劇場版 仮面ライダーカブト GOD SPEED LOVE

登録日:2010/03/23 Tue 08:36:57
更新日:2025/07/12 Sat 22:30:33
所要時間:約 7 分で読めます







仮面ライダー生誕35周年記念作品


7年前のその日──

地球に落下した隕石は
海を干上がらせた

隕石からは
大量の地球外生命体
"ワーム"が誕生した

秘密機関"ZECT"は
"マスクドライダーシステム"を開発
ワームと戦う戦士として投入した

だが、やがて"ネオZECT"を名乗り
組織に反旗を翻すライダーが現れた……



この地球'ほし'に、未来を。

人類の存亡を賭けて、宇宙での死闘が始まる。






平成ライダー第7作『仮面ライダーカブト』の劇場版作品。
今ではあまり触れられないが、当時としては仮面ライダー35周年を祝う記念すべき作品でもある。
監督は「巨匠」こと石田秀範、脚本は劇場版お馴染みの井上敏樹ではなくTV本編メインの米村正二

同時上映は『轟轟戦隊ボウケンジャー THE MOVIE 最強のプレシャス』。
仮面ライダー35周年とスーパー戦隊シリーズ30作を記念して、劇場公開当時は「35年目の進化。30回目の出発。」というキャッチコピーがついた。


概要

今までの平成ライダー劇場版と同じく、TVシリーズとは異なるパラレル設定で展開される。
影山やじいやといった一部キャラクターは尺の都合なのか登場しない。
しかし、ラストでTVシリーズとの繋がりが示唆された(後述)。

当時流行っていたセカイ系に影響されたのかシナリオがお子様には難しくなっており、TV版の主要人物が無慈悲に命を落としていく展開などもあり劇場版ライダーでは一、二を争う賛否両論作品となってしまった。
根幹は子供向け番組という事を考慮しても、世界観などの設定や描写が掴みにくいという部分も微妙な評価となった一因か。

主題歌:ONE WORLD(歌:鳴海荘吉)



あらすじ

1999年。地球に巨大隕石が落下、海の殆どが蒸発する甚大な被害を及ぼした。
そして隕石の中からは侵略異星人「ワーム」が出現して人々を襲い始め、人類はこれに対抗すべく「ZECT」を結成。ZECTのマスクドライダーシステムにより、ワームによる侵略は辛うじて押しとどめられていた。

それから7年の月日が経った2006年。水不足に苦しむ人々は、水資源を管理するようになった「ZECT」に事実上支配されていた。
しかし、「ZECT」の支配を良しとしない者達が反抗勢力「NEO ZECT」を立ち上げ「ZECT」と対立を始めた。
そんな中「ZECT」は更なる水資源を求め、宇宙空間から巨大な氷の塊を引き寄せる「天空の梯子計画」を実行に移す。しかし、「ZECT」の本当の目的は……。



登場人物

TV版から続投

天道総司仮面ライダーカブト
我らが主人公。
劇場版でも相変わらずの俺様ぶり。しかし服のセンスが凄い事になってる。
ZECTとNEO ZECTの抗争の最中に介入。流れる動作でザビー、ガタック、ドレイクを叩き伏せ自分の力を両陣営に売り込んだ。
干上がった海から鯖を釣り上げる天才。
TV版に比べると喜怒哀楽が激しく、とくにひよりを襲おうとしたキュレックスワームを殴る際の怒気に満ちた声や、倒れたひよりを担ぎ上げた際の慟哭はあまりにも迫真すぎて、「こいつ天道じゃなくて擬態天道じゃないのか?」と勘違いしそうなほど。


加賀美新仮面ライダーガタック
お馴染みかがみん。
劇場版でもやっぱり熱血。そしてキメる時はキメる。本作では最初からガタックの有資格者となっている。
またTVシリーズと違い、ひよりと恋仲となっている。「天空の梯子計画」の実行メンバーに選ばれる。


日下部ひより
本作はある事を除けば本編とあまり変わらない。
だが本編よりダウナーさが薄れており、加えてかがみんと恋仲のため、たまにデレる。
加賀美に何度もプロポーズをされるがその度に流していた。その理由は………。


