ジェムズガン

登録日:2012/09/16 Sun 01:05:45
更新日:2025/09/23 Tue 01:50:32
所要時間:約 11 分で読めます





ジェムズガンとは、『機動戦士Vガンダム』『機動戦士クロスボーン・ガンダム』シリーズに登場するモビルスーツ(以下MS)。




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ジェムズガン

 JAMESGUN

型式番号:RGM-119
所属:地球連邦軍
   リガ・ミリティア
開発:アナハイム・エレクトロニクス社
生産形態:量産機
頭頂高:14.7m
本体重量:7.1t
全備重量:16.3t
出力:3,860kW
推力:22,270kg×3
装甲材質:ガンダリウム合金スーパーセラミック複合材

武装:
バルカン砲×2
ビームサーベル×2
ビームライフル
メガ・ビーム・バズーカ
ビームシールド/ヘビーガンシールド
スコップ、爆雷

パイロット:
連邦一般兵
ハリソン・マディン
バーンズ・ガーンズバック
ミッチェル・ドレック・ナー

【機体解説】

アナハイム・エレクトロニクス(AE)社が造った地球連邦軍の量産型MS。
ヘビーガンの後継機にあたると共にジムを始祖とするRGM系MSの流れを汲む機体でもある。

連邦軍史上、そしてRGM系史上初の小型MSであるヘビーガンの完成後、更なる後継機を求めて連邦軍がAE社に開発を依頼したMS。
当初は低コストと簡便な整備性を重視する軍の要求そのままにヘビーガンと同程度の性能として基礎設計が行われていた。
だが、その時点でサナリィが開発した「フォーミュラシリーズ」の登場により状況は一変していた。

そもそも平和ボケに加え、慢性的な予算不足にあえいでいた連邦軍。
彼らですらヘビーガンの(サナリィが提示した小型MSのポテンシャルに遥か及ばない低)性能には納得しかねていた。
そこへ0111年の次期小型主力機コンペにおいてAEのMSA-0120がサナリィ製のガンダムF90に完全敗北*1
AE社に対する連邦軍の不信感も高まっていたため、流石のAE社も連邦軍内でのシェアを奪われる事ににわかに危機感を抱く。
そしてシルエットフォーミュラプロジェクトで得たデータを盗用使って、次世代の全領域対応型量産機として再設計されたのが本機である。


統一された普及型の汎用機として長い伝統を持つRGM系MSの特徴を反映し、機体性能はヘビーガンからそれなりに向上させた。
引き継がれたフレーム構造に新たなジェネレータを採用することで、生産性と整備性に構造の堅牢さまで併せ持ったまま高出力化を実現。
アポジモーター数はヘビーガンと比べて3分の1以下だが、重量も約3分の2程度まで落ちたことで機動性はより高まった…らしい。
更に初期量産型以外はジェネレータの高出力化により念願のビームシールドも使用可能となった。それまではヘビーガンのを流用。

武装面に関してはジム系らしく汎用性を重視しており、ビームライフルやビームサーベルなど、どれもオーソドックスな物。
コスモ・バビロニア紛争で醜態を晒したジェガンや、地上軍に未だ残る更に古い旧式機をヘビーガンもろとも更新する新型機として期待された。
そして満を持して宇宙世紀(U.C.)0119年、「RGM-119」の制式ナンバーを与えられて待望のデビューを飾ったのである。

こうして初期生産型がロールアウトし、月に配備された。
カタログスペック上のジェネレーター出力自体は、第2世代MS相当の新型ジェネレーターを搭載しており3,860kWと決して低くない*2
他、機動性に関してもヘビーガンに比べて推力こそ落ちたが小型軽量化により推力重量比は約4.1と上昇している。
一説には導入時には出力不足が指摘されこれではモビルワーカーだと言われたとされる資料はあるが、これはVMSVハンドブックという今ではどこまで公式としていいか分からない資料である。
更に近年展開しているF90ファステットフォーミュラやモビルマシーンの設定では純粋に デナンゾンに匹敵する出力を有する手堅いMS とされており、
コンペにおいてF80とハーディガンを下している。
初期型はVガンダム時代とスペックが異なったのではいう説もあるがソースが皆無であり、公表されているスペックでは初期型とそれ以降の性能差はない。
先代のヘビーガンも初期型は不具合の嵐な上に、いきなりスケールダウンしたMSに現場は困惑し、パイロットからもメカニックからも 「現行のジェガンの方がマシ」 と言われていた為、そこから類推された物ではないかと思われる。

