---北海上空---
イヴ「雷撃よ、『ジオンガ』!」
イヴの目の前に現れる魔法陣。そこから電撃が直線状に放たれる。俺はそれをシールドによって防ぐ。
アダム「終いや!!」
後方からの斬撃。直感で体をそらし、何とか避ける。
イヴ「『ジオンガ』!!」
俺「しまっ・・・」
回避した態勢から戻る前に、俺へと電撃が飛んでくる。防御が間に合わない。
もうだめか・・・そんな思考が過り、俺は瞳を閉じる。だが、電撃が俺へと届くことはなかった。
俺「え・・・?」
芳佳「大丈夫ですか!俺さん!!」
瞳を開くと、目の前には赤色のシールドを展開した宮藤の姿があった。
俺「宮藤さん・・・なんで・・・」
芳佳「坂本さんの代わりに来ました。この女の人の相手は、私がします。」
俺「ダメっス!!戻ってください!!」
芳佳「ここまで来たら、もう逃げられないです。私も戦います。」
俺「でも・・・」
芳佳「でももだっても無いです。俺さんはそっちの男の人をお願いします。」
そう言って宮藤はイヴのいる方へストライカーを駆る。
アダム「どうすんのや、あの子?」
俺「・・・宮藤さんは強いっス。今は、彼女を信じます。」
アダム「そうかい。ほんなら、タイマン張るか?」
俺「アンタは・・・あのイヴって人、助けに行かなくていいんスか?」
アダム「イヴは負けへん。絶対にな。」
俺(・・・とりあえず、早いとこコイツを退けて、宮藤さんを助けなきゃな・・・)
アダム「覚悟せぇや・・・オラァ!!」
俺「おおおおッ!!」
ギィン!
その一方、宮藤は。
芳佳「どうしても、戦わなくちゃいけないんですか・・・?」
イヴ「あなた方が退いてくれるならば、戦う必要などありません。」
芳佳「私たち、その先にどうしても行かなきゃいけないんです。お願いです、私、できればあなたと戦いたくない・・・」
イヴ「退けば、あなた方は滅びを止めようと邪魔をする。滅びは確かに避けることは不可能。ですが、あなた方によって止められてしまうという可能性も無きにしも非ず。」
イヴ「芽は、早いうちに摘まねばなりません。あなた方がこの先へ行くというのなら、私たちはそれを全力で止めます。」
芳佳「どうして・・・どうしてそこまでして、この世界を滅ぼそうとするんですか!?」
イヴ「あなたに言っても仕方のないことです。焔よ、『アギラオ』。」
ボウッ、と火の玉がイヴの横に出現し、宮藤へと飛んでゆく。
芳佳「うっ!」
瞬時にシールドを展開。迫っていた火炎はシールドに接触すると、爆ぜ、消える。
イヴ「あなたも私たちと同じネウロイの力を持つというのに・・・なぜ滅びを受け入れようとしないのですか?」
芳佳「生きたいからです・・・これからも、この先もずっとずっと生き続けて、みんなと一緒にまた笑いたいから・・・だから、諦められないんです。絶対に。」
イヴ「笑顔の為だけに戦うと?生きることはただ苦しいだけだというのに。」
芳佳「生きることは、確かに苦しいかもしれないです・・・でも、その分、喜びもたくさんあります。生きているときに感じれる喜びは、きっと、どんなことよりも素敵なことだと思います。」
芳佳「私は、そんな喜びをこれからも感じたい・・・みんなと分かち合いたい・・・だから、それを守るために戦うんです。」
イヴ「なら、生を享受している間に喜びを感じられなかった私は、どうなるというのですか・・・?無駄な生だったというのですか・・・?」
芳佳「無駄な命なんて、一つもないです。あなたにもきっと、喜びを感じられる時が・・・」
それから、数秒の間が空く。
イヴ「・・・そんなの・・・そんなの綺麗事よ!!」
芳佳「!!」
突然イヴの口調が一変し、芳佳は驚く。
