機動戦士クロスボーン・ガンダム

登録日:2011/03/05(土) 01:07:39
更新日:2019/12/07 Sat 19:32:40
所要時間:約 7 分で読めます





宇宙世紀0133
地球の誰もまだ
この戦いを知らなかった


月刊少年エースで1994年12月号~1997年3月号の間、連載されていた漫画。
原作は富野由悠季、漫画は長谷川裕一

それまでのガンダムシリーズの漫画では肩書きだけだった富野由悠季が初めて製作に関わった作品でもある。
そのことから、漫画でありながらも宇宙世紀の完全な正史として認識されている事が多い*1
100%富野脚本というわけではなく、送られてきた富野のプロットに対して長谷川が率直な意見をぶつけ、
それを受けて富野が脚本に手を加えるといった手法で作られたため、長谷川成分も結構強かったりする。

前半の舞台となるのは木星
それまでのガンダム作品では木星帰りと呼ばれる者たちによって言及されていたが、直接舞台となるのは初となる。
後半ではお馴染みの地球へと舞台を戻している。

宇宙世紀としては『機動戦士ガンダムF91』の続編に当たるのだが直接つながっているわけではなく、
F91から本作までの間に作中時間で10年ほど経っており、F91から続投するキャラクター達は相応に年を重ねている。
F91で一旦宇宙世紀が仕切りなおされた事や、長谷川がスーパーロボット系の作風を得意としていることもあって、
全体的な作風はファーストガンダムの様にややスーパーロボット寄りの作品となっている。
ただ、ガンダムらしく合理的な理由で兵器が作られており、設定的に無理がある部分は少ないか。

本作のラストは続きがあるような締めとなっているが、執筆当時は後の『スカルハート』や『鋼鉄の七人』は全く想像していなかったという。
2019年現在でも続編の連載が続いており、続編では作中の時代がどんどん先へと進んでいっているため、本作は結果的に世代を超えた大河ドラマのスタート地点となっている。

また、本作では地球、コロニー、そして木星という環境の違いが描かれており、それぞれに住む人間の思想、能力についても違いが見られる。
この違いは後のクロスボーン・ガンダムシリーズでも同様に描かれており、シリーズ通してのテーマなのかもしれない。


【あらすじ】

宇宙世紀0133年、木星圏付近では「ガンダム」と呼ばれるタイプのMSを使う宇宙海賊が出没し問題となっていた。
海賊の名は『クロスボーン・バンガード』。
コロニー生まれの少年“トビア・アロナクス”は、そんな時勢の中でも希望に胸を膨らませながら留学生として木星に向かっていた。

その途中、トビアは中継ステーション内で何者かに追われていた一人の少女“ベルナデット・ブリエット”と出会う。
彼女を友人達と共にその追っ手から庇っていたその時、宇宙海賊が出現。

木星側の守備隊が次々と撃破される中、作業用MSの免許を取得していたトビアは残されていたMSに乗り込みガンダムを迎え撃つ。しかし、所詮は民間人に過ぎないトビアでは全く歯が立たずに機体を破壊されてしまうが、なんと敵のはずのガンダムから脱出を促され、何とか生き延びる。

仲間の元へ戻ろうと宇宙船内に入ったトビアは、貨物室で木星の人々が地球人を殺すために隠していた「毒ガス」を発見してしまう。
木星の裏の顔を見てしまったトビアは教官のカラスに追い詰められてしまうが、先程のガンダムのパイロット“キンケドゥ・ナウ”に救われる。

その後、宇宙海賊『クロスボーン・バンガード』に保護され、指導者“ベラ・ロナ”から地球攻撃を企む『木星帝国』の存在を告げられたトビアは、海賊たちと共に戦う道を選ぶのだった。


【登場人物】


●宇宙海賊 クロスボーン・バンガード

かつて地球連邦に対して戦争を起こした貴族主義者達。
地球圏では輸送船を襲う恐怖の海賊とされているが、その実体は地球を木星帝国の魔の手から守ろうとする者たちの集まりである。

トビア・アロナクス
CV:山口勝平
「ならば海賊らしく…いただいてゆく!」
主人公。
地球からの留学生だが、クロスボーン・バンガードの一員として戦うことになる。
ニュータイプでありながらニュータイプ主義を否定し、人間として生きることにこだわる。

