イタダキマン

登録日:2010/11/07 Sun 18:36:55
更新日:2025/04/15 Tue 20:47:12
所要時間:約 5 分で読めます






天から降ったか、地から湧いたか!
三千世界を乱す奴、天に変わって打ち砕く!

いただき勝負に命をかける、

イタダキマン参上!

ここで会ったがこんにちは!

あげないよっ!


【説明しよう!】

イタダキマンとは1983年4月9日から同年9月24日までフジテレビ系列で放送されたタイムボカンシリーズ第7作目であり、フジテレビ系列で放送された最後のタイムボカンシリーズでもある。
シリアス過ぎた前作『逆転イッパツマン』から一転、西遊記+学園物の要素を取り入れたコミカルな作風を目指した。

ストーリーも初代『タイムボカン』から『ゼンダマン』に連なる物語のカギを握るお宝争奪戦に戻ってはいるが、主人公は『ヤットデタマン』以降続いた単独変身ヒーロー路線を踏襲している。
また、イタダキマンに変身する主人公が善玉ではなく悪玉トリオ陣営についていたり、巨大戦でもロボに頼らず所謂「今週のビックリどっきりメカ」的ミニメカで決めるなど、原点回帰と新機軸を入り交えた作品となっている。


【ストーリー】

お釈迦様が罪深き人類を救うために残したと言われるお宝「オシャカパズル」。
妖怪の手に渡り悪用されるのを恐れ、26個とも52個とも言われる無数の破片に分かれ世界に眠る幻の宝を探すため、お釈迦様の遠い縁戚であるオチャカ校長は自分が経営する名門校・オチャカ学園の優等生「たてまえトリオ」にパズルの捜索を依頼する。が、やはり邪魔は付き物。オチャカ学園入学を目指す落ちこぼれ「二束三文トリオ」もまたオシャカパズルを狙っていた。
しかしたてまえトリオも黙ってやられている訳じゃない。彼等がピンチになると、どこからともなく謎のヒーロー・イタダキマンがやって来る!


【登場人物】

  • 孫田空作/イタダキマン
CV:田中真弓
オチャカ校長の依頼で2束3文トリオに同行する若干10歳の少年。
性格はやんちゃ盛りの暴れん坊で生き別れの母を探しているが、最終回まで母に会える事はなかった。
イタダキマンとなった後は青年の姿となり、伸縮自在の如意棒で暴れまくる。
巨大戦ではロボットアニメの影響などなんのその、右腰に携えた瓢箪から「ひょっこりひょうたん玉」を取り出してミニメカを召還し巨大妖怪を成敗する。
ちなみに声の人は後年、三次元の歌謡ショウで本当に孫悟空役を演じる事になる。

  • 三蔵法子
CV:及川ひとみ
オチャカ学園の優等生にして三蔵法師の子孫というたてまえトリオのリーダー…
なのだが、回を重ねる事に欲張りで見えっ張りになる。実際の三蔵法師も破戒僧という説があるので先祖譲りかもしれない。
第12話ではヤッターマンのヤッターマン2号ことアイちゃんのコスプレを披露した。

  • サーゴ・浄
CV:島田敏
沙悟浄の子孫で、キザで軽薄なお坊ちゃん。旅先でよく女性をナンパしている。
第12話ではヤッターマン1号ことガンちゃんのコスプレを披露している。

  • 猪尾ハツ男
CV:西村朋紘
猪八戒の子孫。真面目な為かイマイチ目立たない。
第12話ではヤッターマンのオモッチャマの着ぐるみを着ていた。

  • オチャカ校長
CV:及川ヒロオ
オチャカ学園の校長。
お茶と女性を愛しており、秘書のカンノ先生にセクハラしまくり。小山高生が怒る理由も分かる気がする。
オシャカパズルの反応があると後光が射し、ヒントとなる句を詠む。
第12話では『タイムボカン』の主題歌をBGMに丹平のコスプレを披露しメカブトンに座った。

