StrikeWitches IF:Chapter 1
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私の名前はオリーブ・クエイル。リベリオン空軍爆撃部隊のウィッチです。
でも現在は、安全なノイエカールスラントにて毎日物資の運搬作業をしています。

給料はいいし就労時間も日が出てるうちだけなので特に文句はなかったのですが
ある日突然、リベリオン統合参謀本部の直令で第501統合戦闘航空団への
重要物資の輸送と異動が命じられました。

私は中身もわからない重要物資を航空機に詰め込み、
技術者のウルスラ・ハルトマンさんと共にロマーニャへの長い航路に出ました。
―――――

  • 輸送機内-

ウルスラ「オリーブさん、どうされました? ……落ち着かないように見えますけど」

オリーブ「えっ、いや特に……。ただ、私みたいな純粋な実力階級は二等兵のウィッチに
      突然世界中の優秀なウィッチの集まる501に異動だなんて。
      それに統合参謀本部員が直接私の宿まで異動を知らせに来たのよ?」

ウルスラ「それは確かに、驚かれるかもしれませんね」

オリーブ「実戦経験なんて、カールスラント本土で虫の息のネウロイを爆撃しただけ。
      今度はノイエに飛ばされて運搬作業……とても最前線に送る柄じゃないわ」

ウルスラ「オリーブさんの思われる所は解ります。でも、ちゃんと理由あって
      501に異動になったのですから、どうか杞憂はなされないで下さい」

オリーブ「……?」

―――――
輸送機は何度か補給地点を次ぎ遂にロマーニャ空軍基地へと到着する。
重要物資と私の荷物は作業員に運搬してもらい、ウルスラさんと私は単身で
伝説とまで言われたウィッチたちが待つ司令室まで向かいました。
―――――

ミーナ「はい、みんな注目して。今日から我が501に新しく配属された隊員を紹介します」

ゲルト「(新人入隊か。来るロマーニャ決戦に備えてキチンと教育しなければな)」

エーリカ「(また人増えるんだー……)」

ペリーヌ「(騒がしい人じゃなければいいんですけどね……)」

宮藤「(どんな大きさと形だろう……)」

ミーナ中佐が直接扉を開く。ウルスラさんより気持ち一歩下がり目に
恐れ多いと思いながらおずおずと室内に入ると、着席しているのは年相応と見える
普通の女の子たちだった。