あまりに宇宙運用に適さないためにその後の生産機の大半は地上に送られ、実質的に地上専用機と化した。
幸い僅かな改修で地球上の全領域に対応可能かつ整備性も申し分なしということもあり、地上用として大量に配備されることになった。

…とまぁ、決して傑作機とは言い難いジェムズガンなのだが、ガノタからは人気を集めている節がある。
弱そうながらもシンプルかつスタイリッシュなデザインもあって、意外なことに熱心なファンも少なくない機体である。


【装備】

  • ガンダリウム合金スーパーセラミック複合材
仰々しい名前に違わず、Vガンダムなどと同名の高品質な装甲材…と言うのが公式サイトの設定。
だが兄弟機で後継機のジャベリンはスーパーなしの「ガンダリウム合金セラミック複合材」となっていた。

  • 頭部バルカン砲
地球連邦軍機の通常装備、二門一対の頭部機関砲。
対MS戦での威嚇や牽制、ミサイル迎撃、あるいは対歩兵・戦闘車両向けと思われる。
同口径でMSを撃墜した前例MSに襲いかかってくる歩兵もいるので、やはりフェイルセーフとしては変わらず必要なのだろう。

  • ビームライフル
整備性や生産性を追求した簡素なタイプ。
サブグリップやオプション装備等は全て省略され、センサーサイトしか付いていない。
劇中では戦闘シーン自体省略されがちなので特に欠陥らしい欠陥は描写されなかったが、放送当時に発売された『機動戦士Vガンダム NEWモビルスーツバリエーションハンドブック①』によれば、この時代の連邦製ビームライフルは出力が低く、リガ・ミリティアのスタッフからは相手にされなかったとされる*3
ジェムズガン自体はライフルは使用していないが兄弟機であるジャベリンの使用するライフルはザンスカールの戦艦にも風穴を開けられる威力がある。

  • ビームサーベル
腰のサイドアーマーに収納された二対の格闘用装備。高いメガ粒子集束率を誇る。
リガ・ミリティアのMSとも共通規格らしく、信頼性は高いだろうが、使う場面はなかった。
尤も、機体性能が先述の通りでは接近戦自体が無謀だろうが…

  • 実体シールド
初期量産型向けの実体盾で10年前のヘビーガンと同じもの。要するに型落ち流用品。
本機の完成時点で既に稼働しておりビームシールドも標準装備されていたCV製MSの兵装群に対しては心許ないが、一応対ビームコーティングは施されているので、射撃型ビーム兵器に対してはそれなりに効果的。
『Vガン』でこの盾を使っていたヘビガンが登場し、アインラッドのビームキャノンを防いでいる。
ちなみに当初標準装備予定だったビームシールドは(恐らく出力不足問題により)初期量産型には搭載されていない。

■追加装備
  • ビームシールド
左前腕コネクタに接続された板状にビームを展開する盾。地球連邦軍の正式量産型MSとして初採用となるジェムズガン最大の目玉。
しかし上記の通り 初期型には未搭載 。最初から稼働させられていればもう少しマシな評価だったかもしれないが……。
そもそもアナハイムにおけるビームシールドの技術自体が、「シルエットフォーミュラプロジェクト」の賜物(?)。
要するにサナリィからの技術盗用orブッホ・コンツェルンとの裏取引であり、本機の装備もその延長線上にある可能性が高い。
また、先述したようにジェムズガンのハードポイントはただのラックなので、応用力*4は皆無。
ヘビーガンの上位機であるハーディガンではハードポイントが採用されているので、AE社の技術限界から来る仕様ではないと思われる。
一応、甲板の上でこれを展開して飛散したビームから母艦を守るシーンなんかもあるので、出力自体はそこまで低いわけではないのかもしれない。

