登録日:2021/09/09 Thu 05:12:52
更新日:2025/09/30 Tue 23:28:46
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地球連邦の民は、旧来の因習にとりつかれて、宇宙圏を生活の場としはじめた人類の意識が拡大しつつあるのに気づかぬ古き人々であるという。
その古き人々の連邦に、ジオンの国民が従ういわれはないと言う!
地球型官僚の堕落は、確かにデギンの言う通りではある。
連邦軍にあってもそれは事実であろう。
しかし、連邦の国民よ。デギン・ザビの語る一面の真理にのみ眼を奪われてはならない。
ジオンは地球から最も離れたサイドであるが、その彼等が宇宙の深淵を見たなどという戯言を誰が信じようか!
一応、サンライズとしては
映像化されたものが公式、富野由悠季の著作物は前者と矛盾する描写を除き公式というスタンスである。
現在の公式の扱いとして『
ガイア・ギア』や『
G-SAVIOUR』等の宙に浮いている作品や、コミック及び
ゲーム作品の情報も含まれている。
だが、
一年戦争前史も描かれている貴重な情報源の『
THE ORIGIN』については、1stの世界と地続きではない事は留意したい。
地球連邦
各コロニーや月面都市などの多数の自治共和国と連邦議会で構成される人類統一国家。英語表記は「Earth Federation」。
一年戦争開始前時点で、地球在留者は約20億、コロニー移住者は約90億。
他のSF・アニメ作品のように戦争を無くすために一部の国が主導したわけでも、平和のために団結したわけでもなく、人口の過剰な増大と地球環境の悪化を食い止めるために人類の在り方を考え、一部の文化的伝統と自然環境の保護・保全・回復を担う人々を残し、全員が宇宙に出るという理想を実現するために創設された共和制国家である。
ただし、地球環境回復政策の一環である宇宙移民政策で、スペースコロニーと宇宙移民者が増えていくにつれて、地球環境が想定以上の回復傾向を示したことで、「地球環境を維持する人材を確保するため」に移民政策を中断。
「連邦政府関係者や超富裕層などの特権階級」なども宇宙に出るのを拒み、70年以上を過ぎても政治の中心を地上に残したせいで宇宙移民計画は棄民政策と化す。
その結果、宇宙に進出させられた「スペースノイド」と、地球に残留した「アースノイド」で意識の対立が発生。
ジオン・ズム・ダイクンが提唱した「ニュータイプ論」を御旗に、自治権獲得を掲げたジオン公国との「一年戦争」から続く戦史の発端となった。
首都
首相官邸ラプラス→ニューヤーク(1st以前)→ダカール(Ζ、ZZ)→ラサ(逆シャア)→ダカール(UC)→フォン・ブラウン(V)。
首相官邸ラプラスはラプラス事変で壊滅したため、ニューヤークへ。
一年戦争の被害を避けるためにジャブローに一時的に疎開し、終戦後にダカールに遷都した可能性がある。
ネオ・ジオンに首都ダカールを占拠されたため、0092年にルオ商会が関わる形でラサへ移転するが、
5thルナ落着で壊滅したため、ダカールに再遷都した。その後、「神の雷計画」の顛末でスペースノイドが実権を掌握したことで月面都市に移転。
正史として扱えるかは怪しいが、ラジオドラマ版の
ガイア・ギアでは0200年代の連邦政府の首都はヨーロッパ地区のヌーボ・パリとされている。
政策
主要政策は「地球環境の回復」。
アフリカのダカールという荒廃した砂漠しかない光景を嫌でも目にする場所に重要施設を置くのは
地球に残る為政者が破壊された地球の自然を認識するため
。
この地球環境の回復に関しては
優れた業績を上げており、宇宙移民政策と環境再生政策の結果、産業革命から始まる環境破壊と、
一年戦争から続く
コロニー落とし・隕石落とし・爆撃・市街地襲撃で著しく荒廃しても、一部地域を「リゾート地」と言われるほどに回復させている。
一年戦争でサイド1・2・4・5・7壊滅後は、「
コロニー社会の回復」も命題となり、戦後三年で新規建造と配置が続々と進められ、戦後七年で各サイドを復旧させた。
シャアは演説で「連邦の復興政策はコロニーの再生までで止まった」と言ってはいたが、内部にさまざまな不足こそあれども、戦中のテキサスコロニーのような「ミラーの調整ができなくなって砂漠化したコロニー」などは存在しない。
海洋汚染により、
グリプス戦役時点で
シロナガスクジラは絶滅したが、カミーユは
スペースコロニー1つ分の海で飼育されているクジラ