ミーナ「それではオリーブさん、自己紹介をどうぞ」

オリーブ「こっ、こんにちは! リベリオン空軍より来ましたオリーブ・クエイル軍曹です!
      この度はいどっ、……異動ということで、あの」

シャーリー「おいおいそんなに畏まらなくてもいいぞー」

ルッキーニ「いつもの通りでいいからねー」

オリーブ「そ、そうですか。わかりました」

シャーリー「……あれ? オリーブ、ちょっと先に聞いていいか?」

オリーブ「はい、なんでしょう」

シャーリー「そのズボン……ブラックスパッツァー部隊の隊員なのか?」

オリーブ「はい……そうですけど」

リーネ「(へぇーあれがもしかしてスパッツって言うのかな……?」

エイラ「(ヘリコプターみたいな部隊名ダナ)」

サーニャ「(Zzz...)」

シャーリー「おいミーナ、ブラックスパッツァーはリベルのB-29爆撃部隊のニックネームだぞ?
       部隊そのものがうちの作戦に追随するならまだしも……」

ミーナ「その通り。オリーブさんはB-29戦略爆撃飛行脚を使うウィッチです
それと、ちゃんとした作戦参加としてこの部隊に異動になったの。心配いらないわシャーリー」

シャーリー「そっか、なら良いんだ。悪かったオリーブ! 続けてくれ!」

オリーブ「あはい! えっと……どこからでしたっけ」

……
リーネ「(悪い人には見えなさそうだけど……)」
ペリーヌ「"あの人"に変になびかないように」
エイラ「(先手を打っておく必要があるみたいダナ)」

ザザザッ
リーネ「オリーブさん! よかったら今から案内でもどうですか!」
ペリーヌ「そうですわ! 少佐に案内されたらあの子何の気を起こすかわかりませんわ……」

坂本「呼んだか?ペリーヌ」

ペリーヌ「さっさささ坂本少佐! いつの間に!?」

坂本「ちょっと前だ。すまん、遅れた」

ペリーヌ「いいえいえ、お気になさらず……あれ? オリーブさんはどこに」

宮藤「案内私も行きたいー!」

ペリーヌ「えっ (でも芳佳ちゃん一人をつけているよりは安心ね) う、うん! 一緒に行こ!」

エイラ「サーニャは部屋で休んでナ」

サーニャ「うん……」

ミーナ「ちょっとあなた達! 会議はまだ終わってませんよ!」

ルッキーニ「私もいくー!」

ガヤガヤ   バタン
エーリカ「あーあ、ホントに行っちゃった」

坂本「まったく……しょうがない奴らだな」

シャーリー「それで、リベリオンの爆撃隊員がなぜここに?」

ミーナ「触りだけは聞いたけど本腰の説明は私からは出来ないわ。
    そのために、ウルスラさんに着てもらったのよ」

エーリカ「おぉ、ウルスラ久しぶり」

ウルスラ「姉さま……ちょっと遅いです」

エーリカ「あれ? えへへ、ごめんね」

ウルスラは基地員に指示すると、司令室に彼女と同じほどの丈がある荷物が運び込まれた。

エーリカ「もしかしてイモ?」

ゲルト「いや、イモだったらこんなところにまで持ってこないだろ……」

ウルスラ「いえ、イモではありません。これはノイエカールスラントにて開発された
      対ネウロイ用の最新兵器です」

ミーナ「それではウルスラさん。その説明をお願いするわ」

ウルスラ「はい」

金属の厳重な容器を開けると、中には従来の銃器には似ても似つかないような
威圧的なフォルムをした銃があった。

ウルスラ「RG-45。魔導銃と呼ばれ開発されたものです」

シャーリー「んー、でも見た目はリーネのスナイパーライフルをゴツくしただけにしか見えないんだけど」

エーリカ「すっごーい。これウルスラが作ったの?」

ウルスラ「いえ、開発したのはリベリオンとカールスラントの共同研究技師で、私は説明に来ただけです。

ゲルト「具体的にはこれまでの銃器と何が違うんだ?」

ウルスラ「みなさんの使用している銃器は、魔法力で強化されてますが
      基本的な構造は火薬によるガス圧なので威力に限界があります。
      魔導銃はこの中に完成された術式が存在し、射撃手がそれに則り使用することで
      最大秒速60キロで弾丸を発射できるとされています」

シャーリー「60キロぉ? そんなのその辺の車より……秒速!?
       えーっと1分が60秒だから」

ミーナ「時速21万6000キロ。マッハ5ってことね……私たちの銃の初速は秒速10キロが限界だから
     単純に速さだけ考えれば6倍、恐ろしいほどの威力は想像つくわ」

エーリカ「でもさーウルスラ、そんなすごい兵器なら何かめんどくさい事があるんじゃないの?」

ウルスラ「面倒くさいと言いますか……姉さまの通り、簡単な使用は出来ません。
    兵器の詳しい説明は別にしますが、コレを使用していただくのが今日紹介したオリーブさんです」

ゲルト「ほぉ……ま、ネウロイに対して強力な対抗手段が出来たのなら良い事だ。
     それにしてもあいつら、新人連れてどこに行っちゃったんだ?」

―――――

宮藤「基地内は一通り紹介したかな?」

リーネ「ちょうど食堂まで戻ってきたし、お茶にしましょうか」

エイラ「そうダナ、ちょっと歩きつかれちまった」

ペリーヌ「オリーブさん、こちらにいらして」

オリーブ「はい、ありがとうございます」

ルッキーニ「ふぃー、ちかれたー」

宮藤、エイラ、ルッキーニ、オリーブが席に着くと、ペリーヌとリーネが
手際よくお茶の準備を始めた。

宮藤「ノイエカールスラントって南リベリオン大陸なんだよね?
    そんな遠くからなんでここに配属されたの?」

オリーブ「それが私もよく解らないの……特別な能力もなければ固有魔法もないし
      戦闘能力も反応が良くないし……けど魔法力が平均よりちょっとタフだから
      重い爆弾を持つ爆撃部隊に居たってだけ。実際私が一番不思議に思ってるよ」

