マジカル・エクスプロージョン(遊戯王)

登録日:2018/03/06 Tue 14:01:12
更新日:2025/04/05 Sat 14:31:49
所要時間:約 7 分で読めます






トラップ発動! 《マジカル・エクスプロージョン》!!



《マジカル・エクスプロージョン》とは、遊戯王デュエルモンスターズ オフィシャルカードゲームに登場するカードである。
俗称「マジエク」。
初登場は第4期「CYBERNETIC REVOLUTION」、つまり《サイバー・ドラゴン》と同期。

概要

テキストは以下の通り。
通常罠
自分の手札が0枚の時に発動する事ができる。
自分の墓地に存在する魔法カードの枚数×200ポイントダメージを相手ライフに与える。

「テキストが短いカードは強い」という遊戯王の(どころかカードゲームの)ジンクス*1にたがわず、このカードも強い。
このゲームにおいて魔法カードは墓地に溜まるものなので、適当なタイミングでこのカードをぶっ放すだけでも1000~2000ポイントくらいのダメージがババンと炸裂する。
手札0枚という条件についても、手札は基本的に枯渇しやすいものなのでそんなに難しくはない。魔法・罠カードならセットすればいいし。

ただし漫然と使うだけでは、伏せ除去されかねない罠であることと、
カード1枚を使うのならば普通にモンスターで殴ったほうが結果的に大きなダメージを稼ぐことが多いことから使用されることはあまりなかった。
最序盤に引いたら事実上腐ってしまうことも問題である。

この特性と条件から一見【フルバーン】や【インフェルニティ】で使えそうだが、前者の場合は使い捨ての魔法カードが意外と少なく、墓地の魔法カード1枚につき200ダメージは想像以上に倍率が悪い数字となってしまう。
【チェーンバーン】などのバーンデッキは罠に比重が寄るため思ったより魔法が墓地へ溜まらず、魔法5枚墓地へ送ってやっと1000ダメージなこのカードより、《仕込みマシンガン》《自業自得》《停戦協定》などこのカードより1000ダメージ以上を狙いやすい他のバーンカードを使った方が安定する。
そのため魔法カードにかなり比率が寄る【連弾バーン】ぐらいでしか使えない。
後者はモンスター効果で回すギミックであるため相性は悪い(インフェルニティはループコンボが有名だが、基本的にはビートダウンデッキである)。
そのため意外と使えそうで使いどころのないカードだった。


ダイヤモンドガイ】で引導火力に使う手もある。
あちらはとにかく魔法カードが多くなるので、デッキのアクセントとしては悪くないだろう。
ただしこのカードを入れることで魔法カードの比率が下がってしまうという問題もあるので注意。







だが一部の廃人遊戯王プレイヤー達は、この手の「ダメージをたくさん与える」カードを見ると考え始めることがある。



1ターンキルである。



魔法カードを大量に墓地に貯め込み、このカードを発動して相手のライフを削りきる。
それを目的としたバーンデッキがずばり【マジエク1キル】である。

《名推理》と《モンスターゲート》、要するに【推理ゲート】ギミックを流用して魔法カードを大量に墓地に送り、
このカードと《残骸爆破》で相手を吹き飛ばすデッキが登場したのだ。


そしてその中でも特に有名かつ凶悪だったのが、あの【ドグマブレード】である。
【ドクマブレード】については項目を参照してもらうとして、規制によりあちらは構築不能となった。
その後新たなカードを手に入れて【ジャンクブレード】が制作され結果を残すが、そこで遂に《マジカル・エクスプロージョン》自体が制限カードとなってしまった。

が、《マジカル・エクスプロージョン》の規制以降、その穴を埋めるべく様々な試行錯誤が繰り返される。
禁止された《混沌の黒魔術師》の代わりに《魔法都市エンディミオン》《神聖魔導王エンディミオン》を利用し、
図書館ターボの要領でカードの回転を図るデッキ*2や、
《折れ竹光》《黄金色の竹光》によるドローブーストでデッキ圧縮を狙うタイプなど様々な方法が試されたが、そのどれもが安定性や速度、そもそも同じギミック流用してエクゾディアやった方が強いなどの問題で決定打にはならなかった。


