ストライカーとNライフルの調整を一通り終えて、俺は自室に戻ってきた。
 ベッドと、クローゼットと、目覚まし時計と、バスケットの中にリンゴがいくつか。
 それが俺の部屋の全てだった。

 朝の、魔導炉の異常稼働については結局何も分からなかった。
 マニュアルに載っていないどころか、何をどう弄っても再現しなかったのだ。
 中佐を通じて開発省に質問を送っておいたが、返答があるかどうかは眉唾ものだ。
 おそらくネウロイと何か関係があると思うが……こればかりはネウロイが来るのを待つしかない。

俺「それにしても、まさかバレてたとはなぁ。そりゃ、オゾン層を抜けるならアレを使った方が良いんだろうけど……」

 俺も、少佐の作戦がベストだということは理解している。
 少佐はどこまで知っているんだろうか。中佐にしか話していないことまで知られているんだろうか?

 そんな俺の思考を、ノックの音が遮った。

坂本「俺、起きているか? 坂本だ。宮藤も居る」

芳佳「俺さん、起きていたら開けてもらえませんか?」

 一人は想定出来て、もう一人は想定出来ない来客だった。
 ひとまず、俺は扉を開けてやることにした。

坂本「ありがとう。用件は多くない。済んだらすぐに退散する」

芳佳「ミーナ中佐から聞きました。俺さん……坂本さんと同じで、魔法力が減ってるって」

 突然の来訪はそういうことだったのか。
 いずれ話さなくてはいけないことだから、切り出すタイミングを計っていたつもりだったんだが。

坂本「済まない。そんな事情があるとも知らずに、私は……」

俺「少佐は悪くないでしょう。黙ってたのは俺なんですから」

 俺の魔法力は、僅かずつではあるが、減退し始めていた。
 それが発覚したのはアフリカに行く前。ちょうど今のストライカー、エーヴィヒシュテルンMk-IIを開発していた頃だった。

芳佳「『なんとかシステム』っていうのは何なんですか? 俺さんの魔法力と関係あるんですか?」

俺「『ソーサラス・エフェクティブリィ・アンプリフィケイションシステム』……略して『S.E.A.システム』。
  宮藤、ストライカーユニットにはウィッチの魔法力を増幅する機能があることは知ってるな?」

芳佳「あ、はい。そのお陰で重たい銃を持てるんですよね」

俺「そうだ。『S.E.A.システム』はその増幅能力を、一時的に通常の三倍以上に引き上げる。
  単純に考えれば、通常の三倍の力で戦えると思ってもらってだいたい間違いない。
  もちろん、ストライカーにとんでもなく負担が掛かるから、時間制限付きだけどな」

 カールスラント国籍の俺がブリタニア語で命名したのは、この増幅理論を発案したのがブリタニア人だからだ。
 そいつは今、ノイエ・カールスラント兵器開発省でエーヴィヒシュテルンの改良モデルを開発しているはず。
 大空を舞うウィッチが、星々の海までをも駆ける……という意味もあったり、なかったり。

芳佳「三倍!? もしかしてくなるんですか!?」

坂本「それより、問題はどうして俺のストライカーにそのシステムが存在するか、だ。
  ……やはり、魔法力の減退を補うため、なのか?」

俺「もう中佐から聞いてると思いますけど、症状の出始めが他のウィッチより早い分、進行は遅いそうです。
  専門の軍医には、"上がり"まで二~三年は掛かるだろうって言われました。
  でも、魔法力の総量は減ってますから、今回みたいに大量の魔法力が要求される時に役立つかな、と」

 なるべくそういう作戦は御免こうむりたいですがね、とうそぶく。
 口から出まかせもいいところだが、今の少佐たちにそれを勘ぐるだけの情報はない。
 理由なんてどうだっていい。システムが今ここにある。少なくとも少佐にはそれで充分のはずだ。

坂本「もしかして、それを使えば私の魔法力も……?」

俺「一時的に、ですよ。それも、使い捨ての増幅装置をストライカーに組み込まなくちゃならない。
  俺のエーヴィヒシュテルンはそのために設計を最適化してあるんです。少佐の紫電改だと難しいですね」