  • アンカーシールド
『鋼鉄の7人』で登場した兵装兼作業機器。
ワイヤーアンカーを組み合わせた実体盾で伸縮機構を持つ。盾としての防御面もヘビーガン用シールドよりはマシらしい。
コルニグスとの戦闘ではアンカーで敵機を拘束した。装備してたのは別のMSだが

  • ビーム・バズーカ
クラスターガンダムが装備していたメガ・ビーム・バズーカの普及型。
設計はサナリィだが、宇宙世紀0150年代では汎用オプション装備としてAE社が生産しており、ガンイージもリガ・ミリティア仕様の改良型を使っている。
つまりは宇宙世紀0119年デビューで0150年代でもバリバリの現役という、ジェムズガンどころではないロングセラーである。
だが出力が高いため0169年まで運用されるだけのポテンシャルがある逸品。*5
ジェムズガンが運用できる中ではザンスカール帝国軍機に対して最も通用し得る射撃兵装と言える。もっとも設定のみで劇中では未使用

  • 巨大スコップ
MSサイズの整地用スコップ主兵装と言っても過言ではない。劇中では飛行場の整地に用いられていた。

  • 対地爆雷
バイク戦艦相手に使った空爆用の爆弾。
だがウッソ・エヴィンの母やゴズ・バールのゾリディアがアレになる回なので、大体の視聴者に忘れられている。
ヘビーガンと違ってグレネードもオミットされてるので、恐らく後付のオプション装備。
ちなみに空から撒く対地爆雷な訳だがジェムズガンに1G重力下での飛行能力はない*6
オプション故か投下方法も小脇に抱えた箱からバラバラと直に落とすという非常に原始的なものである。西部戦線か?


【劇中の活躍】

後述の通りU.C.0123年のコスモ・バビロニア紛争時点で既に初期生産型が完成、実戦にも参加している。
……という設定が存在するものの、『機動戦士ガンダムF91』公開時点ではまだ本機の設定は存在しなかったため、劇中には登場しない。
参加した戦闘というのも月面施設の防衛任務のため、実際に活躍できたのかは怪しいとされている*7

0133年の無印『機動戦士クロスボーン・ガンダム』では既に配備されていて、木星戦役時には死の旋風隊によって宇宙港の防衛隊の所属機が全滅している。

そして外伝である『猿の衛星』でも登場。
ハリソン・マディンの部下が搭乗し衛星探索に同伴するも、 一年戦争時代のMSであるバルブスに翻弄された挙句、撃破される 醜態まで晒している。
もっともこれは相手の戦闘能力が異様に高かったせいであり、同行したジャベリンは愚かハリソン専用量産型F91ですら苦戦を強いられているためジェムズガンにも乗り手にも何ら非はない*8
この時代でガチのエースパイロットをやっているハリソンの部下を務める位なので乗り手の腕も十二分と思われるし。

0136年を舞台とする『鋼鉄の7人』ではハリソンの部隊で運用されている。またかよ
グレートバレーでの「イカロス」を巡る戦いでは、バーンズがハリソン隊から借りた機体で戦った。
木星軍相手には苦戦を強いられたものの、これはジェムズガンの性能云々よりも彼が連邦系MSの操縦に不慣れだった事が大きい模様。
他にもドレックも乗り込んで木星軍のエルコプテを撃破しイカロスを守り、更にハリソン隊が地球に侵入していた木星軍部隊を全滅させる*9など、貴重な活躍シーンが与えられている。

更に後年となる『Vガンダム』の0153年には流石に旧式もいいところ。
F91はもちろんF97ですら量産機のゾロアットと大差ないような時代に、本機がザンスカール帝国軍機に対抗できるはずがなく、やられ役に徹するのみであった。
しかし流石に 戦闘車両同然のバイク型モビルアーマー・ガリクソン相手に全滅 するのは…せめて跳んでくれ
あまりの弱さに撃墜シーンすら省略されがち

