顕彰馬

登録日:2012/01/11 Wed 16:04:08
更新日:2024/01/30 Tue 06:54:50
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顕彰馬(けんしょうば)とは、JRA(日本中央競馬会)の表彰制度の一つ。

中央競馬の発展に多大な貢献のあった競走馬の功績を讃え、後世まで顕彰していくことを目的として、1984年にJRA30周年記念事業の一環として制定された。
所謂、『殿堂入り』に相当する。

2000年までは顕彰馬選考委員会の審議、以降は競馬記者の投票による。
ただどちらの方法でも恣意的な理屈や投票が入っていると評されることも少なくない。

2004年以降は引退から1年以上20年以内の資格制限がついている。

JRA競馬博物館にはそれぞれの資料とともに顕彰馬たちのブロンズ像と絵画が展示されている。


以下、生年順に顕彰馬を紹介しよう。


クモハタ
牡馬・栗毛
1936/3/4
21戦9勝
特筆【東京優駿競走】
デビュー戦の9日後にダービーに優勝したが、身体が弱かったためGⅠ級の勝利はこの一勝のみ。
しかし引退後、国内産馬として初めてリーディングサイヤーを獲り、産駒のGⅠ級競走17勝という成績を評価され、顕彰馬に選出された。


セントライト
牡馬・黒鹿毛
1938/4/2
12戦9勝
特筆【クラシック三冠】
横浜農林省賞典四歳呼馬、東京優駿競走、京都農林省賞典四歳呼馬の全てに勝利した、日本競馬史上初の三冠馬
三冠獲得後、馬主の意向で現役を引退、父としても活躍する。
項目参照


クリフジ
牝馬・栗毛
1940/3/12
11戦11勝
特筆【変則三冠】
牝馬でありながら東京優駿競走、阪神優駿牝馬、京都農林省賞典四歳呼馬(現・菊花賞)を優勝した。
全11レース中、7レースを10馬身以上の着差を開けて優勝しており、日本競馬史上最強と推す人も多い。


トキツカゼ
牝馬・鹿毛
1944/3/10
30戦11勝
特筆【農林省賞典(皐月賞)、優駿牝馬】
自身がクラシックを2勝、さらに母としてオートキツとオンワードゼアの2頭の年度代表馬を輩出した。


トサミドリ
牡馬・鹿毛
1946/5/20
31戦21勝
特筆【皐月賞、菊花賞】
蹄の具合が悪かったこともありダービーは7着に敗れたが、皐月賞と菊花賞の二冠を獲得した。
種牡馬としても超一流級の活躍をし、産駒通算勝利数1135勝は2011年5月7日にフジキセキに抜かれるまで最高記録であった。


トキノミノル
牡馬・鹿毛
1948/5/2
10戦10勝
特筆【皐月賞、東京優駿】
10戦無敗で内7戦がレコード勝ちという驚異的な成績で二冠馬になるも、東京優駿の僅か17日後に急逝し、「幻の馬」と呼ばれた伝説の競走馬。
項目参照


メイヂヒカリ
牡馬・鹿毛
1952/3/24
21戦16勝
特筆【GⅠ三勝】
温泉に入っていたので皐月賞とダービーは出走できなかったが、菊花賞をコースレコードで圧勝してみせた。
その後、葬式に参列したり、春の天皇賞をコースレコードで、中山グランプリ(有馬記念)を日本レコードで優勝したりし、引退時には日本では初めての引退式が執り行われた。


ハクチカラ
牡馬・栗毛
1953/4/20
49戦21勝
特筆【GⅠ三勝、海外重賞】
国内では現世代最強と呼ばれ、日本の競走馬として史上初、競馬先進国であるアメリカへ遠征を行った。
保田隆芳騎手も随伴したこの遠征は、17戦1勝で終えるが、この一勝、そして保田が日本に持ち帰ったモンキー乗りの騎乗法は日本の競馬界に多大な影響を与えた。


セイユウ
牡馬・鹿毛
1954/3/28
49戦26勝
特筆【セントライト記念】
サラブレッドに比べてスピードで劣るアラブ種にして、彼らと互角に戦い、遂には重賞セントライト記念まで優勝してみせた名馬。
一時はその偉業を称え「セイユウ記念」なるレースも存在したが、アラブ種限定レースだったためアラブ種の減少に伴い中央から地方に以降した後2004年に消滅した。
ちなみに一年間に283頭もの牝馬に種付けしたため「性雄」の二つ名をも持つ。