を見学しているので、一部の動植物は身近に触れ合えるほどの保護体制ができているようだ。
もっとも「地球環境の再生」「コロニーの再建」が無料でできるはずもなく、連邦の財政は火の車となっている。
人々の軋轢
スペースノイドの間には、「地球は裕福な楽園」であり「アースノイドは連邦政府関係者や超富裕層などの特権階級であるに違いない」「我々は強制的に移住させられた」という
一方的な認識が広く存在した。
実際には、アースノイドにも中産階級や貧困層、難民や不法滞在者などは普通にいる。逆に、スペースノイドにも富裕層や資産家、特権階級層はいた。その割合はほとんど同じである。
だいたい、アースノイドは全人類の約二割を占める。そんな「全人類の約二割が政府関係者・エリート層」ということはありえないことであった。
また、スペースノイドの「地球は裕福な楽園」というのも一方的に思い込みに過ぎず、実際に地球に降りたスペースノイドは異口同音に「無限に湧き出す虫」「予測のできない天気」「洪水・地震・落雷・蝗害などの激しい天災」「砂漠や湿地や高地などの複雑な地形・湿気・乾燥」「汚く汚染された空気」に辟易していた。
結局のところはスペースノイドからアースノイドに対する認識は
無理解と思い込みによって作られていたが、やがてそれが一年戦争という形で火を噴いたことで、こちらの対立もさらに激化。
スペースノイドにはアースノイドを「魂を重力に惹かれた者たち」「オールドタイプ」「
モグラ」など、公然と差別するものもいた。
さらに、スペースノイド国家を標榜するジオン公国がコロニーを地球に落とすなどして多くのアースノイドを殺戮したこと、ジオン公国によって故郷を破壊されたスペースノイドが地球に降りて難民化したこともあって、地球環境・地球社会も著しく悪化。
ここに到りアースノイドもスペースノイドを嫌悪するようになり、戦後の人心は大いに荒廃した。
時代が進むと地球やアースノイドに関心を抱かず、連邦政府の動きに無関心なスペースノイド市民も増えている。
しかし、良くも悪くも市民の連邦政府の監視的な視線が弱くなったことも意味しており、連邦政府内で腐敗が増えることになってしまった。
+
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人口についての余談 |
人口についてもう少し触れておくと、前述の通り一年戦争で約半数の50億人が死んでいるが、逆襲のシャアで クェス・パラヤが「宇宙に住む100億の人間に対して地球の人々はちゃんと目を向けていない」、『UC』のリディが「狂った世界だとしても100億の人間が生きているんだから守らなければ」という趣旨の発言をしている。
彼女らの発言した数字が本当にそのとおりであるのなら、50億人が死んで残りは60億人だったのが、13年後には地球をカウントせずスペースノイドだけで100億人に回復しており
13年で60億〜70億人ほど増えている。
著しい人口減のために管理社会であるコロニーを中心に強固な人口増加政策を取ったのかもしれないと想像できるのだがそれにしてもペースが早すぎる。
他のSF作品にあるような人口子宮などの「一般的な妊娠→出産以外の子供を増やす手段」は少なくとも逆シャア時点までは見受けられないのだが。
これでは
全ての女性が出産可能な年齢になったらすぐに4人以上産まないと
13年で60億人という数字は達成できないし、できたとしても12歳以下がそれより上の年齡層の倍以上になるとんでもない人口ピラミッドとなるはずである。
ジュドーのような「14歳で自分どころか下の兄弟の生活費も稼ぐ子供」というのがスペースノイドでは珍しくないのかもしれない。
ただしこの考察はあくまで「前述の発言が統計上の数値そのものである場合」に限ったもの。
「100億」というのは実数値ではなく「多くの人類」を意味する象徴的な言葉であって、実数はそんな数ではなく、上記考察のようないびつな人口バランスでもないと考えられる。作中描写的にも、そっちのほうが自然だろう。「全人類が約100億」という発言も、これらの発言のほかには出てこない。
30年近く後のハウゼリー・ロナの時代に「地球圏人口100億」という言葉が出てくるし、映像化されていないとはいえ富野由悠季が直接執筆したF91小説版で「人口は一年戦争以前に戻った」だの、Vガンダム小説版で「地球圏の人口
300億人
」、つまり
80年で250億人増
と言わんばかりの有様だった。
おそらく初期設定ではそのくらいだったが現実的な数字になるよう辻褄を合わせようと試みたと思われる。
