
それに応えるように、俺も呼び返す。
俺「サー・・・ニャ・・・///」
照れ笑いを浮かべながらも、心を込めて、お互いの名前を呼び合う。心はそれだけで、いっぱいに満たされた。
それから少しして、自然と二人の視線が交わった。
サーニャ「・・・・・」
俺「・・・・・」
抱擁を交わしながら、しばらく黙ったまま見つめあう。サーニャは潤んだ瞳で俺を見つめ、俺もじっとそれを見つめ返す。
サーニャ「んっ・・・」
ふと、サーニャが目を閉じた。少女なりにがんばって勇気をだしたおねだり。
その意味に気付いた俺は、戸惑いながらも少しづつ、唇を寄せてゆく。
目を閉じながら、徐々に距離を埋める。その途中で、そっと彼女の左の頬に手を添える。
近づいてゆくうちに、今までの思い出が走馬灯のように駆け巡る。俺は、そんな思い出をくれた彼女に感謝と愛情をこめて、
唇を、サーニャの唇へと重ね合わせた。
たった4、5秒の出来事。でも、その瞬間に俺が感じた幸福は、今まで感じたどんなことよりも幸せであった。
それから名残惜しむように、ゆっくりと唇を離し、瞳を開いてゆく。
サーニャ「・・・///」ニコッ
目の前に、うっとりとした表情で微笑む彼女がいた。
そんな彼女がとても愛おしくて、もう一度きゅっと抱きよせる。
俺「サーニャ・・・」
サーニャ「はい・・・」
俺「ありがとう。それと、色々と辛い思いさせて、ごめんなさい・・・」
サーニャ「・・・・・」
俺「ここに戻ってきた時、俺、君があんなに心配してくれるとは思わなかったっス・・・みんなにも聞きました。ずっと、心配してくれてたって・・・」
俺「ただでさえご両親の事で苦しい思いをしてるのに・・・俺、そんなことも知らず君をもっと苦しませたっス・・・」
サーニャ「・・・・・」
俺「だから、これからは・・・できるか分からないけど、君に幸せになってもらえるように頑張るっス。だから・・・その・・・俺の・・・恋人になってくれますか・・・?」
サーニャ「はいっ・・・///」ニコッ
俺「・・・ありがとう・・・」スッ
俺は片手でサーニャの柔らかな髪をそっと撫ぜる。サーニャは気持ち良さそうに目を細めた。
それから暫く、二人は手を繋ぎ語らう。今まであった事、そして、これからの事・・・
俺「ってか、結局エーリカさん来なかったっスね・・・」
サーニャ「うん・・・」
俺「寒くなってきたし、そろそろ戻りましょっか・・・」
と、俺が基地へ戻ろうと振り返った時
クイッ
俺「?」
見ると、サーニャが俺の袖を引っ張っている。
俺「どうしたっスか?サーニャ?」
サーニャ「もう少し・・・」
俺「え・・・?」
サーニャ「もう少し、一緒に・・・いたい・・・」
俺「いや、でも・・・」
サーニャ「お願い・・・」
俺「・・・じゃあ、俺の部屋、来ますか?」
サーニャ「! ・・・///」コクッ
俺「・・・・・」
長い時間、二人で一緒に過ごした。
――――――
――――
――
12/30
僕との約束の日の前日
---基地内ラウンジ---
宮藤から少し話したい事があると皆が集められた。
ペリーヌ「どうしましたの、急に?」
芳佳「はい・・・あの、私の中のネウロイ・・・ヒュプノスが話したい事があるって・・・」
ミーナ「ヒュプノス・・・って、あの人型ネウロイの事かしら?」
芳佳「はい、今あの子とかわります・・・」
リーネ「かわるって・・・」
すると宮藤が使い魔を発現させ、両目を赤に染める。
ヒュプノス「・・・はじめまして。」
宮藤の声色が心なしか無機質なものに変わる。
ゲルト「!?」
ミーナ「あなたが・・・ヒュプノス?」
ヒュプノス「はい。私が対ネウロイ非常制圧特殊生物兵装。通称、ヒュプノスです。現在、私は宮藤芳佳の所有する言語中枢を利用し、あなた方とコンタクトを図っています。」
リーネ「あの、芳佳ちゃんは・・・」
ヒュプノス「ご心配いりません。今は彼女と人格を交代してもらっているだけです。彼女は、意識の根底でこの話を聞いています。」
リーネ「よかった・・・」
ミーナ「それで、お話って一体・・・」