イヴ「ネウロイのせいで、目の前でお父さんもお母さんも死んだ・・・孤児院でできた友達も、みんな、実験に利用されて・・・みんな・・・みんな・・・」
イヴ「いつもそう・・・私にあるのは苦しいことだけ・・・喜びなんて一度もなかった・・・喜びを感じる前に、全て奪われて・・・いつの間にか私自身、嫌いだったはずのネウロイになってた・・・」
先ほどとは違い、彼女の目には明確な生気が宿っている。
イヴ「分かる・・・?あなたに、この苦しみが・・・」
芳佳「・・・分からないです。私は、あなたじゃないから・・・でも、これだけは言えます。あなたは、ネウロイなんかじゃない。」
イヴ「馬鹿言わないで・・・これを見てわからないの?このストライカーの模様。赤くなった目。私は、ネウロイなのよ・・・」
芳佳「違います。それなら私だってネウロイのはずです。あなたと同じようにストライカーに模様が入るし、目だって赤くなる。でも、私は自分をネウロイだなんて思いません。」
芳佳「ネウロイには感情がありません。でも、私には感情があります。みんなと笑ったり、泣いたりできる・・・あなただってそう。今みたいにそうやって、苦しんだり、悲しんだりすることができる。」
芳佳「だから、ネウロイみたいに全部壊そうとしなくたっていいんです。幸せや喜びは、この先になれば必ず、あなたにもある筈だから・・・」
イヴ「・・・ふ・・・フフフフ・・・あはははははは!!」
突然、狂ったように笑い始めるイヴ。
イヴ「・・・やはり、私とあなたはわずか程も交わってはいない・・・語るだけ無駄です。やはりここで消えてもらいます。」
そう言うや否やイヴが宮藤へと肉薄。腰に据えられたナイフを引き抜き、宮藤へと斬りかかる。
宮藤も瞬時に反応し、背中に帯刀していた烈風丸を抜刀。ナイフを受け止める。
芳佳「どうしても、戦わなきゃいけないんですか・・・」
イヴ「もう、遅いのです。なにもかも。」
先ほど見せた人間らしい感情。まだ、間に合う。ここで彼女を止めれば、まだ彼女を助けることが・・・宮藤は、覚悟を決めた。
芳佳「・・・あなたは、私が助けます!!」
---第502統合戦闘航空団航空母艦:甲板---
ここは、502のメンバーが乗り込んでいる航空母艦。彼女たちも、今行われている戦いを見守っていた。
管野「・・・・・」
伯爵「どうしたんだい、ナオちゃん?随分と怖い顔だけど。」
管野「あいつ、あのままだと危ない。」
ニパ「あいつ・・・?あの、宮藤って子か?」
宮藤の存在は、他の戦闘団にも噂がいきわたり、すでに多くの者が宮藤のことを知っていた。俺についても同様であった。
管野「ああ。あいつ、剣の振りがなってない。あの男の方は、刀を当るか当たらないかのギリギリのとこで刃を峰に返してる。たぶん、相手を殺さずに倒そうとしてるんだ。」
管野「でも、宮藤の方は峰に返す瞬間がバレバレだ。それに、刀の振りが少し遅い。その証拠に、さっきから相手に避けられてばっかだ。」
ぶっきらぼうな面構えで腕を組みながら自らの考察を述べるこの少女、管野直枝。宮藤たちと同じ、扶桑出身のウィッチであり、ジャイアントキリングを好むピュアファイターである。
その隣にいるスオムス空軍の軍服を着た、エイラの親友でもあるこの少女は、ニッカ・エドワーディン・カタヤイネン。愛称は『ニパ』。
そして、菅野の後ろで、彼女の右肩に手を置きながらもう片方の手で双眼鏡を構え、上空の様子を見守る、どこか紳士的な雰囲気を醸し出しているこの少女。
かつてのエーリカの長機であり、バルクホルンたちとも面識があるカールスラントのベテランウィッチ。ヴァルトルート・クルピンスキー。彼女はその独特の雰囲気から、『伯爵』とあだ名されている。
