登録日:2021/07/03 Sat 01:06:12
更新日:2025/04/22 Tue 14:50:06
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『
走れコウタロー』とは、
日本のフォークシンガーグループである
ソルティー・シュガーによるコミックソング。1970年7月に発売された。
発売当初はそれほど売れなかったものの、時間が経つにつれ口コミなどでジワジワと売れ行きを伸ばすようになり、
最終的に100万枚に近いヒットを記録するに至ると共に、翌1971年の1週目にオリコン1位を獲得したというちょっと変わった経緯がある。
だがそれ以外にも特筆すべきところがある。
……というか、そもそもこの曲自体がとてもユニーク。
まずは一部抜粋した下記の歌詞をご覧いただきたい。
そう、つまりこの曲は競馬について歌っているのだ。
競馬に関する曲は、増沢末夫氏による『さらばハイセイコー』や、サブちゃんこと北島三郎氏による『ありがとう
キタサンブラック』などのように、確かにこれまでも何曲か発表されてきた。
ただ、これらは
特定の競走馬に寄せたもので、かつ、往年の名馬たちへの惜別や感謝の気持ちを歌い上げたスローテンポな曲となっている。
その他、JRA(日本中央競馬会)のCMソングも広い目で見れば競馬に関する曲と言えなくもない。
一方『走れコウタロー』は、タイトルこそ特定の競走馬の名前が含まれてはいるが、実際はコウタローのことばかりではなく競馬の様子そのものも描いている上、笑いを誘う内容のアップテンポな曲となっている。
そういった歌というと意外と他にあまり無いので「競馬の歌といえば『走れコウタロー』でしょう」とお考えの方も多いかもしれない。
とはいえ、実は当初は競馬とは何ら関係が無い歌だった。
発端は、当時はソルティー・シュガーのメンバーで、後に『岬めぐり』でも名を馳せ、『午後は○○おもいッきりテレビ』初代司会者も務めた故・山本厚太郎氏が、同グループの練習によく遅刻していたこと。
それを茶化す形で、上記にも引用しているよく知られたサビの部分「走れ走れ コウタロー」だけが先に出来上がっていた。
その後、実在した競走馬「ミノル」への応援歌として作るつもりだったが語呂が良くなかったので、最終的にこちらも実在した競走馬「コウタロー」に向けてのものになったという。
歌の内容は実際のレースの流れを大体なぞっている。
出走直前の光景が浮かぶ歌い出しから始まり、いざ各馬一斉にスタート。
……したかと思いきや、出遅れたり引き離されたり、何やら色々なハプニングが巻き起こっているぞさあ勝負の行方やいかに、といった顛末を描写している。
ちなみに2番には観客と思しき「オイラ」の心情も挟まれる。
なお「4歳馬」が「ダービー」に出走すると歌われているが、これは2001年に馬齢の数え方が国際基準に合わせて変更される前の曲であるため。現代の基準では、ダービーに出走できる馬齢は3歳馬と呼ばれる。
また「ダービーの歌なのに実況部分で『本日の第4レース……』と言うのはおかしい」というツッコミもあったとか。
そして何よりやはりそこはコミックソングらしく、色々とやりたい放題な歌になっている。
- いわゆる「合いの手」が入っている
- 実際の競馬実況を彷彿とさせる部分があり、更にここに登場する馬の名前は麻雀用語や当時流行ったギャグやアイドルグループに由来している
- 本曲発表当時、公営ギャンブル廃止に取り組んでいた都知事・美濃部亮吉氏のモノマネを(風刺の意味も込めて)披露している
- 「オイラ」が「ここでコウタローが負けたら暮らしがままならない」(意訳)と縋っている
- しかもレコードのジャケットには顔はメンバーの似顔絵、首から下は馬の体というケンタウロスと件を混ぜたような生き物が載っている
……などなど大変カオス。
発売から50年以上経った今でも、コミカルで賑やかな曲調であることに加えて「走れ走れ」というフレーズが連呼されるからか、
運動会で使われることもあるらしい。
思い切り競馬用語出てくるんですけど風紀上大丈夫なんですかね?というかちびっ子に解るのかな?