◆ベルナデット・ブリエット
CV:夏樹リオ
ヒロイン。
木星から密航して来た謎の美少女。
ステーションでの襲撃騒ぎの中、トビアと出会い、マザー・バンガードのクルーとなる。
実は偽名で、本名は「テテニス・ドゥガチ」。
劇中で「どこも出っ張ってない」と言われるほどの幼児体型で、続編『鋼鉄の七人』のエピローグや20年後が舞台の続編『ゴースト』でも変わっていない。

キンケドゥ・ナウ
「奇跡を見せてやろうじゃないか!」
クロスボーン・ガンダムX1を駆るクロスボーン・バンガードのエースで、トビアに戦い方を教える兄貴分。
自身は重傷を負い、機体のコックピットには穴が空いている状態で大気圏を突破した凄い人。
ベラとかなり親密な関係だが、その正体は…。

ベラ・ロナ
宇宙海賊クロスボーン・バンガードの指導者で、自ら戦艦『マザー・バンガード』の艦長として木星帝国と戦う。
パン作りで気分転換する習慣がある。
キンケドゥとかなり親密な関係だが、その正体は……。

ザビーネ・シャル
クロスボーン・ガンダムX2を駆るもう一人のエース。初出は『F91』。
コスモ・バビロニア戦争から10年が過ぎた今でも貴族主義に未練を持つ。

◆ウモン・サモン
クロスボーン・バンガードのMSパイロット。
ニュータイプを自称するお調子者の老人だが、一年戦争の頃から戦線で活躍している大ベテラン(長谷川の描いた宇宙世紀作品に若い頃の彼が客演することもある)。
その時の活躍についてはBガンダムを参照。

◆ヨナ
クロスボーン・バンガードのMSパイロットの女性。
MS操縦の腕はイマイチだが生身での白兵戦に優れる。
続編で明らかになったことだが、ウモンとは家族絡みの付き合いがある。

トゥインク・ステラ・ラベラドゥ
CV:釘宮理恵
スカルハートからの登場だが、ある理由によりここに記す。詳しくは項目参照。

◆シェリンドン・ロナ
ベラの親戚。
ガチガチのニュータイプ至上主義者であり、トビアを自分の下に置こうとするが…。


●木星帝国

連邦政府の木星市民への扱いを恨み、地球攻撃を企む秘密組織。
木星の厳しい環境ゆえに人命よりも物資を優先し、任務をしくじった者には容赦無い制裁が行われる、ガンダム史上でも指折りの厳しさを誇る。

クラックス・ドゥガチ
CV:永井一郎/麦人
木星帝国総統。木星に生活圏を築き上げた、木星圏における英雄。
木星の民に地球の大地を与えると宣言するが、その真の目的は…。

◆カラス
CV:茶風林
留学に来たトビア達を迎えた教官の一人だが、実は木星帝国の凄腕の諜報員。
「強い者こそが正しい」という信念に基づき、木星帝国に従う。
強きものであれば敵であろうと賞賛する。
でも教え子達が大活躍。

ギリ・ガデューカ・アスピス
◆ローズマリー・ラズベリー
◆バーンズ・ガーンズバック
対クロスボーン・ガンダムの特務部隊「死の旋風隊(デス・ゲイルズ)」のメンバー。
木星帝国の戦士としてガンダム打倒に燃えるギリ、木星市民の窮状を嘆いて軍に参加したバーンズとは違い、ローズマリーは傭兵として雇われた外部の人間である。
『鋼鉄の七人』にも再登場。


●地球連邦軍

以前のコスモ・バビロニア建国戦争と同様に、今作でも有効な手立てを打てず、後手後手に回ってしまう。

◆ハリソン・マディン
「連邦の青い閃光」の名を持つ連邦軍のエース。専用の青い量産型ガンダムF91を駆る。
続編の言動からロリコン疑惑が浮上。また、彼の祖母は若い頃は超絶ロリだった。


【登場メカ】


●クロスボーン・バンガード


◆クロスボーン・ガンダム
本作の顔でもあるドクロマークが刻まれたガンダム。ベラ・ロナの信念に基づき、近接装備が中心。
サナリィが極秘に開発&提供した機体で正式名称はF97。
白いX1黒いX2水色のX3の三機が登場。銀色のX3?なんのことやら。
ザンバスターなど共通の武装は持っているが、パイロットに合わせてか機体ごとに専用の装備が用意されている。
一応は全部同じ機体なので、パーツの使いまわしが効く。