エイラ「へー。私たちは基本撃ちに行くか迎えて撃つだから、毛色は確かに違うナ」

ルッキーニ「いいじゃんいいじゃんそんなこと。
       それよりオリーブ、南リベリオンの美味しいご飯とか作れる?」

オリーブ「あ、私おじいちゃんがロマーニャ人だから基本的にロマーニャ料理だけど……」

ルッキーニ「うそー! じゃーねじゃーね!今晩はニョッキがいい!」

オリーブ「また地味に家庭なメニューだね……もし作れる機会があれば」

ルッキーニ「やたー!」

リーネ「セイロンティーです。お口に合うといいんですが」

オリーブ「んーおいしい! 付け合せのスコーンも軽くておいしいよ」

ペリーヌ「ほほほ、ほめるならもっとほめても宜しくてよ」

宮藤「そっかぁ。とにかく、よろしくね!」

オリーブ「はい!よろしくお願いします!」

ウゥゥゥゥゥ……

エイラ「サイレンだ」

警報と慌しい足音が近づいてきたと思った瞬間、食堂の扉が勢いよく開いた。

ゲルト「何やってるんだお前たち! 出撃だ!」

5人「はっはい!!」

オリーブ「あの! 私も行ったほうが良いですか?」

ゲルト「そうだな……ミーナはどう思う?」

ミーナ「そうね、これから実戦に参加するなら間近に居たほうが良いとは思うわ
    オリーブさんは後続で、なるべく実戦距離から離れる感じについてきて」

オリーブ「(ゴクリ……)はい、わかりました」

初めての実戦ではないけれども、これから活動中のネウロイに攻撃しに行くと考えると
前線の緊張感と現実感が、自然とユニットに伸ばす足先を震えさせる。

宮藤「これがB-29? なんか私達のよりも大きいねー」

坂本「爆撃用だからな。私達のストライカーと同じに、用途における相応の作りと術式がある」

ルッキーニ「銀色でぴっかぴか!!」

ミーナ「敵は北11キロの地点に突然出現したわ。まだ破壊活動は行ってないけど
    行動を起こされるのも時間の問題だわ。戦闘領域に入り次第即交戦、陣形は崩さないで!」

全員「了解!」

サーニャ(睡眠中)を除くウィッチーズとオリーブが基地より出撃する。
オリーブは4発のプロペラを捲くし立て一気に高高度まで上がり続ける

※インカム
坂本『どうしたオリーブ、あんまり隊列を離れるなよ。ネウロイが見えるか?』

オリーブ『いいえ……私は特別なことは出来ないので。でも視力は2ありますよ?
     最近は運動量の高い飛行をしてなかったので、念のために……』

エーリカ「あれ、通信が途絶えた」

リーネ「太陽がまぶしくて見えない……」

ゲルト「作戦中に迷子探しは勘弁だな……『オリーブ軍曹! そろそろ戻れないか?』」

プロペラ音のストロークが背後に聞こえたと思うと、銀色の機体が隊列目掛けて急速に降りて
そして最後尾に着きなおす。

オリーブ「ごめんなさい、多分感はニブってないみたいです」

シャーリー「ここから通信が途絶える高高度まで行って、まるで散歩に行ってきたみたいな顔色だな」

坂本「そういう状況も想定して作られたんだろう。いざとなったら上昇して撒けるなら良い手段だ」

ミーナ「そろそろ迎撃地点だわ。みんな武装を確認、射程に入ったら交戦開始!」

その指令から間もなくけたたましい銃声が鳴り響く。オリーブは手ぶらで少し高度をとり見守る。
ネウロイは土偶のような形をしている。コレまでにオリーブが聞いた機械系のネウロイとは
何か違うものが見えてる気がした。

エーリカ「何こいつー! 再生どころか装甲が破れないよ!」

リーネ「私が撃ちます!」

エイラ「おイ……全然利いてないじゃないか」

宮藤「でもこのネウロイ、全然攻撃してこないよ?」

坂本「防御特化か。縦横無尽に撃ってくるよりかは良いが、逆にタチが悪いとも言える。
  コアは不動で瘴気もだしていないが、これ以上撃ち続けても飛行だけで魔法力を消費するだけだぞ」

ミーナ「そうね……みんな、攻撃中止。少し見切ってから一旦戻りましょう」

ゲルト「……くっそおおおおおおおお!!!」

ミーナ「ちょっとトゥルーデ!」

土偶ネウロイの数メートル前まで迫るバルクホルン。眉間に銃をつきたてるようにしてトリガーを引く。
銃弾は耳に響く金属音を返し、空に散る。

ゲルト「ずおおおりゃああああああ!!!!!」

バキンッ!!

