『スオムス恋物語』
今朝の『目覚ましラジオ』の運勢占いで魚座の運勢は最高だった
『彼方の欲しい物がきっと手にはいります』だって
『そんな簡単に手に入るモノカ!』なんて思いながらも最後まで聞いてきてしまった
ラッキーカラーは青、今日の私の服の色、精一杯可愛いのを選んで来た
ラッキーアイテムは花の髪飾り、『自分に似合うカナ?』とか思いながら、あいつに褒めて欲しくてつけてきてしまった
私のたった一つの得意料理
男の寂しい一人暮らしだろうと思って作ってきてやったんだから、感謝して欲しいものだ
スオムス 俺自宅
コンコン
エイラ『俺ー、イルカー』
エイラ『いないのカナ?』
ガチャ
少しがっかりしながら、借りていた合鍵を使って家にあがる
エイラ『また狩りでも行ってんノカ?』
非番の日でもこの時間はいつも家にいるのに
エイラ『銃も置きっぱなし・・・』
狩りじゃない、いつも狩りに出る時に着ている服もリビングに掛かっている
エイラ『あいつが非番の日に狩り以外で出かける理由ってナンダ?』
まぁ、帰ってくるまで待ってやろう、今日の私はオシャレしてきたんだ、どんな反応するか気になるじゃないか?
スオムス 市街地 繁華街
12月にも入り、スオムスの街にもクリスマスに向けた装飾などが始って街全体がどこか浮足立って感じる
かくいう俺も例外ではなく絶賛10年以上片思い中の幼馴染に渡す予定のクリスマスプレゼントを買い、家路をたどっていた
俺『まだ一緒に過ごす約束もしてないけどな・・・』
そう、まずは一緒に過ごす約束を取り付けなければ、このプレゼントも無意味になる
しかし軍人は忙しいのだ、今日を逃せばクリスマスまで非番はもう無い
俺『今年こそ・・・今年こそ!!』
そう、今年は少し進展があった、なんせ頬にキスしてもらったんだから!!
俺『そうだ、次に会ったらちゃんとクリスマスの約束を申し込もう』
彼女と過ごすクリスマスを妄想する・・・はたから見たらとてつもなく気持ち悪い表情をしていると自覚もある、だがそんな妄想をやめられないのは男のサガなのだ
スオムス 俺自宅
俺『ん?鍵開いてる?』
ガチャ
エイラ『おかえり!!』
満面の笑みで飛び出してきたのは先程まで妄想の中で俺に抱き締められていた少女だった
俺『うわ!!イッルいたのかよ!!』
エイラ『なんダヨ、いたらいけないのカヨー』
満面の笑みがすぐさまふくれっ面に変わる、眺めていて退屈しない奴だ
エイラ『そうだ!そんな事ヨリ!!』
またも表情を笑顔に変えながら、彼女は俺の前でクルリと回り、少し照れながら
エイラ『な、なんか気づく事ナイカ?』
上目遣いで言われた
俺『う、うん・・・なんか、今日は女の子っぽいな』
俺『いつもと違って』
また余計な一言を言ってしまった、そんな事、思ってもいないのに
なんだよ、確かにいつもは女の子らしく無いけどさ
あんな言い方ないじゃないか
可愛いって言ってもらえると思ったのに・・・
エイラ『フン!もういいヨ!!』
こいつに期待した私がバカだった、こいつの頭の中にはきっと銃弾が詰まっているに違いない!
でも、そんなこいつを、私は・・・
エイラ『そういえば、どこ行ってたんだよ?珍しく正装なんかしちゃって』
俺『いや、別に・・・』
そう言いながら俺は手に持っていた荷物を背中に隠した、それを見逃す私じゃない
エイラ『隙アリ!!』 バシッ
俺『あ、待てそれは!!』
隙をついて荷物を掠め取る、中を見ようとしたら俺がムキになって追いかけてくる
エイラ『なんダヨ、私に見られたらマズイ物ナノカ~?』 ヒョイ ヒョイ
俺『そうだよ!!だから返せ!!』 スカ スカ
予知魔法を持つ私にはこいつの行動なんてお見通し、捕まるはずがない
エイラ『あっは!こっちこっち~♪』
そんな事より気になるのは、この荷物が有名な宝飾店の袋に入っているってことだ
エイラ(誰へのプレゼントなんだろう?)
あまり・・・想像したくなかった
マズイことになった、せっかくのクリスマス用のプレゼントを先に奪われてしまった
なんとしても中を見られる前に取り返さねば
俺『待てよ!イッル!!』 スカ スカ
エイラ『嫌ダネ~、ここまでおいで~♪』 ヒョイ ヒョイ
このままでは埒があかない
少し驚かせてやろう
俺『返せよ、それ好きな人に渡す予定のクリスマスプレゼントなんだ』
エイラ『え』
急に足が止まったイッルにぶつかってしまった
二人でもつれてソファーに倒れこむ
俺『いてて、急に止まるなよ』
エイラ『・・・・・・・』
俺がぶつかってきた衝撃よりも、ソファーに倒れた衝撃よりも
二人で倒れて、俺が私の上に馬乗りの状態で重なっている、というなんともベタな状況よりも、
さっきの俺の言葉が私には衝撃的だった
エイラ(誰?) ジワッ
エイラ(誰ナンダ?)