そもそも『0083』の時点で『逆シャア』以降の「後付け」であり、もともと一年戦争とグリプス戦役の間は何もない平和な設定だったので人口回復自体はできる想定だったのだろう。それでも13年で50億人増は無茶だが。
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後述の連邦軍同様、存在が言及される度、二言目には「腐敗」の二文字が並んでいる気がする。
しかし実際にどのような機構があり、本来はどのように運営されるべきなのかなどはほとんど描写されていない。
それどころか、初代では政府の存在すら明らかでなく、ジオン公国がその建国からザビ家による独裁体制を詳細に描写されていたのに対し、地球連邦の体制については40周年を迎えた現在も謎が多い。仮にもアムロの所属国家やぞ…。
そのため、二言目には腐敗腐敗と言われるのに対し、実際どのような体制になっていて、どの程度逸脱しての腐敗なのかはよくわからない。
以下は劇中の描写から読み取れる範囲で地球連邦政府の体制を詳述する。
首相は君主の宰相又は大統領の下位に位置付けられる存在であることから、共和制たる連邦には大統領が居る、らしい。
ただ、『Z』で
ハヤト・コバヤシがシャアに対して「連邦の首相になるべき」と発言していたり、改暦セレモニーの主催者がリカルド・マーセナス首相であり、
ジョニー・ライデンの帰還で「大統領は実権のない象徴」と
ゴップが言及していることから、政府の実権はあくまで首相が握っているようだ。
軍以外の官僚機構についても判然としないが、『閃光のハサウェイ』原作及び劇場版では、閣僚や政府高官として保健衛生大臣、通信大臣、木星開発庁長官、内宇宙監視大臣、文化教育振興大臣、刑事警察機構長官といった面々が登場し、彼らに連なる省庁が存在すると思われる。
ほか、『逆襲のシャア』や『twilightAxiz』の漫画版付録では会計監査局、現実世界で言うなら会計検査院の職員が登場し、内閣六室なる情報機関も登場する。
『獅子の帰還』ではジオン共和国に国境侵犯をしでかした
リディ・マーセナスの後始末のため、国務省が動いた事が語られている。
また、地球連邦政府には、解放すれば政府そのものが転覆すると囁かれる
ラプラスの箱と呼ばれる重大な秘密がある。この箱は、アナハイム・エレクトロニクスの盟友である
ビスト財団がその在処を知っているとされ、財団、AE社、連邦が癒着のレベルを超えた共生関係にある理由とされている。
宇宙移民は「実質的な棄民」とされており、かなりの部分が強制的に行われた側面もあるようだが、連邦政府はスペースノイドに対し、無理矢理宇宙に追い出しておいて、孫の代まで続く引っ越し費用の借金を負わせたり、空気税を課したりしている。
ハウゼリー・ロナの主張によると、スペースノイドのコロニー税は移民のための三代に渡るローンや空気税・水税を合わせると収入の5割に及ぶとされている。
さらにコロニー税は本来はコロニー維持のための費用なのだが、一部は環境保全という名目でアースノイドのリゾート地開発という私腹に費やされている疑惑もある。
こうした不公正は当然スペースノイドの不満を蓄積しているが、連邦政府の政策にはそれを改めようとする様子は見られない。
というのは地球連邦政府においてはスペースノイドには参政権が与えられていない or あると、作品によって複数の描写があるのだが、普通に考えて選挙権が完全に平等ならばスペースノイド80億人とアースノイド20億人の人口差でスペースノイドが優遇な政治体制になっていないわけがないのでなんらかの制限があって地球側が有利になっているのだろう。
そのためサイドの首長の最終的任命権は中央政府が持っており、その中央政府に対してはスペースノイドは充分な干渉ができない構造になっている。
よって結局のところ、中央政府からの一方的な支配下にあることを強制されていることに変わりはない。
こうした一方的な支配システムがスペースノイドにおける反連邦の機運を高め、やがて自治独立を求める運動へとつながり、ついには後々の戦争の下地になった事は否めない。
一方、アナハイム・ジャーナルでは、メラニー・ヒュー・カーバインが地球貧困層出身のユダヤ人であった事を述懐し、貧しいアースノイドに比べればテクノクラートとしての教育を受けるスペースノイドは恵まれているとの趣旨の発言をしている。
よって、連邦政府がアースノイドを殊更優遇する政策を採っていたとも断言はできない。