ゲルト「――ッ!!」

結局ネウロイは一撃のビームすら返してこなかった。
バルクホルン得意の銃槌もネウロイに傷一つつけることは出来なかった。
更には反動で、両手には裂傷のない痛みまで負ってしまった。

宮藤「バルクホルンさん……痛みは取れましたか?」

ゲルト「気分と腕の痛みは良くなったが……相変わらず痺れてろくに指が動かない
     すまんな宮藤」

宮藤「ごめんなさい……私がもう少し上手く治癒魔法が使えたら」

ミーナ「軍医の診断では、2,3日も寝ていれば取れる痺れだそうよ。心配は要らないわ」

シャーリー「でも、心配なのはネウロイもだなぁ。居はするけど行動しないし、こっちから撃滅できなきゃ
       正直八方塞も同じだしなー」

ルッキーニ「それよりご飯たべたいー!」

ウルスラ「ずいぶんおあつらい向けなネウロイですね」

坂本「そうかもしれないな」

ルッキーニ「ごーはーんー!」

シャーリー「ちょっと静かにしてろー、今は落ち着くまで我慢だ」

ルッキーニ「うじゅー……」

バルクホルンが横たわる病室、寝ていたサーニャも起きてきてオリーブを含むウィッチ全員が揃う。
その場で坂本とウルスラが並び、全員の注意を向けた。

坂本「ここで説明するのも微妙だが良い機会だ。ウルスラに、オリーブに着てもらった理由と
   そのための武器の説明を今ちゃんとしてもらおう」

オリーブ「私が……来た理由」

ウルスラ「少し長く複雑になりますが、これから大事になる事と思うのでご容赦ください。
     まず、みなさんにはこれを見ていただきます」

今度は、ウルスラが直接容器から魔導銃を取り出し、病室に居るウィッチ全員にそのフォルムを見せる。
オリーブはここに来た理由もあの運搬物の中身を知ったのも初めてだ。

ウルスラ「繰り返しになりますが、これは魔導銃と言います。銃自体が魔法の術とそれを封入するモノになっています。
    魔導銃に特製の銃弾を込めてトリガーを引くと、射撃手の魔法力を銃身に満たして
    それを消費しながら誘導力を持つ2つの力を作ります。この二つを反応させて推進力を生み
    加速させて発射するという仕組みです。この理論自体は古く1844年より存在し……」

エーリカ「あーんまた始まったよ……」

シャーリー「また淡々とした表情で話すなぁ」

オリーブ「あのーウルスラさん」

ウルスラ「問題点が数多くあり実現はしなかったものの、現在の戦……はいなんでしょうオリーブさん」

オリーブ「それって、やっぱり……」

ウルスラ「感が良いですね。オリーブさん、あなたが射撃手になるんです」

オリーブ「うぁぁ……やっぱりそう来ますよね」

ミーナ「先ほど、話しそびれた部分聞かせてもらえるかしら」

ウルスラ「そうですね。オリーブさんもいることですし。
 この銃は純粋な魔法力のみ使用することを実現し、銃器の限界と取っ払い、強烈な破壊力を生みます。
 しかし射撃手には3つの条件が、射撃に際しては1つの条件が必要なのです。

射撃手の条件は『タフな魔法力の容量がある事』と『固有たる魔術を持っていない事』、そして
『銃器をほぼ取り扱ったことのない事』です

坂本「固有魔法か……私は元来この眼だし、宮藤は最初は下手でも才はあった。
   てっきりウィッチひとりひとりが持った業のようなものだと思っていたんだが……」

ウルスラ「世界各国にウィッチは点在しますが、活動の性質上ほとんどが度重なる射撃経験があり
     さらに2つの条件を重ねた際には、適合するウィッチがオリーブさんしか居なくなったんです」