  • カンノ先生
CV:梨羽雪子
法子ちゃんのクラスの担任兼オチャカ校長の秘書。
生真面目なのだがよくオチャカ校長のセクハラにあっている。
たてまえトリオにオシャカパズルの在処を伝える際には専用のBGMを流すのだが、中盤ではうっかりBGMを間違えてメンバーがノリでボケてしまう場面が目立った。
第12話では淳子ちゃんのコスプレを披露、ノリノリでオチャカ校長の隣に座った。

  • オシャカン鳥
CV:富山敬
九官鳥に似た鳥で、オチャカ校長のお告げのもとにオシャカパズルの在処をたてまえトリオに伝えるのが役目。

  • ヤンヤン
CV:小原乃梨子
25歳ながらオチャカ学園入学を夢見る浪人生。空作を「空ちゃん」と呼び実の弟のように可愛がっている。
眠る時はノーパン。

  • ダサイネン
CV:八奈見乗児
26歳。本作は中盤までメカを作らず、妖怪が戦うのであまりやる事が無かった……が、最終回では作品そのものの存在に関わる名言を生み出した。
「全国の受験生の皆さ~ん」
「ダサっとな」

  • トンメンタン
CV:たてかべ和也
30歳。二束三文トリオもまたそれぞれ三蔵法師、沙悟浄、猪八戒の子孫を自称しているがたてまえトリオと違いあくまで自称。「どこの〇〇人だ」と言ってはいけない。
ちなみに、三人は「イケズ荘」という安アパートに同居している。

  • 竜子
CV:坂本千夏
ヤンヤンが竜の小笛を吹く事で現れるオタマガ池の龍神の子孫。


【登場メカ】

  • カブトゼミ
イタダキマンが乗る「金斗雲メカ」その1。カブトムシとセミの形に変形出来る。
カブトムシ形態では先端の角で突撃したり光線を発射したりして妖怪と戦う。
角を伸ばしただけとか言わない

  • ワンガルー
その2。カンガルーとイヌの形に変形出来る。
首を縮めて耳を畳んだだけとか言わない
実は本編中一回しか登場できなかった。

  • ペリギン
その3。ペリカンとペンギンの形に変形出来る。

  • バトルプロテクター
イタダキマンが「二段変身!」の掛け声を上げるとやって来る強化アーマー。
本作は巨大メカが出ない代わりにイタダキマン自らが巨大化して戦う。

  • オモンキ
たてまえトリオが連れている小型のロボット猿。テレポート能力を持ち、三人がピンチの時にシンバルを叩いてイタダキマンを呼び寄せる。

  • デンデンメカ
CV:坂本千夏
竜子が変身する二束三文トリオのサポートメカ。何故か乳首がボタンに変形している


【ところが…】

全26話の予定が20話で打ち切り。しかもうち1話は野球中継のため未放送となり、再放送時に初めて公開された。

また、放送開始時間がそれまでの土曜18時30分から19時30分に変更された。この放送枠は当時のフジテレビにとっては鬼門で、放送された番組はいずれも半年で打ち切られていた。
「それでもタイムボカンシリーズなら…」と期待されたのだが、『イッパツマン』までは最高視聴率20パーセント台を出していたのに、本作の最高視聴率は9.7パーセント。約半分にまで落ち込んでいる。徹底した不遇っぷりである。

また、この作品はスタッフからも評判が悪かった。特に以下の二人が代表的である。

【小山高生の場合】

シリーズ最高傑作と名高い『ヤッターマン』には病気のため参加できなかったものの、『タイムボカン』から『逆転イッパツマン』までの全てのシリーズを書き続けたメインライターである小山だが、本作では1話だけ書いた以外一切関わっておらず、メインライターは『ヤッターマン』同様酒井あきよしが務めた。
理由としては
  1. プロデューサーの岡正との不仲による事実上の解雇
  2. オチャカ校長の存在が小山の信仰上受け入れられなかった
の二点がある。
かつて存在した自身の公式サイトでも「行きがかり上、1本だけ書いたが、書く気にもならなかった」「何の愛着もない作品。のっぽ*1の中ではこの作品はT・B(タイムボカン)シリーズではない」とコメントしたほどで、番組の打ち切りが決まった際は後述の山本正之と二人で「ざまあみろ」と喜んだとか…。