むしろジオン公国軍の徹底的な砲撃で五つのサイドが消滅してから七年と経たないうちにコロニーをあらかた復興させる辺り、スペースノイドのためのインフラ整備にはかなり力を入れていた様子さえある。
また「空気税」に関していえば、地球で空気税が課されないのは「国家のインフラに頼らず自己調達できるから」であるのに対し、コロニーの場合は「コロニーという連邦が用意するインフラに頼って調達できるから」税金を課されるのであって、現実世界での水道料金・電気料金に相当するものと考えれば、課されること自体は当然の話とも言える。
またアースノイドの中には非合法に滞在している人間もかなり多いし、アースノイドでもスペースノイドでもない月面居住者、ルナリアンという人々もいるのだが、これらの政治的な権利がどれほど認められているのかは定かではない。
まあ、あれほどの超巨大国家の中央議会を直接選挙で運営するのは無理というのもわからなくはないが。
また
ギレン・ザビは
「地球連邦は絶対民主制を敷いているが、それ故に限界を超えて機能不全に陥った」と発言している。
そもそも連邦や各サイドの詳しい政治システムや実情に不明な点・各作品での矛盾点が多いので、よく分からないところは多い。
また当初のTV版の世界ではそれほど厳しくなかった設定らしく、逆シャアでアムロは地球で連邦の政治家の腐敗を目の当たりにして嘆いた旨を述べているが、言うほどに弾圧されていたら元々絶望しているはずでまず出てこない発言だろう。
そもそもサイド7におけるアムロ以外の一般人達も連邦に弾圧されてきた感じは全く出ていないため、上記のコロニー税が重すぎるなどの設定は後から生えてきたと言っても良い。
ここらを知っていれば、Z~逆シャアの劇中で地球連邦高官やアースノイドに対して「重力に魂を引かれた人々」「愚かなアースノイド」の類のワードがぽんぽん出てくる(初代ではほとんどない)のも理解できなくもないのだが、実態としては地球連邦はスペースノイドが多数在籍している結構柔軟な組織の他、劇中で人にも自然にも散々暴れ散らかしているのはアースノイドももちろん同じだが、冷静に考えるとむしろスペースノイドの方がやばいことをする姿が目立つので混乱する視聴者も居る。どちらも人間であることに変わりはない。
要はこれらの発言は地球連邦の腐敗を主張する言葉と同時にアースノイドは存在自体が罪深いという差別主義&過激思想にも通じてしまっている。
厄介なことにニュータイプ論もこの思想を含有しており、アムロなど幾人かの主人公達も同じようなことを思ってはいる。そして強い影響力を持つシャアがこれに加えて虐殺もやむなしとか考えるような人だったので最悪な行動を引き起こした理由の一つになっている。主人公達も言っている割に結構危うい思想である。
一例としてはハウゼリー・ロナはスペースノイドの票田で連邦政府の議席を得ており、
地球から出ていかない連邦高官に宇宙からレーザー砲をぶち込む
という法案を提出して否決されたが、これによってますますスペースノイドの支持を集めてしまう…という状況で暗殺されてしまった。
このため
クロスボーン・バンガードは政争ではなく武力闘争による目的達成に舵を切っている。
つまりはあの時代には
純粋な政治の戦いだけで連邦が大きな不利益となる法案も通りかねない
ほどスペースノイド側の参政権が整っており、そうでなければ『F91』の物語が成立しない。
後付けだが
ラプラスの箱解放などの影響があったのかもしれない。
また、後発作品で連邦の弾圧!と繰り返し叫ばれるようになってきているが、そのわりに地球連邦の宇宙軍に一年戦争までロクに兵器がないという矛盾が存在する。
例えば大量に存在して旧式扱いもされがちなサラミスを例に挙げると、サラミス製造は宇宙世紀0070年代からである。一年戦争は0079年開始。
これに関連して、作中設定でミノフスキー物理学は0040年代から始まっているが、サラミスの特徴にも搭載されているメガ粒子砲は0070年に初完成。
これらはほぼジオン内の秘匿研究で、軍国主義による悪用を嫌ったミノフスキー博士の亡命による連邦への技術伝搬は0072年。
連邦はミノフスキー粒子影響下の戦闘が未熟過ぎたというほぼ原作設定もあり、0072年からの伝搬は説得力のある年代なので後付けで大幅変更も難しい。
そのため、宇宙世紀0070年代サラミス製造はメタ的にもこれ以上早められない過密スケジュールであり、むしろ旧式扱いのイメージとは裏腹に本来なら新兵器の部類である。
製造当時はよく知らなかったMSに対応出来ていないという仕方ない事情を除くと、生まれた時から旧式であるヘビーガンやジェムズガンの様な由来もない。
