脳無(僕のヒーローアカデミア)

登録日:2017/08/06 Sun 15:59:21
更新日:2025/02/23 Sun 00:39:46
所要時間:約 19 分で読めます




平和の


象徴を


殺せ



脳無とは、漫画「僕のヒーローアカデミア」に登場するヴィランの名称である。

死柄木弔率いる敵連合に所属する、巨大な怪人で、瞼の無いギョロっとした瞳と脳みそがむき出しの頭部といういかにも不気味な姿を持つ存在である。
自発的に行動することはなく、殆どが他人からの命令に従って動くことが多い。また、一切の感情や言語を放つこともない為、まるでロボットを思わせるような印象を持つ。*1

その正体は、DNAの混成や薬物などによる改造を施した人間に、敵連合のブレインである「先生」こと"オール・フォー・ワン"本人の個性を用い、
無理矢理に複数の個性を与えることで人工的に作り出した「改人」。
もっとも、生きた人間をそのまま改造した設定だとエグ過ぎるからか、後になって実は死体をベースに改造したと言う設定が明かされた。

彼の同志である"ドクター"こと殻木球大は「先生とワシの共作」と表現しており、個性を与える以外の工程の、肉体改造や個性因子の複製等はドクターが手がけているものと思われる。

元々劇中世界の普通の人間の身体には複数の個性を持つだけのキャパシティがないのか、「個性を与える」“オール・フォー・ワン”によって複数の個性を身に宿した人間は、
余程身体に馴染み、浸透する個性でもなければその負荷に耐えられずに拒絶反応を起こし、物言わぬ人形のような廃人になってしまう例も多々見られた。
そこで発想を変えて、
「体質が合わないと拒絶反応が起こるなら、身体の方を個性に適合させれば良い」
として、複数の個性を宿せるように人体改造し、作り出されたのがこの脳無である。
ただし、あくまで耐えられるように改造されるのは身体だけのようで、通常は精神の方は人体改造と複数の個性付与に耐えられない。
作中では、死体を改造によって疑似的に蘇生させる技術が開発されているのだが、この技術によって生成された個体も例外ではない。

極一部の製造番号にちなんだ名称を与えられた成功例を除き、改造後の被験者は知性もなくただ指示に従ったり、知性があるように見せかけて特定行動を繰り返すだけの人形になる。
ドクターがインプットした主の声に従って行動するが、電気刺激によって緊急稼働させることも出来る。
詳細な電気信号のパターンを把握していれば、個性で電気信号を送ることで遠隔制御することも可能。


様々なタイプが登場しているが、どちらの個体も「複数の個性を持つ」「脳味噌がむき出し」という共通点がある。
この露出した脳味噌は脳無共通の弱点で、ここを完膚なきまでに破壊されてしまうと「超再生」の個性持ちであろうが問答無用で機能停止に追い込まれてしまう。
ならば徹底的に防護しろよと誰もが思うところだが、運用する上での制約としてそれが出来ない模様。

脳無は下位、中位(ミドルレンジ)、上位(ハイレンジ)、最上位(ハイエンド)、と肉体の改造強度と個性の保有数に応じて幾つか階級が分かれている。
中位以下はベースの体色が白で付与された個性の数は少なめ。
性能が隔絶する上位以上になると、最低でも常人の10倍以上の膂力をデフォルトで発揮するように改造されており、ベースの体色が黒くなる。
ただし、中位のType.VHのように、運用目的次第では特定分野で上位以上のスペックを与えられた個体もあり、同じ階級であっても能力差はまちまち。



正式な名称はないものの、この項目では仮の名称を付けさせていただく。


Type.AK(仮)

CV:最上嗣生

雄英高校の施設『USJ(ウソの災害や事故ルーム)』における実践形式の授業にヴィラン連合共々乱入してきた、初めて出久達が遭遇した上位の個体。
筋骨隆々の肉体と黒い体表が特徴の個体で、元々はタラコ唇が特徴の、恐喝などの前科を持つチンピラだったらしい。
名称にあるAKとは「Allmight Killer」、すなわち「オールマイトの抹殺」を目的として死柄木弔が準備したもの。
オールマイトの100%のパワーすら防ぎきる「ショック吸収」と、破壊された側から肉体を再生させる「超再生」の個性を持ち、
さらに個性を抜きにしても、その筋骨隆々の身体は伊達ではなく、イレイザーヘッドの腕を軽くへし折り、彼に重傷を与えるほどのすさまじい怪力を誇る。

