語り尽くされなかった日常の、象徴。



朝比奈慎也(あさひな しんや)

  • 登場作品:VNV,AMC1,2008,特,学恋V,追加,極,ドラマCD,新生2,学恋4,秘密,鳴七,アパ男
  • 声(CV):本田一誓
  • 種族:人間
  • 職業:鳴神学園高校 三年B組
  • 誕生日:4月6日
  • 身体:167cm/55kg ♂ O型
  • 趣味:漫画を読むこと
  • 好きな/嫌いな食べ物:クリームシチュー、湯豆腐/ビーフシチュー、イクラ
  • 関連人物:朝比奈卓也《弟》,日野貞夫《部活,腐れ縁》,坂上修一,倉田恵美《部活》
  • 関連用語:新聞部《所属》,七不思議の集会,     

概要

 「1995」年度(または「現代」)の鳴神学園「新聞部」部長。
 「七不思議の集会」の発案者と(公式には)されている。
 なお、実際のゲーム中では名前も語られず登場する機会がなかったものの、新聞部の部長が日野貞夫ではなく別人であるという設定は『学怖』の制作当初から存在していた。(日野貞夫が「部長」であると明言される箇所もあるが、これは例外的な扱いだろう)

 「今度の新聞で、うちの高校の七不思議の特集を組もうぜ
 上記はオープニングの第一文にして、第一声である。言うならば「『学校であった怖い話』/アパシー・シリーズ」のすべては新聞部部長からはじまったと言って過言ではない。
 後世のキャラ付けとは口調が異なるため、朝比奈慎也としての設定が完成した時期が不明であることを考慮に入れても感慨深い話と言えよう。(なお『学怖S』ではオープニングの途中までフルボイスだが、演者は不明である。「高戸靖広」氏という説もある。)

 が、いざ本人の姓名が出てみれば集会の行われた六月を境に謎の失踪を遂げたとされている。
 これは『2008』の基本設定として置かれており、この設定を採用した作品は数多い。
 よって、シリーズ立ち上げ第一弾『VNV』をはじめに公式に言及される機会自体は度々あったものの肝心の本人の本格的な登場は『ドラマCD』以降にまでお預けとなった。

 彼が部長として登場する際は、やり手で切れ者の副部長「日野貞夫」とは正反対の苦労人で優しい人柄だが、〆る時はきちっと〆るまた違ったリーダー像の持ち主として描かれることが多い。

 反面、リーダーとして不可欠な決断力とはほど遠い優柔不断な人物であることも語られている。
 けれどその分、人徳と人の良さに全振りしたような人物であるため、周囲の人間から自然と盛り立てられ幸運に恵まれることが多いようだ。長続きこそしないが、向こうから告白してくるので女性とのお付き合いの経験が豊富というエピソードもそれを象徴している。

 最近は日野のストッパー、女房役、いいコンビなどと言及されることも多い。『ドラマCD』で彼を演じた「本田一誓」氏が日野貞夫役の「山口キヨヒロ」氏と劇団の後輩先輩という間柄もあって、作品の外側にまで思いを馳せれば公私にわたる付き合いをなんとなく想起できてよいかもしれない。

2008

 初登場作品。
 これ以降、本人は登場せず上の名前だけが話題に上るという形で出演経歴を積み重ねていくことになる。
 現新聞部部長「朝比奈卓也」の十三歳歳上の兄であり、十三年前の年度途中に消息を絶ち、その一週間後に学内で遺体となって発見されたという。

 当時同じ新聞部で肩を並べた日野貞夫いわく学園に潜む何者かの秘密を知ってしまったために消されたらしい。
 日野貞夫とは親しい仲だったことは、個人的に上述の内容が記された手紙を託されたことからもうかがい知れる。
 (もっともそれは日野の言葉を真実とした上での話であるが。日野が卓也に接近するため虚言や仕込み含みとも考えられる。)

 弟の卓也にとって年の差が大きかったこと、当時幼かったということもありその人となりの記憶などはおぼろげであるようだ。
 そのため具体的なエピソードは語られない。また『2008』自体発端は書かれつつも、その全貌はまったくの不明だったこともあって以後の「朝比奈慎也」は長きに渡って設定のみのキャラクターとしてコアなファンの間で細々と語られるに留まった。


