最上の空陸両用 6
309 名前: 投稿日:2010/12/14(火) 00:54:45 ID:.k7Sgbd.
501基地ドッグ、重巡洋艦【最上】
………
……
…
俺「<俺>少尉、出頭命令に応じ参りました!」
(なんか、今日ここに来るの二度目のような気がするが…気のせいだな)
艦長「うむ、ご苦労。
今日も飛んだそうだね」
俺「はい、哨戒任務を実施しました。
敵影確認されず、首尾よく終了しました」
副長「それはご苦労でした。
ところで、髪が濡れているのは、途中で雨にでも降られましたかな?」
俺(とりあえず服だけ着替えてきたんだが…相変わらずこまい事に気がつくおっさんだな)
俺「…欧州では、雨が振っても傘を差さないのが嗜みだそうなので、倣ってみました」
副長「なるほど、伊達ですな。
しかし、服も濡らさず髪だけ湿らす雨とは、わたしも降られてみたいものです。
男が上がるやも知れません。どうです、艦長?」
艦長「…私は冷やしたら腰が痛む質でね、雨が降ったら素直に傘を差すよ。
さて、仲良く談笑しているところ済まないが、本題に入ってもらってもいいかね?」
副長「はっ」
310 名前: 投稿日:2010/12/14(火) 00:56:43 ID:.k7Sgbd.
副長「さて、<俺>少尉には、我々最上の代表として、船の修理中501に出向してもらっているわけですが」
俺「はい。予定では、あと一週間ほどの任務となると記憶しています」
副長「そうでしたね。
ですが、現在問題が発生していまして」
俺「どういう事でしょうか」
副長「簡潔に結論だけ述べましょう、伸びます」
俺「伸び…修理が遅延しているという事ですか」
副長「その通りです。
部品が不足していましてね、こればかりは…」
俺(冗談だろ)
副長「冗談ではありません」
俺「は、あの…」
副長「はは、心を読んだわけではありません。
<俺>少尉はポーカーフェイスが上手いのでしょうが、私のほうは
仕事柄、人の表情を読むのに慣れてましてな。
この読みは私の勝ちと見てよろしいですかな?」
俺「…はぁ、負けました、はい」
311 名前: 投稿日:2010/12/14(火) 00:59:48 ID:.k7Sgbd.
俺「そうなると私の任務は…」
(伸びるのか…まぁそりゃそうだろうな)
副長「どうしたいですか?」
俺「は?
その…どうしたいですか、というのはどういう事でしょうか」
艦長「派遣に当たって、501のミーナ中佐には『約二週間』と伝えているからね。
君がそう望むのであれば、予定通り二週間で引き上げてもらっても構わない」
俺「私に、任務の裁量をお任せになる、と?」
副長「栄光ある第501統合戦闘航空団、対ネウロイ戦の最前線…
確かに華々しい言葉で飾られる部隊とその戦場ですが、
当然ながら、それは激戦地という言葉と同義ですからな。
現に、つい先日もあのような大規模な作戦を実施したばかりでしょう」
俺「オペレーションサラマンドラ、ですか」
副長「我々は、<俺>少尉の能力と判断力を信頼しています。
であるからこそ、そのあなた自身の現時点の判断を尊重したいと思っています。
あなたが今後あの部隊で戦っていけるか、それとも難しいと考えるか」
艦長「まあ、上官としてそれで良いのかと言われるとこちらとしても言い訳のしようがないが、
ウィッチの事はウィッチにしかわからない、というのが本音でね。
わからぬまま君に無理をさせて、最悪喪うような事になることを、我々は望んでいないのだ」
312 名前:名無しの俺[sage] 投稿日:2010/12/14(火) 01:00:05 ID:nKGfRcJU
水もしたたるいいおっさん
作中じゃスットボケたおっさんたちですが、実際かなりの切れ者さんたちです。
313 名前: 投稿日:2010/12/14(火) 01:02:36 ID:.k7Sgbd.
副長「…というか、この際さらに本音を言えば、我々はあなたに自分の気持ちを押し殺してまで
これ以上、この予定外の任務を押し付け続ける意志はないのです」
俺「私の、きもち…?」
副長「少尉は、今回の派遣任務は乗り気ではなかったでしょう。
力量差だけではない、感情的な部分であなたは今回の任務には拒否感があったはずです。
前回のオペレーションサラマンドラで一定の功績を上げたこともありますし、
もう一定の恩は返したという事で、二週間で予定通り任務終了とする事も出来ますよ」
艦長「どうするね?