ジョゼ「ぜ・・・全然わからないです・・・」
下原「私も・・・そこまで見えないよ・・・」
そう語るこの二人。片方は
ガリア出身の、この部隊の数少ない常識人であるジョーゼット・ルマール。愛称を『ジョゼ』。
その隣にいるうさみみを生やした扶桑人の少女は、下原定子。彼女は固有魔法に遠距離視と夜間視を持っており、それによって上空の様子をを見つめていた。
管野「・・・助けに行く。」
サーシャ「だ、ダメです!何を言ってるんですか!!」
制止するのはアレクサンドラ・I・ポクルイーシキン。愛称を『サーシャ』と言い、オラーシャ出身のこの部隊の戦闘隊長だ。
伯爵「止めてあげないでくれるかな、熊さん。こうなるとナオちゃんが止まらないの、知ってるでしょ?」
ロスマン「ちょっと!あんたまで何言ってんのよニセ伯爵!!」
ピシッ!と指導棒を伯爵に突き立て反駁する、銀髪で小柄なこの少女は、長年伯爵の戦友として肩を並べてきたカールスラントのウィッチ。エディータ・ロスマン。
伯爵「おやおや、怖い先生だ。」
サーシャ「ラル少佐ぁ・・・」
ラル「ん?ああ、いいんじゃないか?行かせてやれば。」
軽口でそう返す、この部隊の司令であるグンドュラ・ラル。彼女もカールスラント出身である。
ラル「ただし、ストライカーは壊さないでくれ。それが条件だ。あと、必ず戻って来るように。」
さばさばとしていながら、言葉からはどことなく重みを感じる。菅野はその言葉に力強く頷く。
サーシャ「もう・・・ここの人たちは・・・はあぁ…」
下原「行っちゃうんですか、管野さん・・・?」
管野「あいつだって、オレたちの仲間だろ。助けたいって思うのは当然じゃないのか?」
ニパ「仲間、か・・・そうだよな。」
伯爵「今日のナオちゃん、いつも以上にカッコいいね。うん、そういうところも好きだな、ボクは。」
ロスマン「なんの話しをしてるのよ、このニセ伯爵は・・・」
管野「とにかく、行くからな。」
ラル「ああそれと、落ちたらサメがいるかもしれないから、注意するように。」
サーシャ「そっちの心配ですか!?」
ジョゼ「気を付けてくださいね・・・」
管野「うん。行ってくる。」
---北海上空---
繰り返される斬撃の応酬。やがて二人は二匹の立ち上る昇竜の如く上昇をかけながら切り結ぶ。
散々打ち合った末、再び互いに距離を取る。
フッ
俺「!」ヴン
ふと相手の姿が消える。すかさず俺は魔導針を発動させた。
俺「そこだッ!!」ヒュン
ズパッ
俺「痛っ・・・」
新たに腕に刻まれた傷。
先ほどから相手が繰り返す、目の前から消える得体のしれない能力に翻弄され、俺は他の場所にも多くの傷を負っていた。
しかし、
アダム「どうやって・・・分かったんや・・・?」
消えていたはずの相手が姿を現し、脇腹を抑えている。どうやら俺の振りぬいた刀が当たったようだ。
俺が相手の問いに返すように、俺が眼鏡のつるをくいっと持ち上げる。黒目だった俺の瞳は、
メガネの抑制が外れた途端、藤色を湛え始める。
アダム「ちっ・・・魔眼か。」
魔眼は、相手のステルス能力を見破ることができる唯一の対抗手段であった。
魔導針により相手の位置を捉え、魔眼により、相手の動きを見切る。俺は自信の固有魔法をフルに活用し、敵の能力を看破した。
だが、その考えに至るまでに負った傷の量はあまりにも多すぎた。
俺の意識が、少しばかり薄れ始めていたのだ。
ザクッ!
俺「グぅッ!?」
その一瞬の隙を突かれ、一気に距離を詰められた。俺の右肩は相手の刃によって貫かれる。
アダム「なんや、動きにぶっとるんやないか?オラァッ!!」グッ!