坂本「そうか……まぁ、失った魔法力を簡単に補えるとも思っとらんがな」

 残念そうに笑う少佐。……変に期待を持たせて、少し気の毒なことをしたかもしれないな。

俺「とにかく、作戦には少佐の指示通り、援護役として参加します。
  Nライフルに慣れなくちゃいけませんから、明日は終日射撃訓練ということで」

坂本「了解した。……しかしあれだな。いやに素直なお前を見ていると逆に不安になる」

 その評価はいかがなものか。いや、致し方ないとも思うが……。

芳佳「なんか昨日今日の俺さん、ブリタニアに居た頃に戻ったみたいですよね」

俺「馬鹿なこと言うなよ。俺は何にも変わっちゃいねーよ」

 宮藤の頭をぐしゃぐしゃとこねくり回してやった。
 やめて下さいよ、なんて言って抵抗されたが、二次性徴を過ぎた男の腕力に敵うものか。

坂本「照れ隠しか。お前にもなかなか可愛い所があるものだな。はっはっはっは」

俺「うるせぇさっさと帰れ! 俺はもう寝るんだ!」

 俺は来客二名を追い出すと、扉を乱暴に閉めた。
 去り際に、頼むぞと信頼の眼差しを向けた少佐と、頑張りましょうねと笑った宮藤の顔が、俺の脳裏から消えない。
 二人の足音が遠ざかるのを確認してから、俺はぽつりと呟いた。

俺「……いや、変わったのか。そうだな。俺は変わった。でも、それはいつからだ……?」

 もうはっきりと思い出すことは出来ないが――
 あの時、確かに、俺の中で何かがズレてしまった。俺がこうなったのは、その時からのような気がする。


          *          *          *


俺「サーニャ、エイラは何かあったのか? いかにも不貞腐れてますみてーなツラしてるけど」

サーニャ「……えっと、大丈夫、だと思います」

芳佳「エイラさん、本当にいいの……?」

エイラ「(ナンでお前がサーニャのマフラーしてんダヨ……)」

 作戦当日。エイラと、作戦の中核となるサーニャが、どうにもぎくしゃくしている。
 発進前からこんなで大丈夫なのか……。
 昨日、俺が射撃訓練に明け暮れている間に何かあったんだろうか。

俺「よく分かんねぇけど……お前らが後悔しないなら、それでいい」

サーニャ「え?」

芳佳「俺さん?」

俺「あの時こうしときゃ良かった、なんて後から思うような選択をしなけりゃ、それでいい。
  こんな命懸けの作戦だしな。まあ、話半分に覚えときな」

 何言ってんだろう、俺。まるで自分が後悔してるみたいじゃないか。
 ……いいや、後悔している。だからこそ、こんな言い方しか出来ないんだ。

エイラ「………」

エーリカ「にししし。言うねぇ」

ミーナ「突撃班、ミーティングは終わった? カウントダウンを開始するわよ」

俺「レイディオ3、オールグリーン」

芳佳「れ、レイディオ2、準備良し!」

サーニャ「レイディオ1、レディ」

ミーナ「了解。今回はカウントダウンのプロを呼んだわ。……お願いします!」

バルクホルン「カウントダウンの……プロ? ミーナ、何を言っているんだ?」

???『了解、エンプレス1。カウントダウンを開始する。10、9、8、7、6……』

坂本「男性か。……ふむ、渋みのある美声だな。さぞ偉丈夫だろう」

シャーリー「ノドあめ舐めたお袋さんに産んでもらってそうな美声だ。けど基地にこんな人居たっけ?」

???『5、4、3、2、発進、今!』

 十二人のウィッチが上昇を開始する。瞬く間に速度を上げて、ウィッチたちは雲を引いた。

???『任務完了。……君たちさえ居ればこの戦争は勝てる。そんな気がしてきたぞ』


          *          *          *


 あっという間に第一班が離脱し、ロケットブースターを使用している第二班の離脱高度が近付いてきた。
 第二班の離脱と同時に突撃班がブースター点火、そして俺がS.E.A.システムで超加速を掛け、一気に高度三万メートルまで上る手筈になっている。

ペリーヌ「時間ですわ! 後は頼みましたわよ!」

 ペリーヌの合図で、第二班のリーネ、ルッキーニ、そしてエイラが俺たちから離れて行く。
 一万メートル近い距離をこの四人が運んでくれた。後は俺たちの仕事だ。

サーニャ「俺さん」

俺「どうした?」

サーニャ「俺さんは後悔したんですか? こうしておけば良かった、って……」

俺「……ああ。今も、後悔してると思う」

芳佳「サーニャちゃん……」

 俺の答えを聞いて、サーニャは眼下のエイラをちらりと見た。ような気がした。
 その一瞥は、エイラにきちんと届いたらしい。

エイラ「……このままなんて嫌ダ……! 私が、私が、サーニャを守る……!」

 魔法力を使い果たしかねない勢いでブースターを噴かし、エイラが上って来る。
 もう二万メートルまであと少しだ。今魔法力が切れたら、エイラの身がどうなるか分かったもんじゃない。