同時期を舞台とする『ゴースト』にもジャベリンに紛れて少数がリガ・ミリティア所属機として登場している。
だが宇宙戦用のジャベリンと混成しているあたり、単純に戦力&予算不足で使わざるを得なかったと言う可能性が高い。


0169年の『DUST』では打って変わって連邦軍の特殊部隊キュクロープスで「ジェムズガン改」が多数投入される。
宇宙戦国時代によって既に連邦や諸勢力は新型MSを作る余力を失い、技術レベルも一年戦争時代まで後退していた。
現用MSは18m級のレストアMSやミキシングビルドMSが大半となり、高威力のビーム兵器は再生産どころかマトモな整備さえ覚束ない有り様。

そんな中で劣化しているとはいえ曲がりなりにも0100年代以降の小型MSであり、汎用性や整備性にも長ける本機の有用性が見出されたのだろう。
もっとも時代が変わっても限界はあり、強力なミキシングビルドやワンオフ機には歯が立たず、ルナツーの戦闘ではバロックによって複数機が一気に薙ぎ払われている。
また、本編から12年前の回想内ではキュクロープスではなく連邦軍機として改修機の「ショートショルダー」が登場する。
連邦軍人であるエバンスとその同僚が乗る3機が確認でき、少なくともエバンス機はコックピット外の近距離からリモコンによる簡易的な遠隔操作が可能となっている。
そしてこの回想内ではジェムズガン史に名を残す印象的な姿を見せてくれる


このように『クロスボーン・ガンダム』シリーズでは皆勤賞で、単なるモブに留まらず印象的な出番を与えられることも。
作者の推しMSなのでは?……と思う人もいるかもしれないが、アシスタントの同人誌『CROSS BORN TO LOSE 旅情編』によると
「この時代の連邦MSはあんまり種類がないから、というだけで別にジェムズガンをえこひいきしているわけではない」
とのこと。

……しかし「同時代の量産機」かつ「ジェムズガンより高性能」なジャベリンは殆ど出てこないため、作者お気に入りの疑惑は拭えない。
ジャベリンユニットも無いし描くのが楽なんだろうか



【ゲームでの活躍】

Gジェネシリーズでは、宇宙世紀のジム系バリエーションの最終系として登場。
爆雷を投下したシーンからか、最低レベルの空適応もある。但し、やはりと言うべきか先代のヘビーガンより弱体化している。
後期型なのかビームシールドは持たせて貰えているが火力はヘビーガンに劣り、宇宙適正もなくなった上に装備も最低限と使い勝手が劣悪。

なお、スパロボでは未だ参加の機会はない。



【バリエーション】

◆ジェムズガン初期生産型
最初に生産されたタイプ。
まだ左腕にはビームシールドが無く、ヘビーガンと同じカラーリングになっている。
生産の遅れで7機しか造られず、全機が月のグラナダに配備された。
コスモ・バビロニア紛争で実戦デビューしているらしいが、グラナダ近くまでCVがやってきたのかが怪しく活躍の程は不明。
直前のオールズモビル戦役では、オールズモビルとCVの共同作戦が月面で行われていたようだが。
なお、資料によっては宇宙世紀125年までに配備されたのは全てこれであるとされ、これを根拠とすると 125年までに配備されたジェムズガンは7機しかないことになる


◆ジェムズガン宇宙艦隊所属機
ジムカラーに塗られた機体。艦隊の儀礼用らしい。ジャベリン配備までの繋ぎとして運用されていた。
一説にはスラスターやアポジモーターを宇宙用のそれに換装しているともされるが、真偽は不明。


◆ジェムズガン(ヨーロッパ地区配備機)
ヨーロッパ地区に配備されたグレー塗装の機体。
ザンスカール戦争時にはヨーロッパ地区に留まらず多くの地域でこのカラーリングに統一されていた。


◆ジェムズガン(インド地区配備機)
チベットのラサの辺りに配備された機体。ジム・スナイパーカスタムの様な緑と白のカラーリング。
本来はアジア地域の防衛部隊のカラーリングだったんだとか。