VNV

 「恵美ちゃんの坂上君観察日記」に登場。
 倉田さんのコメントによると毒入りの「おしるこドリンク」を飲んだばかりに帰らぬ人になってしまった「日野貞夫」の騒動の後始末に追われ、とてもお忙しいそうだ。
 そのため、部長への報告抜きで倉田さんが勝手に「七不思議の集会」を進めていても知る由もないようである。
 とんでもない出席者が出揃っていざ開催という運びになった時、彼がどんな顔をするのかは定かではない。

AMC1

 「付き添い」ルート、「人間狩り」ルートに登場。
 今回も名前のみの出演である。

 「付き添い」ルート。
 早苗ちゃんに「新聞部は楽しい?」と尋ねられた倉田さんが、早苗ちゃんが新聞部に入部した場合を妄想した際に朝比奈部長に飛び火する。
 それは早苗ちゃんの「エクトプラズム」で部長の弱みを握り、次期新聞部部長の座を頂くというものだった……。

 「人間狩り」ルート。
 日野さんが「新宿二丁目」で行方不明となったより以前に、朝比奈部長も行方不明になっていることが言及される。
 新聞部のツートップが不在となってもなお、残された一年生たちは逞しく次の新聞の企画を練るのだった。

特別編

 風間シナリオ「恐怖の七人小僧」に登場。
 やはり名前のみが言及される。ほかの語り部たちと坂上くんを巻き込みながら、ひとりで「○○とり小僧」にまつわるボケを七連続に繰り出しまくる風間さんだったが、まぁ、一応、なんというか……。

 最後まで聞いてみて小僧にまつわる七不思議として採用するという案もなくはないと内心、脳裏をよぎった坂上くんだったが、瞬時にボツになる、なんなら「朝比奈部長に殺される」と思い、一瞬で考えをひるがえすのだった。
 この当時は朝比奈部長の設定が固まっていなかったのかは定かでないが、それとも温厚な彼であろうが小僧特集なんてやられたら怒り出すというのもまぁ納得である。結果、このシナリオの脱力感をこの上なく高めるオチとなって彼の名は残るのだった。

追加版
 引き続き随所で名前のみが言及される。


 (執筆者募集中) 


 荒井シナリオ「消えた生徒の行方」。
 「幽霊交歓部」という格好のネタがなぜ新聞部で取り上げられないのかと疑問を呈する荒井さんであったが直後、部長が危険性を察して取り上げたくないのではないかと思い直す。
 ただし、これはあくまで荒井さんの想像であるため、実際に新聞部が幽霊交歓部のネタを掴んでいた場合に朝比奈部長がどのように判断するかは未知数である。仮にも七不思議の集会を企画した人物。スクープに命を懸ける可能性も無くはないのかもしれない。

 風間シナリオ「下半身ババア」。
 風間さんが体験したという奇跡の出来事を自信満々に披露するも、こんな話を記事にしては鳴神学園総出でバッシングだと坂上くんは頭を抱えることになる。
 他の語り部の助けもあり、なんとか別の話をお願いすることができるのだが、それもまたしても部室の空気を凍らせてしまう。
 これでは記事になりっこない。とにかく部長に謝るしかないと、坂上くんはため息をつくのだった。

 風間シナリオ「エスパーKAZAMA」。
 風間さんに定期入れを新聞部室のどこかに隠された坂上くんは、部室を探して回ることになる。
 部室の棚には過去に発行した新聞や資料などがあり、そのうち上から二番目の棚は雑誌などの資料があまり整理されずに置かれているようである。
 坂上くんはその棚の右側を調べようとするも、雑誌に紛れて古い資料が散見され、下手に触ると朝比奈部長に怒られそうだと思いとどまるのだった。

 なお後に日野さんからこの棚の整理を頼まれる展開もあることから、この乱雑な棚は部長ではなく日野さんの管轄である可能性が高い。

学恋V



 (執筆者募集中) 


 シルエットとはいえ立ち絵を実装し、本人のセリフも付いた初の作品である。
 彼自身は話の渦中に入ってくることはなく、けして目立つわけではない。けれど登場するだけで平和な一幕を演出してくれる。
 異常から日常に移り変わる瞬間を登場にともなって教えてくれる、そんな存在といえるだろう。

 「オープニング」。
 冒頭で部長らしく部員たちに次回の企画に向けた立案をお願いしてからそのまま企画会議の解散を宣言する。
 ここからの導入部は日野先輩と主人公のやり取りに移っていくので彼の出番は一旦ここで打ち止めである。

