スオムスコッラー河付近 雪原
バァン!!
俺『よっし!今日の夕飯確保っと』
ロマーニャが我等501統合戦闘航空団によってネウロイの脅威から解放され、少しの時が流れた
スオムスもオラーシャ側から迫るネウロイの侵攻も小康状態であり、俺はしばしの休息を与えられ、こりもせず狩りに没頭していた
いや、狩りしかできないが正解なんだけどね
俺『ケワタガモ・・・帰ってこないなぁ』
我が生涯の敵がスオムスから姿を消して久しい
俺『ネウロイが全部いなくなれば帰ってくるのかな?』
俺『宿敵がいないってのも寂しいものだな・・・』
そう呟いた直後、上空から雪原に接近する気配を感じる
俺『ネウロイ・・・じゃないな・・・』
正解は輸送機だったようだ、残念ながらどこの所属機かまではわからない
俺『こんな僻地まで、なにしに来たんだ?』
輸送機がちょうど雪原の上空に差し掛かった時、輸送機から誰かが飛び降りた
いや、もっと正確に言えば落ちてきた
俺『あ、この登場のしかた・・・』
悪い予感というものは大概当たるものらしい
綺麗に着地したその美しい女は、俺の見知った顔であり
一度だけではあるが共闘もした仲だった
マルセイユ『どうした?アホ面して?』
マルセイユ『あぁそうか』
マルセイユ『悪いがサインはしない主義なんだ』
俺『いらねぇよ』
心の底からそう思った
コッラー河付近 集落 俺自宅
ガチャ
エイラ『おかえり!!!』
ドアを開けた瞬間、ただいまを言う間もなく、笑顔に迎えられる
しかしその満面の笑みは、俺とマルセイユの姿を確認した後
エイラ『・・・女連れ?』
スオムスのブリザードにも負けない氷点下にまで下がってしまった
俺『あ、いやお前・・・』
エイラ『私は寒い中一人で待ってたノニ・・・』
エイラ『そんな私の事も忘れて、お前はアフリカの星とデートって訳ダ』
エイラ(今日は狩りにでたいからって、私の誘い断った癖ニ!!)
俺『いや、そういうんじゃ・・・』
マルセイユ『悪いが、私のタイプでは無いな』
マルセイユ『私の男になるなら、世界一の男じゃないとな』
エイラ『ほー・・・ずいぶんと言ってくれるじゃナイカ?』
エイラ『まるで俺が世界一の男じゃないみたいな言い方ダナ』 イライラ
マルセイユ『だから、それを確かめにきたんだ』
エイラ『エ!?』
マルセイユ『お前からも頼んでくれないか?こいつが射撃勝負を受けてくれるように』
俺『やらんぞ、そんなくだらん事』
マルセイユ『さっきからこの通りさ、恋人のお前が頼めば引き受けてくれるとスオムス基地の奴らが言っていたが、どうなんだ?』
エイラ『こ、こ、恋人!!誰ト!!誰ガ!!??』 アタフタ
マルセイユは俺とイッルの姿を交互に眺める
エイラ『ち、ち、ちっガ―――――ゥ!!』
マルセイユ『そうか、誤解だったのか、全くゴシップというのはどこの国にもあるものなんだな』
エイラ『全く、なんで俺と私が・・・』 ブツブツ
知らない内に、俺はイッルを見つめていたようで、そんな俺の視線に気づいたのか、マルセイユは意味あり気な笑みを浮かべた、嫌な予感がする
しかし、俺は一体どんな顔をしていたのだろうか?
マルセイユ(ほーう、なるほど・・・こいつは使えそうだな)
マルセイユ『おい、ダイヤのエース』
マルセイユ『前言は撤回させてもらう、こいつは単なるヘタレだ』
エイラ『ナニ!?』
マルセイユ『そうだろう?白い死神とか大層な名前がついてるが、挑まれた勝負から逃げる単なるヘタレ』(
おまけに、惚れた女の気持ちにもきづいていない)
マルセイユ『世界一とは失笑物だな、ヘタレで世界一なのか?』
エイラ『ム――!!』 チラッ
涙目でイッルがこちらに視線で訴えかけてくる
俺(そんな顔されたら断れないじゃないかよ・・・)
俺『わかったよ!!わかったからイッル、そんな顔すんな』
マルセイユ(かかった!)
俺『やってやるよ、マルセイユ!』
ポン
涙目なイッルの頭に手をやりながら、強敵に啖呵をきる
俺『世界一?なってやろうじゃん』
マルセイユ『それでこそ、私の認めた男だ』 ニヤッ
俺・エイラ『『あ、はめられた』』
スオムス基地 射撃訓練場
ワイワイガヤガヤ
俺『なんでこんなにギャラリーいるんだよ・・・』
マルセイユ『当然だろう、私を誰だと思っているんだ?』 パサッ
ウワァァァァ――――――――!!
