アントホッパーイマジン

登録日:2012/07/22 Sun 04:28:42
更新日:2025/07/09 Wed 09:59:48
所要時間:約 4 分で読めます






「オレお前殺っちゃうよ!殺っちゃうってばよ!!ウヒャハハハハ!!」

「…はしゃぐな。きっちり仕留める…」



仮面ライダー電王』第31・32話に登場した怪人(イマジン)。
それまで散発的に各々歴史改変を目論んでいたイマジン達と異なり、
『歴史改変の障害となる電王を抹殺すること』自体を目的としたヒットマンである。

その為、実体化の為に契約こそするものの、契約完了自体は後回しにする(願い自体はしっかり叶えようとはしていた)等、
珍しい行動パターンを取る。


イソップ童話の『アリとキリギリス』をモチーフとしており、黒いアリ緑のキリギリスが半々になったデザインが特徴。

同じデザイナーが手がけた53枚目のロリコン
前年の緑と黒(茶色?)でホッパーな兄弟
後年登場した配色がそっくりの『2人で1人の仮面ライダー』等、
色々とデジャ・ヴを感じさせる外見である

また、上記エピソードで実質主人公を務める緑と黒をイメージカラーにした仮面ライダーゼロノスのアンチテーゼ的な意味合いもあるのかもしれない。


同体2種のイマジンであり、必要に応じてアリとキリギリスの2つの異なる人格に分かれて行動する。
元が一緒なせいか、性格は正反対でもコンビネーションは抜群な上に、単体での戦闘力もかなり高く、ゼロノスと仮面ライダー電王を圧倒するほど。
キリギリスに至っては憑依状態でもデネブを易々と叩きのめしていた。


【アリ】


『勤勉なアリ』の人格を持った個体。こちらが主人格の様子。
怜悧冷徹で責任感が強く情け容赦のないプロフェッショナル然とした性格をしており、
高い技量に加えて地の利や伏兵のキリギリスを利用したクレバーな戦術で電王 ガンフォームを一方的に叩きのめした。
武器はスコップを摸した
顔面を殴られてもすぐに反撃せず、キッと相手の方を向くのが印象的。

契約者・藤代裕也の『野上愛理を連れてきてほしい』という願いに対して、自らが藤代に憑依して愛理を攫うことで契約を完了しており、
珍しい『憑依を行った敵イマジン』でもある。
なお、憑依時の特徴は髪型がオールバックになったうえ眼球全体が漆黒に染まるという不気味なもの。



【キリギリス】



『自由気ままなキリギリス』の人格を持った個体。
冷酷な本質はアリと同じだが、常時甲高い哄笑を上げており、相手を死角から滅多打ちにする戦法を好む、抑えの利かない狂気と残虐性の持ち主。
語尾に『~だってばよ!!』と付けるのが口癖。大した忍者は関係ないってばよ!
武器はフィドル(弦楽器)を模した剣。
バッタだからかバイクを乗り回すシーンもある。

藤代裕也

演:青木伸輔
金融会社「藤代リースサービス」の社長で、アントホッパーイマジンの契約者(しかし、契約は眠っている最中に行われた為、本人は当初夢だと思っていた)。
会社設立の2年前、まだミルクディッパーとは別の店でコーヒーの勉強をしていた愛理に一目惚れし、以後ずっと思い続けていた。
……とここまでならよくいる設定だが、その本性は自分の見た目と地位を鼻にかけ、他者を見下す傲慢な性格。
目的達成の為なら手段を選ばない自己中心的な人物で、会社も尾崎曰く「黒い噂が絶えない」らしい。
因みに桜井のことも知っていたらしく、自分よりも金も地位もない彼が愛理に惚れられていることに全く納得していなかった。
愛理に対し、架空の借金をでっちあげて彼女をその保証人に仕立て上げる。
その上ミルクディッパーを差し押さえようとし、これを盾に「自分と婚約すれば全てチャラにする」と脅迫。
しかし、尾崎と三浦に自社の不正を暴かれて報道までされた為、借金が嘘であることも発覚してしまう。
切羽詰まっていたところをアリに憑依され、その体で愛理を拉致した。
戦いの最中体を捨てられ、そのまま放置されると、戦いが終わった直後、ゼロノスカードの効力で桜井に関する記憶を喪失し、そのまま物語からフェードアウトした。(恐らく、この後に警察に逮捕されたと思われる)


【登場回での行動】


◆第31話『愛(アイ)ニード侑(ユウ)』


良太郎の姉、愛理に横恋慕する金融会社の社長・藤代裕也を契約者にすることで実体化。
態と良太郎の前に現れ追ってくるよう挑発し、廃電車置場に呼び寄せる
(電車のヒーローである電王を廃車置場に誘導するあたり、死の暗示めいて不吉な感じである)。

追跡してきた電王GF=リュウタロスの銃撃で燻し出され破壊された車両からその姿を現す。
なお、その際の台詞廻しだが……

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ …

「電王の銃使いか…ガキのようだな」
ガキじゃないよ!
「ハァ〜〜〜…確か『4体』いるんだったか…」
「お前を倒せば全部倒したことになるのか…それとも…1匹ずつ殺らないとダメか…」
何言ってんの?(もしかして最初から僕達を狙って…)
「倒してみれば解ることか…!」

