停戦協定(遊戯王OCG)

登録日:2011/09/04 Sun 19:18:23
更新日:2025/04/23 Wed 14:33:20
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皆は制限カードと言ったらなにを思い浮かべるだろうか?

最高の蘇生カードである《死者蘇生》?
帰ってきた混沌戦士《カオス・ソルジャー -開闢の使者-》?
制限カード最強の魔法罠除去である《ハーピィの羽根帚》?

確かにこれらは強力で数多くのデッキに入り、第一線で活躍してきた。

しかし皆にはわかるだろうか?
18年もの間制限カードでありながら、必須でもなく、仮に入れたとして第一線で活躍出来るとは限らないカードの名前が。

そのカードとは……

《停戦協定》
通常罠
(1):フィールドに効果モンスターまたは裏側守備表示モンスターが存在する場合に発動できる。
フィールドの裏側守備表示モンスターを全て表側表示にする。
この時、リバースモンスターの効果は発動しない。
フィールドの効果モンスターの数×500ダメージを相手に与える。

《停戦協定》とは、遊戯王OCGに存在する罠カードである。

概要

初出は2000年9月28日発売の第2期第3弾「Curse of Anubis −アヌビスの呪い−」と古い。
《停戦協定》の他にも、禁止あるいは制限指定を受けたカードを多く輩出したことで知られるパックであり、代表的なものには
が存在する。

効果はシンプルで、互いのフィールドのモンスターを全て表側表示にし(リバース効果は発動しない)、相手にフィールドの効果モンスター1体につき500ダメージを与えるというもの。

強力なリバースモンスターが跋扈し、ロックバーンも多かった当時の環境においては、優秀なカードとして活躍していた。
当時のリバースモンスターには、
  • モンスターを除去する《人喰い虫》《ペンギン・ソルジャー
  • ハンデスと大量ドローを一度に行える《メタモルポット
  • 墓地の魔法カードを回収できる《聖なる魔術師》
  • お互いの場のモンスターを一掃する《サイバーポッド》
など厄介なものが多く、これらの効果を発動させることなくリバースさせつつ、安定してダメージを与えられる点から重宝されていたのである。

同期である《人造人間-サイコ・ショッカー》にメタられるという弱点はあったものの、その堅実な働きから、登場から3か月ほどの01/01/15に制限カードに指定された。
さらにその優秀さが認められ、再録された際にはスーパーレアに昇格されている。

しかし、環境は加速した…

このカードに頼らずとも、【サイエンカタパ】や【カオス】など、リバース効果をものともせず手軽に大ダメージを与え、またはライフを削りきるデッキが登場。
更に進むとダムドこと《ダーク・アームド・ドラゴン》が登場し、さらにはシンクロモンスターで環境は超加速。
一部のテーマデッキを除き、リバース効果モンスターは時代遅れとまで言われてしまった。
リバース効果へのメタを特徴としているこのカードが最適解となる状況は減っていき、一般のデッキでの採用意義が落ちていった。

また、新たなカードの登場に伴い、発動を阻止できるのは「リバースモンスターの効果」のみであり、「リバースした場合に発動できる効果」には無力という弱点を抱えるようになってしまった。
詳細はリバースモンスターの項目を参照してほしいが、一見似ているこの2つは、ルール上では区別されている。
前者は《ライトロード・ハンター ライコウ》やシャドールモンスターが該当し、これらの効果の発動は《停戦協定》で阻止できる。
しかし、リバースモンスターではない《スノーマンイーター》や《フォッシル・ダイナ パキケファロ》などは止められず、モンスターを破壊する効果を発動できてしまうのである。

このように「環境の高速化による、リバースモンスターの相対的な弱体化」「リバース時に発動できる効果を持つ非リバースモンスターの出現」という2つの要因から、《停戦協定》のパワーも落ちていった。

しかし、このカードは制限カードのままであった。

その年数、なんと18年である。
これは緩和の可能性がないエクゾディアを除くと、20年以上も制限指定を受けている《手札抹殺》《メタモルポット》に次いで第3位である。


なぜ18年も制限カードに?