サーニャ「何してるの!? エイラ!」

エイラ「サーニャ、言ったじゃないカ! 諦めるから出来ないんダッテ!
  私は諦めたくないんダ! サーニャは、私が守るんダーーー!!」

 魂の叫びが俺と宮藤に木霊する。もちろん、サーニャにも。
 だが、第二班として加速し魔法力をすり減らしていたエイラでは、あと一歩、届かない。
 その一歩を埋めるべく、宮藤が一時離脱し、エイラを捕まえた。

エイラ「ミヤフジ……」

芳佳「エイラさん、行きましょう!」

 だが、エイラの分まで加速を担うことになった宮藤が、逆にだんだんと遅れ始めた。
 二人分の加速力があるこちらに追い付けないのだ。

サーニャ「芳佳ちゃん! エイラ!」

芳佳「お……俺さんっ……! エイラさんを……!」

俺「少佐がキレるな、こりゃ。しょうがねぇ、後で一緒に怒られてやるよ……『アスポート』!」

 俺の左手が光り、ちょうど人が二人分通れそうな大きさのワームホールが現れる。
 その出口はエイラのすぐ上だ。加速と生命維持に魔法力を割いているため、これ以上に距離を伸ばせない。

俺「宮藤、エイラ! その輪っかの中に突っ込め!
  サーニャ、手を伸ばせ。お前が引き寄せるんだ」

サーニャ「俺さん……」

俺「本当に必要なことなら躊躇うな。俺みたいになっちゃダメだ」

サーニャ「はい……!」

 宮藤の渾身の力で、徐々にエイラがワームホールの中に押し込まれる。
 我武者羅に伸ばされたエイラの手がこちら側のワームホールから現れ、それをサーニャが掴み取った。
 俺も手を貸し、エイラの身体をワームホールから引きずり出す。
 だが、宮藤は現れない。倍の速度で魔法力を消耗し、もう上昇することが出来ないのだ。

芳佳「こちらレイディオ2! 只今より、コールサインをリンクス1に譲渡!」

エイラ「ミヤフジ!」 

芳佳「俺さーん! 一緒に怒られる約束、忘れないで下さいねー!」

 そう叫ぶ宮藤の顔には一点の曇りもない。ああ、羨ましい。あんな風に正直に生きられたら……
 だからこそ、色々なモノを抱えた俺たちは、そんな宮藤のお陰で変わっていけるのかもしれない。
 エイラと、サーニャも……もしかしたら、俺も。

ペリーヌ「無茶よ! 魔法力が持ちませんわ! 帰れなくなりますわよ!」

サーニャ「私がエイラを連れて帰ります。必ず連れて帰ります」

ペリーヌ「む、無茶苦茶ですわ……」

ルッキーニ「いっけー! サーニャ! エイラー!」

俺「俺も忘れないでな。……それじゃあ行くぜ。S.E.A.ブーストイン!」

 通常よりはるかに高密度に増幅・圧縮された俺の魔法力と大気中のエーテルが結合し、光の粒子へと変わる。
 粒子はサーニャとエイラをも包み込み、物理的な障壁となって空気抵抗と高濃度オゾンから俺たちを守る。
 駆け上る一筋の光となって、俺たちは星空へと突き進んでいった。


          *          *          *


俺「そろそろ止めるぞ。S.E.A.ブーストアウト」

 高度三万メートル。S.E.A.システムを停止すると、エーヴィヒシュテルンのハッチが開いて焼き付いた増幅装置を排出した。
 これで、もうシステムは使えない。エイラは既にブースターを切り離し、残るは俺とサーニャのブースターのみ。
 だが、ここからは通常動力でネウロイのコアへと向かう手筈になっている。ブースターは帰還の段階で使用する。

サーニャ「エイラ、ちゃんとお礼を言いましょう」

エイラ「あ、ありがとナ、俺……」

俺「礼なら宮藤にだ。あいつが動かなかったら、俺も動かなかったさ。
  それより、これから大丈夫か? 目標までまだ距離があるぜ」

サーニャ「私は、コアを撃つだけだから」

エイラ「サーニャを守ることだけ考えてればいいんダロ?」

俺「上等。エンプレス1へ、こちらレイディオ3。規定高度に到達。脱落者なし。
  これより作戦をフェイズ2へ移行、目標へと向かう」

ミーナ『エンプレス1了解。……レイディオ隊各機へ。坂本少佐がおかんむりよ。
  貴方たちが戻らなければ、宮藤さん一人で四人分の折檻を受けることになるでしょうね。
  ……どうか、無事に帰ってきて』

