ヴィクトリー・ドラゴン(遊戯王OCG)

登録日:2014/08/15 Fri 14:04:39
更新日:2025/05/08 Thu 14:14:35NEW!
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《ヴィクトリー・ドラゴン》とは、遊戯王OCGに存在するカード。
LIMITED EDITION 5に収録された闇属性ドラゴン族の最上級モンスターで、通称は「Vドラ」。

ヴィクトリー=勝利の名を冠するとおり、マッチに勝利するという前代未聞の能力を持つ。


【解説】

ヴィクトリー・ドラゴン/Victory Dragon
効果モンスター
星8/闇属性/ドラゴン族/攻2400/守3000
このカードは特殊召喚できない。自分フィールド上のドラゴン族モンスター3体を生け贄にして生け贄召喚しなければならない。
このカードの直接攻撃によって相手ライフを0にした場合、
このカードのコントローラーはマッチに勝利する。
※生け贄・生け贄召喚=現リリース・アドバンス召喚


三邪神以上の厳しい召喚条件の割に打点は上級モンスターの標準レベルでしかなく、またそのデュエル中の勝率を高めるようなメリット効果もない。
しかし重さと打点の低さというハンデを乗り越えてこのカードでうまく相手にトドメを刺せば、その時点で公式戦のマッチに勝利した扱いとなる。
一見シンプルな効果だが、ヴィクトリー(勝利)という名に恥じぬほどその実態はかなり凄まじい。

古今東西、MTGを始めとするカードゲーム含め、マッチの概念が存在するゲームの数々は特定の条件で勝利、敗北、引き分けになる特殊効果やルール*1は数あれど、
マッチに勝利する」と直接書かれたテキストを持つカードは初だろう
そもそも「マッチに勝利する」という事がどういう意味かが分からないと、このカードの真の異常性は理解できない。
シングル戦が大半というカジュアル志向のプレイヤーにとっては理解しにくいだろうが、マッチ慣れしているプレイヤーなら書いていることがそもそもおかしいと気づくだろう。


【マッチ勝利効果について】

ここでは、マッチ(マッチ戦)に馴染みがない方向けにまずはOCGの公式ルールにおけるマッチ戦というものについて解説しておく。

マッチとは、いわゆる3本勝負である
通常のデュエルを3回行い、2本先取したプレイヤーがマッチの勝者となる。
下記の理由から競技性を高めるために、公認・非公認問わず大会で採用されるルールである。

OCGの大会にはサイドデッキという15枚で構成された予備のカードを持ち込むことが可能で、3本勝負中もデュエルの合間にサイドデッキを使ってデッキを組み直すことが許されている
いくらトップメタと言っても弱点や苦手なカードは存在するので、例えば一戦目を済ませた時点で腐りそうなカードや対策されていたカードを抜き、相手のデッキに有効そうな別のカードを加えて二戦目に突入。これでも決着が付かなければまたまたカードを入れ替えて三戦目に…といったサイドデッキによるマッチ特有の駆け引きが存在しているのである。
この、サイドデッキの影響というものが想像以上に大きく、サイドデッキで簡単に対策されてしまうが故に、マッチでは勝率が伸び悩むデッキも多い。

だがこのカードは効果を決めたが最後、そうした駆け引きを根底から破壊してしまうことになる
何せ、初見で出てきてマッチキルを許したらその時点で試合終了なのだから、サイドデッキは実質封殺されたも同然。仕掛けられる側からすれば一戦様子見してから入れ替える余裕なんてものはない。
しかも、一戦目で使われなかったとしても、二戦目でこの効果を決めてもマッチに勝利できるのは変わらない。つまり、一度マークされていないと読んだ相手が、二戦目にサイドデッキからしれっと入れてくる可能性だってある。先ほどの説明と早速矛盾している気もするが、される側は三戦目以外気を抜けないので仕方ない。
言い方を変えるなら、このカードを入れたデッキは相手が2連勝する前にこの効果を1戦決めるだけでマッチに勝利する。
と言えばそのすさまじい効果がわかるだろう。
他の例えとしては、「このカードを入れたデッキは、試合前に一勝する」等とも評されることがある。