矢車想仮面ライダーザビー
大和鉄騎の下でゼクトルーパーを率いる。
TV本編とは性格が異なり、信条が「完全調和(パーフェクトハーモニー)」から「完全作戦(パーフェクトミッション)」に変わっている。
また、本作には「シャドウ」はない。
性格が変わったけど、やさぐれてる訳じゃない。どちらかと言えば市丸ギン的なポジション。
中の人曰く「劇場版の矢車だったらこんなに人気は出なかった」


風間大介/仮面ライダードレイク
本編と同じく、一応メイクアップアーティストだが廃業してるらしい。相棒のゴンは出なかった。
自由を愛するため、NEO ZECTに加担する。
物語序盤ではガタックとザビーを相手に奮闘していた。
マトモに出た本編に登場するライダーで一番不遇。


仮面ライダーサソード
まさかのモブ
それも冒頭の1カット(約3秒)にチョロっと出るだけでDC版でも出番は増えなかった。
変身後の姿のみの登場となったが、声はTVと同じく坊ちゃま。劇中では何をしていたかについて一切触れられていない。
ちなみに中の人はこれで映画デビューを果たした。


田所修一
岬祐月
ZECTの職員として登場。これと言って特筆すべきことは無い。


加賀美陸
かがみんのお父さん。
TV版では善人だが、本作では黒幕ポジション。
こうした扱いは当時は珍しかった。


三島正人
相変わらずかがみん父と共に暗躍する。


ワーム
冒頭でめちゃくちゃ大量に出現したが、その実態はただの舞台装置に成り果てた地球外生命体。
加賀美が冒頭で「何やってんですか! 俺たちの仕事はライダーじゃなくてワームを倒すことでしょうが!」といっているものの、映画内では完全に空気。
出て来てもカブトとガタックにクロックアップで数秒と持たずに一蹴される始末。扱い悪すぎる………。
尚、本作に登場するワームの蛹体は角を持ち、後に「ネイティブ」と名を変えて本編に出て来る事になる。
一応成虫体は皆本編中に出てたが、唯一カブトとまともなバトルを繰り広げるワームは蚊のワームだったためシリアスなシーンでのオナラみたいな羽音がやかましい。

以下、登場ワーム一覧
  • キュレックスワーム
  • ランピリスワーム
  • エピラクナワーム
  • プレクスワーム
  • コレオプテラワーム アエネウス
  • ミュスカワーム
  • フォルミカアルビュスワーム
  • フォルミカアルビュスワーム マキシラ
  • セクティオワーム


映画オリジナルキャラ

大和鉄騎/仮面ライダーケタロス
ZECTの戦闘部隊の隊長格。
ゼクトクナイガン(カブトの色替え)クナイモードを使う。
ZECTに全てを捧げており、「天空の梯子計画」成功に向けて動き出す。
中の人は某満月なアイドルとは関係無い。本編最終回付近で、警備員役で出演。


織田秀成/仮面ライダーヘラクス
ZECTに反旗を翻したNEO ZECTのリーダー。ゼクトクナイガンガン/アックスモードを使う。
大和とは戦友だったらしいが、自由を勝ち取るためと称し、NEO ZECTを立ち上げてZECTと対立する。
何かと怪しげな天道も信用する豪胆な人。本作唯一の良キャラ。
「天空の梯子計画」の際は天道を軌道エレベーターへ向かわせ、自身は地上でZECTらを相手に奮戦する。


北斗修羅
NEO ZECTの構成員。
強気な性格の女性で、一人称も「俺」。
素手でワームに立ち向かうスゴい人。


黒崎一誠/仮面ライダーコーカサス
ZECT本部直轄の特殊部隊に所属する男。仮面ライダー武蔵。
反則的な戦闘力を誇り「戦う者は戦う前から負けている」と言われる「黄金のライダー」の正体。
常に青い薔薇を携えており、倒した相手の亡骸にその薔薇を手向けていく。
ゼクターを掴んだ反動で決めポーズを取ることが多いカブトライダーで唯一明確な変身ポーズをとる。
この変身ポーズは武蔵が空手の型を参考に自分で考案したらしい。
終盤ではカブトとガタックをその圧倒な力で叩きのめし、重力装置をもろともしない姿は化け物。
最後はカブトハイパーフォームに蹴られ、ミサイルに衝突して爆死。