事情を聞いて駆け付けたオールマイトと戦闘になると、死柄木の読み通り、二つの個性でオールマイトの攻撃をほとんど無効化して優位に立ったが、
オールマイトに“ワン・フォー・オール”100%以上の出力をもって、「ショック吸収」でも吸収しきれないパワーで殴り続けるという戦法により、
対オールマイト用に与えられた二つの個性を真正面から破られ、トドメの一撃を貰って遥か彼方まで吹っ飛ばされた。

余談だがアニメ版でのオリジナルシーンを加えられたオールマイトvs脳無のバトルシーンは必見なので、DVDを今すぐ視聴しよう!



Type.NF(仮)

「No Face」の名の通り、下顎を除いた頭部の大部分が消滅し、代わりに脳味噌が大部分を占めている個体。
こちらも上位ではあるが、仕上がりはType.AKより劣る。
後述の2体と共にステインへの仕返し代わりとして、死柄木が保須市に送り込み大暴れさせた。
個性は不明だが、上述の個体と同様にパワーに特化した存在らしい。*2
原作では経緯は不明であるものの捕縛されていたが、アニメ版ではエンデヴァーとの戦いの末、頭部を高温の青い炎で焼かれて倒された。



Type.FE(仮)

CV:最上嗣生

ガリガリの体と四つの目玉(Fouth Eye)が特徴の個体。吸収と放出(エンデヴァー曰くザコ個性)、全身の肥大化及び筋力の強化、舌を枝分かれさせた触手を放つ個性を持つ。
修行の為に渋谷へ向かう出久とグラントリノ の乗った新幹線を襲撃し、グラントリノによって外へはじき出される。
その後エンデヴァーも交えた戦いになるものの、最終的にグラントリノが繰り出したキックによって轟沈した。



Type.PW(仮)

翼竜のような翼(Pterosaur Wing)と鳥のような脚、ガスマスクを装着した個体。おまけページでは「翼の脳無」と呼称されていた。
上述のNFと共に保須市の駅前で大暴れしていたが、その後逃亡。*3
ステインとの戦闘で疲労した出久を上空から攫ったが、ステインによって血を舐められたことで彼の個性により動けなくなり、最終的に頭部を斬られ殺害された。
なおコミックス第7巻においてこの脳無の正体らしき人物が…?



Type.VH(仮)

目をX-MENのサイクロップスが付けているようなバイザーで覆われた個体。(Visor Head)
林間学校襲撃の際に死柄木が荼毘に貸し与えた。
中位の個体の割には戦闘における性能が高い。
体中から無数のチェーンソーを生み出す個性を持ち、襲撃したヴィラン連合の精鋭10名の中ではマスキュラーと並ぶ怪力を活かした肉弾戦に長けていた。
他の脳無とは違って僅かながら知性があるのか、しきりに「ネホヒャン!」と叫んでいた。
「サーチ」の個性を持つラグドールを襲ったのはこの個体らしく、後に八百万と泡瀬を襲撃した。
後に撤退命令が出た際に二人に見向きもせずにその場を後に立ち去った。
(この時八百万が生み出した発信機を泡瀬によって体に埋め込まれている)
その後は脳無の工場らしき倉庫で休眠状態になっていた所をベストジーニスト率いるヒーロー達に捕縛されたが、オール・フォー・ワンの攻撃に巻き込まれて消滅したものと思われる。


量産型

上記のVHと共に工場に保管されていたが、ヒーロー達に捕縛されていた個体。脳味噌がむき出しであるものの、その姿はバラバラ。
基本的に中位で構成されているらしい。
後にオール・フォー・ワンが自らの個性で死柄木を取り押さえていたオールマイト達に差し向け現場を混乱させたが、エンデヴァーらによってすべて倒されたようである。


ドクターのペット脳無たち

人の耳や子供サイズの脚等を玉のような形状の出目の脳無に括りつけた、名状しがたいドクターのクソキモペット達。
オール・フォー・ワンが編み出した黒いゲロワープ「転送」の個性を付与したジョンちゃんや、トゥワイスの「二倍」の個性を複製し、付与したモカちゃん等、複数体居る。
そのデザインからして悪趣味な人権蹂躙の産物にしか見えないが、ドクター自身はペットとして愛情を注いでおり、当の脳無達も危機に陥ったドクターを咄嗟に庇う程に絆を育んでいる。



ハイエンド


オ前ハ 強いのカ?