そしてサラミス以前の兵器は今も昔もほとんど影も形もないことからも、経済などの観点はともかく分かりやすく弾圧されていたといった構図は現状想像が困難。
政府における連邦軍の立ち位置だが、
一年戦争以来非常事態に置かれた世界という事情から、かなり大きな発言力を持っている模様。
特に『0083』では、デラーズ・フリートがコロニーを月に落とすと恫喝した際、政権を維持したい政治家が終始軍の将校に対して謙っており、軍人の一人は「これこそシビリアン・コントロールですな」と笑う一幕がある。
同時に、ある将校は「月へコロニーを落としたところで、連邦は揺るぎもしない」と発言している。
また、ティターンズ総帥
ジャミトフ・ハイマンは、大陸復興公社総裁と、地球の賭博組合であるインターナショナル国債管理公社総裁も兼務している。
あんなに顔色が悪かったのも過労死寸前だったからか。
ただ、0090年を舞台にする『ジョニー・ライデンの帰還』では、ゴップが元軍人であり首相の座を狙うオクスナー・クリフ首相補佐官に対し、「軍部から首相を輩出するのは悲願だった」と激励している場面もあり、大日本帝国の如く、政権中枢まで軍に牛耳られている訳ではないらしい。
とは言え『Z』の時点で
現職の高位軍人で実質的にエゥーゴのトップ
のブレックス・フォーラが地球連邦議会の議席を保持しているが、それが特異なことのような描写がないあたり、シビリアン・コントロールという意味では微妙な体制と言える。
他にも、シビリアン・コントロール的に微妙な例を挙げると『逆シャア』のアデナウアー・パラヤ氏の肩書きは「地球連邦政府 参謀次官」なのだが、
参謀
とは軍人の役職で、ブライトのセリフからもおそらく軍人である。
連邦政府を代表してシャアにコロニーでの独立を認める重要な交渉を大臣や文官でなく軍人に任せるのは政府によほど人材がいないんだろうか。
アデナウアー以下の人材しかいないなんてことはなかろうな
作中に登場する文章の多くが英語であり、当初の首都がニューヤークであったこと、『UC』小説版に登場するガーベイ一族が連邦に反抗するムスリムの末裔という事情からも、地球連邦は
アメリカ合衆国やそれに類する勢力を中心に創設された可能性が高い。
同じく『UC』小説版では、若かりし頃のサイアム・ビストがテロに身を投じた経緯として、石油の枯渇で没落した中東諸国が一発逆転を狙って地球連邦の前身組織に反抗するも、あえなく返り討ちにされたことも語られている。
だが、欧米の精神的主柱である
キリスト教暦を捨て、リカルド首相自ら30以上の国の血が流れている事を誇りとし、ダカール以降、連邦首都が米国や欧州に置かれていない点からも、地球連邦が全人類の国家を目指していた事は確かなようだ。
加えて『虹に乗れなかった男』では、地球連邦軍上層部が
アクシズ・ショックの隠蔽に動く理由として、
「ジオニズムとニュータイプ神話によって人類が分断され、西暦のような終わりの無い宗教戦争の勃発を防ぐため」である事が明確に語られている。
一方、小説版『コロニーの落ちた地で』では、連邦内部には依然として多様な文化圏があり、言語もまた多様であることが触れられている。
しかし「同じ連邦軍でも、使用する言語が違うため意思疎通ができなくなる」「イギリス英語とアメリカ英語では同じ単語でも意味が違ったりする、ひどい時には真逆だったりする」ということから、「同じ文化を持つ、気心の知れた部隊・組織としか連携できない・しようとしない」という側面もあるようだ。
尤も、言語設定を詳細に描くと尺を取られて話が遅延するので、これはおそらく例外的、または独自設定であり、実際は文化の多様性はあるものの言語の問題は明言されていないものの実質存在しない。
現に幼い子供やジュドーなどの環境が悪くてあまり学んでいない若者ですらコロニー間や地球の様々な国の様な別の環境でも言語に困ることは全くなく、その辺はジオンも同様。言語が多様なら成立しない作品が多数を占めている。
なお『Z小説版』ではカミーユの世代の少年はデジタルデバイスで育っており、カミーユがアーガマ内で他人にバレずに日記を書きたいという理由で初めて実物のペンと紙を入手してこっそり日記を書いている。
紙の書類が完全に淘汰はされていないが実務面でのペーパーレスは進んでいるのだろう。
現実の軍隊では軍人を呼ぶときは「フルネーム+階級または役職」あるいは「姓+階級等」で呼ぶのが一般的で「名前+階級等」で呼ぶことはないのだが、作中世界では連邦ジオンのどちらも