 「人肉食堂」。
 大問題を起こした主人公をかばうべく東西奔走したことが語られている。
 結果、ギリギリ主人公の将来は守られたかもしれないものの、新聞部自体は一年間の活動停止という重い処分を受けることになってしまう。
 なお、主人公はこの前後で完全に精神の均衡を失うか、不条理な世界に巻き込まれてしまう。

 中には新聞部共々朝比奈部長が重篤な被害に遭う展開もしっかり用意されているので思いを馳せてみるのもいいかもしれない。

 「素晴らしき自己啓発の世界」。
 すっかりからっぽになってしまった新聞部部室に取り残されたただひとりの部長として、寂しげにつぶやく一幕が用意されている。
 彼が他の部員たちのようになってしまうか否かはプレイヤーの想像に任されているだろう。

 「呪われた旧校舎」。
 大まかに分けて三つに分岐する展開のひとつでは、日野らと並んで「新聞部」の真の存在意義を知るメンバーのひとりとして名前が挙げられている。

 この際に「旧校舎」に隠された宇宙的秘密を守っていることが明らかになった。
 ただしバッドエンドで一人生還した坂上をどう思うのか、そして宇宙的恐怖の一端であれ知ってしまった彼をどう扱うかは、語られる機会がない。

 「百点塾」。
 新聞部部室で「七不思議の集会」が進行していることを知ってか知らずか、その隣室である「写真部」の部室で他校の生徒である「宮本健史」&「斉藤圭輔」を呼び寄せて何らかの話を聞いていたようだ。
 が、宮本の話のケチをつけたと見なされたのか、キレて部屋をぶち抜く大穴を開けた斎藤の暴走を前に嘆いていた。

 その直後、まったく事情が呑み込めないうちに一年生部員である「主人公」が新堂さんと斉藤というヤベー二人によってその場のノリでボコられる様を眼前で見せつけられる羽目になってしまう。
 部長自身は宮本がかけてくる無言の圧を前に動くことはできなかった。彼を責めるのもきっと酷というものだろう。

 「軍人の遺書」。
 プレイヤーだけが知るハズの情報に踊らされて、自分でも知らないうちに大狸を倒してしまった主人公だったが……、まさかの展開に続くにふさわしいオチに巻き込まれてしまうのだった。
 朝比奈部長はそんな主人公のことを知る由もなく、副部長の日野となんらかの話を進めていたようだ。

ドラマCD

 Disc.9 エンディング type.B「鬼ごっこ」に登場。
 帰国子女である新聞部新入部員「大内光」が自身の立てた企画に過度に執心して、変貌していくさまを部長として気にかけていた。
 「鬼ごっこ」を題材に部員たち全員に無茶な賭けを持ちかけた大内に対しても、周囲の遊び半分冷やかし混じりな態度の部員たちをよそに必死に思いとどまるよう呼び掛けていたが……。 

 大内が仕掛けた「鬼ごっこ」の第一犠牲者になってしまう。

 (ネタバレにつき格納)

+ ...
 その上、ほかの新聞部員たちも大内が姿を変えた「鬼」に狩り殺されていく。
 唯一残された日野副部長だけがなんとか鬼を返り討ちにし、朝を迎えることができたのだが正常に戻った校内に朝比奈部長たちの痕跡はなかったのだという。――という旨を「七人目」として集会の席に姿を現した日野副部長は一同に披露した。

 ただ、こんなぶっ飛んだ話では納得はいかないというもので、日野副部長は実証として話の中に出た「旧校舎」の壁に開いた謎の空間の穴に出席者一同を案内するという。ひとり逡巡する者もいたが結局は全員が好奇心に駆られて穴の中に足を踏み入れる。
 日野副部長が一人残り事の推移を見守るなか、そこに現れたのが行方不明になったはずの朝比奈部長だった。

 ほがらかに再会を喜び合う部長と副部長だったが、その正体は地球人の身体を乗っ取って地球上で活動する宇宙人のようだった。その活動を勘づいた「鬼」は彼らの策動の巣である新聞部に飛び込み皆殺しにしようとしたが、果たせずに返り討ちに遭う。
 とは言え、宇宙人として核になっている部分は無事のようで時間はかかったものの朝比奈部長はほかの面々からいち早く肉体の再生を果たす。――、というのが若干の推測は混じるが、事の真相となる。

