機装兵 エクセレンザ


[ショートストーリー]
「くそ、頼むわ……。いい加減交代させてくれや……。」
『銀将B-08、下がって桂馬A-11と交代しろ。……聞こえてるぞ、銀将B-08。通信に弱音を乗せるんじゃねえ。』
「聞こえてたのね……。了解、後退します。」
『銀将B-08、下がって桂馬A-11と交代しろ。……聞こえてるぞ、銀将B-08。通信に弱音を乗せるんじゃねえ。』
「聞こえてたのね……。了解、後退します。」
(さすがヴァナルガンド……って事か。このノイズだらけの通信から、俺の呟きを拾うとはな。)
彼は急ぎ機体を下がらせる。途中で銀将の1機、フォッシュが敵の重機兵デュークに追われ、危ういところで味方の金将の1機であるフォートに救われるところを見た。だが彼はそれに構っていられない。何にせよ彼は機体も操手である彼自身も、いい加減限界なのだ。
『銀将B-08!すまんがちょっとだけ無理をしてくれ。お前から17時の方角で、桂馬C-27のブリッツェス・スペーアがピンチだ。なんとか操手だけでも救出したい。』
「鬼かっ!もう俺は無理だって!」
『お前以外、間に合いそうな位置にいない。なんとかする算段はつけてるから、いいから行けっ!!』
「くそ、死んだら化けて出てやる……。」
「鬼かっ!もう俺は無理だって!」
『お前以外、間に合いそうな位置にいない。なんとかする算段はつけてるから、いいから行けっ!!』
「くそ、死んだら化けて出てやる……。」
機体をほぼ180度回頭させ、彼はエクセレンザを走らせる。そして大盾を背中に回し、得物の片手半剣を両手持ちにして、前方に見えて来たブリッツェス・スペーアを襲っている敵機に、突撃を敢行した。凄まじい轟音と、衝撃。
レギンレイヴに襲われて、左腕を喪失したブリッツェス・スペーアは、這う這うの体で逃げ出して行く。当のレギンレイヴは、その持てる大盾を犠牲にして、エクセレンザが突いた剣をかろうじて躱していた。先程の轟音と衝撃は、敵機の盾が砕ける音だったのだ。しかし残念ながら、レギンレイヴ本体には傷1つ無い。そして敵機は、右手に長剣、左手に小剣を持って斬りかかって来る。
「ちぃっ!!」
「こいつ……!将軍クラスじゃねえのか!?って言うか、ノーマルとは言えレギンレイヴ使ってるんだから、将軍クラスだろ!無理だって!恨むぞ軍師様!」
そう叫びつつも彼は、一撃、二撃と振るわれるレギンレイヴの剣撃をいなして行く。なんとかそれをいなせるのは、彼の技量とエクセレンザの高性能さ故だ。装甲強度や限界性能では流石に一歩譲ると言えど、単純な白兵戦闘能力だけを比べるならばエクセレンザは今相手をしている様な超高級機ともなんとか渡り合えるだけの力を有していた。
しかし限界が来る。敵機も多少は消耗していたと言えど、彼の方の疲弊度合いは数段上であったのだ。敵機の長剣が、防御の隙をくぐり抜けてエクセレンザの左手首を斬り落とす。大盾が、吹き飛んだ。
しかし限界が来る。敵機も多少は消耗していたと言えど、彼の方の疲弊度合いは数段上であったのだ。敵機の長剣が、防御の隙をくぐり抜けてエクセレンザの左手首を斬り落とす。大盾が、吹き飛んだ。
「うわーーーっ!もう駄目だーーー!」
そして凄まじい衝撃と爆音。彼のエクセレンザは、吹き飛ばされた。彼は目を瞑る。そして目を開いた彼は、驚愕した。彼を追い詰めていたレギンレイヴの上半身が、綺麗さっぱり消え去っていたのだ。残された下半身が、ゆらりと揺れて倒れ伏す。ヴァナルガンドの軍師サマから、通信が入った。
『間に合ったか?おーい銀将B-08、生きてるかー?』
「生きてる……。生きてるが、なんだこりゃ、何があった?」
『「香車」を使った。うちの奥の手の、狙撃手だ。今回の敵「キング」はソイツだったみたいなんでな。あと「クイーン」もいるんだが、ソッチは「飛車」を3枚出して罠にかけてる。』
「生きてる……。生きてるが、なんだこりゃ、何があった?」
『「香車」を使った。うちの奥の手の、狙撃手だ。今回の敵「キング」はソイツだったみたいなんでな。あと「クイーン」もいるんだが、ソッチは「飛車」を3枚出して罠にかけてる。』
彼はよろよろと、機体を立ち上がらせる。
「んで?俺はもう戻っていいんだろ?」
『おう。敵の「キング」を引き付けてくれたからな。殊勲賞だ。あとは「歩」集団がやるから、安心しろ。』
『おう。敵の「キング」を引き付けてくれたからな。殊勲賞だ。あとは「歩」集団がやるから、安心しろ。』
見ると、最新鋭機――と言っても低性能だが、かわりに阿呆の様に量産できる――ブロッキアーラの集団が、のっしのっしと歩いて行くのが見えた。動きは鈍いし拙いが、数だけはそれこそ大量に揃っている。彼は大きく息を吐くと、エクセレンザの無事な右手で大盾を拾い、帰還の途に就いた。