名前+階級呼びが妙に多い。
シャア大佐、アムロ大尉、ブライト艦長、バスク大佐などが顕著である。ラル大尉とかシロッコ艦長などの例外もあるため統一が完全ではないというのが正しいか。
たぶん作劇の都合で視聴者が覚えてほしい呼称を強調したいからなのだろうけども。
【連邦の歴史】
その成立年について、具体的に示す各種資料も多数存在する。
が、近年の宇宙世紀世界における西暦の扱いについては曖昧にされている。
宇宙世紀移行の瞬間を最も詳細に描写したガンダムUCにおいても改暦の瞬間が西暦何年であったかは示されなかったため、現在の公式における地球連邦の具体的設立年は不明である。
メタいことを言うと、昔は「2045年」など明記されていたが、時代が本当に2045年に追いつきそうになったため「近未来」とごまかすようになったらしい
ただし、リカルド・マーセナスが初代首相であることから、西暦末期に創設されたのは確かなようだ。
そして、地球連邦軍についても、連邦加盟に反対する国家を併合するために活動していたこと、宇宙世紀年表に具体的設立年が示されていないことから、同じく西暦末期に設立されたものと思われる。
連邦政府は宇宙世紀の改暦セレモニーでいきなり官邸が爆破テロに遭い、しかも内実は白色テロという血塗られた時代の幕を自ら上げる。
宇宙世紀年表に「0022年 連邦政府、地球上からの紛争の消滅を宣言」という記述がある辺り、改暦以後も色々あったのだろう。
そして、連邦の評議員でもあった
ジオン・ズム・ダイクンなる男がコントリズムという傍迷惑な思想を引っ提げてサイド3に渡ったその時から、地球連邦の受難が始まる(後述)。
地球連邦の終わりは『G-SAVIOUR』の設定によれば0217年、一向に終わる気配を見せない
宇宙戦国時代に豪を煮やした連邦はとうとう各サイドの武力制圧を開始。
地球圏全てを巻き込む戦争が勃発し、遂に連邦政府はその強制力を喪失。0218年に崩壊した。
しかし、実際には「地球連邦の存在を求めるスペースノイド・コロニー社会」もかなりあったようで、サイド2、サイド3、サイド5、サイド7が旧連邦と合流し、セツルメント国家議会を形成する。これは実質的に、地球連邦が名前を変えて存続したようなものであった。
大きく時代がかけ離れているために関係ないに近い状況ではあるだろうが、かつてのジオン公国とザンスカール帝国が親連邦派なのは何の因果か。
あるいは、一足先に「独立」を果たした結果、「独立国」というのは名前の煌びやかさに反して実情は大して良いものではないと悟ったのかもしれない。
残るサイド1、サイド4、月はセツルメント自由同盟を結成した。
サイドの数を見るとこの頃には「親連邦派のスペースノイド」は「反連邦派のスペースノイド」よりも多かったようにも見える。
【連邦政府の関連組織】
スペースコロニーの建造・移転・維持管理などを行う組織。
「公社」と言う通り、地球連邦の管轄下にある。というか、戦中までは「コロニー管理省」という名前で、連邦の組織機構の一部だった。官僚と技術者が協力する半官半民の組織。
スペースノイドの生活はこの組織に掛かっている。そしてこの組織を連邦が管理しているため、連邦がスペースノイドの生活を維持していると言っても過言ではない。
なお、コロニー住人にコロニーの簡易メンテナンスを義務付けていたり、各種税金等から住人の多くからは嫌悪されていた模様。かなりの重税なのだろうか。それとも単に住民がわがままなだけか。
宇宙世紀0200年代時点でも存在が確認されているが、エアロックのセキュリティ管理が非常に緩いなど意識の低い管理体制となっている様子が見られる。
連邦もこの責務を重視しているようで、地球圏最大の企業・アナハイムですら、コロニー公社のシェアを奪いコロニーの維持管理を行うことはできなかった。一応、部品の提供などでは関わっているが、それでもシェアは低いらしい。
所謂「木星船団」。「木星開発公団」とも呼ばれる。
木星圏から地球圏にヘリウム3などの資源を運搬している組織。
前身組織が西暦時代から存在しており、宇宙世紀初期に再編されて現在に至る。
貴重な資源の運搬係であることから地球連邦やその反抗勢力の軍事力や経済力に関わる生命線であり、各勢力から保護されて中立の立場を貫く事実上不可侵の組織と化している。
一方で長期的な任務をする都合から乗員になる難易度が高く、採用されて働いている人間も星間航行の経験などが原因でニュータイプへの覚醒や独自な思想に辿り着く変人が排出されやすい模様。
この組織に所属していた
パプテマス・シロッコは