オールマイトとオール・フォー・ワンの最終決戦からしばらくたった後に突如表舞台に現れた新型の脳無。
福岡市街で大暴れした様が実況中継されたことで、大衆に鮮烈なトラウマを刻み込んだ。

オール・フォー・ワンが逮捕された後もドクターが作っていた最上級タイプの存在で、ドクターが全国展開で経営する病院のうち、蛇腔総合病院の地下にあるラボの生体槽の中に普段は収容されている。

特筆すべきなのは人語を解し会話出来るほどの高い知能と、自らの状況を即座に理解する思考能力、相手の状況を観察し考察に活かす洞察力を持つという点。
人形は人形なのだが、上位以上の基礎スペックのみならず、素体の生前の性格を反映した高い自立思考能力を持つ。
ハイエンド自身が戦ってより強くなることを最優先して戦闘と己の成長を愉しみながら、より強い者や多くの人間が密集する場所を狙って襲撃する。
基本的に先に与えた命令通りの行動を踏襲するだけの改造蘇生死体人形である脳無の限界を逸脱しており、相手に探りを入れながら次に採るべき手段を自ら考えて、戦いながら成長し続ける極めて厄介な特性を発揮する。
ヴィジランテ』によれば、一見すると個性としてはありふれている伸びる腕であろうと、その実瞬間的に細胞増殖させて質量を増大させながら放つ、威力が減衰しない出鱈目個性とのこと。
調整がまだまだ甘かった時代ですら、個性の並列処理を駆使して脅威の性能を発揮していた。

ただし、従来の脳無と一線を画す圧倒的高品質な分だけ、制約も増えている。
既存の脳無と一線を画す戦闘性能を実現する為には、まず素体の質も厳選する必要があり、ドクターは好戦的なヴィランを厳選している。
加えて、起動させてから調整や慣らしの時間を確保しないと動作や思考力が極端に鈍ってしまう。
ハイエンドとしては最初期にテスト稼働を開始した通称"フードちゃん"ですら、まともに戦闘力を発揮出来る安定稼働に持って行くまでに10時間もの慣らしを要した。

下記のハイエンドの名称は、ドクターが個体ごとに命名した愛称別で記載している。


  • "フードちゃん"
CV:最上嗣生

外伝『ヴィジランテ』の調整中の個体と同じと思われる、本編開始の5年以上前から試行錯誤を重ねたハイエンドの中でも初期の個体の模様。
痩せこけた体に猫科動物を思わせるかのような低姿勢、そして頭部をフードのようなもので覆われた外見をしている。
地下格闘場の格闘家を素体としたが、『ヴィジランテ』時代は個性の行使と生前の格闘家としての身体操作の融合にドクターとオール・フォー・ワンは苦心した。

後発の正規ハイエンドに比べると開発時期の早さ故に個体スペックそのものは低いものの、十分な慣らし時間を確保出来たお陰で、ハイエンドとしての持前の個性の性能や思考力を遺憾なく発揮出来た唯一の個体となった。

首一つ残っていれば全身を瞬時に復元し、口の中から焼かれても体内を再生し続ける程の高い再生能力。筋線維を自在に操作してラリアットの要領で高層ビルを両断する伸縮自在の剛腕。手を翼に変形させてジェット噴射による超高速移動。大量の量産型脳無を格納可能。
福岡投入時には多彩な個性を披露していた。

ドクターと意気投合した荼毘に託されて、福岡に試験投入されてエンデヴァーと交戦。
脳無が生きた人間をベースとしている可能性と、敵連合の情報を引き出すこと、市街地で市民の被害が出ないように気を配ったこともあって、No.1ヒーローエンデヴァーも大いに梃子摺ったが、No.2ヒーローのホークスの助勢もあって辛くも撃破した。

