棒読み

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棒読み - (2020/08/02 (日) 21:02:17) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2009/06/05 Fri 01:52:53
更新日:2024/01/28 Sun 14:38:12
所要時間:約 7 分で読めます




ここでは主に劇や吹き替えで生じる棒読みについて述べる。

その名の通り、台本等の文章を声に出して読むに際して、棒の如くほぼ一定の音程で読むこと。
読む時に気持ちを込めていなかったり、演技系統の経験が浅かったりすると起きる。

主に声がくぐもっている、声に起伏がない、滑舌が酷い(例:オンドゥル語)、絵は二次元なのに声が三次元で違和感があるなどの時に棒読みと言われがちで、
単純に声・台詞が聞き取りづらい他、アニメーションや吹き替えの場合、絵や俳優の豊かな感情表現と声の棒読み具合のミスマッチで内容に集中できなかったりするため、
基本的にはネガティブな意味合いで使われる。

話題性を確保するために、声優経験があまりない俳優やアイドル、お笑い芸人やスポーツ選手などの有名人を声優に起用するといったことは少なからずあり、
その結果、主要キャラクターのほとんどが棒読みになってしまうといった(純粋に作品を楽しみたい人からすれば)惨事になることも。
話題性以外にも、「プロ声優の演技がキャラクターに合わない」という理由で意図的に声優経験の少ない俳優がキャスティングされる場合もあり、
有名どころではジブリ作品で監督を手掛けた宮崎駿氏などがそういう理由で主役に声優ではなく俳優を多く起用していたりする。

また、声優は基本的に声だけで演技するのに対し、俳優は声以外にも表情、身振り手振りなども用いて演技するため、
ベテラン俳優でも、その勝手の違いから演技力を発揮できず、棒読み気味になってしまうこともある。
実際、多くの俳優が本業の声優と共に吹き替えを担当した「KAMENRIDER DRAGON KNIGHT」では、俳優と声優のやり方の違いに戸惑ったキャストが多かったという。
舞台をメインに活動している俳優の演技が、ドラマなどでは若干オーバーに映るのと似たようなものだろう。


そもそも、映画やドラマ、アニメなどのエンターテイメントでは「声」も重要な役割を果たしており、
実写の洋画吹き替えの場合、棒読みでなくとも俳優本来の声とかけ離れていることが原因で低評価になってしまうこともしばしばある。
シリーズ作品の場合、1度芸能人が演じた役柄を続編では本職の声優が引き継ぐことも多い。

一方、ディズニー作品の吹き替えでは、キャラクターの声のイメージを守る事が徹底されており、
引退や逝去、子役の声変わりといった特別な事情がない限り、一度担当したら続編などでも基本的に続投させている。
そのため、タレント声優が起用されたキャラが僅かでも登場すると、そのためにわざわざ再起用するのも珍しくない。
「モンスターズ・ユニバーシティ」や「ファインディング・ドリー」、「インクレディブル・ファミリー」といった10数年ぶりの続編でも、
前作のキャストを可能な限り再集結させるほど強い拘りを持っているが、2000年代までは現在ほど続投が徹底されておらず、
劇場向け長編アニメーションとオリジナルビデオ作品で声優が異なる事がしばしばあった。

確かに多くの人に作品を見てもらうためには話題性も重要であり、そのために有名人を声優を起用することも間違いではないのだろうが、
棒読み、キャラクター・俳優のイメージに合っていないなどで作品の評判を悪くしてしまえば、話題性以外の面ではマイナスになってしまうだろう。
2010年代に入ると吹き替え音源のオフィシャル化などの事情でテレビ放送独自の吹き替え制作が減少していき、劇場公開・ソフト版の吹き替え音源での放送が殆どとなり、その出演者の中に芸能人がいた場合、時にはSNSなどで批判的なコメントが殺到してしまう事も多い。
ちなみに、タレントとしても高い知名度を持つ山寺宏一は芸能人声優と公開アフレコなどで共演する事も多いが、某アニメ作品の劇場版の声優変更問題について遠回しに苦言を呈した事もある。

もちろん芸能人声優の中にも本職に匹敵する実力を持っている人もおり、芸能人が声優を務めることが必ずしもマイナスとなるわけではない。
例を挙げれば、「シュレック」の浜田雅功(ダウンタウン)、「アイスエイジ」の太田光と「モンスターズインク」の田中裕二(爆笑問題)などは評価が高い。
特に「アイスエイジ」は配給会社がアニメ映画の公開に消極的になった事で4作目以降が劇場未公開となるが、そんな中でも太田氏は引き続きシリーズへの出演を果たしている。
洋ドラの吹き替えなら「アルフ」の所ジョージも印象深いところ。

ストレンヂアでのTOKIOの長瀬は初挑戦でありながら、全編通して主人公・名無しの役柄にハマった高い演技力を披露し、
「ジャニーズ=大根役者」というネット上のイメージから来る前評判を見事に覆して見せた*1