 その際に同胞たちに現状確認の音頭を取り直近の指示を下している辺り、朝比奈部長(のガワを被った宇宙人の一個体)は肩書通り、彼ら宇宙人のグループではリーダー格のようである。
 もちろんこれは通常の朝比奈部長とは異なる特殊設定であるものの、さらっとエグいことを述べていったあげく眼前の敵相手に悪びれなく「殺しちゃうよ」とのたまう部長の姿に、ギャップを感じてくらくらしてしまったリスナーも数多いかもしれない。


新生2

 『極』の冒頭が再録されているため、やはり彼も同様の経緯で会議のお開きを宣言する。
 その他には「新聞部」として行動する展開では日野と並んで出演したり、普通の人らしいところを発揮したり、意外な結末を迎えたりと、派手さはないものの着実に登場の実績を積み上げている。

 ビジュアル面では先に『月下美人』で弟の「朝比奈卓也」がリデザインされて登場したこともあって、キツネ目で細面じみたところがどことなく共通した立ち絵となっている。

 「赤い靴下」に登場。
 分岐によっては細々とした出番はあるのだが、表題エンドに繋がる根幹ルートで助けを求めてやってきた坂上くんを自宅に向かい入れる展開がやはり印象的だろう。明るく朗らかな人物にして部員の信頼厚き彼も常識の壁からは逃れられなかったようだ。

 「藤丸地獄変×人肉食堂」に登場。
 (未登場も含めた)登場人物の、その後の人生を追うエンディングでは鳴神卒業後に彼が辿った波乱万丈な生涯が綴られる。

学恋4

 高校卒業前にどうしても「童貞」を卒業したい、と「日野貞夫」と共に「童貞卒業パーティー」を企画する。それは女子二名を誘って朝まで楽しもうという完璧な計画だった。
 しかし現れたのはなぜか「坂上修一」と「綾小路行人」。完璧だったはずの計画は音を立てて崩壊を始める。

 ちなみに本編ではパーティーの全容を把握しているのは日野さんの方のため、(部長の善性を信じたいファンとしては)部長は日野さんに誘われた側なのだろうと考えがちだが、公式サイトによれば言い出しっぺは朝比奈部長である。「常識人」とは一体……。

 部長は本作のメインとなる登場人物の中では最もうぶな役回りと言える。
 無知で純粋ゆえに何色にも染まりやすく、日野さんの偏った無茶苦茶な知識をも(持ち前の良識で疑問には感じながらも)すぐに信じてしまう。
 一方でなかなかに拗らせたものも持っており、日野さんとは何でも話せる間柄なのか、さらっと暴露したりすることも。

 そんな部長は、とかく予測不能な展開の連続に右往左往している姿が印象的である。迷言も数多く飛び出し、泣き喚いたり気絶したりリア充を敵視したりと忙しい。
 あくまで学恋シリーズはアパシー・シリーズとは別物であるという注釈は必要だが、これまでに部長の積み上げてきたイメージが今作で大きく上書きされてしまう程のインパクトを感じたリスナーも少なくないかもしれない。

 [もっと言えば、過去に失踪しがちだった部長は『極』以降少しずつ露出を始めていたものの、その描写やセリフは決して多いとは言えなかった。
 そんな中リリースされた『学恋4』は本編一時間超えの長編であり、全編に渡って部長が登場している。おそらくこれだけで『極』~『新生2』の部長のセリフ量を遥かに上回るのではないだろうか。部長のイメージが本作に寄りがちになるのも仕方ないのかもしれない。
 今後のアパシー・シリーズ本編での活躍が期待されるばかりである。]

秘密

 「差出人を探そう」ルート、「そういえば……思い当たることがある!」ルート、「このままおとなしく成り行きを見守る」ルートに登場。
 全体から見ると決して出番が多いとは言えないが、部長自身が話に関わる機会には恵まれつつある。私見ではあるが、「朝比奈部長ってどんな人?」と知りたい人には打ってつけのシナリオが取り揃えられている。

 「差出人を探そう」ルート。
 坂上くんが手紙の差出人の正体を求めて三年生の教室に向かった場合に、朝比奈部長と日野さんが次の新聞の企画を教室で話し合っているところに遭遇する。
 二人は後輩の相談に親身に乗り、坂上くんは安心して帰路に着くのだが、部長たちには何やら別の思惑があるらしく……。

 後日、差出人の呼び出しに応じた方が良いと判断した部長たちは、坂上くんを笑顔で保健室に送り出す。
 そこで視点は朝比奈部長に移り、日野さんとの会話で計画の全貌が明かされるのだが……。[秘密のパーティー? む、どこかで……。]