ティターンズの軍事補強に加担する行動に出ており、最終的にはティターンズの実権を握って
グリプス戦役の混乱を招いた。
最近の設定ではグリプス戦役時の木星船団公社はティターンズと接近したいと考えており、シロッコを介してジュピトリスをティターンズで活動させていたのは木星船団の思惑だったということになった。
いくらなんでも戦闘用じゃないジュピトリスを激戦地に出すのに「本来の持ち主」の木星船団が関与していないというのは無理があると気づいたのだろう。
0099年にはユーリー・ミノフスキー計画に参画していたり、「V」の小説版ではハンゲルグ・エヴィンの次なる調査対象として目を付けられるなど、中々にきな臭い組織である。なお、
木星帝国との関係性については、いまいち作中で明言されていないが、木星帝国も表向きは「公社」らしい。
ちなみに
一年戦争時点のジオン公国は木星船団公社とは別に独自で木星からのヘリウム3採掘船を持っており、あの
シャリア・ブルはこちらの出身。
宇宙移民の引っ越しや歴史的財産の宇宙への運搬などを行う公社。
組織のルーツは宇宙世紀初期に存在した「フロンティア開発移民局」であり、この団体が戦前の時代に連邦政府によってNGOとして現在の形に再編された。
宇宙移民や財産保護に関連する業務内容故に一年戦争時もジオン公国の干渉を避けるなど中立的立場が保証されているはずだったのだが、
ザンスカール戦争ではザンスカール帝国によって武力制圧が試みられたこともある。
太陽発電衛星の管理を行っている公社。この団体に触れられた『V』では名前が出てきておらず、一部では「太陽電池公社」という組織名だとされている。
組織や保有する衛星周辺は中立的立場が保証されているが、ザンスカール戦争の際にザンスカール帝国の軍事的干渉を受けている。
「南洋宗」という仏教系の宗教団体が東南アジアを中心に運営している地球連邦政府を構成する国家の一つ。
正史の
パラレルワールドである『
機動戦士ガンダム サンダーボルト』に登場する敵勢力であるため、正史世界線にこれに相当する国家及び組織があるのかは不明。
一年戦争後に連邦政府が疲弊したことや連邦・ジオンの両軍人が精神的に廃れた空気を狙って信者を増やし、連邦政府内の団体でありながらも反連邦組織として活動を開始した。
連邦政府の管轄下に置かれている半官半民の企業で、地球連邦軍の兵器研究や開発を担当する。シャアの反乱の時期に戦略戦術研究所から海軍戦略研究所として再編された。
元々MSの開発は行っていなかったものの、アナハイム・エレクトロニクスは戦略戦術研究所時代から目をつけており、自社の競争企業へ発展させることで、MSの技術発展を暗に目論んでいたようである。また、ロナ家の影響下にあった節があり、
ガンダムNT-1をこっそり彼らの私兵勢力であるバーナムの森に横流ししている。
後に「
フォーミュラ計画」と呼ばれるMS開発計画によって、アナハイムの独擅場だった連邦軍のMS運用の情勢を大きく変えることになる。
しかし、後の
ザンスカール戦争においてはサイド2の支社がザンスカール帝国に接収されるなどの事態に陥る。
通称は共に
マハ。後者は前者の組織が発展成長した後継組織にあたり、こちらの正式名称は「地球連邦警備警察機構特捜第十三課」。
『
ガイア・ギア』における敵対勢力。不法な地球移住者を宇宙に送り返す事を主任務とするが、遊び半分で民間人を虐殺するなど、暴走状態にある。UC0200年代まで存続している。
『G-SAVIOUR』の設定に『ガイア・ギア』の存在が反映されていたかは怪しいが、年表だけ読めばこの組織の暴発が連邦崩壊の序曲に見える。
具体的な設立年は不明だが、UC0090年頃が舞台の漫画『ガンダム・インレくろうさぎのみた夢』では、父を”人狩り”で失い火星に逃れた母子が登場した他、漫画『
機動戦士ガンダムF90FF』では
若き日の鉄仮面のセリフからUC0115年の時点で「特捜第十三課」として活動している事が口述されている。
ラジオドラマ版のガイア・ギアでは、本編におけるマハはUC0186年に設立された新たな秘密警察であり、マンハンターから直接繋がった組織ではないという設定に改変されている。
【連邦議会】
地球連邦の議事機関。「中央議会」とも。
「腐敗した連邦のアースノイドども」とジオニストが言う場合、大体ジャブローの軍人か官僚かこの議会に属する議員を指していると思われる。普通にアースノイド全体を指している場合も多々ある。
0090年では政界へ転身したゴップが上下院どちらか不明だが議長を務めている。