マルセイユが髪を払うだけで基地の男共の茶色い声があがる
マルセイユ『ルールは簡単だ、交互に狙撃を行い、先に外した方の負け』
マルセイユ『シンプルでいいだろう?』
俺『ああ、わかりやすい』
立ち位置に立ち、銃を構えたその時
俺『痛って!!』
尻に蹴りを食らった
振り返ればそこに立っていたのは幼馴染
エイラ『おい』
エイラ『勝ったら、ご褒美やるカラサ』
エイラ『だから負けんなヨ』
俺『うん』
これで絶対に負けられなくなった
マルセイユ第一射
マルセイユ『見せつけてくれるじゃないか』
銃を構える
マルセイユ『だが、残念ながら』
その顔は自信に満ち溢れ、その美しさをなお引き立たせる
バンッ!!
マルセイユ『ご褒美はおあずけだ』
放たれた銃弾は見事に的の中心を撃ち抜いていた
俺第一射
俺『悪いが』
銃を構える
俺『もう10年以上待ってるんでね』
バンッ!!
俺『これ以上待つ気は無いんだ!!』
こちらも的の中心を撃ち抜く
マルセイユ『ほー、噂と違ってずいぶんと熱いじゃないか、そういう男は嫌いじゃない』
エイラ『////』(なに大声で言ってんダヨ!!)
ギャラリー『おいおい、もう何射目だ?』
ギャラリー『覚えてねぇよ』
ギャラリー『このままじゃ、訓練用の弾と的全部なくなるぞ』
マルセイユ第50射
マルセイユ『さすがは白い死神と言ったところか』
マルセイユ『お互いに残りは一発ずつ、このままでは決着がつきそうにない』
マルセイユ『私は中途半端は嫌いなんだ』
俺『知ってるよ』
マルセイユ『だから次は的の出現をランダムにして、先に撃ち抜いた方の勝ちってことでどうだ?』
俺『そういうギャンブルじみたのは好きじゃないんだけどな』
俺『いいよ、乗ってやる』
ルール変わって早撃ち勝負
マルセイユ『・・・・』
俺『・・・・』
静寂につつまれる、さっきまで盛り上がっていたギャラリーも俺達の緊張感に当てられてしまったのだろうか
永遠にも感じる時間の中、的が立ちあがる
位置はマルセイユの正面
マルセイユ『悪いな死神!勝利の女神は私に微笑んだようだ!!』
叫ぶマルセイユ
俺『残念ながら、俺の女神は微笑んでなんてくれないんだ』
これくらいのハンデ、なんてことない
俺『俺の女神様はケツ蹴っ飛ばして、『負けンナ』って言うんだよ!!』
エイラ『おい!!何恥ずかしいこと言ってんダヨ――――!!』////
俺『ご褒美!!いただきます!!!』
バンッ!! バンッ!!
2発の銃声が轟く
的には2つの穴
時間は同時
いや、同時ではないだろうが、どちらにせよ人の目で判別できるレベルの差では無い
マルセイユ『引き分け・・か・・・』
俺『ご、ご褒美・・・』
これほど落ち込んだのは人生始まって以来
初めてだった
スオムス空軍基地 カタパルト
俺『もう行っちまうのか?スオムス観光していけよ』
マルセイユ『知らないのか?私は忙しいんだよ』
マルセイユ『ああそうだ、ダイヤのエース、ちょっとこっちに来い』
エイラ『なんダヨ』
俺『?』
二人は俺から離れて行ってしまう、何を話しているのだろうか、とても気になる
マルセイユ『また撤回させていただく、あいつはイイ男だ』
マルセイユ『私にとっては世界一ではないが、お前にとってはどうなんだろうな?』
マルセイユ『あんまりボヤボヤして素直にならないと、逃げられるぞ』
エイラ『どういう意味ダヨ』
マルセイユ『そのまんまの意味さ、勝利の女神様』
エイラ『お、お前バカにしてんノカ!!』
マルセイユ『していないよ、まぁがんばりなってことだ』
マルセイユ『ご褒美、あげれば喜ぶんじゃないか?』
そう言い残して彼女は飛び立って行った
まるで嵐のような女だとエイラは思う
エイラ『ご褒美か・・・』
そっと自分の唇に手で触れながら、彼女は呟いた
スオムス コッラー河付近 集落 俺自宅
エイラ『なぁ、俺』
俺『ああ、今日はトナカイ仕留めてくるよ』
エイラ『あ、うん待ってる、じゃなくて!!』
俺『?』
うつむきながら、イッルが近づいてくる
表情は解からないが、耳は真っ赤だ
俺『どうした?』
ただ事では無い様子なので、訪ねてみるが、返事は帰ってこない
その代わりに
チュッ
頬にキスされた
俺『え!?え!?』
まるでトマトの様に顔を赤くしたイッルは
エイラ『ご、ご褒美』////
上目遣いで俺を見つめながら
エイラ『勝たなかったけど、負けなかったカラ・・・』////
震える声で、絞りだす様に喋る
エイラ『きょ、今日だけだからナー!!』////
最後だけは大声だが
ガチャ
バタン
そう言い残すと、逃げるように部屋から駈け出して行ってしまった
俺『ははは・・・』
俺『よっしゃ――――――――!!!』
その後の狩りの結果は言うまでも無いであろう、乱れた心で狩れる程野生の動物は甘くない
エイラ『トナカイのステーキ・・・』
俺『すまん』
おわり
最終更新:2013年01月29日 14:36