正規ハイエンド達

"フードちゃん"以降改良を重ねて、数十体にも及ぶハイエンド軍団は完成の目途が立っていた。
しかし、格納していた研究拠点の蛇腔総合病院にヒーロー達が超常解放戦線の一斉検挙で乗り込み、切り込み隊長のヒーロー・ミルコの猛進撃に晒されたドクターは追い詰められて、ハイエンドを緊急稼働せざるを得なくなった。
その中で辛うじて起動が間に合ったのが下記の5体である。

いずれも慣らしが全然足りなかったので、全ての個性は判明しておらず、まともに真価を発揮出来ていない。
ドクターと調整中の死柄木をミルコから死守していたものの、加勢に着たエンデヴァーや相澤消太をはじめとする何十人ものヒーローの怒濤に耐えられるコンディションではなく、あっさりと撃破されてしまった。
ミルコとの短期間の戦闘だけでも動作や個性を操る練度が格段に増していたので、まともな調整時間を確保された上で運用された場合には、ヒーロー達にとって大いに脅威となっただろう。

  • "ロボットちゃん"
緩い脳の接合を補う為に角ばったメットを被っている、唯一脳が露出していない個体。
掌を捩じるような動作をするだけで離れた位置にある人体くらいは容易く捩じ切る空間歪曲能力を持ち、目からレーザーを放つ。
ミルコの腕を捩じ切ることには成功したものの、ハイエンドの中でも遠距離戦に特化した仕様だからか咄嗟の接近戦に対応出来ず、ミルコの捨て身の一撃を喰らって最初に撃破された。

  • "おデブちゃん"
名称通りに大食漢が素体になった。
ドクターを逮捕するべく進撃していたヒーロー・クラスト達を食い止めた。
四方5m以上はある通路を覆い尽くすサイズまで体を膨張させた上で、体中に巨大な口を幾つも増やしながら超再生に物を言わせて突進する。
無数の盾を生成して食い止めようとするクラストを押し返してあと一歩で喰らえそうなところまでいったが、相澤の「抹消」によって押し返されて、他のハイエンド達との混戦にもつれ込んだ。

  • "ゾウさん"
象の鼻のような頭部の個体で、ハイエンドの中でもパワー特化型。
背中の突起物から蒸気らしきものが吹き出しており、これで跳躍突進を仕掛けられる模様。こちらも体と同サイズにまで腕が巨大化する。

  • "ウーマンちゃん"
CV:関根有咲

作中では初の女性素体。
体のサイズを人体の何倍にも巨大化させられるだけでなく、全身を「液体化」させる個性も持つ。
短時間の戦いを通してハイエンドの中でも最も思考力が冴えて行った個体でもあり、相澤の「抹消」の個性の弱点を的確に考察したばかりか、「液体化」と「炸裂」を掛け合わせたウォーターカッターの散弾を土壇場で編み出してのけた。
より強くなりたいからとヒーロー達の中で最強のエンデヴァーに敢えて挑む上昇志向や高まり続ける思考力を披露して、ハイエンドの脅威性を見せつけたが、最終的にグラントリノを始めとする駆けつけたヒーロー達に袋叩きにされつつエンデヴァーに頭部を抉られ止めを刺された。

  • "アバラちゃん"
ナイトキャップ状の頭をした、猟奇殺人鬼がベースの個体。
この頭は膨張し伸縮する触手でもあり、巨大な枝のように広がって敵を捕らえ貫く。
更に、名称の通り骨を全身のあらゆる場所に大量に生成して、幅広く有刺鉄線のように広げて攻撃に利用したり、幾重にも重ねて防御に転用出来る。
必殺の赫灼熱拳は発動していないとはいえ、エンデヴァーの猛火を纏った拳から脳を守る程の強度を誇った。
他のハイエンドが撃破される中で完全に倒れておらず、崩壊する病院内から脱出しようとする相澤の右足を掴み道連れにしようとするが、クラストが自身の命と引き換えに投げた盾で腕を切り落とされた。