涙を堪えられない、理由は解かってる
俺『なんで泣いてるんだよ?』
俺の手が私の涙を拭う
そう、この優しさが
俺『イッルに泣かれるの、俺一番嫌なんだ』
大好きなんだ
エイラ『私に構うなヨ』 プイッ
また、心にも無い言葉が出てしまった、そんな事思ってなんか無いのに
俺『構うよ、だったお前泣いてるじゃん』
少し怒ったイッル
意地悪されて、すねたイッル
ペリーヌや宮藤をからかっている時のいたずらっぽい表情
その全ての表情が大好きだ、だけど
泣き顔だけはダメだ、やっぱりこいつの顔に涙は似合わない
俺『お前の涙を止めるためなら、俺はなんだってするよ』
俺『だから・・・』
そんな事言うのはズルイ
他に好きな女がいるくせに
俺『・・・』
エイラ『・・・』
見つめ合ったまま、お互いに言葉を発せず黙り続ける
心のどっかで、きっと俺も私の事好きなんだろうなって思っていた
いや、思いたかったんだ
だけど現実は違ったみたいで・・・そりゃそうだ、こんな女の子らしくなくて素直じゃない私を好きになってくれる奴なんていないだろう
考えてみればこいつはコッラーの英雄とか言われて救国のヒーローでもあるんだ
女なんて引く手数多だろう
それなのに私ときたら、サーニャが好きとか、自分の気持ちが解からないとか言ってあっちにフラフラ、こっちにフラフラ
これは私のヘタレや優柔不断さが招いた結果なんだ
うん・・・諦めよう
俺『だからイッルが泣きやむまで俺は・・・』
エイラ『ありがとう』
エイラ『もう大丈夫ダカラ』
俺『そうか?まだ・・・』
エイラ『大丈夫!!ナ?』
俺『う、うん』
イッルが大声をだしておかげで気づいてしまった
顔の距離が信じられないくらい近いことに
俺『////』
さっきまで気にもしてなかったのに、意識してしまうともうダメだ
顔が熱くなるのを感じながら、離れようとしたその時
エイラ『嫌ダ!!!』
そう叫びながら私は俺を思いっきり抱きしめてしまった
俺『え!?』
俺が驚いている、当然だ、私も自分の行動に驚いているんだから
何をしているんだ、自分勝手だ、なんて思いながらも言葉は、想いは止まらない
エイラ『やっぱり嫌ダ!俺が、他の女を好きなんて嫌ダ!!』
また涙がでてくる、私はいつからこんなに泣き虫になったんだろう?
エイラ『わがままだって解かってる、でも!!』
エイラ『・・・好きナンダ』
エイラ『好きで好きで、しょうがないンダ』
エイラ『だから・・・』
エイラ『だから、離れナイデ・・・』
10年以上の間、何度も伝えようと思っていた言葉を聞いた
それも、その言葉を伝えたかった相手の口から
今俺の胸で泣いている少女の涙を一刻もはやく拭ってあげたかった
やっぱり彼女には笑顔が似合うから
俺『イッル、俺も、俺も好きだよ』
俺もイッルの身体をそっと優しく抱きしめる
俺『最初に出会った日から、お前の事、ずっと好きだったんだ』
儚くて、愛おしくて、何よりも大事な物
俺『だから、泣かないで』
ん?今こいつなんて言った?
エイラ(ずっと?・・・私が好きダッタ?)
という事は
エイラ『こ、このプレゼントって・・・』
顔を上げると、優しい目が私をみつめていた
俺『そ、それは・・・』
俺『お前に・・・渡そうと・・・クリスマスに・・・』////
エイラ(なにやってんだ私は―――――――――!!)
エイラ『こ、こんな予定じゃ無かったノニ・・・』
エイラ『もっとドラマチックに、こう・・・』
エイラ『しようと思ってたノニ・・・』
俺『ははは!』
俺『ま、こういうのも俺達らしくていいんじゃないか?』
エイラ『ムー』 ムスッ
ふと、お互いの目が合う
まつ毛も触れそうな距離
喋る度に吐息がくすぐったい
俺『でも、さっきのは嘘じゃないんだろ?』
エイラ『う、ウン』
エイラ『お前こそ、本当に他の女いないんダロウナ?』
俺『当たり前だろ』
ふふっ クスッ
俺『キ、キス、す、するぞ』////
エイラ『そ、そういうムード壊す事言うナヨ!』////
翌日
エイラ『お互いに想いを伝えあったその夜さえ手を出さないとは・・・』
エイラ『白い童貞恐るべしダナ』
俺『おまえ、マジで襲うからな、覚悟しとけよ』
エイラ『ハイハイ』
俺『くっそ!流された!!』
エイラ『そんな事より、今日こそトナカイが食べタイナ』
狩りに出かける準備を終え、玄関に手をかける
俺『オッケー、仕留めてくるよ』
エイラ『俺!』
俺『ん?』
再び、重なる唇
エイラ『ちゃんと仕留められるように、オマジナイ』
俺『お、おま、おま』
エイラ『今日だけじゃ無いカラナ!』
エイラ『これから、毎日だってしてやるヨ』
ガチャ
エイラ『じゃ、がんばってコイヨ~』
バタン
俺『よっしゃ―――――――――――!!!』
その俺の放った喚起のおたけびは、遥かウラルの山脈を越えたとか超えなかったとか・・・
最終更新:2013年01月29日 14:37