 「そういえば……思い当たることがある!」ルート。
 坂上くんが新聞部の部室にやってくると、朝比奈部長がタイミングを同じくして現れる。
 どうやら新聞部はとある事件の影響で休部状態にあるらしく、部長は部活動再開前に部室の様子を見にきたとのことだった。
 一通り部室を見て回った後、朝比奈部長は用事があって先に出ていくのだが……。

 (ネタバレにつき格納)

+ ...
 このルートは『学怖(S)』「殺人クラブとの戦い」の後日談を思わせる内容となっている。
 ただし坂上くんがクラブメンバーを撃退後に警察に通報しておらず、死亡した日野さん・語り部は容疑者不明の事件として扱われ学園の関係各所に捜査の手が及んでいる。また『学怖(S)』では顔を見せることのなかった朝比奈部長に焦点が当たる、という点で異なる。

 朝比奈部長は坂上くんの落とした七不思議の集会のメモ帳を拾っていた。
 部長がメモ帳の中身をどこまで見ていたかは定かでないが、もし部長が事件の当日、坂上くんが死亡したメンバーと会っていたことを知れば何を感じるのか。常識的に考えれば想像するのは容易いだろう。
 そんな部長が坂上くんに旧校舎の家庭科室へと呼び出され、物語は終局に向かっていく。


 「このままおとなしく成り行きを見守る」ルート。
 カオスな空間での宇宙人(または異次元人)談議が始まると、主にリアクション担当として口を開く。
 中にはこれまで新聞部メンバーとの絡みがほとんどだった部長には珍しい、福沢さん荒井さんとの会話なども見ることができる。

鳴七

 「倉田恵美の飴玉ばあさん」ほか多数のシナリオに登場。
 基本的には物静かな常識人だが、押しの弱さが災いして悪い流れを押しとどめきれない薄幸の人物として描かれている。
 また「七不思議の集会」開催にあたって語り部として立候補した「倉田恵美」の力量を試すため彼女の語りを聞くパートは「新聞部」の部室で行われているため、彼も同席していると思われる。

 もっとも話の主導権は倉田と坂上が握っており、日野が裁定を下すポジションにいるため背景に徹しているようだ。
 ただし、坂上が変な方向に話を持って行こうとし、触発されて倉田のする話が予期しない方向に転がっていく場合はさすがに看過できないのか、おずおずとしたツッコミを入れて話を軌道修正しようとすることが多い。
 ちなみに今作では集会を企画したのは日野貞夫であると明言されており、朝比奈部長ではなかったりする。

 語り部の話のなかにも登場するのだが、通りすがりだったり癖のない一般人の枠に収まっている。
 そのため、目立ちこそしないがごく自然に筋書きの中に溶け込んでいる。その出演頻度は意外と高い。

 善良であるもののどこか頼りないポジションに落ち着いており、黒い顔をみせる展開はほとんど存在しない。
 その一方で、シナリオにどこか奇妙な味を添えるシュールな役回りとして立ち回ることも多い。一見、周囲からは平凡な人間だと思われる朝比奈部長だったが、その存在感や行動の意外性は案外高かったりするのだ。

 「倉田恵美の飴玉ばあさん」。
 この場合、坂上くんは倉田さんの話の腰を折るようにして否が応でも「飴玉ばあさん」の飴玉を食べたくないと言い張ってくる。
 そこで倉田さんは坂上くんに対して正論を述べたかと思いきや、今度は日野先輩に話を振ることで「やはり自分を聞き手に選んでほしい」と話がカッ飛んでいこうとする。そんな倉田さんに対してやんわりとしたツッコミの手を入れたのが朝比奈部長である。

 が、話がヒートアップしている倉田さんからは語調こそ丁寧なものの部長からの言葉はシャットアウトされてしまう。
 朝比奈部長は気の強い後輩相手に自分の影の薄さをすこし嘆くのだった。
 それはそれとして、話がこじれた原因である坂上くんはそこにあったちりとりで掃除をはじめるのだが、それは妖怪「ちりとり小僧」のワナだった。傍にいた朝比奈部長は少し驚いたくらいで済んだものの、当の坂上くんは悲鳴を上げるくらいに驚いてしまう。
 ちなみに新聞部部室にはちりとりは置いていないらしい。部長の言うことなのできっと間違いないのだろう。