俺「ぐあッッ!!!??」
より深くへとねじこまれる刃。激痛が全身を襲い、顔には苦悶の表情が浮かび、瞳からは意思に反して涙が零れる。
穿たれた傷口から血が刃を伝って滴り、むせ返ると同時に口許からも血液が飛び散る。
インカムから誰かの声が聞こえたが、痛みのせいでそちらに気を配る余裕がなかった。
アダム「なぁ、ええ加減本気だせや。まだおるんやろ、『獣』が。」
俺「あいにく・・・はぁ・・・はぁ・・・俺が飼ってる獣は『淫獣』って名前のむっつりスケベだけっス・・・狂暴なのは余所をあたってください・・・」
アダム「フカシこいとる場合かワレ。このままやと死ぬで?助けでも呼んだらどうや?」
アダム「あぁ、アカンか。せやろな、ろくに戦う覚悟もあらへん連中やもんな。ったく、そんな覚悟もあらへんでよく軍人なんぞやっとるなホンマに。」
俺「・・・取り消せ・・・・・」
アダム「あ゛ぁ?」
俺「今の言葉、取り消せって言ったんだよ・・・!!」グッ
右肩を貫く刃を、左の手で握る俺。
アダム「ワレ、今の立場分かって・・・!?」
アダム(動かへん・・・どういうこっちゃ・・・)
動かそうにも、刃は微動だにしない。
俺「覚悟がない・・・?何も知らないくせに、勝手なこと言うなよ・・・」
アダム「なんや急に?」
俺「みんなそれぞれ覚悟をもってここまで来たんだ。全て終わるかもしれない・・・それでも生きたいから・・・かなえたい夢や、信念があるから・・・抗う覚悟をきめてここに来たんだ。」
俺「むしろ覚悟がないのは、生きることをやめようとしてるアンタとあのイヴって人だ・・・アンタらがやってるのは、単なる『逃げ』だろ・・・違うか・・・?」
アダム「おい。イヴを愚弄するような言葉吐きおったら殺す言うたやろ。ホンマシバき倒すぞ?」ギロッ
俺「ぬ・・・グゥ・・・ああああああああッ!!」ズボッ
刃を握っていた手に渾身の力を籠め、引き抜く。
俺「はぁ・・・はぁ・・・俺には、分からない・・・なんで、そこまでしてあのイヴって人に尽くすんだ・・・どうして全部滅ぼそうとするんだ・・・」
アダム「・・・お前には関係あらへん。オレは、イヴとやったらいくらでも不幸になったる。その先がたとえ地獄だとしても、オレはイヴの側に居続ける。そう決めたんや。」
アダム「他人のお前にとやかく言われる筋合いは・・・ない・・・ゴフッ・・・」
突然、男の口から赤い液体が吐き出される。それは紛れもなく血であった。
俺「!?」
アダム「ハァ・・・ハァ・・・糞ッたれ・・・もう時間があらへん・・・」
俺「時間・・・?どういう事っスか・・・?」
アダム「見ての通りや・・・無理やりネウロイの力埋め込まれて、今更体が拒絶しとる。イヴも同じ・・・どちらにせよオレらは近いうちに死ぬ・・・」
気づけば、相手の刀がネウロイ化を起こしている。次第に浸食され、体がそれに対して拒絶を行っていた。
アダム「決着・・・つけようや・・・はよせんと、つく前に死んで・・・ゲホッ!」
むせ返るたびに、男の口からは血飛沫が飛び散る。
俺「・・・・・」スゥ…キン!
俺は帯から鞘を抜き、刀を手に持った鞘へと納める。
この男の戦う真の理由。それは自分を満たす為ではなく、全て、あの少女の望みを叶えるためであった。
アダム「なに・・・剣しまっとんねや・・・ゴッホゴホ!!」
俺「これが、俺の戦い方っスから・・・」チキッ
自分にも、愛する少女がいる。腕に巻きつけたこのリボンを受け取った少女。その少女は世界の安寧を願い、これからもこの世界で生き続けたいと願っている。
俺も譲るわけにはいかない。俺は腕に巻いたリボンを一度握りしめ、静かに目を閉じる。
俺「俺にも、守りたい人が・・・守りたい人たちがいるんだ・・・今ここで斃れる訳にはいかない・・・アンタを越えて、その先へ進む・・・!」カッ
見開かれた瞳から発せられる威圧。それを相手へと送りつけながら、ゆっくりと姿勢を少しかがめ、抜刀術の構えをとる。
アダム「そうこななぁ・・・去ねやぁぁぁ!!」
俺「・・・おおおオオォォォォォォッ!!!」
片方は滅びの明日を願う少女のため。もう片方は平和で穏やかな明日を願う少女のため。互いの愛する者のため、それぞれの思いがぶつかり合う。
その一方で、宮藤は・・・
俺の右肩が刀で貫かれる少し前。
芳佳「やあぁ!!」ブゥン!