つまるところ、おおよそ複数回対戦を行って勝利を決める形式のものであまりにも理不尽な効果であるという認識があれば問題はない。
「敵のコイツに負けてゲームオーバーになるとコンティニュー不可」とでも言えば恐ろしさが伝わるだろうか。


【浮かび上がる問題点】

おそらくKONAMIは「こんだけ召喚条件難しくしといたんだしマッチ勝利狙うより普通に2勝しようって思うッショHAHAHA」とでも考えていたのだと思われる。
そして実際、登場したときにはプレイヤー達にも「効果は派手だけど使えないロマンの塊」、平たく言えばネタカードだと思われていたのである。

が、上記の通り決まったときのリターンは物凄く大きいので、デッキ構築の研究は進むわけである。
そもそもこの手のカードは、悪用されまくってと呼ばれるか、使えなくてとして見放されるかのどちらかでしかない。
そうした研究の末出したプレイヤーの結論は、それも他に類を見ないレベルで最悪の邪神であった。

やはりというかサイドデッキから投入されるメタカードに滅法弱いが、一戦目の勝率だけは高く、《ヴィクトリー・ドラゴン》効果を確実に決められるぐらい相手を封殺できる、地雷デッキと称されるようなまともじゃないデッキで採用されることになる。

例えば「カウンター罠を大量に仕込んでロックを決める」そのまんま【Vドラコントロール】だとか、
混沌帝龍-終焉の使者-》と《八汰烏》の無情なコンボを決めて身動きできなくなった相手にこれでトドメを刺す【八汰ロックV】だとか、
挙句サイエンカタパのギミックを使って相手のLPをギリギリまで削った後に《魔力の枷》でロックをかけて身動きをとれなくしてから《ヴィクトリー・ドラゴン》を出す【サイエンカタパV】だとか、

マッチ戦ならではのカードの駆け引きはおろか、一戦目のカードの駆け引きにすら唾を吐きつけるようなロクでもない使われ方ばかりされていた。

極めつけは後攻1ターンマッチキルまで可能なループコンボ、【MCV】である。
これに加えて、一時的にドラゴン族のリリースを用意することのできる《竜の血族》が存在したことも問題の悪化に拍車をかけていた。
自分のフィールド上のドラゴン族モンスターを3体リリースする必要はあると言っても、揃えてリリースするだけであっさり召喚できてしまうため大した手間はかからないのも問題点。

また《ヴィクトリー・ドラゴン》対策をするためには一戦目からメインデッキにメタカードを投入する必要があるため、メタカードを標準搭載できない至極全うなビートダウンのようなデッキは通常より事故りやすい状態の戦いを多く強いられてしまう。
そして最も対戦する機会が多い一戦目が事故りやすいということはカード同士の駆け引きの減少につながるため《ヴィクトリー・ドラゴン》が流行るほどゲームとして不健全になってしまう。

試合の絶対数が減少するのも地味だが重大な問題。
カードゲームでは少なからず手札事故の可能性や流行り環境によるデッキの相性差もあるため、極力プレイヤースキルによる影響を増やすためにも最低限の試合の絶対数がないと相対的に単なる運ゲーに傾斜する。
ただでさえ性質上1ゲームで勝敗が決するジャンケン&運ゲーになりやすいのに、手札事故やデッキ相性差によるマッチキルの許諾が横行すれば、ますます環境は歪な方向に迷走し続ける。
それこそ上記の麻雀の例にたとえるなら唯でさえランダム性が高いにもかかわらず1局で半荘が決まるようなものであり、運ゲーすぎてプレイヤーはやってらんないのである。
そもそもいくら公式のカードとはいえ、対人戦にこのカードを使った時点で「まともにやり合う気ないので一戦でマッチキルしますね^^」という冷める発言みたいなもので、存在が許された時点で既に余計な争いの火種になっていたとも言える。