追記・修正は競馬に思いを馳せながらお願いします。
……さて。この『走れコウタロー』(以下「原曲」)は、上記の通りかなり変わった特徴があるわけだが、さらに変わっている点は、
後年別々のコンテンツにおいて数度に亘りカバーされていることだろう。これは
レアケースと言える。
カバーといっても、原曲がそっくりそのまま使われているのではなく、作品や商品の世界観(と、『BOSS競馬』版を除き発表当時の都知事にまつわるあれこれ)に合わせて歌詞及び実況部分がアレンジされているが、
とはいえこれによりアニヲタ諸兄にもなじみ深い1曲になったのではないだろうか。
更に原曲が昭和時代、『
みどりのマキバオー』版が平成時代初頭、『
ウマ娘 プリティーダービー』版が平成時代終盤、『
BOSS』版が令和時代序盤と、
四世代に跨って(競馬が題材なだけに)愛されている曲でもある。
『走れマキバオー』
歌っているのは「F・MAP」という耳慣れないグループだが、そのメンバーは
フジテレビのアナウンサーである福井謙二氏、三宅正治氏、青嶋達也氏の3名。
3人は歌手ではないものの、原曲の雰囲気もしっかりと再現されている。
アニメ作中でもアナウンサーとして声の出演を果たしているし、更に三宅アナ・青嶋アナは実際に競馬中継も担当しているため、
実況部分はフィクションでありながらある意味「本物」。
プロによる臨場感たっぷりの実況は必聴。
原曲から変更された箇所は下記の数点を除けばあまり無い。
- 序盤に実況パート(歌詞)が追加
- 「コウタロー」の部分は「マキバオー」に
- 都知事のモノマネ部分は『マキバオー』放送当時の都知事(で、かつて作詞した『スーダラ節』に「競馬で大損」なんてパートも入れたことがあった)青島幸男氏を意識したものに。
- 記者役の三宅アナとのやり取りでは「都市博中止」も出てくる。
- 原曲にあった中盤の実況パートの増加と一部変更
『走れウマ娘』
Cygames社によるメディアミックス作品『
ウマ娘 プリティーダービー』(以下『ウマ娘』)のCMソングとして制作され、2018年10月にCDシングルとして発売された。
歌っているのが全員女性声優であることや、作品内容から文字通り
ターフに伝説を残していった実在馬の名前がたくさん登場すること、
原曲の1.6倍、『マキバオー』版の3倍近くの人数が参加していることもあり、
華やかで賑やかで楽しさを感じられる仕上がりとなっているのが特徴。
歌唱・出演している声優及び各自の役名は以下の通り。
こちらは『ウマ娘』の世界観に合わせて歌詞が少なからず変更されており、
- 「ライブ」や「勝負服」という語が出てくる
- 『ウマ娘』におけるレースはギャンブルではないという設定なので、そうした事柄を連想させるような箇所は変更されている
(課金はどうなんだって?話をややこしくしないのが大人ってものだぞ)
例「ここでおまえが負けたなら おいらの生活ままならぬ」
→「ここであの子が負けたなら ライブで応援できないぞ」
- 実況部分で先頭を走っているのがサイレンススズカ
- 2番の歌い出し「スタートダッシュで出遅れる」の部分を担当しているのが
あのゴールドシップ&トウカイテイオー
- モノマネパートはたづなさんのアナウンスに変更されたが、都知事ネタはしっかり踏襲している
- 「いつしかトップにおどり出て ついでに騎手まで振り落とす」と、ズッコケオチが待っていた原曲&『マキバオー』版とは異なり、
この部分が「勝利のライブで盛り上がる!」とハッピーエンドで締められている
- 終盤の「はっしれはっしれ」と独特のリズムで歌われる部分が「はしれーはしれー」と違うリズムで歌われている
といった具合に、原曲の要素はもちろん、ウマ娘たちの元ネタである実際の
迷名馬たちのエピソードもしっかり反映させた内容になっている。
名目上は原曲の
替え歌とされているが、アニメ版においてメインを務めるチーム〈
スピカ〉所属のキャラたちに加えて、特別出番が多かったわけでもないタマモクロスとウイニングチケットも参加しており、前述の『マキバオー』版の知名度が高いことも意識していると思われる。