イヴ「それで攻撃しているつもりですか?」ヒラリ
峰打ちを狙うも、相手の不可解なベクトルの動きにより躱されてしまう。
その時、
俺≪ぐあッッ!!!??≫
インカムから俺の悲鳴が聞こえる。右肩を貫かれたのだ。
芳佳「俺さん!!」
宮藤が俺のいる方角へ振り返る。遠目だが、俺を何かが貫いているのがわかる。
?≪よそ見するな!!宮藤!!≫
芳佳「え?」
背後を振り返る。イヴがすでに詠唱を終え目の前に魔法陣を展開していた。宮藤の背に冷たい汗が流れる。
イヴ「『トリスアギ・・・』」
発動される魔術の名を言いかけたその時、
バキィ!
イヴ「!!」
イヴは何者かに殴り飛ばされた。
芳佳「あ・・・あなたは・・・」
管野「管野一番、推参。」
そう吐き捨てた菅野はなぐりつけた拳にフッと息を吹きかける。
芳佳「あ、あの・・・」
管野「馬鹿やろう!!」
芳佳「え・・・」
耳を劈くような、菅野の怒号。
管野「どうして振り返ったんだ!?死ぬ気か!!」
芳佳「だ・・・だって、俺さんが・・・」
管野「だってもどうしてもない!!お前が死んだら元も子もないだろう!!」
芳佳「! ・・・」
伯爵≪ザザッ・・・おしゃべり中失礼するけど、ナオちゃん、相手を見た方がいい。≫
管野がインカムからの伯爵の言葉通り、相手の顔を見る。
イヴ「何故・・・邪魔をするのですか・・・?」
管野「お前が仲間を傷つけようとしたからだ。それ以外に理由はない。」
イヴ「仲間・・・下らない。そんな綺麗事はもう聞き飽きた・・・」
管野「下らなくなんかない。個人の不可能は、仲間が変えてくれる。孤独を選んだお前はそれを知らない。だから綺麗事に聞こえるんだ。」
イヴ「うるさい・・・うるさいうるさいうるさい!!」
頭を抱え頭を振るイヴ。
イヴ「・・・もういい・・・ここで、全部消す・・・」バッ
手を開いたまま両手を前に突出す。次第に手のひらに赤いエネルギーが収束しはじめる。
エイラ≪ザザッ・・・まずい・・・逃げロ!宮藤!!≫
エイラの固有魔法が、目前に迫る脅威をいち早く察知した。
エイラ≪ビームだ!!それも、すごく強力な!!!≫
エイラの脳裏には、宮藤たちを焼き尽くし、海上の母艦や駆逐艦すらもすべて巻き込み破壊しつくす、赤い極太の光軸が放たれるビジョンが鮮明に映し出されていた。
しかし、宮藤は逃げなかった。自分が避ければ、どちらにせよ仲間に危険が及ぶ。
管野「どうする、宮藤?」
芳佳「・・・あなたは、私の後ろにいてください。」
管野「どうするつもりだ。」
芳佳「守ります。みんなを。だから、力を貸してください。」
管野「・・・もちろんだ。」
イヴ「消えろおおおぉぉ!!!」ビシュウウウウゥゥゥ!!
収束された膨大なエネルギーの束が宮藤たちに襲い掛かる。
・・・ ・・・ ・・・
アダム「破亜亜あああぁぁぁッ!!」
俺「おおおォォォォォッッ!!!」シャン!
それと並行して、二人の男の雌雄が決しようとしていた。
抜刀術。
相手を座して待ち、迎え撃つ一撃必殺の対人剣術。相手は、それを知っていた。抜刀術が『一撃必殺』の剣術であることを。
剣気一閃。電光石火の速さで鞘から抜き打たれる刃。剣速はすでに達人の域を逸しており、常人ならば見切ることはほぼ不可能。
しかし、相手はその更に一手先を読んでいた。あらかじめ間合いを見切られ躱されたのだ。
刃は相手に届くことなく、ただ虚空を一閃する。
アダム(躱した!今や!!)ヒュン!
後方へと瞬時に退き、すぐさま上段に構えなおし、
アダム「終いやあああぁぁぁ!!」
片手で唐竹に刃を振り下ろす。が、
グキィッ!!