ニア・ハイエンド

身体スペックだけならば"フードちゃん"の域に達していたものの、テスト段階に至っていない制作中だったハイエンド達。犬やヤツメウナギの姿を模した奇怪な個体もいる。
ヒーロー達の強襲に際して半端な目覚めを遂げた死柄木が、その場の思い付きで複数個性を用いた電気刺激を送り込み、本来水槽から投げ出されて眠ったままになる筈だった個体を強制起動させた。
当然、ハイエンドの持ち味である自律思考は微塵も無いので、トップランカーのヒーローでなくても数人がかりであれば足止めくらいは出来る。
ただし、オール・フォー・ワン並に精緻に複数個性を操れる者であれば、電気信号を適宜送り遠隔制御することで、本来のハイエンドに近い性能を発揮する。

ヒーロー達の奮戦によって殆どを撃破することに成功したものの、残り7体というところで死柄木が遠隔制御を開始したそれらは、目が醒めるような精彩に富む動きで死柄木たちの戦線離脱を助けた。
その後、死柄木は国内で最も堅牢なタルタロス拘置所の襲撃に利用して、同施設を陥落させてのけた。
後に飛行能力を持つ個体が死柄木とスターアンドストライプとの戦いで撃破され、6体となった。



関連人物

脳無の生みの親の一人であり、全ての黒幕。
あらゆる脳無はこの人物の為に存在する。

言わずもがな、脳無の生みの親。

オール・フォー・ワンの懐刀。先天的に改造無しで複数個性を保有可能であるその特性に目を付けられた。脳無の原型とも言える存在である。
最終的に同時に7つの個性を保有し同時発動も難なくこなせる逸材ではあったものの、元々の知能の低さも禍してか、後述の「マスターピース」候補ではなかった。

オール・フォー・ワンの懐刀にして死柄木のお守役。
人間の枠組みが壊れて人外にしか見えない外見の人間も珍しくない本作においては、理知的であるが故に人間に思える。
だが、実際にはとある人物の死体を流用した、死柄木の守役としてのみ存在する脳無の亜種。
少し会話した程度だと人間との違いを判別しにくいが、死柄木のお守り以外の話題に対しては人間のような口調で壊れたレコードのように同じ反応を返すのみであり、典型的な改人である。


人体実験被験者達

あらゆる脳無は個性特異点を克服し超越する「マスターピース」を生み出す為の、オール・フォー・ワンに捧げる実験体に過ぎない。
脳無達はいずれも死体を利用した人形だが、「マスターピース」は生きた人間でなければならないので、幾らかは人間による人体実験も行っている。
それらの人間には番号による通称が振られており、「マスターピース」たる死柄木を除くと通算9名存在した模様。
いずれも真っ当な人間としての形とコミュニケーション能力を維持しているので、人間社会に溶け込むことが出来る極めて厄介な性質も持ち合わせている。

  • No.6(シックス)
『ヴィジランテ』に登場する、「ロック」という通称を名乗る青年。
産まれた時から一種の失認障害を患っており、自分の顔のみ上手く認識出来ない所為でまともな自我を確立出来ずにいた。
その症状故に、「マスターピース」に不可欠な「社会と自己の間の軋轢からくる強烈な感情」を求めるドクター達からは、後継者候補の生徒としては不適合の烙印を押された。
だが同時に、「誘導すれば真っ新な自我を自分達の好きなように形成出来る」点にオール・フォー・ワンが興味を示し、「No.6」という名だけを与えてモルモットとして育成した。
その結果、「己を確固たる何者かとして他人に意識させる」ことに偏執するあまりに殺人すら厭わない、承認欲求と自己顕示欲に塗れた利己的なヴィランとなった。

そうした環境で育てられた彼は、幼少期に施設でテレビで放送されたヒーロー・オクロックの華々しい活躍と能力に憧れ、「オクロックになる」ことが人生の目標となった。
と言っても、オクロックのようなヒーローとしての使命感や人道的思想は一切無く、羨望と名声を思いのままにしながら好き放題に振る舞いたいという自己中心的な願望に拠っている。
オール・フォー・ワンがオクロックから個性「オーバークロック」を奪ってシックスに与えた後は、主の指示には従いながらも気まま暴力と他人の人生を弄ぶ快楽に溺れていた。