0096年ではローナン・マーセナス上院議員が、影の内閣と揶揄される移民問題評議会の議長として登場。
ラプラスの箱を巡って様々な陰謀に関与するが、それよりも中央議会の議員にコロニーレーザー発射のボタンを握らせる地球連邦軍の体制がヤバい。
ラプラス事変直後の時点で、マイッツァー・ロナの兄でたるエンゲイスト・ブッホ議員が閣僚として既に中央へ食い込んでおり、サイコフレーム回収計画妨害や、フロンティア・サイドの建設に一枚噛んでいた事が判明している。
『F91小説版』及び『プリクエル』では、エンゲイストの跡を継いだ甥ハウゼリー・ロナの議員としての遍歴が語られる。
彼は連邦議会の怒りを買うような法案を上程した結果、U.C.0118年に暗殺される。
しかし、近年の『
F90FF』にて、そのハウゼリーこそが、宇宙世紀後半の闇を繋ぎ、
ギレン・ザビの思想を実現させようとしていた超弩級の危険人物であったことが判明した。
【地球連邦軍】
英名はEarth Federation Force(略称はE.F.F.)。
特に宇宙軍を表すE.F.S.F.(Earth Federation Space Force)のマークはガンプラのデカール等でよく見る。
宇宙世紀世界における、最大にして最も長期に渡り活動した人類統一国家・地球連邦の軍事組織。
西暦末期の連邦政府発足と同時期に、旧アメリカ合衆国軍を母体に連邦加盟国の保有軍を合併し、部隊の再編や装備品の規格統一をする事で創設された。
詳しくは
当該項目参照
【連邦vsジオン】
サイド3の独立以来、連邦はジオン公国とその後継を名乗る残党組織、
そして近年の作品では継承国家であるジオン共和国との関係性に悩まされてきた。
特に国父でありジオニズムの提唱者でもある
ジオン・ズム・ダイクンに対しては、かなり初期からマークしていたようで、『
ギレン暗殺計画』によれば、彼のサイド3移住を妨害した記録が残っている。
後に首相に就任したダイクンにより、0058年にサイド3は連邦から独立。国防隊を発足させる。連邦は経済制裁を課す一方で、宇宙軍の拡充に注力した。
そして、ダイクンが突然病死した事で、ジオニズム思想はザビ家の手によって過激化。
0069年に彼の跡を継いだ
デギン・ソド・ザビによって、サイド3は彼を公王として戴くジオン公国となり、軍国主義化を推進。
そして0079年、遂に地球連邦とジオン公国間で人類史上最大規模の戦争が引き起こされる。
その勝者こそ連邦であったものの、地球もコロニーも壊滅的被害を受けた連邦を尻目に、サイド3は本国も全力も残した状態だった。結局、連邦は彼らにジオン共和国として自治権を残して併合を見送る。
一方、多額の戦時国債を抱えた共和国はジオニックなどの国営企業をアナハイムや連邦に売り払い、その売却益でいち早く復興を成し遂げる。
だが、コロニー落としと各サイドの蹂躙を思えば、ここまで温情を見せたにもかかわらず、公国軍の多数の部隊は共和国への恭順を認めず、地球圏内外のあらゆる領域へ逃亡。以後、連邦はこの残党に苦しめられる。
だが、ティターンズが壊滅すると、あんなに残党狩りに血道を挙げていた連邦は、
ネオ・ジオンにダカールを占拠されるとハマーンにサイド3を譲渡するなど、唐突に宥和政策へ傾く。しかも、またコロニー落とされてるし…。
その後は5thルナを地球へ落とされたにもかかわらず、シャアを筆頭とする
新生ネオ・ジオンにアクシズを売り渡し、酷い目に遭っている。
だが、ラプラス事変に係るゴタゴタではジオン絶対殺すマンとしての側面を全力で押し出し、
袖付きはおろか、最終的にはコロニーレーザーで、ビスト財団とアナハイムが所有する民間のコロニービルダーであるメガラニカを消滅させようとする暴挙に出る。
連邦は上述のとおり人類統一国家として、分断を生むジオニズムを看過することは出来ないのだが、それ以上に、
とある秘密から、ジオンとニュータイプを絶対に肯定できない理由があるらしい。
その後は不死鳥狩りに際して、
袖付きに偽装したジオン共和国軍という本丸とも交戦するのだが、その真実を認識していたのかは不明である。
なお、連邦はサイド3との境界を国境線として認識しており、ジオン共和国を外国として認めている。
その後、0100年にジオン共和国の自治権返上がなされた後は、火星に潜伏していた最後のジオン残党
オールズモビルを鎮圧し、遂に対ジオン戦争は終わりを見せる。
じゃあ教えてくれよ、この仕組みの深さを追記・修正する方法を…!
最終更新:2025年09月30日 23:28