平成ライダーの劇場版の定番で、本作のDVDにも劇場公開版とディレクターズカット版(DC版)が存在する。DC版には何でカットされたのか分からないストーリーに関わるコーカサスの重要なセリフがあり、劇場公開版で今ひとつストーリーが把握できなかった人は必見。
平成一期の劇場版のDC版ではちょくちょくありがちな話だが、DCの有無で作品の話や評価が大きく変わってしまう現象である。





※以下、ネタバレ









ZECTの本当の目的。それは氷塊を引き寄せると見せかけて、ワームの巣喰う隕石を地球に引き寄せる事だった。
そして、ひよりは7年前の隕石落下の影響で不治の病に侵されており、その命は残り僅かなものだった。
更にダメ押しで、公には隕石破壊のためにと言う名目で発射した「反物質ミサイル」は、隕石内に眠るワームを起こす目覚ましでしか無かった。
計画の本懐を知った天道と加賀美はひよりの死を見送り、独断でミサイル内部へと侵入する。
が、何故か内部にいた「黄金のライダー」コーカサスと対峙、早急に決着を着けようとするが、コーカサスの「ハイパークロックアップ」の前に為す術無く崩れ落ちる。
しかし、危機に瀕したカブトをガタックが庇いカブトはコーカサスの「ハイパーゼクター」を奪い取り、コーカサスを宇宙に放り出す。

だが、カブトの真の目的はまだ終わっていなかった。加賀美を脱出させるとハイパーゼクターを装着し、カブトハイパーフォームへと強化変身。コーカサスをミサイルに衝突させると、隕石に接近しハイパークロックアップで7年前へとタイムスリップし、地球に落下する筈だった隕石と正面衝突させ、粉砕に成功する。
そして、渋谷にいる過去の自分とひよりの前に降り立ち、過去の自分に過去の妹と未来から持ってきたベルトを託し、自身はタイムパラドックスにより光となって消えた。

一応、TVシリーズは天道が起こしたタイムスリップによって影響を受けた平行世界との説もある。
だが、映画ラストでひよりが明るかったり樹花の制服が本編と違ったりしているので、テレビ本編と映画ラストは微妙に異なる世界、つまり少なくとも3つの世界があることになる。
このように微妙にTV版と差異があったせいで、劇場版と本編の繋がりの認識が視聴者によってそれぞれ異なってしまっていることも。




【アイテム】

  • カブティックゼクター
コーカサス、ヘラクス、ケタロスが変身に使用するカブトムシ型ゼクター。
それぞれのモチーフとなった甲虫がモデルになっており、ザビーゼクターのように腕に装着して変身する。

余談

  • サブタイトルにある「GOD SPEED」とは、英語の慣用句で、成功、特に道中安全を祈る願掛けの言葉。
    加賀美とひよりの愛を祝福するという意味でつけられたものであろう。
    また、劇場で初登場となるハイパークロックアップの速さにひっかけたダブルミーニングともとれる。

  • 企画当初は仮面ライダーダークカブトが劇場版ボスライダーとして予定されていた。紆余曲折を経てコーカサスへと変更されたが、ダークカブトはその後設定を変更して本編に登場したのは周知の通りである。

  • SARUの客役でお笑い芸人・次長課長の2人が出演している。

  • 本作は 『仮面ライダーシリーズで初めて宇宙戦が描かれた作品』 であると同時に、 『実写映画史上初めて軌道エレベーターが登場した作品』 でもある。

  • 仮面ライダージオウ』のカブト編は「隕石を落として地球に壊滅的被害を与え、その後の残存した人類をワームが皆殺しにして成り代わる」という計画になっており、本作の影響が垣間見える。


追記・修正は地上から宇宙空間まで10秒で走れる人にお願いします。

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最終更新:2025年07月12日 22:30