みどりのマキバオー

登録日:2012/01/12(木) 21:23:13
更新日:2022/10/05 Wed 09:39:46
所要時間:約 12 分で読めます





「さあ最終コーナーを回って直線だ、各馬一斉に鞭が入る!
おーっと後方から猛烈な勢いで追い込んでくる白い影!
ミドリマキバオーだ!
先頭集団に並んで一気に抜き去った!
その差2馬身から3馬身、マキバオー強い!
2位以下を大きく引き離して今ゴールイン!
マキバオー圧勝!!」


週刊少年ジャンプで1994年~1998年に連載されていた、つの丸による競馬マンガ。


☆作品の特徴

主人公となる競走馬の著しく現実離れした特徴に加えて、馬が人語を解し、当たり前のように人間と会話する*1というファンタジーな世界観だが(一応「馬が喋る漫画」自体は『馬なり1ハロン劇場』という前例がある)、それによって競走馬にも豊富な心理描写が描かれており、感情移入がしやすい。
一方でレースや業界事情といった競馬に関する描写は十分なリアリティを伴っており(一部明らかにブッ飛んだ少年漫画然としたものもあるが)、予後不良などのシビアな出来事もしっかりと取り扱われる。
あと、本作を語るうえで欠かせない要素として、なぜか全員揃ってツルッパゲのブサイク顔でフルチンの競馬ファン達がある。

当時の競馬ブーム*2との相乗効果で人気を博し、連載中にフジテレビでアニメ化もされた。
ちなみに声優は下記の通りかなり豪華。
また主題歌『走れマキバオー*3は、リアルのフジテレビ競馬中継アナウンサー2人とスポーツアナによって歌われた。作者はこの縁からフジの競馬中継にもゲスト出演している。

さらにいうと男率90%以上の超汗臭い熱血漫画である。
その影響か、アニメ版に於いては飯富勝だけでなくカスケードの牧場の社長令嬢である本田麗(CV:白鳥由里)、競馬記者の胸尻諸美(CV:深雪さなえ)などの女性キャラが若干増やされており、
女性キャラはつの丸氏の絵柄を尊重しつつも、極力女の子らしいデザインとされてきる。



☆あらすじ

北海道鵡川町にある「みどり牧場」は1億円の借金を抱え、経営はまさに火の車状態だった。
その牧場主である飯富源次郎は借金返済のため、かつてG1桜花賞をとったミドリコの産駒に全てを賭けていた。
ある夜、遂にミドリコが産気付き、待望の子馬が誕生。しかし産まれてきたのは…!?



☆登場馬(と人物)


◆主役


  • ミドリマキバオー(CV:犬山犬子(現:犬山イヌコ))*4
白毛 みどり牧場*5美浦 飯富昌虎厩舎所属
「白い珍獣」「白い奇跡」

待望だったミドリコ産駒。しかしその姿はカバのような顔に仔犬のように小さな体の、とても馬とは思えない生き物だった。なお毛色も母とは異なるので*6色々な意味で突然変異な馬。
ちびっ子なせいか成長しても子供っぽい口調で、「んあ〜」「なのね〜」が口癖。本編時点で3~4歳なので人間的には間違ってない感もあるが、馬の寿命は人間の三分の一から四分の一なので…。
菊花賞前には成長痛が発生し「カッコよく大きくなれる」なんて夢を抱いたが菅助達は今の顔で大人な姿を想像してげんなりした、結局小柄なままややマッシブとなるに留まった。
チュウ兵衛との出会い、ミドリコの離別を経て大きく成長。サイズの不利やチビなのに通常体形馬並みの潜在能力持ちから「限界を超えると心臓に負荷が掛る」弱点を抱えながら、数々の強敵達との戦いでその小さな体に秘められた力を覚醒させていく。
「きん玉くさお」「うんこたれ蔵」など数多くの名前を持つ。最終的には本名は「たれ蔵」、競走馬名は「ミドリマキバオー」で統一された。

余談だが作中で登場する血統図は「チケゾー」こと1993年のダービー馬「ウイニングチケット」モデル説が有力視されており*7、またその毛色や小ささ等から昭和末期「(2代目)白い稲妻」と称された芦毛馬「タマモクロス」を連想するとの声もある*8
因みにファンの間……どころかJRAからもタマモクロスがモデルとして半ば確定的に扱われているが作者のつの丸氏は現在まで一度もタマモクロスがモデルと言った事はない(マキバオーとタマモクロスは境遇が似ていると言及した事はある)ため、たまたま要素が似てしまったのでは?とする説もある。