しかしそんなこんなで2年が過ぎた2012年9月、転機が訪れる。

《名推理》が準制限に緩和されたのだ。

その後《名推理》は2013年9月の改定をもって無制限へと返り咲く。
そして2015年4月。
《モンスターゲート》が無制限に緩和される。

これらカードの緩和によって全盛期ほどではないものの多少は安定したデッキ構築ができるようになった。
とは言え肝心の《マジカル・エクスプロージョン》は規制されたままであり、この時点ではあまり目立った動きはなかった。この時点では。

同年9月。『ストラクチャーデッキR-真帝王降臨-』によってすさまじいデッキ圧縮性能を持つ《汎神の帝王》が環境にもたらされる。
これにより《汎神の帝王》から《帝王の深怨》をサーチ、更にそこからもう一度《汎神の帝王》をサーチするという強烈なデッキ圧縮のルートが開発された。
そしてそれらと同時期にある一枚のカードが突如として脚光を浴びることとなる。

通常罠
お互いのライフポイントに8000ポイント以上の差があった場合に発動する事ができる。
お互いのライフポイントは3000になる。

もうお分かりだろう。
かつて【ドグマブレード】で《D-HERO ドグマガイ》が担っていたライフ調整の役割をこのカードが引き継いでしまったのである。
登場した当初こそ8000ものライフ差を生み出す手段はほぼ無く全く注目もされていない無名のカードだった*3が、

■チキンレース
フィールド魔法
(1):このカードがフィールドゾーンに存在する限り、相手よりLPが少ないプレイヤーが受ける全てのダメージは0になる。
(2):お互いのプレイヤーは1ターンに1度、自分メインフェイズに1000LPを払って以下の効果から1つを選択して発動できる。
この効果の発動に対して、お互いは魔法・罠・モンスターの効果を発動できない。
●デッキから1枚ドローする。
●このカードを破壊する。
●相手は1000LP回復する。

■擬似空間
フィールド魔法
自分の墓地に存在するフィールド魔法カード1枚をゲームから除外する事で、
このターンのエンドフェイズ時までこのカードは除外したフィールド魔法カードと同名カードとして扱い、同じ効果を得る。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。

■成金ゴブリン
通常魔法
自分のデッキからカードを1枚ドローする。
その後、相手は1000ライフポイント回復する


カードプールの増大によって、1ターンの間にライフに8000の差を発生させることなどもはや造作も無いこととなっていたのである。*4


おまけに《D-HERO ドグマガイ》展開のギミックが不要になった点、
《D-HERO ドグマガイ》よりも大きくライフポイントを減らせることで《マジカル・エクスプロージョン》による即死に必要な魔法カードの枚数が15枚に減少したこと、
そして何より今まで1killを阻害してしまうために忌避されてきた《成金ゴブリン》がライフ調整しつつドローする目的で採用できるようになったことにより、
全盛期の【ドグマブレード】や【ジャンクブレード】に速度も安定性で引けを取らなくなってしまった*5


【マジエク帝】爆誕の瞬間である。


さらにマジエク帝は帝デッキの基本的なギミックを流用しているという点も特徴だったため、
サイドデッキに用意しておいたその他の帝デッキのパーツとコンボパーツを入れ替える事によって通常型の帝デッキにシフトすることができ、
マッチ二戦目以降に弱いという【ドグマブレード】の弱点すらも克服している。*6

当然こんなデッキをコナミが見逃すはずもなく、
2016年4月、ライフチェンジャーは無制限の状態から突如として禁止カードに指定、汎神の帝王も(【帝王】が環境上位にいたこともあり)制限カードに指定。

またせっかく無制限に緩和された《名推理》と《モンスターゲート》もあえなく制限カードに逆戻り。
こちらも【インフェルノイド】の規制のためという理由もあると思われるが。

なお海外ではライフチェンジャーは無制限のままだが代わりに《チキンレース》が禁止カードに指定され、
デッキ圧縮の役割を担っていた《成金ゴブリン》も制限カードに指定されている。
「デッキのフィニッシャーを規制して潰す」のか「色々なデッキに使われうる(そして悪用されうる)汎用ドローカードを規制する」のか、考え方の違いが出ているといえる。