◆ジェムズガン(アマゾン地区守備隊)
「密林仕様」とも呼ばれる。ダークグリーンとブラウンの塗り分け。
ジャブロー周辺の警備隊に配備されていて、核燃料や資材の盗難防止が主な仕事。


◆ジェムズガン(コロニー守備隊所属機)
各コロニーの守備隊に配備された機体。
かつてのジム・コマンドみたいなカラーリングで塗装されている。
地球専用でなく同じ重力下であるコロニー内にも配備されたようだ。


◆砂漠用ジェムズガン
型式番号:RGM-119D
現地改修されたジェムズガン。
カラーリングがデザートカラーに変更されたこと以外は同じ外見をしている。


◆砂漠用ジェムズガン(AAAA隊仕様)
型式番号:RGM-119D
アフリカ地区に駐留していた連邦軍の精鋭部隊「AAAA(フォーアベンジャー)隊」で運用されたタイプ。
頭部にセンサー、バックパックにアンテナ、肩にインテークらしき物が増設され、胸のインテークやフロントスカートの形が変わっている。
リガ・ミリティアのブルーバード隊の陸戦用ガンイージと協力してザンスカール帝国のアフリカ制圧部隊の侵攻を押し止めていた。

ちなみにAAAA隊には後にリーンホースjrの艦長を務めるロベルト・ゴメス大尉も所属していたという。


◆ジェムズガン改
型式番号:CRGM-119
キュクロープスに配備されている機体。
連邦内のデータを元に再設計されたもので、時勢が時勢だけに性能はやや落ちており、サブフライトシステムの役を務めるハンブラ-Bとの連携運用が基本。
ビーム兵器の信頼性が低下していた時代の為、武装は実弾系のマシンガンやスナイパーライフルを使用。元のビームライフルが信頼に足る武器では無かったのでこれで良かったのかも。
ネイビーブルー基調で塗装されている他、カメラアイはキュクロープス独自の目玉のようなものに換装され、かなり不気味な面構えとなっている。


◆ジェムズガン ショートショルダー
激化した宇宙戦国時代において運用されている改修機。
コロニー市街地での活動を考慮して、肩アーマーのでっぱりが無くなったスッキリした姿となっている。
手の甲に左右2門ずつのバルカン砲と、ショットガン、通常のシールド(やや小さめ)を装備。
全体的に対モビルスーツ戦闘よりも対人戦闘に重きを置いており、この時代における連邦の姿勢が透けて見える。
なお、本機への改修には本来コロニー難民の福祉に使われるはずだった資金が流用されているらしい。
ジェムズガン改の中にもショートショルダー仕様の機体が見られるため、この時代においてはポピュラーな姿のようだ。

当初は「ジェムズガン ソードオフ」という名前が考えられていたが、「ソードオフだと 強い機体に思えてしまう 」という理由で現在の名前に変更された。

【関連機】


後継機。前述した通り本機をベースにしつつも大幅なスペックアップを果たしている。
兄と違って非常に良く出来た機体として運用された。正直本当に本機を踏襲したとは思えないほど。
但し『Vガン』だとパイロットや戦況に恵まれず、技術班が無理矢理出撃してバイク戦艦に轢き殺されたりもしている。
詳しくは当該項目を参照。

  • ジェイブス
    • 形式番号:不明

小説版『Vガンダム』に登場。
作中で明確に登場しているにもかかわらず
  • 「連邦軍の次期主力機として開発された」
  • 「ジェムズガンを一回り程大型化したような見た目」
…という以外は外見、性能、装備などは一切語られない謎多きMS。

作中では月面アンドリュー基地所属のタボール・ルシングトン大尉が搭乗。
ウッソのセカンドVとの模擬戦や、フォン・ブラウンでの戦闘に参加。
シュバッテンに肉薄するも、ゴトラタンの狙撃で撃墜されてしまった。
その後、宇宙戦国時代の煽りを受けて初期生産分のみで生産中止となった。