…すごく…ジョジョっぽいです…*1


狭い場所では取り廻しが難しい銃を武器にするガンフォームに対して遮蔽物や物陰の多い地形を利用し有利に戦いを進める。
さらに隙を見せたガンフォームの背後からキリギリスが不意打ちを食らわせたことで完全に形勢が確定。
リュウタが意地を張ってフォームチェンジやてんこ盛りが使えない様を「やはり子供だな…ムキになり過ぎる」と冷淡に侮蔑。
デンガッシャーを弾き飛ばされて丸腰になったガンフォームを2人がかりで凄絶なリンチにかけ、意識不明の重傷を負わせた。

これまでバトルにおいてもコミカルな雰囲気が絶えなかった『電王』であるが、
この回のvsアントホッパーズ戦はそうした『遊び』の余地がまるでなく、無防備な背中にスコップを振り下ろすという
バイオレンスな殺陣・威圧的なBGM・声優陣の熱演も相まって、かつて無い程の異常な危機感と緊迫感を醸し出していた。


◆第32話『終電カード・ゼロ!』


前回に引き続き既に意識の無いGFを蹴って仰向けにし、心臓に下段の踵蹴りを入れるというよい子は真似しちゃいけない過激な駄目押しを見せる。
ちなみにこのGFは中の人が入っていないのかすごいグニャッと潰れた。
しかしあと一歩というところでデネブが乱入、トドメを刺し損なう。

電王=良太郎を呼び寄せる餌として愛理を利用する策を思いつき(ついでに藤代との契約を果たすこともできて一石二鳥。律儀である)
藤代に憑依。ミルクディッパーを襲撃し愛理を拉致する。
ちなみにこの時の藤代の目は真っ黒。
負傷して動けない良太郎に代わり、指定の場所である廃工場に現れたD侑斗と対峙する。

「最初に言っておく!今日のオレはマジだ!」
「ほぉ〜う…結構なことだな」

愛理のもとへ急ぐD侑斗に鉄パイプを突きつけ、珍しい『憑依者同士の戦闘』を繰り広げる。
途中デネブが分離しA藤代の足止めを買って出るが、侑人の前にもキリギリスが出現、絶体絶命のところへM良太郎が助太刀に現れる。
ターゲットの電王が現れたことでアリも憑依を解除、2vs2の戦いが始まる。


本調子でない電王SFと先立ってダメージが蓄積したデネブを追い詰めるも、
仲間を救う為に『最後のカード』を使う覚悟を決めた侑斗がゼロノスに変身し参戦。

「バーカ!カードはお守りじゃないんだ。使うときに使わなきゃ意味がないんだよ!」

アリとゼロノスが戦う一方、キリギリスは藤代のバイクを乗りこなし、デンバードに乗った電王SFと激突した。
終始ゼロノスを圧倒したアリだが、ゼロノスが咄嗟に放ったゼロガッシャーボウガンモードの光弾をくらい*2
ひるんだ所にグランドストライクの直撃を受け爆散。

キリギリスも双方マシンから叩き落とされ泥仕合にもつれ込む中、
リュウタロスの復帰によっててんこ盛りが解禁された電王CFの反撃を受ける。
突き出されたデンガッシャーの刀身を白刃取りして往生際の悪さを見せるが、
その状態からフルチャージした電王の『俺の必殺技・クライマックスバージョン』で吹き飛び、
滅多斬りにされた挙句大上段から真っ二つにされて爆散した。
「ヤラレチャッタ…」

この回では相手の実力や諸々のハンデもあって最後の逆転に至るまで電王・ゼロノス組は不利を強いられており、
仲間を想う絆だけを恃みにピンチに踏みとどまり戦い抜く姿は問答無用に熱く、燃える。
さらに、後にカードは補充されるもののこの段階ではゼロノス=侑斗のラストバトルと言ってもよく、
戦闘内容もそれに相応しく素面アクション・バイク戦・タイマンと豪華な構成になっている。

それらを支えたアントホッパーもまた、中盤の強敵としての役割を大いに果たしたと言えよう*3



【余談】
  • デザイナーの韮沢靖氏によれば元は一個体が二つの人格を持つイマジンとしてデザインされたもので、ベルトの陰陽(インヤン)模様が人格に応じて切り替わるなどのギミックが想定されていたとの事。

  • 撮影に使われたスーツは1体。合成や別撮りを駆使して撮影された。そのため、1つのカットに2体が同時に攻撃をするシーンはない。
    挙動の差異はスーツアクターである伊藤教人氏の巧みな演じ分けによるもので、結果的に別々のデザインの2体が存在していると勘違いする視聴者が出るほどの巧みの技を感じさせる存在となった。
    …ちなみにスーツが同一なのでアフレコの際、アリの鳥海氏とキリギリスの関氏は場面によってどっちが演じるか当初混乱して顔を見合わせていたらしい。



  • 話が話だからか気が付かないが実はハナが一切登場していない。次のエピソードから配役が変更されているためここが交代期間だった模様。






「追記・修正するのはお前だよ…お前だってばよ!!!アッヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」

「はしゃぐな。…きっちり編集しろ」

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最終更新:2025年07月09日 09:59

*1 脚本の小林靖子女史は後にアニメ版『ジョジョ』のシリーズ構成を手掛ける事になる。

*2 侑斗はそれまで大剣モードで戦っており、アリも遠距離武器はないと思い込んでいたようで、慎重派な彼にしては珍しく無防備に光弾を食らっている

*3 他に電王とゼロノスを追い詰めたイマジンは敵の親玉の側近やラスボスだったりする