大泉洋はレイトン教授や茄子のペペ等人格やノリの全く異なる役を演じ分けておりこちらも評価が高い。
ただしレイトン教授については大泉くん曰く
「結局日野さんが言う英国紳士ってなんだか分からなかったから、完全な棒読みで収録したらOK出た」とぶっちゃけている。

また、鬱ゲーとして有名なドラッグオンドラグーンでは、
ピーターが赤竜アンヘルを演じたが最初は人間を認めない無機質で傲慢な演技から始まり、
最後は戦友となったカイムのための自己犠牲からくる声の温かみ、
そして旅路の果てに理不尽を通り越し意味不明な事態に巻き込まれた嘆きを見事に演じた。

他にも攻殻機動隊の合田一人役である西田健は、公安9課最大の敵としての悪役を西田氏曰く演技者として高い次元で熱演。
天空の城ラピュタにおける寺田農(ムスカ)の記憶に褪せない往年の名演技も忘れてはいけないだろう。

また「いいですとも!」で知られる鹿賀丈史は上手いだけでなく、キャラソンまで歌ってしまっている。

そして忘れてならないのが国民的アニメであったこち亀の両さんことラサール石井。
タレントながら他の声優達と肩を並べられるほどに演技力がよく、キャラクター性がありいい役者であった。
ジャンプ作品*2は「アニメメインじゃない」俳優・タレント陣を数人起用する事があるが、
こち亀の場合は、他のレギュラー陣に森尾由美、林家正蔵、三浦理恵子、小宮孝泰ら「アニメメインじゃない」俳優・タレント陣が多い珍しい番組であり、堺雅人も白鳥麗次役で出演していた時期があった。

なお、クレヨンしんちゃんに埼玉西武ライオンズの中村剛也選手が本人役で出演した時には、棒読みをネタにされていた。

最近では、ゲームトリック・ロジックにてデーモン閣下がその力を見せ付けた。


つまり声の演技の世界においては

キャラクターに命を吹き込める事

が正義である。

故に稀に棒ながら愛されるキャラがいるのは、それがただの棒ではなく、そのキャラに命を吹き込んでいるという事でもある。

声のみで勝負するアニメや吹き替えではその性質上全くでは無いがあまりいないものの、
身振りや表情も加わる実写では、演技力自体は拙くとも熱意は十分に伝わってくる故にあまり批判されることがない、
言わば「愛すべき棒」はしばしば見受けられる。
例えば、ウルトラマンゼアスで主人公の朝日勝人を演じた関口雅晴氏はとんねるずのマネージャーであり、当然役者としては素人なので棒読みが目立ったが、
演技力が拙くとも一生懸命な姿勢が好評で、「フレッシュな若手ウルトラマン」というキャラ像と上手くマッチしていた事もあってあまり批判されない。

最悪なのは、演技力は低いわやる気は無いわな「愛せない棒」である。

なお最初は棒読みで不自然だったキャラが段々と自然に感じてきた時は、中の人が上達したか、耳が慣れたか、またはその両方かである。
しまいには棒読みボイスに魅力を感じてしまい「 うまい棒 」と呼んだりするようになる。

時として棒読みが何かの伏線であることも極稀にあるし、
そのキャラが(例えば歌劇の舞台上などで)ガチガチに緊張していたり、アンドロイドなどの感情が希薄なキャラであるためにわざと棒読みで演じていることも。
時には、わざと声を加工して棒読みにすることもある。

ちなみに、ラノベや漫画等でよく使われる手法として、本心でないことを言った時に「オカネハセカイヘイワノタメニツカイマス」などと全部カタカナで表記することで棒読みを表現するというものがある。
大体は直後に「棒読みだぞ!」と突っ込まれる。


また、非常に稀だが、漫画でも棒読みが発動することがあったりする。
目が死んでいたり、あまりにも表情にやる気(精気)が感じられなかったり、セリフと漫画のキャラの表情が合致しなかった時等が主な発生原因だと思われている。
しかし、上記の全てを満たしていても発動しないときもあるので注意。

棒読み漫画としてポピュラーなのは、漫画版“リアル鬼ごっこ”等である。


フリーの文章読み上げソフト「Soft Talk」は棒読み声でとても有名。
ゆっくりの声と言えば大体の人が分かると思われる。
そのゆっくりとした喋り方、組み合わせられたゆっくりの絵と相まってかなりの人間がイライラさせられる。
……筈だったのだが、技術が向上したせいか、聞く側に変革が起きたせいか、その独特な声が多数の人に愛されるようになっている。
某動画サイトでは一大ジャンルを気づくに至った。
更には謎の技術により、棒読み声に音程を付ける事で歌を歌わせる物まで現れる。
Soft Talkの同じ音源であるUTAUのデフォルト(通称デフォ子)もちゃんと歌うことができる。
(ただし重音テトと同じく、スキルがないとゆっくりと同じ棒読みになってしまう)


■棒読みの作品のセリフ

マクロスF
ランカ「キミガキミガスキナンダー」
後のゲーム作品で棒読みが改善された結果、逆に違和感を感じる人が多数出現。

機動警察パトレイバー 2 the Movie
「SIFショウゴウ」
指令室を中心に展開されるスクランブルシーン。
オリジナルでは敢えて演技がド素人の本職の自衛隊員を起用。
サウンドリニューアル版ではプロの声優に総入れ替え。
DVDには両方の音源が収録されている。お好みはどちら?