コダマ
牡馬・栗毛
1957/4/15
17戦12勝
特筆【皐月賞、東京優駿、宝塚記念】
鉄道ファンであった馬主によって名付けられた。
東京優駿までを無敗で勝ち、その切れのある末脚は「カミソリの切れ味」と呼ばれた。


シンザン
牡馬・鹿毛
1961/4/20
19戦15勝(2着4回)
特筆【三冠を含むGⅠ六勝】
当時牡馬が出走可能だったGⅠ級競走の全てに優勝した、問答無用の世代最強馬。
全19戦中連対率100%という偉大な記録を打ち出し、引退後も種牡馬として二冠馬ミホシンザンを輩出し、更には35歳まで生き永らえたことで日本の軽種馬最長寿記録を作ったりと色々と圧倒的。その功績から「神馬」とも称される日本競馬史に煌々と輝く名馬である。
シンボリルドルフの出現まで「シンザンを超えろ」は日本中のホースマンの至上命題であった。
項目参照


スピードシンボリ
牡馬・黒鹿毛
1963/5/3
43戦17勝
特筆【GⅠ四勝】
クラシックを勝つことは叶わず、また敗戦も多かったが、八歳(旧表記)になっても走り続けた。
その初戦を日本レコードで優勝、宝塚記念をコースレコード、引退レースと決まった有馬記念を昨年に続く連覇とし、有終の美を飾った。


タケシバオー
牡馬・鹿毛
1965/4/23
29戦16勝(2着10回)
特筆【天皇賞(春)、英国フェア開催記念】
芝、ダート、短距離、長距離、重馬場、重斤量、とにかくどんなレースであっても結果を残した猛者にして『野武士\』。
芝3200mの天皇賞、スプリンターズS(芝1200m)の代替競走である英国フェア開催記念、65kgを負ってのダート1700mでの日本レコードなど、その万能な強さは多くのファンを魅了した。
ちなみに後のハイセイコーとは「性豪」チャイナロック産駒という共通点がある。


グランドマーチス
牡馬・栗毛
1969/5/13
63戦23勝(障害39戦19勝)
特筆【中山大障害、京都大障害】
現在、唯一の障害馬としての顕彰馬。
特筆では省略したが、中山大障害は春→秋→春→秋の四連覇、京都大障害は秋→春→秋の三連覇である。
負けが多いのは、主戦騎手が若手だったこと、多くのレースで嫌がらせのように重い斤量を課せられたことが原因。


ハイセイコー
牡馬・鹿毛
1970/3/6
22戦13勝(中央16戦7勝)
特筆【皐月賞、宝塚記念】
地方の大井競馬で6戦全勝した後、中央競馬に。
順調に勝ち続け、ついには皐月賞を優勝し、空前絶後のハイセイコーブームを巻き起こした。
レコード勝ちを3度、2000m以下での連対率が100%である。産駒からダービー馬カツラノハイセイコ・エリザベス女王杯馬サンドピアリス・皐月賞馬ハクタイセイを輩出など、名実揃った名馬である。


トウショウボーイ
牡馬・鹿毛
1973/4/15
15戦10勝
特筆【皐月賞、有馬記念、宝塚記念】
その独特な走行フォームから「天馬」と渾名され、かつてTTG世代を担った「T」のどっちか。
「T」の片割れテンポイントとはライバル関係として知られている(対戦成績4勝2敗)。
引退後も種牡馬として活躍し、三冠馬ミスターシービー等を輩出した。


テンポイント
牡馬・栗毛
1973/4/19
18戦11勝
こちらは流星と馬体の美しさから「流星の貴公子」として親しまれた。
有馬記念でのトウショウボーイとの一騎打ちは日本競馬の名勝負の一つとして有名。
項目参照


マルゼンスキー
牡馬・鹿毛
1974/5/19
8戦8勝
特筆【朝日杯3歳ステークス】
圧倒的な強さを見せるも、当時の持込馬の制度によりクラシック戦線には出走できなかった。
あまりに速すぎて普通に走ってるだけで逃げになるとさえ言われた。
マルゼンスキーが圧勝した朝日杯は現在つべに上がっているので興味のある方は是非。
項目参照