大きな森の小さな大親分。
幼いマキバオーを導いた恩師。詳細は項目を参照。


  • 山本菅助(CV:桜井敏治)
人間サイドの主人公である若き騎手。騎手の中でも*9かなりの小柄であり、そのためにマキバオーの騎手に選ばれることとなる。
過去に鞍上だった馬を予後不良で亡くし、その恐怖心から馬に乗れなくなっていた。
しかし、マキバオーと出会い恐怖心を克服。騎手として心身共に大きく成長していく。

名前の由来は武田の軍師・山本勘助。

「何が騎手だ…これじゃあただの46kgの重りじゃないか…!!」


◆人間サイド


  • 飯富昌虎(CV:飯塚昭三)
美浦トレーニングセンターの調教師。
血統に拘らずひたすら厳しく鍛え上げるスパルタ方式の調教を信条とする根性論者。
馬にハードトレーニングを課すことで弱点を克服させタフな競走馬を育て上げる手腕に定評がある一方で、担当馬を潰しかけたこともあり、一部の関係者からは「処刑調教師」の蔑称で呼ばれている。
物語開始時点では馬主に敬遠されて仕事は減少の一途を辿る落ち目の調教師だったが、マキバオーの潜在能力を最初に見抜き、彼の専属調教師となる。
彼がマキバオーの才能を見初めてなかったら、みどり牧場は完全に潰れていた。
引き締まった強健な肉体に相応しい肉体派でもあり、身体能力は主要登場人物随一。
かつて世界中を回って馬の扱いに対する修行を積んでいた時、モンゴル相撲を嗜んで「アルスラン(勇者)」の称号を獲得していた過去を持っているため、その頑健さも頷ける。

ちなみに名字の読みは「おぶ」。名前の由来は飯富虎昌。

  • 飯富源次郎(CV:緒方賢一)
昌虎の弟でみどり牧場の主。
1億円の借金を抱え、ミドリコの産駒に全てを賭けていた。
が、産まれてきたマキバオーがあの姿であった為、一時期は殺処分して肉にしようとしたり、犬のように鎖に繋げたりと酷い扱いをしてしまうが…
うんこの後に手を洗わない。あとついでに度々ズボンをはかない。

名前の由来は飯富源四郎こと山県昌景。

みどり牧場の職員。本名は三枝友則(さえぐさ とものり)。
しっかり者だが、初期の頃はボケをかまして源次郎に殴られていた。
生ける敗北フラグ

名前の由来は三枝守友(昌貞)。

源次郎の息子。
マキバオーの最初の友達で、昌虎よりも早くマキバオーの潜在能力に気付いた人物。ひげ牧場の息子のひげ治(CV:くまいもとこ)によく馬鹿にされている。
菅助と並ぶアニメ版に於ける人間サイドの主人公。
「子供が感情移入しやすいように」と作られた、原作にはいないアニメオリジナルキャラクターだが、全く違和感がない。



◆馬サイド


青鹿毛 本田RF 美浦 榊原厩舎所属
「黒い殺し屋」「漆黒の帝王」
マキバオー世代三強の一角にして、マキバオー最大のライバル。
実はマキバコ・ブリッツを通して、マキバオーとは親類同士である。
詳細は項目を参照。

栗毛 尼子牧場 栗東 立原厩舎所属
「三冠相続人」「不屈の闘将」
マキバオー世代三強の一角。かつての二冠馬ピーターⅡの全弟。恵まれた馬体を持つステイヤー。
兄から引き継いだ白いシャドーロールがトレードマーク。

「爆弾小僧」「青い眼のサムライ」
外国産馬。故にマイル路線にしか出られない自分の境遇を呪う事無く、次々に重賞を制覇し三強に挑む。

  • モーリアロー(CV:山田雅人)
「悪魔のラッキーホース」
生産牧場の毛利牧場が経営破綻したため、牧場主の息子である輝と共に吉川調教師に預けられた過去があり、毛利一家が再び一緒に暮らせるようにするために、厳しいローテーションでも負けずに賞金を稼いでいた。
相手を妨害する卑怯な走りをするなど、勝利のためには手段を選ばないところがあったが、スプリングSでのマキバオーとの戦いで本当の根性を知り改心した。

  • サトミアマゾン(CV:伊藤栄次)
「南船橋の奇跡」「ヒットマン」
地方で無敗を誇る南関の帝王。「船橋競馬場に人を集める」「地方は中央の二軍ではない」という信念を持ち、中央競馬の大レースへと殴り込みをかける。
彼を入れてマキバオー世代四強とする声もある。
作中では珍しく父馬がパロディ名ではなく、実在する種牡馬「ミルジョージ」となっている。
地方競馬を認識させた功績からか、実在の船橋競馬場にある「船橋競馬ミュージアム」では、彼は実在の顕彰馬に並ぶ形で展示されている。