上記の通り、メタの対象であるリバースモンスター共々環境の高速化に振り落とされたとも言える《停戦協定》だが、なぜ緩和にこれほどの期間を要したのだろうか。

考えられる要因として、「モンスターの大量展開が容易になったこと」「環境におけるライフアドバンテージを軽視する傾向」「チェーンバーンやロックバーンへの警戒」が挙げられる。

1つ目はシンプルな話であり、《停戦協定》はお互いの効果モンスターの数を参照するので、遊戯王の展開力が高まるほど高いダメージが期待できたのである。
先述した環境の高速化により、ダメージ源にならない通常モンスターが減ったことも追い風であった。

2つ目については、遊戯王では基本的に、ライフ面での有利はあまり重視されないことが多い。自分より先に相手のライフが0になれば勝てるため、高いライフコストを要する効果でも、勝利に必要だから発動するというのは日常茶飯事である。
最初期から存在している《神の宣告》や初の禁止カードの1枚である《お注射天使リリー》、時代が進むにつれて登場した、ライフを積極的に削って展開するテーマは、そんなゲーム性の一端を示しているとも言えるか。

3つ目の要因であるチェーンバーンやロックバーンについてだが、2011/09/01の制限改訂により、《グラヴィティ・バインド-超重力の網-》が制限から一気に無制限へと緩和され、3枚積めるようになった。
レベルを持たないXモンスターの登場に伴っての緩和だが、ロック系のカードが増えたことに変わりはない。
デッキの性質上、フィールドにモンスターがたまりやすいロックバーンで《停戦協定》を使えば大ダメージが期待できる。
チェーンバーンに至っては、《連鎖爆撃》などのカードと絡め凄まじいダメージが期待できる。
これが複数使われたらたまったもんじゃない。
まあチェーンバーンなら自分の場にモンスター全然溜まらないし、《おジャマトリオ》を使う場合は《自業自得》の方が強いんだけどね。

確かに1枚では大した火力にならず、引導を渡すことが出来ない。
(まぁ、現環境だと1500ダメージくらいなら軽く狙えるので一枚でも十分引導火力かもしれないが)

しかしどうだろう、先述したバーンデッキでの活躍もあり、
さらにライフアドバンテージを軽視する傾向にある環境にこのカードが緩和されたらどうなるか……
もしかしたら《停戦協定》は、かの《破壊輪》のようなエンドカードになるかもしれないだろう。

こうして《停戦協定》は制限カードにしては弱すぎるが、かといって緩和したら面倒になりそうなカードとして、長らく制限カードの座に留まり続けた。
そして、しょごりゅうを含む8枚もの禁止カードを輩出した2019年1月改訂で、遂にこのカードもひっそりと準制限に緩和された。
発表された時には「まだ制限だったの!?」と驚く決闘者も少なくなかったという。


ともかくこのカードは遊戯王の歴史を制限カードという立場から20年近くずっと見守ってきたのである。
様々なカードが登場し、環境が加速してきたのを全て知っているカードなのである。
昔、このカードに勝利の望みを託したなどの思い出を持つものもいるだろう。
どうだろう、GS2011に再録されて入手も容易であるため、ガチじゃなくてもいい、一度このカードを使ってみてはいかがだろうか?
早すぎる環境に慣れた体の息抜きになったり、もしかしたら思わぬ活躍をするかもしれない。

必須でもなく壊れでもないカードなのに20年近く制限に留まっていたカードは?」と友人などにクイズとして出題してみよう。
このカードの名前が出る人はそういないはずである。
もしいれば、なかなかの決闘者である。


余談

DUEL TERMINALでは龍可に専用ボイスがある。

なんとなく名前の似ている魔法カードとして、《一時休戦》がある(2013/03/01に制限指定、2025年1月現在も制限カード)。
そちらは「次のターンまでお互いに与えるダメージを0にし、互いに一枚ドローする」というものであるのに対し、
このカードは情報アドはともかく、ライフに関しては相手を一方的に攻撃しているのである。

こうした効果から、時折「停戦する気があるのか」と突っ込まれることもある。事実、発動した状況によっては相手を討ち滅ぼして「終戦」まで持っていきかねない。
その点については、2004年初出の罠カード《強引な安全協定》のイラストで背景情報が示唆されている。
そちらのイラストでは、《停戦協定》の奥側にいる白髪の男性が、背後にいる《強引な番兵》から署名を強要されているかのような光景が描かれている。
これを踏まえると、もしかしたら《停戦協定》のイラストは、戦勝国が敗戦国に対し不平等条約や莫大な賠償金の支払いを無理やり呑ませている光景が描かれているのかもしれない。
歴史はスタジオで作られる~♪
もっとも、背景の描写やイラスト手前の男性の後ろ姿が異なっているため、この2枚のイラストを連続したものと断定することも、白髪の男性がどちらのイラストにおいても不利な立場であると断定することもできない。


追記・修正は、きちんと停戦の意思を示しながらお願いします。

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最終更新:2025年04月23日 14:33