 「呪われたロッカー」。
 前述の通り、倉田さんは新聞部部室で語りを行うのだが、その語りのパターンのひとつのなかに「瀬戸裕子」さんの死に続いて怪現象が起こるようになったという話をするか、話題を振ることがある。
 その後に、倉田さんは瀬戸さんを呼び出す方法があるので試してはみませんかと提案を行ってくる展開もある。

 その場合は朝比奈部長にも話が及ぶこともある。
 実地検証をするにあたって坂上と倉田の両名に誰が同行するかで怖がり同士な日野副部長との間で軽い押し付け合いが行われたりもするのだ。ただしこの案件は日野が請負っているため、無茶振りされた部長が同行する羽目になったりはしない。

 なお坂上と倉田の両名が「水泳部のロッカー」で大変な体験をしてしまい所在なさげに戻った場合は日野副部長と並んで部室でにこやかに出迎えてくれる。部長が日野の言葉を鵜呑みにして何も気づいていないことは言うまでもない。知らぬが仏である。

 もしくは坂上が原因不明のうちに怪死してしまい、不可解な現場を前に聴取に訪れた黒木先生相手に受け答えする場面もある。
 この場合は瀬戸さんの名前が出た途端になぜか血相を変えた黒木先生の剣幕に圧されて、部長、副部長、倉田の三名は坂上の死を闇に葬ることを無言のうちに同意させられるのだった。

 以上の通り少し変わった展開に派生しないと出てこないというのも彼らしい話である。が、後輩や部外者相手には物腰やわらかな対応が常な朝比奈部長も対等な日野相手には気の置けないやり取りをしていることがわかったりで貴重な一幕といえるだろう。

 「死を招くベッド」。
 「真田泰明」のエピソードを踏襲している。
 倉田さんの語る「鳴神学園附属病院」に伝わるという「死を招くベッド」について坂上が話の腰を折るような発言し続けて、あげくの果てに幽霊の存在を信じていないという発言をすると、直前まで活発な発言をし続けていた倉田さんをはじめ、日野副部長、朝比奈部長をはじめとする新聞部そのものが薄れるようにして消え失せてしまう。

 倉田さんは悲しそうに、日野さんは惜しむように、そして朝比奈部長はねぎらうような言葉を坂上にかけて消えていった。

 オチとしては、既にこの世のものではない新聞部の一同が唯一の生き残りである坂上に気づいてほしくて、認めてほしくて繰り返し毎日のように新聞部最期の日である「七不思議の集会」の企画会議にいざなったという流れになるのだろう。
 ただ、坂上の認識は混濁しており、実際の新聞部と坂上がいかなる関係だったのか、なぜそこまでして罪の意識に苛まれているのかについては解釈の余地が分かれる。よって朝比奈部長が坂上のことをねぎらうような言葉をかけるような人であったのかも……?

 「友情と愛情の狭間」。
 「斉藤」くんのエピソードを踏襲している。
 「図書委員」も務めていた縁から、海女宮さんとは図書室で話す仲だったようだ。
 数学の成績はなかなか良いようで斉藤くん同様に八十点しか取れなかったとぼやく一幕も用意されている。

 が、そのような友人関係の枠をはみ出さない程度の歓談を海女宮さんの彼氏「長臣英俊」が見るや、血相を変えて食ってかかる。長臣くんは異常なまでに嫉妬深い男であり、この程度のやり取りすら許さなかったのだ。

 その後、海女宮さんはさまざまなアプローチから長臣くんとのお付き合いを見直すことになるのだが……。
 先の一件は長臣くんの中でわだかまりとなって残り続けたようで、事あるたびに海女宮さんに対する引け目として持ち出そうとするようになってしまう。朝比奈部長から海女宮さんへの認識は良き隣人程度のものにすぎないにかかわらずである。

 長臣の異常性を考えれば、何が彼の狂気のトリガーを引いてもおかしくはなかった。
 けれども朝比奈部長の間が悪かったことによって長臣の態度はこの後一気に硬化するようになったことも確かである。
 海女宮さんは、恋人の豹変に対応策を練るのだが、それからさして間を置かずほぼ不可避で命を落としてしまうのだった。