ヒュプノス「私も一連の話は宮藤芳佳の体内で聞いていました。あなた方にお願いがあり、今日お話しさせていただく次第です。」
坂本「願い・・・?」
ヒュプノス「明日、彼を・・・デスを殺してください。」
ルッキーニ「え・・・?」
俺「・・・どうしてっスか?」
ヒュプノス「デスが言っていた通り、母なるものを倒すことなど不可能だからです。あれはあなた方の言語で言う『死』そのもの。そもそもその事象を消すなど不可能です。」
エイラ「でも、アイツを殺せば、今までの記憶が消えちゃうんダロ?それに、そんなことしたら本当に世界は滅びちゃうんダロ?」
ヒュプノス「それでもです。私は、あなた方に苦しんでほしくない。」
ミーナ「あなたもネウロイなのに、どうしてそう思うのかしら?」
ヒュプノス「私も、この宮藤芳佳の体内にいたことで、デスと同じく、僅かながら人としての性質が・・・心が芽生えてしまいました。」
ヒュプノス「宮藤芳佳があなた方とのコンタクトを重ねる度、私もあなた方の輪の中に入れた気がしました。それが私は幸福だった。」
ヒュプノス「ネウロイとして居場所を失った私にも、居場所ができた気がした。だから、その居場所をくれたあなた方を苦しませたくない。そう思いました。」
坂本「ネウロイとしての居場所・・・お前は、宮藤と接触するまでどうしていたんだ・・・?」
ヒュプノス「私は、ご存じのとおり人工のネウロイ。故に、同胞であるネウロイからも問答無用で敵視され、攻撃を受け続ける日々を送っていました。」
ヒュプノス「一番初めに逃げ延びた場所のスオムスという国で、私は一度同胞に連れ去られました。」
ヒュプノス「彼らは私の姿と、私に搭載されたコアコントロールシステムを解析し、模倣。そして、姿を私のような人型に変え、洗脳という術を身につけました。」
エイラ「聞いたことある・・・前にカウハバの基地でも、ネウロイに洗脳されたウィッチがいたって・・・確か、507の中尉が・・・」
坂本「迫水のことか・・・」
ヒュプノス「私はなんとか彼らの手から逃げ延び、再び逃げ続ける日々を送りました。」
ヒュプノス「その途中、ブリタニアと呼ばれる国でネウロイの力を用いた兵器の開発現場を目撃しました。」
ゲルト「ブリタニア・・・ネウロイ兵器・・・ウォーロックの事か・・・」
ヒュプノス「しかし、その時の私はすでに疲弊しきり、その現場を破壊することはできなかった。加えて、そこ研究者たちにも見つかり、攻撃を受けました。」
ヒュプノス「それから私は再び逃げ、傷を癒すために、私は残された力でコアコントロールシステムを用い、一つの巣を掌握し、そこに居座りました。それがあなた方と
初めてコンタクトした・・・」
ヒュプノス「はい。そして私は彼女と・・・宮藤芳佳と出会いました。」
ヒュプノス「私は自らをネウロイと認識しつつも、彼女を攻撃する気にはなれませんでした。その理由は私にもわかりません。でも、彼女となら分かり合える。そんな思考がふとよぎりました。」
ミーナ「ネウロイにも・・・意思があるってことかしら・・・?」
ヒュプノス「残念ですが、それは分かりかねます。・・・それから私は彼女を巣へと誘い、見せました。私という存在と、今まで見てきたもののすべてを。そして彼女は私という存在を理解し、認めてくれました。」
ヒュプノス「その矢先でした、あの時見た、人工のネウロイ兵器に撃滅されかけたのは・・・」
エーリカ「されかけたってことは、大丈夫だったってこと?」
ヒュプノス「はい。私はそれから時間をかけてゆっくりと再生し、次に逃げ延びた国・・・ロマーニャと言いましたか・・・そこで再び私は人間とのコンタクトを図ろうとしました。」
坂本「トライアヌス作戦の時か・・・」
ヒュプノス「しかしながら、今度は同胞により私は粛清を受け、巣ごと撃滅されかけました。それでも私は生き延び、再び逃げ続ける日々を送りました。」
ヒュプノス「そして、私は力尽きる寸前で再びこの少女に出会い、融合を果たし、今に至ります。」
ミーナ「そう・・・話してくれてありがとう。それで、彼を殺してほしいという話だけれど・・・」