「肥前の熊」
全てが規格外の「史上最強の駄馬」。主に気性とかエキセントリックな行動的な意味で規格外。
しかし潜在能力は(馬鹿だけど)全競争馬中で最強クラス。

何気に成績自体も普通に善戦している。菊花賞以外は。

  • トゥーカッター(CV:福田信昭)
「西の将軍」
長距離を得意とするマキバオー達の一世代上の馬。遅咲きながら上がり馬として菊花賞に勝つも、
世間からの評価は「ピーターIIがいたら獲れなかった」と冷たいものであった。
宝塚記念でカスケードに挑もうとするも海外遠征で回避されるなどといった経験から、
初登場時は「何が王者の誇りだ」などと、屈折した思いを吐き出す様子を見せた。


「天馬」
モンゴルの馬。体格は小柄で昼間は酒を飲んでばかりいるが、ナーダム(モンゴルにて年に数回行われる祭典)の競馬で3連覇を果たした実力者。
片側ずつ前後の足を同時に動かす「側対歩」なる走法を得意とする。
「本来の走り」を思い出させたり、有馬記念でレースの流れを読むことを説くなどマキバオーにとってよき師の1人となる。

  • アンカルジア(CV:亀井芳子)
栗毛の牝馬で、3歳時にマキバオーやニトロと同じレースに出たことをきっかけに友人となる。
とくにチュウ兵衛とは互いに「いなかルジア」「出っ歯」と言い合う良き喧嘩仲間。
短・中距離を得意とするもののオークス、桜花賞ともに勢いに乗れず2着に甘んじていたが…。

  • ミドリコ(CV:有馬瑞香)
かつては桜花賞を制覇した名馬。カスケードの母ヒロポンとは因縁がある。
タマーキンとの交配でマキバオーを産むが、借金の「かた」としてひげ牧場に連れていかれる。

繁殖牝馬としてはマキバオーを含め、G1馬を3頭も生み出した、超がつくほどの名牝。
また、続編『たいようのマキバオー』の主人公ヒノデマキバオー/文太の祖母であり、育ての母でもある。

マキバオーの半妹(種違いの妹)。
容姿は兄そっくりだが、悲惨な誕生直後の状況や育った環境から性格は180度違う。
ひげ牧場で産まれたが、マキバオーそっくりだった為に捨てられ、ヤクザの宮蔦親分に引き取られて育ち草競馬の看板娘になる。
捨子ゆえに他者不信だったが喪失の傷から惑い彷徨していたマキバオーと邂逅。周りの馬達の存在もあり互いに少しづつ心が前向きになっていく。
その後はみどり牧場へと託され競走馬として復帰*10、女性騎手の高坂(内藤)里華が乗り手となり、最終回では牝馬クラシックの一つである秋華賞を勝利したと明かされている。
なお、見た目のアレさから(あるいは一緒に生まれたブリッツが「双子」のせいで売り値が落ちるのを防ぐためか)マキバコが存在した事すら公にせず、しかし結局潰れた元ひげ牧場の連中は、ブリッツ登場後真相を知った宮蔦一家に始末された。

続編『たいようのマキバオー』の主人公ヒノデマキバオー/文太の母。
繁殖牝馬としてはヤンママなせいかぱっとせず、文太出産を最後に繁殖も引退し親分の家で姐御に転身したが、その後の文太の活躍により、親子3代でGⅠ馬を輩出したことになる。すげぇ。

…ちなみに、リアルでは競走馬が双子を受胎した場合母体の危険やひ弱な仔になるのを防ぐため早期に片方を中絶するという悲しき措置が多く取られており、双子で生まれた場合も生まれ自体が低評価ゆえに買い手が付きづらく、揃って1勝馬になったらそれだけで凄い程大成しないとされている。
また2022年現在日本人女性騎手がG1を勝利した例は存在せず(中央重賞勝利も2019年が初)、フィクションとは言え色々な意味で奇跡のような確率を経た馬なのかも知れない…。


  • ブリッツ
「電撃」
マキバオーの半弟(種違いの弟)でありマキバコの双子の弟。容姿は半兄にも全姉にも母にも似ていない父似。
作中最強馬と呼ばれる名馬で、リアル後世での最多G1勝利馬アーモンドアイ(G19勝)を超えるG1での11勝なんて記録を持っていたり(リアルでは相当レースも含め2017年にコパノリッキーが達成)。
余談だがカスケードと父親が同じなため、競走馬的には母系しかきょうだい扱いされないがマキバコ共々主役と好敵手双方のきょうだいなんて属性も持っている。




☆余談

作中の時代設定は明示されており、本編は1993年~1997年(通常連載版)と1999年(最終回)、続編『たいようのマキバオー』は2007年~2010年(連載時最終回)と2013年(エピローグ、同作自体は2007~2016年連載)の競馬界を描いているためリアルと比較すると面白いかもしれない。