俺「レイディオ3、了解。楽しみにしとくって伝えといて下さい」

サーニャ「レイディオ1、了解です」

エイラ「レイディオ2、了解シタ!」

 俺たちの見据える向こう側に、柱の天辺が見える。
 心なしか、俺たちにとっては見慣れた赤い色に染まっているように思えた。

俺「さて、エスコートはここまでだ。もう二人の邪魔はしねーよ。
  茶々入れてくる雑魚は俺が全部撃ち落とすから、安心して行ってきな」

 俺は二人を後押しするように、Nライフルを持ち上げて見せた。
 そんなことをしている間にネウロイ本体の天辺が開き、コアが露わになる。
 開いた装甲……と言うより外皮の先端から、赤い光がコアに向かって注がれ始めた。

サーニャ「撃ってくる……」

エイラ「任せロ! レイディオ2、目標へ飛翔すル!」

 エイラがサーニャの手を引いてコアへと向かう。
 わざわざ向こうから弱点を見せてくれたのだから、またとないチャンスには違いない。
 だが、敵も馬鹿ではない。子機を浮遊砲台として大量に配置しているのが見える。

俺「邪魔はしねぇし……させもしねぇよ! レイディオ3、狙い撃つぜ!」

 二人を感知し攻撃態勢に入った子機を、補正モードのスコープが捉える。
 それよりも速く、俺は次々と引鉄を引いて行く。
 魔導炉がまるで獰猛な獣のように低い唸り声を上げ、圧縮された光の弾を吐き出し続けた。


          *          *          *


 赤い光が迫る。ネウロイのビームだ。
 エイラが私の少し前に出て、シールドでビームを止めている。

 エイラが受け止めてくれているビームがシールドの表面で弾け、いくつにも分かれて流されていく。
 きっと下に居る仲間たちからも見えているだろう。
 とても幻想的で、つい目で追ってしまう。

 そんな私の視界に、赤い点を抱えた黒い塊がいくつも現れるが、それらは何も出来ずに、一つ残らず次から次へと粉々に砕けてゆく。
 俺さんが先程の言葉通りに撃ち落としてくれているんだろう。
 いつもはいい加減なのに、いざという時にはとても頼りになる人。……不思議な人。

 ネウロイに近付くにつれて、敵のビームがどんどん強くなっていく。
 ここからエイラの顔は見えないけれど、歯を食い縛って耐えているのが伝わってくる。
 早く攻撃しなきゃ。このままじゃエイラが――

エイラ「まだダ! もっと近付いてからダ!」

 でもエイラ、貴方は上昇の時に魔法力をたくさん使っていて……
 俺さんだって、魔法力が減退しているのに予定にない『アスポート』を使って……

エイラ「私は諦めないゾ……諦めてたまるもんカ!」

 ビームの輝きが一段と強さを増す。もう限界だ。私はフリーガーハマーを構え、ロックを――

エイラ「だから! サーニャも諦めんナ!!」

 エイラの言葉と同時に、背後からネウロイとは別の強力なビームが空間を貫いた。
 それは何かに当たって――あれは本体の外皮?――急にネウロイのビームが勢いを減じ、ついには止まった。
 コアは静止している。エイラがそっと私の手を離して、攻撃のタイミングを告げた。


          *          *          *


 俺が渾身の一撃を撃ち放ってから遅れること数秒後、フリーガーハマー九発の炸裂を超える規模の大爆発が起きた。
 爆炎と共に、輝く塵が眼下の大地へと降り注いでいく。そして、その中に蒼い光を放つ二つの影が見える。
 二人の無事を確認して、俺は右手で保持したNライフルを見下ろした。

俺「今回は、こいつの異常に助けられたかな?」

 一昨日にも起きたNライフルの魔導炉の異常駆動は、再び発生していた。
 今回のそれは、設定出来る最大出力を人間の浅知恵と嘲笑うかのような膨大なエネルギーを生み、
 コアにパワーを供給していた外皮を一つ、たった一撃でぶち抜いて機能停止に追い込んだ。
 何よりも驚いたのは、酷使された後の炉や銃身がそれだけのエネルギー放射に耐えたことだ。
 まるで最初からこの異常な出力が想定されていたかのようじゃないか。