[解説]
聖華暦801年に量産型初号機がロールアウトした、カルマッド機兵工房期待の新製品。
前作セレンザの血を色濃く引いた、カルマッド機兵工房らしくない癖の無い完成度の極めて高い機装兵である。
開発を担当したのは、カヴァリエーレを造った開発2部。
余談になるが、開発1部の造った機体は、最近とんと話が聞かれない。
前作セレンザの血を色濃く引いた、カルマッド機兵工房らしくない癖の無い完成度の極めて高い機装兵である。
開発を担当したのは、カヴァリエーレを造った開発2部。
余談になるが、開発1部の造った機体は、最近とんと話が聞かれない。
この機体はフラタニティ・フレームを採用した第六世代機装兵である。
その性能は極めて高く、操手の技量によってはレギンレイヴ、シュヴァリエル等の強力機となんとかかんとか渡り合えるだけの能力を持っている。
ことに運動性、機動性は高く、緊急時における展開能力を買われて、自由都市同盟の都市同盟軍でフォッシュやフォートなどの重機兵部隊へ敵を追い込むための遊撃兵力として、採用されている。
その性能は極めて高く、操手の技量によってはレギンレイヴ、シュヴァリエル等の強力機となんとかかんとか渡り合えるだけの能力を持っている。
ことに運動性、機動性は高く、緊急時における展開能力を買われて、自由都市同盟の都市同盟軍でフォッシュやフォートなどの重機兵部隊へ敵を追い込むための遊撃兵力として、採用されている。
カルマッド機兵工房では更にこの機体の改良機を計画しているらしいが、あまりにこの機体の完成度が高すぎる故、周囲の評判ではかなり難しいのではないかと言われている。
[武装・特殊装備]

[ボアードTA-0801魔導砲]
自由都市同盟で広く使用されているロギもしくはロギン魔導砲の系列や、その上位のエリコン魔導砲と弾薬や一部部品の共通性がある、コンパチモデル。カルマッド機兵工房製の機体で多く使われる。
当機エクセレンザにも同じ事が言える。
だが、そのままロギ、ロギン、エリコンなど標準の魔導砲を使う操手も多い。
自由都市同盟で広く使用されているロギもしくはロギン魔導砲の系列や、その上位のエリコン魔導砲と弾薬や一部部品の共通性がある、コンパチモデル。カルマッド機兵工房製の機体で多く使われる。
当機エクセレンザにも同じ事が言える。
だが、そのままロギ、ロギン、エリコンなど標準の魔導砲を使う操手も多い。

[802式ブロードソード]
カルマッド機兵工房で、標準装備品として機体に付属させている、やや反りの入った幅広の長剣。
長剣使いの操手はそのまま使う事が多いが、片手半剣(バスタードソード)や両手剣(グレートソード)等々、好みの武器に換装する者も少なくない。
カルマッド機兵工房で、標準装備品として機体に付属させている、やや反りの入った幅広の長剣。
長剣使いの操手はそのまま使う事が多いが、片手半剣(バスタードソード)や両手剣(グレートソード)等々、好みの武器に換装する者も少なくない。