 ところで、そんな部長思うところがあったのかも長臣くんが海女宮さんに暴力を働いている現場を目にした場合は珍しくも強い語調で見咎める。または協力を求められた場合は、海女宮さんと連れ添って長臣くんへの申し開きという運びになる。
 ただ、どちらの場合も長臣くんが常軌を逸している程度はふたりにとって予想の範疇にはなかった。出会い頭に激昂した長臣によっていきなり海女宮さんはナイフで刺されてしまう。肝心の朝比奈部長はそれに前後して臆病にも逃げ出してしまった。

 その後の朝比奈部長の動向や心情についてはさして紙幅は割かれていない。
 さすがに海女宮さんが差された直後は先生を呼びに行ったのだが、葬式の参列の有無は不明である。

 「図書室の話」。
 「図書室」で謎の死を遂げた「海女宮亜里沙」さんと「長臣英俊」くんの死の真相を究明すべく、生前の海女宮さんと仲が良かったという「野沢知美」さんに協力を求めるために接触してくる。

 野沢さんの協力を得るため、朝比奈部長は複数回の選択肢を組み合わせて説得に当たるのだが……。
 プレイヤー次第ではいったい何をしに来たんだよとセルフツッコミを入れたくなるボッケボケな選択肢を繰り出して、困惑する野沢さんをよそに自己完結して立ち去ることもできるし、かたや地雷を早々に踏んで彼女を怒らせてしまうこともままある。

 もしくは野沢さんの信頼を得ることに成功するものの部長一人先行したために行方不明になってしまったり、協力してふたりで今も調査に当たっていることが岩下さんの口から語られることもある。
 いずれにせよ、朝比奈部長の頼りなくもあるが時に掴みどころのないキャラクターを如実に表すエピソードといえるだろう。

 「窓枠の中で」。
 白昼夢めいた空想(もしくは妄想)世界を楽しんでいた「不知火美鶴」さんの脳内に唐突に割り込んでくる。

 この際に集中線を思わせるエフェクト込みでデデン! と彼のバストアップ立ち絵がやってくるため人によっては心臓または腹筋に来るかもしれない。なお、不知火さんからの認識ではこの朝比奈部長との接点はなく、知る由もなかったようだ。
 以後どういうわけか、朝比奈部長は空想の中での想い人に立ち代わって不知火さんの脳内を占拠することになってしまう。

 彼の正体について好奇心的な意味で気になってしまった不知火さんは、校内の記録を探すほか、在校生のひとりである可能性に賭けて校内の探索を行い接触を図るのだが、いざ当人を発見したにも関わらず避けられてしまう。

 すると今度は朝比奈部長(?)は不知火さんの妄想世界に自分から接触してきて謝罪するとともに、この世界の原理についてやたら流暢に筋道立てて教えてくれた。不知火さんはこのぶっ飛んだようで理にかなった理屈をすんなり受け止めるのだった。
 そして現実に生きる部長と改めて会ってみて、色々と納得した不知火さんは以後妄想に耽溺することをやめたのだという。

 ちなみに、現実の朝比奈部長は不知火さんと対面した際には口ごもるばかりで明確な説明はしていない。
 そのため、妄想世界と現実世界のふたりの朝比奈部長の関係は、プレイヤーの想像にお任せされている。
 先述した通り、不知火さんは自分の中で折り合いをつけているのでプレイヤーも自分なりの答えを探してみるのが吉かもしれない。すなわち「選択は本人の自由」というやつである。

 現実に生きる朝比奈部長が親しいもの以外には極度の恥ずかしがり屋で、空想癖があってもおかしくないかもしれないが……。
 それに、校内でも目立つ美少女に話しかけられてまともに受け応えできるかといったら、できない方に編者は一票を投じたい。

 「蟲毒の地下室」。
 「君塚」のエピソードを踏襲している。
 「七人目」として現れた日野貞夫は語りを披露するにあたって、没入感を上げるために話の中の登場人物に集会の出席者の姓名を当てはめるという趣向を取った。もちろん話の中では彼ら彼女らの立ち絵も反映されている。
 朝比奈部長に配役されたのは、人間を使った「蟲毒」を完成させようとした主犯その人に他ならない。

 なおこれまでのエピソードの数々を見るに、虫も殺せないような朝比奈さんにそんな顔が!? と思ってしまうのは早計であって、この場に不在であるにも関わらず勝手に名前(と立ち絵)を使われただけなので悪しからず。

 (ネタバレにつき格納)

+ ...
 と思いきや、一個だけ本当に人間蟲毒を完成させた下手人である結末が存在する。
 話のはじめで断っているにもかかわらず、多くの話の結末で本当の朝比奈は何も知らない善良な一般人であると改めて強調していたりするからこそ、盲点なのかもしれない。

