「とりっくおあとりーと!!」
10月31日、今日はケルトの文化にあるハロウィンの日だ。
相変わらず太陽が照りつけるこのアフリカにあってはあまり縁のない風習であるが、
各国の軍人達、とりわけ少女たちが多く存在するこの基地ではそんなに珍しいことではない。
数日前、部隊に所属する「パットンガールズ」の少女たちからこの風習を教えられた
―とはいってもトリックオアトリートといえばお菓子が貰えるという程度のことであるが―
ハンナ・マルセイユの養い子(と表向きになっている実の娘)のアンジェリナ・マルセイユは
その魔法の言葉をいろんなひとにためすため、基地を歩いていた。
そして最初に訪れたのが自分を溺愛してくれるおじいちゃん達のいるこの部屋だった。
「ん?おお、そうか、今日は10月31日か、
おいロンメル、モンティ、小さな魔女様がお見えだぞ!!」
扉が開らかれるなり魔法の言葉を唱えたアンジェリナを出迎えたのはパットン将軍だった。
彼は事情を把握すると奥にいる自分の戦友たちに声をかけた。
「うん?アンジェリナ君じゃないか、どうしたんだね?」
「ふむ、たしか今日はハロウィンの日だな」
「うん!アンジェね、おねーちゃんたちにまほーの言葉をならったの!
だからとりっくおあとりーと、お菓子くれなきゃいたずらしちゃうよ?」
「はっはっは、ワシはいたずらでも「パットン?」っち、冗談のわからんやつめ。
まぁいい、魔女様はお菓子を御所望だ、なんかないか?」
「ん、キャンディならあるぞ。」
そういってモントゴメリーが机から飴を取り出すと、
「では、小さな魔女様、このお菓子にてどうぞ我らをお許しくださいませ。」
と言って飴をアンジェに手渡した。
「うん!とくにさしゆるす~
ふふっありがとう、おじいちゃんたち!!」
お菓子を貰えたアンジェは輝く笑顔でそう言った。
「う~ん、やっぱり孫ってモンはかわいいなぁ……」
「同感だ、さすがは私の孫だよ。」
「おいおい、また寝ぼけてるのかロンメル。」
ロンメルの言葉で場の空気に緊張が走る、しかし……
「めーー。」
『はい……』
アンジェリナに怒られてすごすごと引きさがった。
「じゃぁわたしケイおねーちゃんのところにいってくるね、ばいば~い!!」
そう言ってアンジェリナは部屋から出て行った。
「ふー、いやなんにせよ孫が身近にいるというのはいいものだな。」
「まったくだ、しかしあの子がやがて大きくなって嫁に行ってしまうかと思うと……」
「……まぁそのときは当然……」
『その相手の息の根を止めてやる以外にはないな』
じじ馬鹿ここに極まれりである。
その後アンジェリナはウィッチ隊の寮に赴き、
そこにいた扶桑組み含めたウィッチたちにお菓子をもらった
、
ついでにハロウィンなんだから仮装しなくてはと古子が黒い三角帽にマントを着せ、
頭にマルセイユと同じような鷲の羽根飾りをつけてやった。
大好きなおかーさんとおそろいになった彼女は、
その嬉しさをそろそろ哨戒任務から帰ってくる母に伝えるために滑走路にむかった。
~滑走路脇 戦闘脚ハンガー~
アンジェリナがハンガーについた頃と
同時にマルセイユはストライカーを固定器に接続していた。
その傍らには彼女にドリンクを手渡しと腕にタオルを持った俺がいる。
「おとーさん、おかーさん!」
整備兵たちの足元を縫うように駆け抜けて、アンジェリナは父に飛びついた。
「おっと、おやおやアンジェ、ここは危険だからきちゃ駄目だっていってだでしょう?」
愛娘を抱き上げながら、最近お転婆具合が増してきた彼女を俺がたしなめる。
「まあ大丈夫だろ、あまり気にしてるとハゲるぞ俺。
ところでアンジェ、可愛い格好をしてるな?」
「うん!ルコおねーちゃんに着せてもらったの、おかーさんとおそろいだよ!!」
「おや、ほんとだな、それを見せにきてくれたの?」
「うん!あ、それだけじゃないや、
おとーさん、おかーさん、とりっくおあとりーと!!」
「む?……ああ、そうかハロウィンか……俺、なんか持ってる?」
「えーと、ちょうどビスケットがありますけど?」
「じゃ、それちょうだい。
……はい、アンジェ、ハッピーハロウィン。」
「うん!ありがとうおかーさん!!」
「どういたしまして、そうだ、向こうにライーサがいるからその格好をみせてらっしゃい。」
「うん、いってきま~す。」
そういってアンジェは俺の腕から飛び出しライーサのいるところまで走っていってしまった。
「元気ですねぇほんとに。」
「そうね……あ、そうだ、俺、トリックオアトリート」
「いっ!?……ティナさん、
いま僕がなにも持ってないの分かってて言ってますよね?」
呆れる俺にマルセイユは悪戯っ子の笑みを浮かべる。
「ん~?知らないなぁ、ほらほら、お菓子くれなきゃ悪戯するぞ?」
「だからありませんって……」
無邪気に笑う自分の恋人(結婚は20になってからと将軍たちに言われている)に
俺はがっくりとなる。
「じゃぁ、悪戯しかないな、ほら俺こっちむいて?」
「はぁ……なにをされるのでしょうか、んん!!」
俺が顔を向けたその瞬間マルセイユが俺の口にキスした上に舌を入れてくる。
彼女はたっぷり一分間楽しんだ後、ようやく口をはなした。
「ふぅ、ふふっ、悪戯成功♪じゃぁ私シャワー浴びてくるからまたあとでね。」
「て、ティナさん……あ、あなたというひとは!……まったく……」
走り去って行く恋人を眺めながら俺はそう言ったのだった。
しばらく呆然としていた俺は気を取り戻すと、
とりあえず手に持った荷物を片付けようとした。
しかし……
「よ~俺、随分と見せ付けてくれるじゃないか、えぇ?」
ぎぎぎっと音がするように俺が首を後ろに向けると、
その手に各種工具を携えた整備兵のみなさんがいた。
「み、みなさん、おそろいで……あのそれはなんでせうか?」
『決まってんだろ?……シネ!!』
ぎゃーーーー!!
「 ! ふふっ……さぁて、夜はどんな悪戯をしてやろうかな?」
響き渡る俺の悲鳴をききながらシャワールームでマルセイユがニヤリとわらった。
おしまい
最終更新:2013年01月30日 14:40