【山本正之の場合】

彼もまたシリーズ一作目から前作まで全てのOP・ED・BGMを手掛けてきたが、小山氏同様マンネリ+反抗的態度を理由に岡正プロデューサーに降板させられている。
同時期、J9シリーズの最終作『銀河疾風サスライガー』も降板させられた氏にとってはかなり堪えたらしく*2、後年に手掛けたボカン関係の歌でも「3×7大予想」では「すぐに終わりそう」とけなされ、「ボカンと一発!ドロンボー」や「平成タイムボカンの歌」では「オタスケヤットデタイッパツ…」とイタダキマンだけハブられと散々である。

極めつけは「アニメがなんだ」という歌である。
歌詞をそのまま載せると@wiki運営から怒られかねないので詳しくは各自で検索してほしいが、特に露骨なのが「お菓子」という歌詞。
この「お菓子」とはいわゆる「山吹色のお菓子(賄賂)」のことで、要するに「賄賂でしか仕事取れない奴が偉そうにしてんじゃねぇ」という意味なのだが、なぜか「お菓」と「子」の間に意味深な間が入るのだ。

……山本が何を言いたかったのかは書くまでもないだろう。

が、後にDVD全巻購入特典として「イタダキマンの歌」を作成。
「イタダキマンも楽しいタイムボカンシリーズの一員となった」と語っているので、少なくとも彼にとっては少しはわだかまりが解けているのかも…?


【その後のタイムボカン】

かくして、1975年から毎年続いてきたタイムボカンシリーズは惜しまれながらその歴史に幕を下ろすことになった。
実は『タイムボカンエクスプレス ダレダマン』『タイムボカンウォーズ サッパリマン』という続編の構想もあったが、シリーズ自体が打ち切られたことにより残念ながらお蔵入りに。
オシャカパズルを探してるうちにシリーズもオシャカになってしまったのである。

しかし、シリーズに関わり続けたスタッフ、そしてボカンで育って大人になったかつての良い子たちはそれでもあきらめなかった。三悪人は不滅だと信じていた。
山本はボカンの灯を絶やさぬために「ナントカマンシリーズ」と題した楽曲を作り続け、総監督・笹川ひろしもアートミックと組んでボカンの継子たるOVA『戦国武将列伝 爆風童子ヒッサツマン』を発表。
その後もラジオ番組『平成タイムボカン』や1993年のOVA『タイムボカン王道復古』、そしてバンプレストから発売されたいくつかのゲーム作品を経て、シリーズは2000年の『タイムボカン2000 怪盗きらめきマン』で念願のTV復帰を遂げるのである。

……で、『イタダキマン』はその間どういう扱いだったかというと……
  • 『タイムボカン王道復古 チキチキ・ウゴウゴ・ホゲホゲマシーン猛レース』
    • OVA2巻の主演を賭けた歴代三悪メカ総出でのレースに出場するも、スタート直後にバナナの皮で滑って真っ先にリタイア。「作品を象徴してますね」と切り捨てられる。
    • 小山は監修として参加しているのでおそらくこの扱いにGOサインを出している。
  • 『ボカンGoGoGo』
    • 同じく歴代三悪によるレースゲームなのだが、二束三文トリオのシナリオでは「競争が苦手」「シリーズで一番早くゴールを迎えた我々なら一番にゴールできるはず」「脇役としても出足りない」といじられ放題。
  • 『ボカンと一発!ドロンボー』
    • 歴代善玉で唯一個別ステージがなく、『イッパツマン』とセット扱い。ステージボスの座も逆転王に奪われる。
    • セガサターン版では三冠王がボスとして登場するイッパツマン面が新しく追加され、結局イタダキマンだけが割を食った。
うん、声優の皆さんは泣いていい。本当に。


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  • 83年春アニメ
  • 岡正
  • 1983年
  • いい加減許してやれよ
  • 前作との凄まじい温度差
  • 不遇
  • 筒井ともみ
最終更新:2025年04月15日 20:47

*1 ※小山のニックネーム

*2 楽曲「サスクハナ号の曳航Ⅱ」によれば、音楽活動そのものから退こうとするほど思いつめていたそうな