だがついに「オクロックになる」ため前面に出て活動し始めた矢先、『ヴィジランテ』主人公灰廻航一がNo.6が利用した少女を助けるため事態に介入し、自分の計画を阻まれた。
しかも航一はNo.6が目の前で犯行宣言しても自分が少女を傷つけた敵だとも認識せずぼろぼろな状態の彼を心配したことで自己顕示欲に傷が付き、「航一を倒す」という目的がオール・フォー・ワンの指示を部分で上回る程確立されていき―――

技能に関しては、オール・フォー・ワンによって仕込まれていただけあって割と多芸で、銃火器の扱いにも慣れてはいる。
だが、基本的に努力を嫌う生来の気質故に習熟度は半端で、格闘術等も細かい技術面はおざなり。
個性の並列処理をある程度はこなせるセンスや人体改造による強化された身体能力といった、努力不足を補って余りある優れた素養は備わっているものの、過剰なまでの慢心と虚栄心が足を引っ張っている。


  • ハチ
蜂須賀九印という通名を使う、オール・フォー・ワンのエージェントしてはシックスの前任者にあたる少女。元々は極普通の女子高生に過ぎなかった。
本名は雄黒珠緒と言い、とあるヒーローの心を嬲る目的もあってか改造して起用した、人体実験の犠牲者である。
元がただの人間だからか、化け物染みた戦闘特化の他の番号持ちと違って、彼女は極普通の人間寄りのエージェントと言った趣で毛色が大分異なる。



  • ナイン
『ヒーローズライジング』に登場するメインヴィラン。
本編にも後ろ姿だけは登場しており、時系列的に矛盾はあるものの正史に組み込まれているキャラクターではあるらしい。

劇場版の特典冊子によれば、どうやら不衛生な公衆便所で産み捨てられた模様。
その凄惨な境遇を「気象操作」という強力な個性で乗り切ってきたからか、ただ我を通す為の力のみを追い求めている。
敵連合に接触したのも、個性を使う度に細胞が死滅する自身の体質を克服する為に、危険を承知でドクターの人体実験の被験者として志願したのが切っ掛けだった。

その結果、「マスターピース」の前身としては成功に近い結果を納めて、自我と思考力を保ったまま同時に9つもの個性を保有出来るスペックを持つに至った。
作中描写の限りでは、身体能力も脳無同様にある程度は向上している模様。
ただし、複数個性保有による負荷からか元々の細胞死滅の病はより悪化しており、体質の克服という本来の目的は完全には果たせず終い。
自力で病を克服しようと画策して、ドクターが研究データを収集し切る前に脱走したようで、死柄木に彼の回収を命じた一幕もあった。

「マスターピース」として改造中の死柄木と同じデザインの制御スーツを着ているが、このスーツが無くても支障が無かった死柄木と違い、スーツを破壊されると大きな力を振るえる代わりに暴走状態に陥ってしまう程に、能力行使の安定性も欠いていた。
制御スーツ背部に二基備えた薬剤を自分に投与すれば個性の出力を更に高めることが出来るが、これが個性増幅等の薬効を持つものかは不明である。



オール・フォー・ワンが見込んだ「マスターピース」。
個性「オール・フォー・ワン」のオリジナルの個性因子を譲渡され、その膨大な個性の負荷にも耐えられるだけのハイエンドを凌駕する人体改造を施された完成形。
オール・フォー・ワンとドクターの個性研究の終着点であり全ての脳無は死柄木の為に存在するとも言え、オール・フォー・ワンにとっては息子でもある。
しかし、愛する弟ですら、気圧式の扉で密封された窓の一つすら無い部屋に幽閉して"大切に保管"するかのようにモノ扱いするのがオール・フォー・ワンである。
そんな彼にとっての息子がどういう存在であるかはお察しであろう。



追記・修正は脳味噌を集中攻撃してからお願いします。

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最終更新:2025年02月23日 00:39

*1 アニメ版では呻き声らしき咆哮をあげているため、全く喋れないというわけではないらしい。

*2 アニメ版では「超再生」の個性も所有していた。

*3 この時左目を負傷していたが、アニメ版においてこれはエンデヴァーの放った火炎槍を喰らったものという事になっている。