マキバオーは馬かどうかはさておいて白毛馬なわけだが、白毛馬は大変珍しいものであるため*11強い馬も極めて希少で、現実でG1馬が誕生したのは本作終了から約22年後、2020年デビューの牝馬「ソダシ」(ついでに「~コ」と付く母馬がいる)が初。
ついでに言うと本作連載中の1997年に、日本競馬界で白毛馬が初勝利を飾っており(但し地方の大井競馬場)、その馬「ハクホウクン」(日本初の白毛馬の息子)は偶然にも本作開始の数か月前に生まれた馬だった。

なお、マキバオーは漫画連載終了後もリアル競馬イベントに於いて着ぐるみやイラストで登場し続けており、現在ではすっかり日本競馬界のマスコットキャラクターとして認知されている。*12

吉本新喜劇の座員・吉田裕はその容姿から「マキバオー」とイジられるネタがある。作者の公認を受けているかは不明。

続編に『たいようのマキバオー』がある(紙上で連載された第1部とウェブ連載となった『たいようのマキバオーW』の2部構成)。
青年誌に移行した事によってか、オリジナルレースなどの要素が消え、よりリアリティ重視の作風となり地方競馬やダートレースを通じての世相や現代競馬の問題をリアルに記しているのが特徴。一方でギャグ要素も勿論健在。
こっちの方はアーケードメダルゲーム『STARHORSE4』(セガ、前作3で『みどりの~』とコラボ)で期間限定コラボが行われており、声こそないもののPVで主要馬のCGモデルが制作されている。

ウマ娘 プリティーダービー』がブレイクしたのをきっかけに、本作も競馬漫画としての緻密さと奥深さ、個性的な登場馬達が取り上げられ、再ブレイクの兆しがある。
一部では「マキバオーもコラボしてほしい」との声も。
そして実際に漫画「ウマ娘 シンデレラグレイ」が連載されている週刊ヤングジャンプ2021年39号にて公式にコラボが実施
タマモクロスモデル説を踏まえ、かつコラボ時の「シンデレラグレイ」が1988年ジャパンカップを元にしたレースのスタート回だった事からか、主人公のオグリキャップではなくタマモクロス(88年JC2着)とマキバオーが併走するイラストが掲載された。これによってたまたまからマキバオー≒タマモクロスであると半公式化へ定着するようになる。
ちょうど「次に来るマンガ大賞」にてシンデレラグレイが2位に輝いた直後のタイミングでもあった。そのためマキバオーの方はつの丸氏から「もういっちゃったマンガ」と言われた


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最終更新:2022年10月05日 09:39

*1 最初期は「馬が人語を解して馬同士で会話はするが、馬の言葉は人間に通じない」扱いだったが、いつの間にか普通に会話し始めた。

*2 少年漫画界でも本作の他、1993年までマガジンで『風のシルフィード』が連載され本作連載中に続編『蒼き伝説マルス』がスタート・本作の数週前にサンデーで馬牧場舞台の『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』・前後してチャンピオンで『優駿の門』と相次いで競馬漫画が展開された。

*3 昭和時代の競馬ギャグソング『走れコウタロー』の替え歌で、後に同じ『走れコウタロー』を元にした『走れウマ娘』なんて曲も制作されている。

*4 今でこそニャースの人としてお馴染みだが、氏は本作が声優デビュー作である。

*5 設定的にはカスケードのいる「本多リッチファーム」の様に出身牧場が馬主も兼業する「オーナーブリーダー」としてマキバオーを飼っている。ちなみに続編『たいようのマキバオー』時代、みどり牧場は馬主を辞め牧場に専念しているそうな。

*6 これは実際に存在する事例であり、リアルだと本作連載中に生まれ多数の白毛馬を産み、リアルG1白毛馬「ソダシ」の祖母でもある「シラユキヒメ」が有名。

*7 第1回ではマキバオーの父「タマーキン」の先行産駒として「W(ウンチング)チケット」なる名が記載されたこと等から。

*8 これを反映してか、『たいようのマキバオー』ではヒノデマキバオーの父名が「タマブクロス」と設定されている。

*9 負担重量設定の都合上、騎手の体重は最大でも50kg強程度が求められる。

*10 但しヤクザ絡みがバレると反社会案件となり競馬的にアウトなので(親分自身も表舞台には出れない事を自覚していた)、『たいようのマキバオー』時代でも拾い主等の件は一部関係者以外には公にされていない。

*11 白いサラブレッドのほとんどは加齢で白くなっていく「芦毛」であり、生まれた時点で十分白いものが「白毛」である。

*12 最近ではオンラインサービス「オッズパーク」が有名。