さらにこのカード、マッチ勝利という前代未聞の効果を持つため、ルール面もかなり混乱させた問題児でもある。
「わざと違反行為(デッキを崩す、勝手にドローをする、手札を見せる)をすることでそのデュエルは負けになるけどマッチキルは阻止できる」を始めとする、頭の痛くなるような解釈が山のように生まれてきたのである*2
「サレンダーをすれば良いのでは?」と思う人もいるかもしれないが、公式ルールではそもそもサレンダーが認められていないので、このカードの有無に限らずサレンダーは拒否できる。
ちなみに勘違いしやすいが、だからといってサレンダーが認められるからといってこのカードが許されていい理由はひとつも存在しない。むしろサレンダーが認められるなら更なる問題を引き起こすカードでもある。
このカードを出されてマッチキルを行おうとしたところで相手がそれを嫌がってサレンダーを行おうとした場合、どうなるか。
つまりそれは「正式なマッチキル効果の逃げ道としてサレンダーされる」or「このカードがある限り相手はサレンダーできず、マッチキルが決まる瞬間まで対戦を中断できない」という、どの道不健全な事態になる。
要するにサレンダーがルールで定義されていようがいまいがこのカードはこの辺りの問題やトラブルから絶対に逃れられないカードがこのカードであり、こんなに頭が痛くなるような問題をたった一枚のカードが引き起こすという意味でも何かがおかしいというのはこの記事をここまで読んでいればなんとなく察することが出来るだろう。


【そして禁止へ…】

色々な意味で問題が多すぎるので、結局禁止カードに指定されてしまった。
ちなみに、無制限から禁止カードまで一気に格上げされたのはこのカードが初。
エラッタによる規制解除を期待しようにも本質的にマッチキルによる駆け引きの否定も、マッチキルを無視できるから第一線の駆け引きを否定もしてしまうから、
そもそもゲームがつまらなくなることはあっても面白くなることが全くと言ってもいい程ない効果であり規制解除する理由がない
…と思いきや、2006年9月の1度のみだが実は制限カードに何故か緩和された時があった。
マッチキル回避関係のサレンダー問題も解決されておらずゲームブレイカーとして再び環境及び人同士の信頼に影響が出た為即座に禁止カードに戻されている。あれだけ悲惨な目にあってなぜ解除したし
今ではハンデス三種の神器や《魔導サイエンティスト》など、名だたる禁止カードたちを遥かに超えた史上最悪の永世禁止カードとして認識されている。
そういったその《魔導サイエンティスト》を始めとした先攻1キルデッキは「先攻さえとってしまえば相手に何もさせずに勝利できる」と言う点でTCGのゲーム性を否定しているからこそ非難されている。
しかし、逆に言えばどれだけ先攻で勝利出来た所でマッチ戦である以上必ず一回は後攻を取らなければならない。
《ヴィクトリー・ドラゴン》からすれば、仮に初戦で相手に先攻1キルされた所で、こちらが先攻となる二戦目でサイドデッキから1キル対策した上でゲームを取れればマッチ勝利できてしまう。
言い換えてしまうと初戦で相手に何もさせずに勝利できるのは当然として、《ヴィクトリー・ドラゴン》使いからすればマッチ中に1回負けた所で痛くも痒くもないのである。

現在ではドラゴン族自体の展開力が当時とは比べ物にならないほど向上しており、【聖刻】【カオスドラゴン】【征竜】【ドラゴンリンク】と、専用構築にしなくても悪用できるデッキは多く、
特に便利なサーチ手段である《エクリプス・ワイバーン》も生まれてしまった(現在は禁止カード)ため一時期は比較的容易に呼べてしまう状況すらあった。
さらに2014年の裁定変更でちゃっかりマッチキル効果が効果外テキスト*3になっため、現環境でありがちなモンスター効果を無効にするメタカードに耐性ができてしまった。

そもそもこのカード、元より「リスクはあれど、得られるリターンがゲームとしてあってはいけない大きさ」「出せないからこそロマン、容易に出せるようになったら最悪レベル」「ゲームをつまらなくすることはあれどロマン以外で楽しめる要素がない」なのである。
むしろリターンが大きすぎるあまり「このカードで勝てないような場面ならこのゲームはむしろ捨てるべき」と言ったプレイングが推奨される冷めた状況にすらなってしまった。
結果論ではあるがいわゆるゲームブレイカーそのものであり、あらゆるカードゲームにおいて絶対に刷ってはいけない類のカードであり、勝負ごとにおいて存在してはならない代物だったのである。
最大の長所にして、ゲームにおける禁断の領域に触れる効果を持ってしまったのがこのカード最大の不幸だったのかもしれない……。