オリーブ「…………」

ウルスラ「……オリーブさん、もしかしてこの言われで怒ってますか?」

オリーブ「違うんです、なんだか急に自分の中で話しが大きくなって……
      実感がわかないというかなんと言うか」

ゲルト「……無理もない。だが、オリーブ。世界のためにその強力な武器が使えるというんだ。
    それはとても重要で、有意義なことなんだ。自信を持って良いんだぞ」

オリーブ「バルクホルンさん、本当にケガは大丈夫ですか?」

ゲルト「私はこのザマだ、冷静さを失ってな。力の限界を目の当たりにするほど
    戦う人間にとって恐ろしいことはないよ。オリーブはその限界を超えれるんだ」

ウルスラ「あの、もう一つ『射撃に際する条件』があるんですが」

ミーナ「続けて頂戴」

ウルスラ「この魔導銃は、魔導理論を銃器として形にしたものです。ジェットストライカーとは
    また色々定義の違うものにはなりますが……。ただやはり技術的な限界もありました。
    魔導銃は射撃した瞬間、発生したエネルギーがすぐ魔法力に戻って体内に逆流するんです。
    そうなると魔力の過飽和状態になって様々な面で不安定な状態に陥ります。
    この副作用を取り除く仕組みはついに完成できなかったので、別方法を使用する事になりました」

リーネ「それは?」

ペリーヌ「その方法はなんですの?」

ウルスラ「それが……その」

エーリカ「あ、ちょっと赤くなった」

ミーナ「珍しいわね……」

宮藤「なんなんですかー!」

ウルスラ「……コホン、単刀直入に言います。射撃手にキスしてください」

全員「」

オリーブ「あの……うる、ウルスラさん?」

ウルスラ「これはれっきとした契約術式です。魔力共有と言って、互いの魔力を必要に応じて
     共有する術を完成させるための儀にすぎません。
     先ほども申した通り、魔導銃の問題は魔法力逆流による過飽和状態。
     しかし射撃手は射撃時にほとんどの魔力を消費してしまいます。
     飽和限界より溢れた魔力は、魔力共有によって契約者に流せば問題はないということです」

シャーリー「理屈はわかったようでわからんが……とにかく、オリーブにその、キスしないと
       魔導銃が使えないってことであってるんだよな」

ウルスラ「正確に言えば、使えないことはないですが、命の保証が出来なくなります」

坂本「そうか……ならば仕方ない、私が」

ウルスラ「ちなみに、ファースト限定です」

「!」

エーリカ「これは……」   ゲルト「えと……」

ミーナ「…………」

ウゥゥゥゥ

ミーナ「! どうしたの!?」

職員「先刻確認されたネウロイが、時速20キロのスピードで南下を開始しました!」

エイラ「タダの土偶も待っていられないノナ」

宮藤「でで、でもあのネウロイの装甲がこのままだと破れないんじゃ……」

リーネ「移動を始めたのなら、もしかしたら弱点を見せてるかもしれません」

ミーナ「そうね……そうでなくとも進撃は阻まなくてはいけないわ。
    オリーブさんはここに居て。あとのみんなは再出撃よ!」

一度目の出撃までは天に昇っていた太陽も、次第に傾き始めていた頃だった。

オリーブ「行っちゃった……」

ゲルト「今はとにかく、戦況を聞きまもるしかないか」

先程より使用していたインカムに耳を傾ける。豪烈なエンジン音が先ず飛び込み
次に聞こえたのはミーナの交戦指令の声だった。

ルッキーニ『なんなのこいつー! また硬いまんまだよ!』

シャーリー『これでも歯が立たないなんてたまんないなぁ!』

エイラ『サーニャ、ぶちかませ!』
サーニャ『行きます!』

ミーナ『……ほんの僅かに傷が出来たわ。一瞬のうちに再生されたけどね』

病室、バルクホルンは向けるに向けられない怒りをこぶしに込めようとするが
痺れる手は未だに力が入らず、更にもどかしい気持ちに入り込む。

ゲルト「くそっ! 大規模な進撃でなくとも、一つ一つの拠点を瘴気に侵されればいずれ我々は負ける
    それを止める手段が無いなんて……」

ウルスラ「……決して押し付けるわけではありませんが、方法は今ここにあります」

ゲルト「魔導銃……か?」

ウルスラ「照準を合わせてトリガーさえ押せば後は確実です。
      威力は見ていただけたほうが早いでしょう」

ゲルト「…………」

オリーブ「…………」

ゲルト「オリーブ、……わかってると思うが、ちょっと来てくれ」

オリーブ「は、はい」

ベッドで上半身を起こしているバルクホルンの元へ、ベッドに腰をかけるようにして自然と近づくオリーブ

ゲルト「その、なんだ。私はネウロイが倒せるなら……戦争を終わらせられるなら
    こんな方法もやぶさかでない。だがこれはその、一人の意思とかじゃなく」

オリーブ「……いいですよ」

オリーブ「むしろ、私がお願いしなきゃいけない立場だと思うんです。
     あっその個人的な意味じゃなくて! こんな事になるとは思ってなかったですが
     願いは、歴戦のウィッチたるあなたと変わりません」