ミスターシービー
牡馬・黒鹿毛
1980/4/7
15戦8勝
特筆【三冠、天皇賞(秋)】
常識破りと言われるまでに拘った追い込み戦法で三冠を達成し観客をわかせたが、同世代のカツラギエースの台頭、そして下記のシンボリルドルフの登場により、古馬となってからの戦績は天皇賞(秋)の1勝のみとなった。
項目参照


シンボリルドルフ
牡馬・鹿毛
1981/5/13
16戦13勝
特筆【三冠を含むGⅠ七勝】
史上初めて無敗で三冠を達成。初の七冠馬でもあり、GⅠ・7勝はアーモンドアイに破られるまで最多記録であった。
その優れた戦績と馬名から「皇帝」の名で知られている。
主戦騎手の岡部幸雄氏は「ルドルフに競馬を教えて貰った」と発言している。
項目参照


メジロラモーヌ
牝馬・青鹿毛
1983/4/9
12戦9勝
特筆【牝馬三冠】
桜花賞、オークス、エリザベス女王杯を全て勝ち、中央競馬史上初の三冠牝馬となった(それぞれのトライアルもすべて勝利しているので「完全三冠」とも)。
引退レースと決まった有馬記念では、ミホシンザンやサクラユタカオーなどの牡馬との対戦に挑んだが、前を塞がれ10着に敗れた。
項目参照


オグリキャップ
牡馬・芦毛
1985/3/27
32戦22勝(地方12戦10勝)
特筆【GⅠ四勝】
鞍上の武豊騎手と共に第二次競馬ブームを巻き起こした日本競馬史上屈指のスターホース。
ここでオグリキャップの半生を記そうとするととんでもない量になるので、興味のある方は項目を参照すべし。
項目参照


メジロマックイーン
牡馬・芦毛
1987/4/3
21戦12勝
特筆【GⅠ四勝】
史上初めて獲得賞金が10億円を突破。長距離レースでは無類の強さを誇り、未だ最強ステイヤーの一角との呼び声も高い。
また、JRA平地競走同一GⅠ三連覇に最も近づいた馬でもある。
項目参照


トウカイテイオー
牡馬・鹿毛
1988/4/20
12戦9勝
特筆【GⅠ四勝】
シンボリルドルフの初年度産駒。度重なる逆境に抗い続け、奇跡を起こした「不屈の帝王」。
特に1993年の有馬記念は同レースの歴代の中でもオグリキャップの有馬記念と並んで屈指のドラマとして語られている。
ファンは「最強として語られることは少ないが、最高の馬である」と評価している。
項目参照


ナリタブライアン
牡馬・黒鹿毛
1991/5/3
21戦12勝
特筆【三冠、有馬記念】
皐月賞を3.5馬身差、東京優駿を5馬身差、菊花賞を7馬身差と三冠を史上最高のパフォーマンスで達成。
しかし4歳時、阪神大賞典後に股関節炎を発症し、以降の勝ちは阪神大賞典のみに留まった。
それでも3歳時の暴力的な強さは高く評価されており、全盛期の強さは日本競馬史上最強との呼び声もある。
項目参照


タイキシャトル
牡馬・尾花栗毛
1994/3/23
13戦11勝(海外1戦1勝)
特筆【国内外GⅠ五勝】
欧州最高峰のマイルレース「ジャック・ル・マロワ賞」を制するなど国内外問わず大活躍。さらにはマイル戦では現役無敗を誇った日本最強にして当時の世界最強マイラー。
短距離馬として初めて年度代表馬に選出された。
項目参照


エルコンドルパサー
牡馬・鹿毛
1995/3/17
11戦8勝(海外4戦2勝)
特筆【海外GⅠ制覇・連対率100%】
98年世代、俗に言う「黄金世代」の一頭。凱旋門賞では欧州最強馬モンジューと互角の戦いを繰り広げ、惜しくも敗れたもののその走りが高く評価されて当時の日本歴代最高レーティング134ポンドを記録した(現在の日本歴代最高はイクイノックスで135ポンド)。
だが、年度代表馬や顕彰馬の選出について少々揉め、選出方法に疑問の声が上がった一例にもなってしまった。
項目参照