ちなみに検索すると出てくる「RGM-147」などの形式番号や画像は架空のファンアートである。


現在確認されている中では最後のRGMシリーズであり、ジェムズガンの子孫と言われている。
但し先祖返りしており、ジェムズガンやジャベリンなどと比べて機体はかなり大型(17m/80t)で、重量面はジェムズガンの5倍にも及ぶ。
汎用性や整備性などは高いがスペック面では完全に旧式化しており、コクピットに至っては一年戦争並レベルで「前が見えない」とか言われるほど。
おまけに本編での登場機は作業用の民間払い下げ品であり、整備不良と未熟なパイロットも相まって唯の的と化していた。
新鋭機との性能差には如何ともしがたいものがあり、ジェムズガンと同じような立ち位置だったが、性能とは別の強みを持った名機として扱われている。
また、ラジオドラマ版では物量差でGセイバーを追い詰める活躍も見せた。製造当時のMSとしては性能的には悪くなかったとの声も。
カラーリングはモスグリーンを基調に胴体を赤で塗られた無骨そのものなデザイン。汚いガンブラスター色のジム
機体性能・武装構成などもガンイージに似ているが、機体自体はむしろ先祖返りしてヘビーガンに近いらしい。


【ガンプラ】

通常のジェムズガンが1/144で発売。ビームバズーカが付属している(クラスターガンダムやガンイージのものと同型)。
Vガンダムの1/144シリーズは「Vフレーム」と呼ばれる関節の影響で組み換えのしやすさと引き換えに造形や色分け、可動がアレと評されがちだが、
幸いジェムズガンはそれに当てはまらず、シンプルなデザイン故かVフレームの割りをあまり食わされずに済み、当時としてはそこそこ良い仕上がり。
成型色が真っ白なのでカラバリ機の再現が簡単なのもポイント。


【小型化掲示時のアナハイムとサナリィの状況】

宇宙世紀102年にサナリィがMSの小型化を提示し、アナハイムに小型MS開発を指示したのが連邦の小型MS生産の始まりとされる。
だが、サナリィ側は96年時期には既に小型MSの実践運用という実績があった
その一方でアナハイムは連邦軍の量産MSの製造やミノフスキークラフトを搭載した30m級の新型MSの開発に追われ、小型MS開発に向ける余力が無かった可能性もなくもない。

但し、アナハイムは長年MS関連技術を蓄積し続けており、更に超巨大企業でMS関連部門も複数ある上にMS事業を事実上独占している真っ最中。
資金も施設もデータも潤沢であり、他の開発をする余力が無かったなんてことはまずない。
一方のサナリィは急速に態勢を整えてはいるがMS関連技術の蓄積などなく、110年代にわざわざデータ蓄積用に大型のF89を開発して試験とデータ収集を繰り返し続ける必要があった。

しかも小型MSについてはアナハイムがごり押しで色々通したにせよ、連邦からの正式な依頼なので確実な需要がある上に主力量産機として大規模な需要も見込まれる。
この様にアナハイム上層部としても小型化は最高のリターンとは言えないものの、連邦に気に入られる機体にするべく力を入れるべき理由はばっちりあった筈である。
そのため、確かなのは『アナハイム上層部がなるべく楽に儲けようとしていた』ということのみである。


【小型MSへの適応と予算の問題そしてロールアウト時の性能】

小型MSの登場によって既存のMSは過去の物となり、お払い箱になる…と思われていたが、少なくとも 宇宙世紀120年前半まではジェガンが主力機として使われている
この時には既に ヘビーガンが配備されてから10年以上経過しており 、ジェムズガンも宇宙軍で運用されだした頃である。
最初は不信感が割とあった様で、小型MS初のガンダムタイプでアナハイムとのトライアルも勝ち抜いたF90でさえシャアの反乱を潜り抜けたパイロットから当初は不満を持たれていた。
この時、既にヘビーガンがロールアウトされているにもかかわらずこの反応である
但し、かといって大型MSの方が優秀(=積極的に開発続行)なんて話は今のところないため、割と小さな問題だったと思われる。
ジェガンもそうだが*10、十年も改良を繰り返せば性能は見違えるほど向上するものである。