◆ゾンド・ゲー
『F91』時代のクロスボーン・バンガードの機体を開発していたブッホ社製の超小型MS。当時からさらに小型化した結果、全長10m強まで縮んだ。
本作の時点では生産停止した型落ち機という扱いで、後に全機が廃棄された。

フリント
地球圏の環境に合わせて造られたクロスボーン・ガンダムの量産型。
終盤でのクロスボーン・バンガードの主力機になる。

マザー・バンガード
クロスボーン・バンガードの母船。ガンダムシリーズでも珍しい帆船型の戦艦。
ビームシールドなどの高性能な装備を持つほか、マスト部分のミノフスキードライブで地球と木星を短期間で行き来できる程の推力・加速力を持つ。


●木星帝国


バタラ
いわゆる量産型のやられメカ。シュノーケルのようなゴーグルが特徴。
何機かが宇宙海賊に奪われ、一時的な主力機となった。

◆ペズ・バタラ
バタラの突撃仕様。平べったい構造をしており、機体前部にビームアックスを展開して攻撃を行う。
1機が海賊軍に奪われ、トビアの序盤の乗機となった。つまり序盤の主人公機である。

◆エレバド
バタラの指揮官仕様。劇中での出番は少ない。

◆ヴァゴン
地上侵攻用のMS。タイヤ型のパーツを装着しており、後のアインラッドとの繋がりを感じさせる。

カングリジョ
木星軍MA。双眼鏡のような形の双胴型のボディを持ち、片方の半身はジェネレーター、もう片方は強力なメガ粒子砲となっている。
シンプルな造りになっているためコストが安いらしい。
別名、スカイ・ウインク。

クァバーゼ/アビジョ/トトゥガ
クロスボーン・ガンダムに対抗して開発された「死の旋風隊」専用機。
単機でクロスボーン・ガンダムに匹敵するMSの開発を諦め、代わりに攻撃・撹乱・防御のそれぞれの役割に特化した機体を開発し、チームとして運用した。
クァバーゼはギリ、アビジョはローズマリー、トトゥガはバーンズの乗機となり、後にクァバーゼのみ量産されている。

エレファンテ
木星帝国のNT用MA。形がキモい。
機体先端にビーム砲を備えた象の鼻のような形のフレキシブルアーム、更に大型のサイコミュビットを5基装備し、動きは鈍いが死角のない移動砲台。

エレゴレラ
自動操縦のモビルアーマー。バランスに優れた機体。
読者公募機であり、原案は東京都の海老川兼武くん。

ディビニダド
本作のラスボス機。木星帝国の切り札である超大型MA。悪意100%で出来ている


●地球連邦軍


量産型F91
一般兵でも扱えるよう、オリジナルのF91からからデチューンされており、最大稼動モードもオミットされている。
しかし、ヴェスバーの威力は依然として脅威的。
ハリソンの青いF91は専用にカスタマイズされており、最大稼動モードも使える。

133式ボール
何故かこの時代になって復活したボール。キャノン砲が3連装になっている。

ヘビーガン
『F91』から引き続き連邦軍の主力として運用されている。


【その後】


続編として


がある。
さらに現在、宇宙世紀169年の激化した宇宙戦国時代が舞台の『DUST』が連載中。


【余談】

初期稿ではキンケドゥが主人公だったが、流石に30歳近い主人公は少年エースの読者層的にどうかという事で、少年主人公のトビアが生まれたのだという。
また『クロスボーン・ガンダム』というタイトルは初期稿から変わっておらず、作者の長谷川も最初見た時に困惑したという*2

作者の長谷川は本作をキッカケに本作や『F91』近辺の外伝展開が広がらないかと期待していたようだが、
ほとんどゼロと言っていい程誰も描かなかったため、2019年現在でもほぼ一人で『F91』以降の作品を描き続けている状態となっている。

本編執筆時におけるPCの着脱可能な記憶媒体(メディア)としてCD-R、MO、Zip(テープ)辺りもそこそこ見るようにはなっていたが、
まだ3.5インチのフロッピーディスクが主流だったためか、データのやりとりはフロッピーディスクを介している。
初代原作で古臭い有線電話を使っているのと同じ様に、時代を感じる一コマである。
そしてゴーストで、学生が(異常な性能を有する)自作汎用萌えAIをタブレット端末に搭載していることも時代の流れを色々な意味で感じる。



「ばかものーっ!!敗者のぶんざいで 勝者の追記・修正をはばむでないわーっ!」

この項目が面白かったなら……\ポチッと/