俺「まあ……今はいいか」

 助かったことに変わりはない。大きく息をついて、俺は普段よりも近い星空を見上げた。
 あの二人もじきに帰還軌道に入るだろう。それを見届けたら俺の仕事も終わりだ。


          *          *          *


エイラ「聞こえるカ?」

サーニャ「うん……」

エイラ「……ごめんナ」

サーニャ「ううん、私も……」

 寄り添う二人は、ネウロイの破片に混じって成層圏を滞空していた。
 二人の視線の先には、雲より高くそびえる山脈が鎮座している。

サーニャ「見て、エイラ。オラーシャよ。ウラルの山に手が届きそう……」

 サーニャが小さな手を山へと伸ばす。伸ばして、触れようとして……その手は空を切った。

サーニャ「このまま、あの山の向こうまで、飛んで行こうか?」

 オラーシャの大地を見つめるサーニャの表情が陰る。
 彼女はネウロイのオラーシャ侵攻の折、両親と生き別れたままなのだ。
 そんな彼女の横顔を見て、エイラは涙を堪え切れなくなった。

エイラ「……いいよ。サーニャと一緒なら、私は何処へだって行けル……」

 その涙に、サーニャはハッとする。そして、エイラの身体に、そっと身を寄せた。

サーニャ「嘘……ごめんね。今の私たちには、帰る所があるもの」

エイラ「アイツが誰かを守りたいって気持ちが、少しだけ分かった気がするヨ……」


          *          *          *


俺「エンプレス1へ。こちら、レイディオ3。目標の撃破、及び
  レイディオ1、レイディオ2の帰還軌道への突入を確認。これより帰還する」

 静かに、語り掛けるように呟いて、返答を待たずに俺は交信を終了する。
 見上げた星空に手を伸ばして……ぎゅっと、拳を作った。

俺「見上げるばかりで、俺は良いのか?」

 必死に追い縋るエイラを見て……必死にエイラを押し上げる宮藤を見て……俺は何を思った?
 俺がサーニャに伝えた言葉は、俺が、俺自身に向けた言葉だったのではないか?
 そう思えて仕方がなくて、……少しでも星に近い場所に居たくて、俺は未だ成層圏に留まっていた。

俺「届かないままで、俺は良いのか?」

 とうに道を誤ってしまった俺に……願う権利などあるのだろうか?
 どうしようもないズレを抱えたままのどうしようもない俺に……そんな資格などあるのだろうか?

 星を見上げても、何も答えてはくれない。
 俺の中でどうしようもない空回りが繰り返されて、ただ、それだけ。
 誰も答えをくれない。……いや、誰にも答えを出せない。
 権利とか、資格とか……俺はそんな言葉に逃げているだけじゃないだろうか。

俺「ティナ……俺はここに居る。あの時から何も出来ないままで、ここに居る」

 そんなのは御免だ。このままでは居たくない。そう思えたから――

俺「帰るよ。変えていくんだ……これから、ここから」

 もう間に合わないかもしれないけれど。

 星々に願いと共に微笑みかけ、俺は全身に力を入れた。
 「永遠の星」と命名されたストライカーユニットに魔法力が満ちて、俺は大気の底へと落ちて行く。

 ところで、帰還した俺たち突入班には、少佐のキツいオシオキが待っていたわけだが……
 それはまた、別の話としよう。


<つづく>



次回予告

エイラ「ウーやっと終わった。よく働いたナー」

サーニャ「まだよエイラ。次回予告、始まってる」

芳佳「俺さんの魔法って便利ですよねー。離れた場所にあるもの取り放題ですもん」

俺「左手でしか使えねぇけどな。俺自身は手ェ突っ込むのが精一杯だし。ていうか俺死亡フラグ立ってね?」

リーネ「あの、次回の内容は告知しないんですか?」

エーリカ「次回! 『十二星の座』!!」

バルクホルン「おい、早過ぎるぞハルトマン! だいたい今回のシャウトは私の担当のはずだろう!」

坂本「はっはっはっはっは」

ミーナ「で、結局何をするの? どうやら私たち全員が関わりそうなタイトルだけど……」

ルッキーニ「あのねー、俺がねー、どかーんってなるんだよー!」

俺「え? 俺爆発すんの? ホントに死ぬの? ……マジで?」

シャーリー「まぁ、ここからがお前の物語の本番だからな。一回や二回死んだっておかしくないさ」

俺「ティナ出て来てねぇのに死ぬのかよ! 前代未聞だよ!」

ペリーヌ「そのマルセイユ大尉もちょっぴり顔出しするそうですわよ。
  メインヒロインだと言うのにこの扱い。本当にメインヒロインなんですの?」

最終更新:2013年01月30日 14:25