私たちとしては、どちらでも構わない。
もう終了したいというなら、予定通り引き上げる、とそう伝えるだけだからね」
俺「あの…いきなりそう言われても。
少し考えさせて欲しいのですが」
副長「たしかにいきなりではありますが、出来ればこの場で決めてしまっていただきたい。
明日には正式に修理期間延長と合わせて、ミーナ中佐に連絡したいと思いますので」
俺「は…」
艦長「別に無理に継続する必要はない。
君にはなんの責任もないのだし、別に継続しないとしても評価が下がるようなこともない。
ま、君は評価を気にするような人間ではなかったかな」
副長「ま、せっかくですから戻ってきてゆっくり船室に慣れなおすのも良いでしょう。
陸のベッドに慣れすぎてしまうと、船では寝られなくなりますからな」
314 名前:たまに思うが最上さんって女の子より描写多いよね、誰得 投稿日:2010/12/14(火) 01:04:49 ID:.k7Sgbd.
俺「……」
俺(…どうしよう。
能力はともかく、まさか『俺の気持ち』までが争点になるとは思っても見なかった)
俺(能力だけ見たら、どうなんだろう。
この前の作戦じゃ偶然ながら『地上戦』っていう、俺がまともに戦える場面があったわけだが、
まああんな都合のいい話なんてそうそうありゃしないわな)
俺(そうなると、俺は足手まといになる可能性大なわけだが…
でも、ミーナ中佐とかもアイディア出してくれてるし、割となんとかなる気がしなくもない、か?)
俺(っていうか、俺の気持ち、か)
俺(俺、どうしたいんだろうな。
『気持ちを押し殺してまで』と言われたけど、もう結構前から、命令に対しては
自分の感情は押し殺しっぱなしな気がして、自分の気持ちが自分で良く解らん。
上に言われりゃ自分の感情は関係ない、それが軍人ってモンだと思ってたし)
俺(任務だから仕方がない、仕事だからやる…ずっとそう考えてやってきた。
軍にいる以上、自分の感情なんざ意味がないってずっと思ってきた、そんな考えが、
今それこそが問題になってきてるってのか)
俺(この一週間、501にいてなんだかんだでみんなに慣れてきてる俺もいるし、約束事だってした。
それとは別に、ウィッチが戦う事、特に幼い子が戦うのを見ることに対する嫌悪は残ってる。
いいことも悪いことも、たった一週間で整理がつかないくらい増えてる、そのどっちに天秤は傾いている?)
俺(どうしたい、俺はどうしたい?
何故そんなことさえ…自分の気持ちさえわからないんだろう)
315 名前: 投稿日:2010/12/14(火) 01:08:43 ID:.k7Sgbd.
艦長「…いまの501での任務と生活は、君にとっても大切な物、良い経験になっているようだね」
俺「え…は?
あの、何をおっしゃって…」
艦長「君は魔力量の少ない男性ウィッチであり、ストライカーも必ずしも空戦向けではない。
この前は活躍する舞台が整っていたが、もうあんな事はそうそうあり得ないこともわかっている。
であるならば、この先君が先日のような貢献が出来る可能性は限り無く低い。
君は自分の能力、そして環境等の条件を誰よりも良く理解している。
この条件であれば、以前の君ならば即答したはずだよ、『引き上げる』と」
副長「そうですな、以前のあなたならあくまでシビアに能力を判断した上で、
『足手まといになる可能性が高いので、引き上げます』などと言う感じですな。
あなたは、自分の能力が足りないという事を言うに躊躇する性格ではないですし」
艦長「それが、ここまで長考しても結論がでないというのは、
君が今の任務を、条件以外の側面で考えているということだ」
316 名前: 投稿日:2010/12/14(火) 01:11:21 ID:.k7Sgbd.
俺「そのようなことは…」
俺(『そのようなことは』ない?
今更そんなことを言うのもまさに噴飯モノだな。
認めるしかない)
俺「…いえ、私情を挟んでいる、という批判であれば、確かにそれを否定することはできないようです」
艦長「は…ははは! 批判など!
何を批判する理由があるものかね」
副長「まあ、結論が出ないということであれば、とりあえずミーナ中佐へは
あなたの任期については言及せず、修理期間が延長することだけ伝えましょう。
あとの事は、まあ、必要であればおいおい考えましょう」
俺「…は」
艦長「ふむ、差し当たっての結論は出たか。
…よし、もういいだろう。
<俺>少尉、ご苦労だった。戻りたまえ」
俺「は。
失礼いたします」
317 名前: 投稿日:2010/12/14(火) 01:13:20 ID:.k7Sgbd.