ゲルト「…………」

ルッキーニ『ああっ! 村が瘴気に飲まれちゃうよ!!』

ゲルト「くっ……っ!」 ガバッ

腰を起こしたバルクホルンは、思いを振り切るように間髪なくオリーブの顔を捉える。
しかし痺れた腕が思うように動かず、勢い余ると両腕は彼女の肩を抱えるようにして唇が一瞬重なった。

オリーブ「(ポー)」

ゲルト「……こっ、これでいいんだなウルスラ」

ウルスラ「はい。ダメです」

オリーブ・ゲルト「うぇっ!?」

ウルスラ「ダメというわけではありませんが、魔力共有は契約術において相当上位のものです。
     なのでそれ相応の儀式が必要になります。
     具体的には舌を絡めさせれば完璧なのですが」

「!」

ゲルト「とりあえず大丈夫なんだろう! とにかく出撃だ!
    ウルスラ、オリーブに魔導銃を渡して撃てる様にしてくれ。私はついて行けばいいんだよな」

ウルスラ「……とにかく私もストライカーでついていきましょう。オリーブさん。これをもってください。
     今ここで初期化を行います」

オリーブ「(ポー)」

ゲルト「いつまで呆けてるんだ! 早くしないと侵攻を止められないぞ!」

オリーブ「はっはいい!」

ウルスラ「銃を持ちましたね? それでは両方の持ち手を持つようにし魔法陣を展開してください。
     現在装填されているのは、オリーブさんを魔導銃の射撃手にするための弾です。
     安全装置を解除し、存分に魔法力を込めたらトリガーを引けば完了です」

言われたままに、オリーブの身長に迫らんとする銃を構えて魔法陣を展開する。
漠然と魔法力を引き出そうとすると、自然に銃身に吸い込まれていくような感覚に陥った。
その吸い込まれる速さがだんだんと遅くなり、止まった瞬間をその時と思い思い切りトリガーを引く。

オリーブ「うわっ!!」

オリーブを取り囲む風。でも周りのものは一切揺れていない。猛烈な魔力の風にもまれながら
僅かに視界から見えたのは、空中を飛び舞う術式だった。

ゲルト「これは……」

ウルスラ「…………」

ゲルト「……ウルスラ、私もお前もカールスラント人だ。
    このカールスラント術式が読めないわけじゃないよな」

ウルスラ「はい。当たり前です」

ゲルト「それにしては趣味の良くない式ばかり見える。まるでアレイスター・クロウリーの
    儀式を見ているようだ。呪いの儀式にしか見えない」

ウルスラ「これは魔導銃という術をウィッチに付与する、バルクホルンさんの言うとおり形式的には
      呪いとそれ同等のものです。しかし臨床実験では問題なく、解呪も可能です」

ゲルト「…………」

オリーブ「と、止まった」

ウルスラ「終わりましたか。あとは敵を討ちにいくだけです。出ましょう」

ゲルト「よし、行こうオリーブ」

オリーブ「……はい!」

―基地上空―

ウルスラ「あごを引いて銃身を眼前に構えてみてください。
     そこにはスコープが搭載されています。コアに反応して照準を自動調整するため
     視界に敵が入ったら先ほどの儀式の通り銃身に魔法力を込めて撃ってください」