またマッチ戦でなければ無意味なカードであるということはこのカードはカジュアルに遊ぶ分には殆ど問題が発生しないのに、「大会環境だけを荒らした」というかなり特殊な禁止カードである
最近は禁止カードをエラッタして釈放することが多々あるものの、得られるリターンの大きさから「召喚するターンは他のカードを一切使用不可+効果無効化・このモンスターのみ攻撃可能」レベルの制約がなければ、制限緩和は困難だろう。
性質や記念賞品として授与されていることを考えると、他のカードと同様に「公式のデュエルでは使えない」の一文を加えて公式大会では使用できないカードにするというのも手か。
いずれにしてもサレンダーのルールがきちんと整備されない限りは上述したトラブルが起こり得るため、緩和はまず不可能といえる。

現在は禁止カードであるため、使用可能な環境はノーリミットデュエルに限られる(他のマッチキルモンスターではできない)。
…が、店によってはその性質上、例外的にノーリミットにも拘わらず禁止されていたこともあるらしい。
このカードの異常性を体感したい人は、遊☆戯☆王タッグフォースシリーズで、CPU相手のマッチ戦ででも試してみるといいだろう。

ただしタッグフォースにおいてもヴィクトリー・ドラゴンは禁止カード扱いで、基本的にはデッキに投入できない。
複数人のシナリオクリア特典によって「禁止カード1枚投入」を解禁して初めて使用できる。
もしくは5、6の禁止撤廃リミットレギュレーション下*4で使用する。ただしこちらはPSPを利用したオンラインサービス限定配布で、サービスは終了している。
入手するには禁止カードやその関連カード*5が入ったパックから。パック解禁条件はかなり厳しめ。
たまに自室や路上にカードが落ちている場合もあり、拾って入手できる。シングル戦が基本の世界故に捨てられたのだろうか?

【マッチキルモンスター】

ちなみに、このカードのように「マッチに勝利する」効果を持つカードをマッチキルモンスターなどと呼び、このカードと同等の効果(召喚条件が異なる)を持つカード群が世界大会の優勝者などに授与されることもある。中には、種族の関係上これより扱いやすいカードも何枚もある。
公式デュエルで使用可能かつ一般販売されたのはこのカードだけであり、他のマッチキルモンスターには必ず「公式のデュエルでは使えない」と明記され続けている。
他のマッチキルカードの詳細についてはマッチキルモンスターを参照。
世界大会景品は限られた枚数しか存在しない、超が付くほどのレアカードであるため、たまに市場に出回ると何百万、何千万円といった価格で取引されている。


【ゲーム作品での扱い】

上記の通りシングル戦では無意味なため、シングル戦が主体の遊戯王ONLINE(かつて存在した遊戯王のオンライン対戦環境)では、
上記の亜種とともに制限カードに格下げされていた。
しかし、同じくシングル戦しか存在しない遊戯王マスターデュエルではそもそも実装すらされていない*6。いずれマッチ戦を実装する予定があるのか、あるいは(バニラでしかないはずの)シングル限定ゲームですら出せないような忌み子的扱いなのか…。


ヴィクトリー・アニヲタ/Victory AniWota
効果モンスター
星8/根暗属性/wiki篭り族/攻2400/守3000
このカードは特殊召喚できない。
この項目上のキーワード3個を
リリースしてアドバンス召喚しなければならない。
この項目の追記・修正によって相手ライフを0にした場合、
その追記・修正者は建て主に勝利する。

ATM「《ヴィクトリー・アニヲタ》召喚! 追記・修正!!」

杏子「もうやめて! とっくに建て主のライフはゼロよ!」

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最終更新:2025年05月08日 14:14

*1 相手側のルール違反による罰則の形式を除いて。

*2 意図的な反則負けによる罰則は「マッチの敗北」なのだが、様々な事情から「1戦の敗北」が適用されるケースが多かったとされる。

*3 特定のカードが持つ専用ルールのような物で、カードの効果として扱われないため、他のカードに無効化されることもない。いわば「《ヴィクトリー・ドラゴン》の直接攻撃によって相手ライフを0にした場合、その《ヴィクトリー・ドラゴン》のコントローラーはマッチに勝利する。」というルールがOCGに存在しているような物である。

*4 厳密には、ツンドラの大蠍だけが禁止指定

*5 サンダーボルトに対する避雷針等。

*6 他の禁止カードは入手不可になっているだけでデータ上では存在する。