『BOSS競馬』
缶コーヒーの「BOSS」でお馴染みのサントリー社から「ボス 本命の一服」「ボス 三冠の一杯」発売記念として、なんとこちらもCMソングとしてアレンジされた。
アニメ、ゲーム、競馬のいずれにも無関係の企業の「出走」は初めて。
こちらの特徴はとにかく豪華仕様であるとの一言に尽き、
- 序盤の『GI競走ファンファーレ』を担当したのは『ドラゴンクエストシリーズ』でお馴染みだった故・すぎやまこういち氏
- 更に歌い手・演奏者はMEN'S5『とってもウマナミ』でボーカルを務めた淡谷三治氏
- 極めつけに実況パートに起用されたのはあの関西テレビ競馬実況のレジェンド・杉本清氏
多種多様に一生懸命働いて活躍してる人々に向けてジオラマで作られた映像には、人や馬が出走している映像が映し出されている。そして天皇賞、菊花賞などの実際のレースの映像も。まるで原曲と『マキバオー』と『ウマ娘』を組み合わせたかのような。
これまでとは打って変わって、歌詞が原曲と全然違うものになっているのも特徴と言える。
- 『ウマ娘』版同様に賭け事と騎手に関するマイナスな歌詞は含まれない
- 歌詞には働いている人に向けてのエールで「自分のペースでいけばいい」や「ひと休み」などなど励ましの言葉が盛り込まれている
- 競馬関連の歌詞も当然含まれている(適性のみ)
- 映像自体の尺が1分強とあって、曲も1メロ→1サビ→ラストサビと『マキバオー』OPよりも短い構成になっている。
よって都知事ネタは無い
ここも大方アレンジされてはいるものの、明るいイメージに仕上がっている。
ソルティー・シュガーが生まれていなければ後年の作品にも曲が伝わらなかった原点である逃げの『コウタロー』
ギャグ&下品なシーンはあるが各喋る競走馬達の熱いドラマを描いたジャンプ漫画の先行の『マキバオー』
競走馬を美少女化しながらも熱く泣けるストーリーと元ネタも細かく作り上げられている差しの『ウマ娘』
50年以上も飲料水を作り続けてきて他企業とのコラボもCMも多彩な数を持つ追込の『SUNTORY』
どの世代の人々も、聞けば懐かしさと嬉しさに溢れるだろう。
なお、この歌の誕生のきっかけとなった山本厚太郎氏は、都立日比谷高校を経て上智大学入学、のちに
一橋大学に転学したという学歴エリートでもある。
芸能活動のかたわら、英国に留学して環境学を学ぶなど学者としてもキャリアを積んでおり、最終的には白鷗大学で教授にまで上り詰めている。
大学教授という重職に至ってなお遅刻癖は治らなかったようで、彼の教え子だったという人が「講義の開始時間を過ぎてからすまなそうに教室に入ってくるのがいつものパターンだった」と語っている。
追記・修正は四世代に渡って『走れコウタロー』を歌ってからお願いします。
- 競馬ソングとしてはさらばハイセイコーより早い -- 名無しさん (2021-07-03 01:58:54)
- 走れウマ娘は「ところが奇跡が神がかり」のところを奇跡の復活を遂げたトウカイテイオーが歌ってるのもすき -- 名無しさん (2021-07-03 02:01:14)
- 昭和はコウタロー、平成はマキバオー、令和はウマ娘 -- 名無しさん (2021-07-03 05:38:47)
- OPのお気楽さとは裏腹に本編は激熱なマキバオーは温度差で風邪引くわ -- 名無しさん (2021-07-03 08:47:09)
- 最終的に空馬になるから奇跡も無意味なんだよな。無常だわ。 -- 名無しさん (2021-07-03 09:26:52)
- 平成生まれのワシは「はーウマ娘がマキバオーの歌うのかぁ」→「えっマキバオーもリメイクだったの…?」ってなった。 -- 名無しさん (2021-07-03 10:21:46)
- ↑4 次の年号の時はどうなっているんだろうな? -- 名無しさん (2021-07-03 13:06:47)
- はっしれはっしれはっしれはっしれ! て、叫びながら見入ってるおっちゃん達の絵を思い出して、懐かしすぎてもうね……機会があったら久々にマキバオーのアニメ見たくなったわ -- 名無しさん (2021-07-03 13:46:19)