ヒュプノス「はい。あなた方がこれ以上抗おうとも母なるものを倒すことはおそらく不可能です。勝ち目のない戦いに、私は命を懸けてほしくない。」
シャーリー「それでもさ、やっぱり諦めるのは嫌だよ。絶対に。」
ゲルト「ああ。その通りだ。勝つか負けるかなど、抗ってみなければわからないからな。」
俺「それに決めたんス。絶対に、守り抜いてみせるって。」
ヒュプノス「・・・元はと言えば、私があなたの中にデスを封印したのが原因・・・それさえなければ、あなた方が苦しむ必要はなかった・・・」
俺「俺は、あなたの所為だなんて思ってない。むしろ、感謝してるっス。」
ヒュプノス「何故?」
俺「だって、こんなこと言っていいのか分からないけど、あいつが・・・デスが俺の中にいなけりゃ、俺は魔力を覚醒させることもなかった。」
俺「そうじゃなきゃ俺、こうして皆とも出会えなかったっス。それに、俺も昔からウィッチみたいにみんなを守れるような力が欲しかった。」
俺「だから、そういう意味じゃ、あなたには感謝してるっス。」
ヒュプノス「・・・・・」
俺「だから、俺は守りたいんス。こうして出会えたみんなとの思い出と、これからを。」
エイラ「守りたいって思ってるのはオマエだけじゃない。ワタシだってそうサ。」
サーニャ「私も、同じ気持ちよ・・・」
皆も一様にうなずく。
ヒュプノス「・・・どうしても、抗うというのですか・・・?」
ミーナ「ええ。もう、決めたことだから。」
落ち着いていながら、しっかりとした覇気を込めてミーナは言い返す。
ヒュプノス「・・・何を言っても無駄なようです。分かりました、私も、最後まであなた方に力を貸します。」
ミーナ「それは助かるわ。ありがとう。」
ヒュプノス「それと、坂本美緒。」
坂本「?」
ヒュプノス「あなたに攻撃したこと、今更ながら謝罪させていただきます。申し訳ないことをしました。」
坂本「はっはっは!昨日の敵は今日の友ともいうからな、もう気にしてなどいない。」
ヒュプノス「そうですか・・・それともう一つ。俺。」
俺「はい?」
ヒュプノス「やはり、あなたの人生を狂わせてしまったことは詫びなければなりません。申し訳ありませんでした。」
俺「だから、俺はむしろ感謝してるくらいっスから。もういいっスよ。」
ヒュプノス「そのお心、感謝します。・・・では、失礼します。」
そう言い、ヒュプノスが目を閉じると使い魔の尾と耳が引っ込む。
彼女が再び目を開けると、目は元の色に戻っていた。
リーネ「芳佳ちゃん・・・?」
芳佳「うん。大丈夫だよ、リーネちゃん。」ニコッ
そして迎える12月31日・・・
約束通り、僕がやってきた。ついに決断の時だ。
僕「やぁ、久しぶりだね。もうすぐで0時、約束の時間だ。答えはもう・・・出てるのかな・・・?」
俺「ああ。もう決まったよ。」
僕「もう一度だけ言っておくけど、僕を殺すということで選択を曲げる必要はない。僕はどのみち消える存在だ。変な同情心は起こさないでほしい。」
ミーナ「・・・・・」
僕「それじゃあ、答えを聞こう。」
エイラ「俺、言ってやれヨ。」
シャーリー「ああ、ガツンとな。」
ルッキーニ「俺ならできるよ!」
エーリカ「キミが正しいと思ったことを言うだけだよ。難しいことじゃない。」
ペリーヌ「きっと、今は皆、あなたと同じ方向を向いているはずですわ。」
ゲルト「頼むぞ。俺。」
ミーナ「みんな、あなたを信じてるわ。お願い。」
坂本「安心しろ。お前が選び取った未来を、誰も責めるようなことはしない。」
リーネ「私も、今のこの気持ちに正直でいたいです。」
芳佳「お願いします、俺さん!」
サーニャ「俺・・・」
俺は首だけ振り向き、一度頷居た後もう一度僕へと向き直り、告げる。
俺「俺は・・・いや、俺たちは・・・」
決断の時。
僕を殺し、記憶を手放して滅びの時まで何も知らずただ死を待つか。
それとも、僕を殺さず、滅びに抗い続けるか。
選択は俺の手へと委ねられた・・・
最終更新:2013年01月29日 14:23