それ以上に深刻な問題が予算。
当時連邦は長年に渡る深刻な戦災とその復興や更にジオンの残党や反連邦組織や野盗の対応に追われて、連年大赤字を続けていた。
そもそも小型MSを採用したのだって、性能上昇を見込んでとかでは無く、単に連邦の予算が無かったからだ。
いくら「性能もそこそこ良くて更にお安く作れます」といわれても、それすら無いのでは無い袖は振れない。
地球全土で配備機全てを一斉更新するほどの潤沢な予算など、もはや連邦には無かったのである。

この「予算問題・物資不足」は小型MS開発前後に始まったことではない。
古くはグリプス戦役では連邦軍本拠地ジャブローでも満足な機体配備は出来ていなかった。
ジム・キャノンやジム・スナイパーカスタムなどの型落ち、ガンキャノン重装型ガンタンクⅡなどの半試作機まで持ち出す始末。
更にアレキサンドリアには宇宙用に改修したザクキャノンが、ジャブローにはグフ飛行試験型ザクタンクといった鹵獲品などが居た。
このように一年戦争後、地球連邦軍がジオン公国軍の型落ちMSを接収して運用するケースがしばしば見られる。
ラプラス戦争で(戦略的価値の低い基地とはいえ)、トリントン基地 型落ちMSと兵器のデパート と化していたことからも確かだろう。
こうした描写はそこからザンスガール戦争時まで、至る年代で見受けられる。
そのため、生産開始当時は(不評ではあるが)通用する性能だったとしても、十分に配備される頃には型落ちと化してしまった可能性は十分高い。

一方で 最小限の改修で砂漠や寒冷地等何処でも利用できる汎用性で比較的安く作れる事は当時でも重宝されていただろうし、純粋に大きなメリットとして評価できるだろう
数十年後に開発されたゾロアットやVガンダムには性能面では及ばないものの、少なくとも無いよりはマシ程度とはいえビームシールドが使える。
また稼働率や整備性の高さ、パーツ調達の容易さというメリットがあるため、ジェガンやヘビーガンといった他の旧式よりはランニングコストも安い。
そういう意味では現実の乗用車と軽自動車の関係性に近いともいえる。費用対効果の高さは戦局ではかなり優先度が高い。
…まあ武装が総じて飾りなので戦力になったはずはないだろうが、それはあくまで最前線での交戦時の話。
維持費も安くて頭数も揃えやすいし、小型故被弾率も低く防御力もある*11ジェムズガンは警備や斥候などに適している。
更に操縦も相当簡単なようで、緊急時とはいえパイロットでもない技術者が戦えている。戦争が続く事でパイロットが不足しがちな中でこのアドバンテージは非常に大きい。
パイロットを確保しやすく頭数が多いということは、それだけ広い範囲をカバーでき、敵からすれば攻めにくく侵攻に時間も掛かる。
攻めにくい事こそ最大の防御策であり、時間稼ぎさえできれば対等に戦えるハイエンド機の援軍や支援も期待できるだろう。
へっぽこな武装も上述の型落ちMS程度なら流石に通用するはずだし……お、意外と理に適ってるのでは?

でもビーム被弾で爆発すると甚大な核爆発が起きる欠点はどうしようもないんですけどね。



【ジェムズガン自体の運用方法と連邦の体制変化】

上記に記載されている通り元々ジェムズガンはハイ・ローミックスのロー、つまり廉価版として質より量を最優先に、初めから「数合わせ」としての役割を与えられたMSなのである。

上記のAAAA隊の様に腕の立つパイロットが乗れば話は違うのだが、そんなパイロットは余程の事情が無い限り後日量産化されたF91やジャベリンをあてがわれる筈だろう。
ジェムズガンを割り当てられているパイロットもローに位置する者*12が担当していたと思われる。
ロー×ロー、しかもそもそも小型MSが配備され始めの頃で慣れもない状態で活躍できる方がおかしい。