- 自分にとって印象深い馬といえばハイセイコーだけど、競馬ソングといえば、やはりこの走れコータローが思い浮かぶ。ちなみに昭和ver -- 名無しさん (2021-07-03 13:55:40)
- オリジナルを歌ってるソルティーシュガーの人は今大学のえらい人だそうな -- 名無しさん (2021-07-03 14:04:45)
- ↑3 あの迫真の表情でカットインしてくるおっちゃん達覚えてるわ。検索したら画質荒いけどOP見れた。 -- 名無しさん (2021-07-03 14:12:25)
- ラスサビ部分は原曲及びマキバオー版が「はっしれはっしれ」なのに対し、ウマ娘版は「はしれーはしれー」になっているのも特徴 -- 名無しさん (2021-07-03 14:13:09)
- ↑コウタローとマキバオーは馬なので四本足で走るからリズムが跳ねるけどウマ娘は日本足で走るからリズムが跳ねないって聞いて感心したな -- 名無しさん (2021-07-03 17:41:55)
- ↑二本足ね -- 名無しさん (2021-07-03 17:42:18)
- 記事とは関係ない話だが、バンドの名前(ソルティー・シュガー)の由来はバンドの元メンバーnoだったりする -- 名無しさん (2021-07-03 18:38:23)
- ↑修正 バンドの元メンバーの名前だったりする -- 名無しさん (2021-07-03 18:39:20)
- カラオケで歌おうと気軽にいれたら実況の部分をどう歌ったもんか戸惑った思い出。 -- 名無しさん (2021-07-03 19:01:05)
- マキバオーの続編でソルティーペッパーという名前だけ登場するモブ馬がいるけどソルティーシュガーが元ネタかそれとも偶然かな -- 名無しさん (2021-07-03 21:02:42)
- ウマ娘版、配信してくれんかなあ...。他の2バージョンは買ったから -- 名無しさん (2021-07-04 00:48:54)
- 「いつしかトップに躍り出て ついでに騎手まで振り落とす」……大活躍した“名競走馬”であることは間違いないはずなのに、マジでやらかす“金色の暴君”が本当に現れようとは当時想像できたのだろうか……?w -- 名無しさん (2021-07-04 15:23:21)
- ↑5 佐藤敏夫氏だねさとうとしお→砂糖と塩→ソルティシュガー -- 名無しさん (2021-07-04 20:06:22)
- (YouTubeのコメントとかで愛甲だのエネチャージだのと言われていたのを目にして、そういう事例はまあまだあるだろうと納得したけれど、BOSS競馬ほど「がっつりやっている」のはそうない、のだろうか? マキバオーはまあ有名だけど……) -- 名無しさん (2021-10-04 23:07:53)
- マキバオー世代なのでカバー聞いても裸のおっさんの幻覚が見えてしまうのが唯一の世代での欠点 -- 名無しさん (2021-10-22 00:26:13)
- カバーの多さは、「競馬」という珍しいピンポイントなテーマの歌で大ヒットしたから、後年同じテーマで作品制作したときに真っ先に思いつきやすいってのもあるんだろうね。 -- 名無しさん (2022-03-27 11:18:05)
- コウタローさん…ご冥福をお祈りいたします…。 -- 名無しさん (2022-07-15 08:29:47)
- あの公営ギャンブル云々って元ネタ都知事だったのか知らなかった。 -- 名無しさん (2022-09-06 05:23:21)
- 今更ながらBOSS競馬……結局、あくまでCMソングということか、フルバージョンとかそういうのはなかったようで。 -- 名無しさん (2023-02-23 13:10:09)
- 名前がコウタローなので実質自分のテーマソングと思ってる -- 名無しさん (2023-03-10 01:37:27)
最終更新:2025年04月22日 14:50