◇遊☆戯☆王デュエルモンスターズ
遊戯「サァ、ジョウノウチクンノターンダヨ」
闇遊戯「ミンナ、アリガトウ!オレワモーナニモオソレナイ」
丸1年かかったが改善され、4年後の最終回付近ともなると完璧に演じ分け出来るようになった。

真夏の夜の淫夢
DRVS「フェラもできないの?そんなんじゃ甘いよ(棒)」
NSOK「調子こいてんじゃねーぞこの野郎、ホモのくせによー。何がしゃぶれだー? お前がしゃぶれよー。ほら上手いんだろー?ほらしゃぶれよー(棒)」
このセリフのある真夏の夜の淫夢 第二章はキャスト全員が極端な棒読みで有名。

◇オーバーマン キングゲイナー
ザッキ「たいいー!」(大尉)

ローグギャラクシー
キサラ「ジェスター」(上戸彩)
ジェスター「キサラー」

FINAL FANTASY Ⅶ
ティファ「イヤー!」

FINAL FANTASY ⅩⅡ
ヴァン「オイヨイヨ!」

◇鬼武者
左馬介「ユキヒメーヌメマル-!」

El shaddai
エゼキエル「オトートノカタキヲトルノデス!」

◇デスクリムゾン
コンバット越前「上から来るぞ!気をつけろ!」

◇冒険!イクサー3
イクサー3「くすくす」(キューティー鈴木)

◇屍姫
マキナ「人は、畏怖と憐憫と侮蔑と嘲笑をこめて屍姫と呼ぶ」

機動戦士ガンダムSEED
アイシャ「アツクナラナイデ!マケルワ!」
※スペシャルエディション以降は平野文が担当し、棒読みではなくなった。
またゲーム「終わらない明日へ」に登場したレナ・イメリアの「ウチュージンハオトナシクウチューヘカエリナサイ」も有名。
ついでにロウ・ギュールも若干棒気味。Gジェネクロスレイズでは担当声優の小野坂昌也もやっとコツを掴んだのか、かなりマシになったが。

◇うみねこのなく頃に
「アクマノシワザヤー」

ラブライブ!
西木野真姫「ナニソレイミワカンナイ!」

デビルマン(実写)
「おれでえもんになっちゃったよー」
「あーー。」(棒読みな上に声も小さい)

龍が如く4 伝説を継ぐもの
谷村正義「サイッコー↓」
堂島大吾「コイヨキリュー」

◇クロヒョウ 龍が如く新章
右京龍也「わーっはっはっ(棒)」

超電子バイオマン
高杉真吾「やべどぉ~!高いんだどごの車ぁ~!!」(エゲ声)

劇場版 仮面ライダーカブト GOD SPEED LOVE
黒崎一誠「ウラギリモノノアカイチト、クツジョクノナミダヲ!」(武蔵)
後にゲーム作品で再び演じる事になるが…

ロマンシング サガ -ミンストレルソング-
ナイトハルト「我が名はカール・アウグスト・ナイトハルト、イクゾー」

ゼーガペイン
守凪了子「キョウちゃん、いっけぇー!」
花澤香菜の本格的な声優デビューキャラ。当時の演技は現在と大きく異なるが、素朴な味わいのあるよい棒、あの素人っぽさが逆に良かったなど高評価を得た。

スーパーマリオブラザーズ ピーチ姫救出大作戦!
ピーチ姫「マリオー、タスケテー」

ドラえもん(水田わさび版)
出木杉くん「にっぽんが、せますぎるんだよ」


仮面ライダー響鬼
仮面ライダー朱鬼「バカメ、コレガオニノシゴトダ!」

THE ROOM
ジョニー「あいでぃっどのっとひっとはー。いっつのっととぅるー。いっつぶーしっ。あいでぃっどのっとひっとはー。あいでぃっどなぁぁぁぁ…おーはいまーく。」
棒読みな上にアクセントも珍妙。
そもそもセリフ自体が状況と噛み合っておらず違和感しかないことも合わせてよくネタにされる。

二ノ国(PS3版)
アリー「おりばー↑」
男の仲間はマシだが主人公はちょっと、ヒロインはかなりの棒読み。
だからといって全員が棒読みというのではなく、演技の拙い主人公役の多部未華子の横で山口勝平とかがしゃべるから違和感が凄い。
ちなみにココルという少女も棒読みだが、演者の芦田愛菜が当時小学生だったのでそこは仕方ないだろう。


なお、「ストライクウィッチーズ」「ぐるみん」のように、演技指導などで「敢えて」声優に棒読みで演技させるケースもあり、
例えばOVA製作当時でも中堅声優として名が売れていた山口勝平氏がジャイアントロボ世界最後の日にて主役の「子供の演技」を要求され、
わざとTV慣れしてない子役っぽい棒読みにしたなんてケースも。


ツイキ・シューセータノンダゼ!

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