 この場合の朝比奈慎也は自分自身が毒と呪いの塊である「蟲毒」そのものへと偶発的な作用で変じており、同じく毒を持つ人間たちを喰らうことでより強くなることを目論む存在として描かれている。
 人と呪い、両方の側面を使い分けてなんでもない日常を送れている一方で、超常的な力も持っているのだとか。

 そして、そのことを唯一知るであろう日野貞夫は朝比奈慎也にとっては忠実なしもべである。
 繰り返すようだがいつも通りのにこやかな顔のまま、日常の延長のようにしてこちら側に牙を向けてくる朝比奈慎也はここのみの特例といってよい。朝比奈部長ファンとしては胸をなでおろすべきか否かは、編者としては関与しないのでご随意に反応されたし。


 「鳴神学園思考実験」。
 まさかの七人目「坂上修一」の闖入と、彼の口から語られるこの世界の真実を知った聞き手の「坂上修一」だったが……。
 彼の提案を拒絶して何事もなく、朝比奈部長たちがいる新聞部部室に戻ってきた。


 (執筆者募集中) 


 「殺人クラブ」。
 このシナリオの探索パートでは、各シナリオで語られたキャラクターたちが鳴神学園の至るところに潜んでいる。
 「朝比奈慎也」はその中のひとりであり、「三年B組教室」にいる。

 坂上にとってはとても身近な人物であり、遭遇した場合には助けに求めるべき存在として認識されている。
 が、当の本人はのほほんとしており、坂上の話はドッキリと思われ真顔でたしなめられるなどまるで取り合ってはもらえない。
 日野をはじめとした殺人クラブの三年生たちについてのコメントも聞くことができるが、総じて好意的である。

 あまり接点を持っていない風間、新堂、岩下についてはともかく日野については頼りにしている旨を述べており、坂上の現状を知らないとはいえ、この殺伐とした状況下で平和この上なかったりする。
 ちなみに部長個人としては同じクール・ビューティーでもオカルト同好会の「富樫美波」さんの方が好みらしい。……、新聞部とオカルト同好会が現代でも変わらず不仲であるという情報こそ拾えるが、攻略とはまったく関係ないというのも彼らしいかもしれない。

 なお、例に漏れず怖い話を聞いた場合はしっかり教えてもらえる。
 奇しくも非公認の部活として学内でその存在がささやかれている「ダメ人間クラブ」とは……?


 (執筆者募集中)


アパ男

 「特典シナリオ」に登場。
 「笹ヶ岡学園」の文化祭チケットを手に入れた日野副部長の伝手で、坂上と倉田の一年生ペアも連れての四人組で笹ヶ岡構内を散策していた。

 倉田さんの問題発言を見咎め、ついでに屁理屈を垂れる彼女の口を正論で塞ごうとするが押しの弱さが祟って言い負かされ気味である。ついでに倉田さんの口八丁にダマされ、坂上と日野がくっついているという根も葉もない話をわりと信じ込んでしまった。
 それはそれとして今回の日野副部長は笹ヶ岡のスクープによる扇情的なオカルト系記事を目指して、潜入を試みたもようである。

 しかして、日野副部長が主張する行方不明者が頻発するという触れ込みのお化け屋敷の取材が不発に終わると、その代わりに朝比奈部長はやんわりと自身の推す平和な企画を滑り込ませて坂上の歓心を得ていた。
 倉田さんには振り回され気味だが、なんだかんだで部長として周囲を自然にまとめる彼の力量をうかがわせるエピソードである。

 なお、日野副部長がお化け屋敷に固執するがあまり、ヤバすぎるもうひとつの方に単身突貫する羽目になった時はのほほんと見送っていたりする。日野が男の意地で引っ込みがつかなくなっていことを、明らかに見透かしているにもかかわらずである。
 後輩たちともども日野をスルーして危険地帯に追いやっていると言えなくもないが、朝比奈部長はこの際あまりに自然体である。
 日野ならたとえひどい目に遭っても生還はするだろうという、無形の信頼がふたりの間には結ばれているのかもしれない。


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  • というわけで作成しました。まだきちっと確認できていないのですが、学恋Vなどでも部長に言及があったと思いますので、もう少し記事は膨らむ予定です。 -- 名無しさん (2022-01-10 17:09:17)
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最終更新:2025年07月10日 14:20