アダム「ぬあッ!!?」
衝撃。
俺の抜刀術は『一撃』ではなかった。
ニ撃目。もう片方の手に、逆手に握られた鞘が相手の刃を握っていた腕をへし折った。腕から抜け落ちた刃は、海へと落ちてゆく。
これこそが、坂本と共に編み出した二段構えの抜刀術。
通常の抜刀術は踏込みを行う必要がある。しかしここは空中。踏み込む地面など、どこにもありはしない。
そのため、鞘から引き抜かれた刃の威力は通常の約半分。そのための二撃目。一撃目の刀を振りぬいた勢いを利用し、鞘を相手へと叩きつける。
一刀目の「爪」を躱そうとも、二刀目の「牙」が相手に襲い掛かる。相手が躱す術はほとんど無いに等しかった。
俺はすかさず刀を納刀。納刀した鞘で相手の顎を打ち上げ、動きを封じ、柄で腹の急所を打つ。
相手の意識はそこで手放された。俺はすかさず気を失ったアダムを抱える。
俺「ふぅ・・・!?」
しかし、溜息をつくのもつかの間、網膜に強烈な光が焼き付いた。気づけば宮藤たちに、赤い破滅の光が襲い掛かっていた。
・・・ ・・・ ・・・
芳佳「烈ッ風ゥー斬ッ!!」
烈風丸に赤い魔力が纏われる。それは瞬く間に巨大化。膨大な魔力を纏った刃をビームに対して振り下ろす。
瞬間、カッ!と眩い閃光があたりを一瞬包み込んだ。
イヴ「!?・・・そん・・・な・・・」
次に目蓋を見開いた時には、ビームは掻き消え、傷一つ負っていない宮藤と、連合軍の艦隊が映った。
イヴ「ケホッ!」ピシャッ…
喀血が始まった。もう自分も長くない、そんな思考を巡らせていると、
ブロロロロロロ
ストライカーの駆動音が耳に入り、音のする方へ視線を向ける。
下方から管野が拳を構えながら迫っている。朦朧とする意識の中、何とか両手を構え、再びビームを放とうとするが、
ゴスッ!
管野の拳が、イヴの腹の急所を抉るが早かった。イヴも、その場で意識を手放す。すぐさま管野が拾い上げる。
芳佳「管野さん!」
管野「手、貸してくれ。一人じゃ重い。」
ちょっぴりぶっきらぼうな表情の管野に宮藤は笑みを返し、二人は母艦へと帰還する。
ようやくついた決着。結局、誰も失うことなくグレゴリを退けることができた。
俺(よかった・・・無事みたいだ・・・)
二人の安否を確認した俺も、進路を皆の待つ母艦へと向けた。
その時、
アダム「・・・勝たな・・・勝たな、意味・・・あらへんのや・・・」カチャッ…
俺「っ!!」
俺の腹部に突き付けられた銃口。男の懐には、奥の手であるハンドガンが隠されていた。抱えられたこの男は最後の執念を振り絞り、その引き金を引く。
銃口に小さな赤い光が溜りはじめる。この男は、ハンドガンを介してのみビームを放つことができたのだ。
そして、それに俺が気づいた時には時すでに遅く、
ビシュッ!