ゲルト「私は後ろに付いて、オリーブから出る魔法力を受け止めれば良いんだな」

ウルスラ「背中に添えばバルクホルンさんは魔力のパッシブ状態になります。
     それと、射撃後数秒は絶対に離れないでください」

ゲルト「わかった。準備はいいかオリーブ」

オリーブ「弾丸装填しました。スコープは……ここだ。
     あっ、みなさんとあのネウロイがまだ交戦しているのが見えます!」

ゲルト「よし。『みんな、これから魔導銃を使用する。念のため数キロネウロイから離れてくれ』」

ミーナ『大尉? ……わかったわ。みんな少し離れるわよ』

ゲルト「……よし、全員ネウロイから3キロ離れたようだ。しっかり狙うんだ」

オリーブ「はい……あれ? なんだかスコープがぼやけて」

ウルスラ「まだ安定してないようですね。ゆっくり、深呼吸してください」

オリーブ「すぅーっ、はー……。よし。ネウロイ捉えました。撃ちます!」

トリガーを引いた瞬間、景色が暗暖色に変わる。銃口が青い炎を噴くと
……30ミリの弾は出た瞬間勢いを失い、ひゅるひゅると海上に落ちていく。

オリーブ「―っ!! うくっ!!」

ゲルト「大丈夫か!? おい!」

ウルスラ「安全のため出力リミッターを下げておいて正解でした……やはり、魔力共有が
     完璧ではないと安定性安全性に欠けます。……バルクホルンさん」

オリーブ「はーっ、はー……」

ゲルト「……、どうにでもなれ!!!!」

意識混濁のオリーブの顔を腕を使って必死に上げると、噛み付くようにまた唇と重ねた。

オリーブ「うぶっ!」

ゲルト「んふぅっ……ふぅっ!」

ヤケに長ったらしい数秒が過ぎる。

ウルスラ「……けっこう激しいですね」

ゲルト「……うるさい。  オリーブ、私がわかるか」

オリーブ「は……はい。なんとか気が戻ってきました」

ウルスラ「一度魔力を全て使い果たしていますが、射撃後に反動で魔法力自体は充填されてます。
     今度こそリミッターを0.5まで解除します。次失敗したら……」

ゲルト「次などない! これで決めるんだオリーブ!」

オリーブ「はい! ネウロイ捉えました! ……今度は鮮明に捉えられる。撃ちますよ!」

ゲルト「行けー!!」

再び視界が暗暖色に変わり、次に見えたのは銃口から吹き出る青い炎。
そして、弾は発射されたかと思った瞬間、はるか前方の空中で大爆発が起きた。

オリーブ「当たった……」

ゲルト「大丈夫か!? さっきみたいなのは」

オリーブ「いえ、ちょっと驚いただけで……体は全然大丈夫です」

銃弾の軌道は、空中に青い線となって残り続けている。鮮やかな青色のレーザーのようだ。

ゲルト「ウルスラ、この青い線は……」

ウルスラ「今の射出初速は、秒速20キロと出ています。それでも、通常の銃弾なら
     大気摩擦で擦り切れてしまいますが、魔導銃弾はジャケットをエーテルと反応させることで
     弾を冷やして形状を維持、そして着弾するという仕組みになっています。
     この青い線も、銃口から噴出した青い炎もエーテルが変質した結果によるものです」

ゲルト「なるほどな……とにかくネウロイの撃滅には成功したようだ」

ミーナ『バルクホルン大尉、こちらでネウロイの撃滅を確認しました。私達もすぐ戻るわ』

―空軍基地内―

エーリカ「いやーホント一時はどうなるかと思ったよ」

リーネ「あの硬いネウロイを一撃で粉砕するなんて、すごいですね」

シャーリー「オリーブが魔導銃を使えたってことは……そうなんだよな」

ゲルト「聞くな! ……まったく、とにかくこれで、ネウロイに対する強大な対抗策ができた。
    改めてお礼と、501に来たことを歓迎しよう」

オリーブ「そんなお礼だなんて、私も、そのバルクホルンさんに……」

ゲルト「んぁあもう一々赤くなるな! 今日はあのネウロイのせいで昼飯も食べれなかったんだ。
    さっさと夕食にしよう!」

―――――
翌日、魔導銃の存在とこのネウロイ撃滅はアンオフィシャルながらも地元新聞
そして世界中にたった一つの戦果が報じられた。

一部では過剰な軍備増強を懸念する声もあるが、ウィッチたちは強い希望を抱いていた。

オリーブ「あれ? この写真は……」

ロマーニャの地元新聞社員が、許可無く掲載したウィッチの作戦写真。
その中の一枚が、軍の回収措置も空しく世界中に広まってしまっていた。

?「こっ……ここ、これは……どどどっどど」


最終更新:2013年01月31日 15:30