当時の連邦軍は 「各地のMSをコレに更新して*1戦力を低下させないまま(可能ならば向上させつつ)軍事費を削減しつつ重要な戦闘を担うパイロットにはF91やジャベリンをあてがうという方針」 で乗り切ろうとしたのだと思われる。
これは頻発する戦乱やそれに対する復興で毎年赤字続きの連邦政府並びに連邦軍の苦肉の策だったのである*13

それでも、更に旧型であるヘビーガンやジェガンが運用されている状況下を考えれば十分主力級である筈…なのだが、長らく平和が続いた事*14で状況が悪化。
この時代の連邦軍全体が「何事も無く給料貰えればそれでいい」と言う体制になってしまっており、そんなパイロットが「いざ実戦!」で戦えるはずもない。
しかもMSもパイロットも敵が練度、士気などありとあらゆる面で数段上なので、怯え、竦み、本来の性能を活かせないままにアッサリやられるのは必然であったともいえる。


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最終更新:2025年09月23日 01:50

*1 しかもMSA-0120は軍全体の運用コスト削減という連邦の要求を無視した高コスト機体であり、肝心の性能面でもF90に大敗し数分で撃墜判定を受けるという文字通りの完敗であった。

*2 前任であるヘビーガンは2,870kWなので大きく向上している。兄弟機ジャベリンが3,980kWで、クロスボーン・バンガードの主力機兄弟であるデナン・ゾンとデナン・ゲーはそれぞれ3,880kWと4,020kW。

*3 「ジェムズガンのビームライフル」ではなく「連邦製ビームライフル」と明記されているため、ジャベリンのビームライフルも同様と考えられる

*4 例えばVガンダムのハードポイントは回転機構とエネルギー回路を有し、対応する装備ならば「接続状態から武器自体を敵に向けて回転させそのまま発砲」といった芸当も可能

*5 ちなみにクラスターガンダム版はハードポイント経由で本体出力を上乗せすれば威力をヴェスバー並にまで増強できるが、ジェムズガンにはハードポイントが備わっていないため、連邦仕様のビームバズーカはこの辺りの機能がオミットされている。

*6 そのためビームローターやミノフスキーフライトによる大気圏内長距離単独飛行が当たり前の『V』時代のMS相手には一方的に蹂躙されている。劇中では飛んでいるようにも見えるが、バックパックの推力で跳躍・緩やかに下降しつつ爆雷をバラ撒いていた物と思われる。

*7 メタ的な話をすれば、元々予定されていたTV版F91のストーリー展開を前提とした設定とも考えられる。

*8 なおハリソン隊招集前に別機を捕獲した時も5機が大破しているのだか、そんな状況でもジェムズガンのパイロットは生還している。ハリソンが苦戦し宇宙戦用のジャベリンをも叩き落とす相手を前にしてMS5機大破程度の損害で任務を果たしたのだから十分善戦したと言えるだろう

*9 もっとも、この部隊は倒されることで「木星軍の脅威は去った」と連邦を安心させ、神の雷作戦を悟られないようにするための囮だったのだが

*10 89年設計の初期型ジェガンと、110年代設計のJ型ジェガンでは大きな性能差があり、J型の機動力はνガンダムを上回りシナンジュと並ぶ。

*11 少なくともジェガンやヘビガンよりは小型且つビームシールド分でマシなはずである。

*12 あくまでパイロットとして見た場合である。 一応パイロット自体が軍人の中ではエリートであり、予算削減の影響でパイロットの絶対数も減らされると思われる状況下で花形のMSに搭乗できる時点で相当のエリートの筈である。

*13 上記の通りジェムズガンは宇宙軍には受け入れ拒否されてもっぱら地上軍専用と化し、完全に型落ちのジェガンやヘビーガンや改修型のボールやジャベリン、量産型のF91に果ては133式ボールまでも配備されるなどかなり混沌としているが、当時の連邦がそれ程ひっ迫した状況であったのだ。

*14 尤もクロスボーンガンダム等の後発作品による設定後付けにより本当に平和だったかどうか怪しくなりつつあるが…