<俺>少尉退出後
………
……
…
艦長「…さて、<俺>少尉はどうするかな」
副長「恐らく、延長期間中も501に残るでしょうな。
基地のベッドはふっかふか、という事ですからな。最上のせんべい布団には戻りたくないでしょう」
艦長「確かに布団は柔らかいほうがいいからな。それに向こうじゃ風呂もつくらしいじゃないか」
副長「いっそのこと彼の代わりに私が501に出向したいくらいですよ」
艦長「まずはその軍靴を長靴に履き替えるくらいの工作をしないと成り代わりは無理じゃないか?」
副長「そうですな…いや、やはり無理でしょう。
私には、<俺>少尉にはないいぶし銀の魅力が滲み出てしまっていますからな」
艦長「はっはは、ただの加齢臭じゃないのか?」
副長「これは、なかなか艦長も手厳しい」
艦長「いやいや、まったく君と一緒にいると、こんな言葉遊びばかりうまくなって困る。
…それはそうと、可能なかぎり早く仕上げるよう整備班に伝えてくれ。
最悪、航行だけでも先にできるように」
副長「承知しております。
我々は、一刻も早く遣欧艦隊に合流せねばなりません」
艦長「そうだ、いつまでも寝床でまどろんでいるわけにはいかん…我々は、軍人なのだから」
318 名前: 投稿日:2010/12/14(火) 01:14:05 ID:.k7Sgbd.
<俺>、ふらふらと帰還
………
……
…
俺「……」ふらふら
坂本「おお、<俺>帰ったか。
いったいどういう話だった…って、おい何処へ行く!?」
……
…
俺「……」ふらふら
宮藤「あ、<俺>さんおかえりなさい!
今日の晩御飯は…あれ?<俺>さん?<俺>さーん?」
……
…
俺「……」ふらふら
サーニャ「あ、<俺>さんおかえりなさい…体は大丈夫ですか?」
エイラ「おーい、サーニャが聞いてるんだぞ、ムシすんなー…て、おーい、<俺>どうしたー?」
………
……
…
俺「…ベッド……」ふらふら
ばたんきゅー
319 名前: 投稿日:2010/12/14(火) 01:15:13 ID:.k7Sgbd.
俺「なんか、疲れた…」
俺(おかしいよな、俺。
ここへの派遣任務なんて、最初は本当に嫌だったってのに。
延長になるって聞いた時、確かに冗談だろ、と思ったのに)
俺(でも、何故か嫌じゃない俺がいる…。
どうなってんだ、俺は)
俺「まぬけすぎ…」
俺(なんていうか…自分の考え、くらい、せいり、できなきゃ)
(おとなとして、だめだろ…)
(……)
俺「……おれは」
320 名前: 投稿日:2010/12/14(火) 01:15:50 ID:.k7Sgbd.
俺「俺は、いったい俺をどうしたいんだ…?」
321 名前:名無しの俺[sage] 投稿日:2010/12/14(火) 01:16:29 ID:nKGfRcJU
援
322 名前: 投稿日:2010/12/14(火) 01:17:31 ID:.k7Sgbd.
――――
艦長「さて、今回はこれで終わりなわけだが、言い訳タイムかな?」
副長「お風呂回についてですか?」
艦長「まったく!…いや、それはいいよ。
もうひとつのほう」
副長「ええっと…滞在期間の延長については、この1度目は予定通りですな。
今回は、この<俺>少尉の一週間を総括したまとめのような回になりましたか」
艦長「今後また伸びる事はあるのかね」
副長「さあどうでしょう。
ですが、我々は一応、緊急対応として艦隊から離れている状態ですから、
あまりこの状態が長続きするのは状況が許さないでしょう」
艦長「どの道、別れは避けられんという事だな」
副長「そういう事です。
さて、今回はミーナ中佐が来るような危険要素はないわけですし…」
艦長「うむ、締めようか…では」
「「また次回、お会いしましょう」」
323 名前: 投稿日:2010/12/14(火) 01:18:17 ID:.k7Sgbd.
というわけで終わりです。
長々と失礼しました。
324 名前:名無しの俺[] 投稿日:2010/12/14(火) 01:19:00 ID:mf0khWDA
乙です!
325 名前:名無しの俺[sage] 投稿日:2010/12/14(火) 01:19:33 ID:nKGfRcJU
おつおつ
今回は<俺>少尉のお風呂シーンがあったり<俺>少尉が身包み剥がされるシーンがあったり
かなりのサービスシーン回でしたね!
最終更新:2013年01月30日 14:07