彗星のように現れた新たな1KILLの系譜はキーカードの大量規制によりついに終焉を迎えたのであった。

しかし新たなキーカードの登場によって形を変えてマジエク1キルは復活したのも事実。
ライフチェンジャーが禁止になった後はEmD-HERO型や暗黒界型や図書館型など色々なタイプが試されたが結果は残さなかった。
さらに同年10月にモンスターゲートが準制限になったがそれでも目立った動きはなかった。


しかし2017年4月にブースターパックCORD OF THE DUERISTで《トリックスター・マンジュシカ》が登場したことで再び転機が訪れる。


■トリックスター・マンジュシカ
効果モンスター 光属性 天使族 レベル3 攻撃力1600 守備力1200
(1):手札のこのカードを相手に見せ、「トリックスター・マンジュシカ」以外の自分フィールドの「トリックスター」モンスター1体を対象として発動できる。
このカードを特殊召喚し、対象のモンスターを持ち主の手札に戻す。
この効果は相手ターンでも発動できる、
(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、相手の手札にカードが加わる度に、加えたカードの数×200ダメージを与える。


注目すべきはこのカードの(2)の効果。
これにより相手ターンのスタンバイフェイズに行っていたライフ調整が自分のターンにドローしながら行うことができるようになった。
また手札抹殺や暗黒界の取引などのお互いドローするカードがドロー展開しながら相手にダメージを与える形になったのである。

これにより、ドローしながら相手のライフを0にするマジエク1キルにとってマンジュシカは新たなるキーカードになった。

さらには、トリックスターが光属性天使族であることを利用した《天空の宝札》によるドローブースト、
《トリックスター・マンジュシカ》の効果を利用した大量のお互いにドローするカード、
《トリックスター・マンジュシカ》をサーチする《トリックスター・ライトステージ》、《トリックスター・マンジュシカ》の効果を最大限に利用した《トリックスター・リンカーネイション》、
その他汎用ドローカードと《マジカル・エクスプロージョン》を利用した【マジエクトリックスター】が開発されたのである。
…しかし安定性も速度も過去のデッキに遠く及ばないのが実情である。


2018年、マジエク1キルはさらに加速することになる。
デッキビルドパック:ダーク・セイヴァーズにて収録された新カテゴリ【閃刀姫】の登場である。
「墓地に魔法カードをためることで真価を発揮する」閃刀姫は、カテゴリ自体が「魔法カードを墓地に送る」ことに特化している。
さらに、実質的に《強欲な壺》同様の効果が見込める《閃刀機動-エンゲージ》や、リリース用のトークンを生む《閃刀機-ホーネットビット》などもあり、4/1の改訂にて《汎神の帝王》とモンスターゲートが制限解除されたことにより、ドロー加速の手段が一気に増加。
【マジエク閃刀帝】として新たに生まれ変わることになった。
ちなみにこのデッキ、全盛期より成功率が高いという話もある。


で、そんな風にして地雷として閃刀姫と共に暴れた結果、ついに2018年7月を以て禁止カード入りが確定。
【ドグマブレード】【ジャンクブレード】【マジエク帝】【マジエクトリックスター】【マジエク閃刀帝】と逃走を続けてきた前科五犯の凶悪犯は壮絶な最期を遂げたのだった。

追記・修正は墓地に魔法カードを20枚ためてからお願いします。

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最終更新:2025年04月05日 14:31

*1 ただし、近年では強力なメリット効果が複数ついたカードも増えているが

*2 モンスターが神聖魔導王エンディミオン以外ほとんど入っていないのでこのタイプのデッキは一部で【ぼっち王】【孤独王】などと呼ばれた

*3 苦労してライフ3000にするよりも、1戦目を取って2戦目以降を自爆したほうが速いというのもある。

*4 成金ゴブリンは古いカードであるが。

*5 当時は今よりカードプールが狭かったためドローソースも少なかったが、代わりにエラッタ前の混沌の黒魔術師やサイバー・ヴァリー&次元融合のドローループが使用可能だった。また手札誘発も殆どなかったことも留意すべきではあるが。

*6 ドグマブレードもサイド後は【エアブレード】や【ダーク・ガイア】になることが多かったが墓地対策が弱点であることは変わらなかった。こちらは完全に軸がずれているため相手は対策が非常にしにくい。