テイエムオペラオー
牡馬・栗毛
1996/3/13
26戦14勝
特筆【GⅠ七勝・秋古馬三冠】
2000年に現在ではほぼ不可能とされる古馬王道完全制覇を8戦8勝の年間無敗で達成、「世紀末覇王」の異名を授かる。
また、長らく獲得賞金の世界記録を保持していた。
項目参照


ディープインパクト
牡馬・鹿毛
2002/3/25
14戦12勝(海外1戦0勝)
特筆【三冠を含むGⅠ七勝】
ご存知史上2頭目の無敗三冠馬にして大種牡馬。
現役時代は圧倒的な強さで社会現象を巻き起こし、種牡馬としても無敗三冠馬コントレイルや下記の三冠牝馬ジェンティルドンナを輩出するなど、父サンデーサイレンスの跡を継いで絶対的リーディングサイアーとして君臨した。
そのイメージとは裏腹に、走るのが大好きでとても人懐っこかったそうな。
項目参照


ウオッカ
牝馬・鹿毛
2004/4/4
26戦10勝(海外4戦0勝)
特筆【GⅠ七勝】
史上3頭目となる牝馬での東京優駿制覇を達成し、当時牝馬最多のGⅠ・7勝を記録するなど牡馬と互角に渡り合った。
特に府中のマイルでは無類の強さを発揮し、ヴィクトリアマイルでは直線で7馬身差千切って圧勝するという常識外れのパフォーマンスを披露した。
「ウッカ」ではなく「ウッカ」なのでご注意を。
項目参照


ロードカナロア
牡馬・鹿毛
2008/3/11
17戦11勝(海外・2戦2勝)
特筆【国内外GⅠ六勝】
「凱旋門賞以上の鬼門」と言われた香港スプリントを連覇した日本が世界に誇る“龍王”。
日本最強スプリンターはと聞かれたらサクラバクシンオーと共に必ずと言っていいほど本馬の名が上がる。
顕彰馬入りは下の2頭の後(2018年)だが産駒成績の影響(アーモンドアイとか)も指摘される。
項目参照

オルフェーヴル
牡馬・栗毛
2008/5/14
21戦12勝(海外4戦2勝)
特筆【三冠を含むGⅠ六勝、果敢な凱旋門賞への挑戦】
三冠馬随一の問題児。実況が「こんな三冠馬は初めてです」と言っちゃうぐらいの気性難で、いろんな意味で伝説を残している。
一部では歴代の三冠馬を凌ぐのではないかと言われ、その潜在能力は随一でありながら、結局最後まで底を見せないままターフを後にした。
項目参照


ジェンティルドンナ
牝馬・鹿毛
2009/2/20
17戦9勝(海外2戦1勝)
特筆【牝馬三冠を含むGⅠ七勝】
ディープインパクト産駒の一頭。オルフェーヴルや凱旋門賞馬のソレミアに勝利し、史上初のジャパンカップ連覇を達成するなど優駿揃いのディープ産駒の中でも最高傑作と名高い。
名前の由来は「貴婦人」。だが実際のレース内容はというと…。
項目参照


キタサンブラック
牡馬・鹿毛
2012/3/10
20戦12勝
特筆【GⅠ七勝】
10年代を代表するスターホース。
不滅のレコードとも言われたディープインパクトの天皇賞レコードを破り、テイエムオペラオーのJRA獲得賞金記録も更新。
種牡馬としてもイクイノックスソールオリエンスなどを輩出するなど順調に結果を残している。
事実上の馬主であるサブちゃんこと演歌歌手の北島三郎氏はこの馬に一目惚れし購入したという。
項目参照

アーモンドアイ
牝馬・鹿毛
2018/3/10
15戦11勝(海外1戦1勝)
特筆【牝馬三冠を含むGⅠ九勝】
2018年クラシック世代を代表する名牝にして、先述したロードカナロアの代表産駒。
史上5頭目の牝馬三冠を含むGⅠ9勝を挙げ、シンボリルドルフ以来破られてこなかった「GⅠ7勝の壁」を打ち破った優駿。
特に2018年のジャパンカップは2分20秒6というタイムを叩き出して優勝し、レース・コース双方のレコードはおろか、芝2400mの世界レコードを更新するという大記録を成し遂げた。
JRA獲得賞金記録もキタサンブラックのものを更新して当時のJRA賞金王に輝いた(現在はイクイノックスに次ぐ2位)。

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最終更新:2024年01月30日 06:54