俺の腹を一筋の細い光が貫いた。
---航空母艦『ライオン』滑走路---
先に帰還した宮藤を、501の全員が健闘をたたえる。管野は気絶したイヴを運び終えた後すぐに仲間の元へと戻って行った。
リーネ「よかった・・・よかったよぉ・・・芳佳ちゃん・・・」ギュッ
芳佳「うぅ・・・ちょっと苦しいよリーネちゃん・・・(でも幸せかも・・・///)」
ルッキーニ「あ!あれ!」
ルッキーニの指を指す方角から、ゆっくりと俺が降下し、着地した。俺は気絶しているアダムをゆっくりと降ろす。
すぐさまアダムは船員達により拘束、連行されていった。
サーニャ「俺・・・?」
体のあちこちに傷跡を作り、半ば満身創痍で戻ってきた俺。
よく見ると、切り傷とは別に、腹部に不自然な焦げ跡が残っている。その場所は深く穿たれ、留めなく血が流れている。
焦げ跡は、ビームが焼きついた跡であった。
俺「ゴフッ・・・」ドサッ
喀血。滑走路に赤い斑点がついたかと思うと、俺はそのまま地面へ倒れこんだ。同時にストライカーが足から外れる。
エイラ「!!」
サーニャ「俺!!」
サーニャは急いで俺へと駆け寄り、俺を抱え上げる。
俺「はは・・・ただいまっス・・・」ニコ
サーニャ「嫌・・・どうして・・・死なないで・・・俺・・・」
俺「大・・・丈夫・・・ハァ・・・ハァ・・・俺は・・・死なないっスよ・・・約束を・・・守る・・・までは・・・ゲホッゲホッ!!」
途切れ途切れに、消え入りそうな声で懸命に言葉を返す。
サーニャ「でも・・・でも・・・グスッ・・・」
俺「心配・・・ハァ・・・いらないっス・・・それに俺、約束・・・破ったこと・・・ありますか・・・?」
サーニャ「うん・・・グスッ・・・」
俺「ハァ・・・ハァ・・・ありゃ・・・でも・・・二人との約束は・・・絶対に・・・守るっス・・・誓います・・・だから、お願いっス・・・泣かないで・・・ください・・・」
サーニャの頬を零れ落ちた涙を、震える俺の指がそっと拭う。
芳佳「俺さん!!」
宮藤が俺の元へと駆け寄り、使い魔を発現させ、治癒魔法をかけるために両手を俺へと翳す。が、俺は手でそれを制止し、首を横に振る。
芳佳「なんで・・・」
俺「こんな・・・ところで・・・ハァ・・・ハァ・・・力を・・・使っちゃいけない・・・ハァ・・・この力は・・・この後のために・・・取っておいてください・・・」
芳佳「でも、このままじゃ俺さんが・・・」
俺「俺は・・・平気っス・・・前だって・・・ネウロイのビームくらっても・・・ちゃんと・・・生きてたんスから・・・」
坂本「・・・俺の言うとおりだ。お前の力は、この後のためにとっておけ。宮藤。」
芳佳「坂本さんまで何言ってるんですか!?俺さんが死んじゃうかもしれな・・・」
坂本「宮藤!!」
芳佳「!!」
ただ無言で宮藤に視線を送る坂本。威圧にも似たそれに、宮藤は押し黙ってしまった。
俺「・・・エイラ・・・・・」
不意に、俺がエイラの名を呼ぶ。
エイラ「なんダヨ・・・グスッ・・・」
俺「エイラまで・・・泣いてるんスか・・・?」
エイラ「な、泣いてない!」ゴシゴシ
俺「よかった・・・俺・・・ちょっと・・・休憩させてもらうっス・・・だから・・・サーニャを・・・守ってあげてください・・・」
エイラ「休憩って・・・ヤメロヨ・・・今から死ぬみたいじゃんカ・・・」
俺「だから・・・死なないっス・・・絶対に・・・もどります・・・もどって・・・サーニャも・・・エイラも・・・みんなを・・・守ります・・・だから、それまで・・・」
エイラ「言われなくても・・・私は絶対にサーニャを守る・・・」
俺「はは・・・そう・・・っスよね・・・」
エイラ「絶対・・・戻ってこいヨ・・・死んだら・・・許さないからナ・・・」
俺「はい・・・っス・・・おねがい・・・しま・・・」ガクッ
サーニャ「俺・・・?俺・・・!俺!!」ユサユサ
ミーナ「救護班は!?どこ!?」
ペリーヌ「わたくしが参ります!!」タッタッタ
エーリカが駆け寄り、俺の脈に指を当てる。
エーリカ「・・・大丈夫、失血のしすぎで気を失ったみたい・・・まだ生きてるよ。」
ゲルト「だがこのままでは・・・」
ルッキーニ「おれぇ・・・」ポロポロ
心配もつかの間、ペリーヌが要請した救護班が俺の元へ駆け寄る。失血による気絶だと救護隊員にエーリカは伝えた。
俺は直ちに担架に乗せられ、救護室へと運ばれていった。
サーニャ「俺・・・」
エイラ「・・・・・」
そんなことは意にも介さぬように、非情にも船は再び歩みを進める。決戦の場所、ネウロイの塔へと向かって。
本当の決戦は目前へと迫っていた。
最終更新:2013年01月29日 14:27