ライフチェンジャー(遊戯王OCG)

登録日:2022/06/02(木) 22:53:43
更新日:2025/04/12 Sat 15:20:20
所要時間:約10分で読めます





《ライフチェンジャー》とは遊戯王OCGに登場するカード。


概要

2006年2月16日発売の「ENEMY OF JUSTICE」が初収録。
このパックの主なカードは以下のものがある。

  • アニメカードであり初登場のD-HERO
  • 《裁きを下す者-ボルテニス》や宣告者などの所謂エンジェルパーミッション用カード
  • 大人版霊使い
  • 永続除外系メタとして今でも使われる《閃光の追放者》《次元の裂け目》《マクロコスモス
  • GX期パックではお馴染みの融合E・HEROや現役のサーチカード《E-エマージェンシーコール》
  • 妥協召喚できる代わりに自壊する光神機シリーズ
  • 鳥獣族サポートで後にBFで猛威を振るう《ゴッドバードアタック
  • 長い時を経てDCGである種の大活躍をする《デステニー・デストロイ

その中でアニメ登場カードでもシリーズカードでもなくひっそりと登場していたカード*1が《ライフチェンジャー》である。
カードテキストは以下の通り。

通常罠
お互いのライフポイントに8000ポイント以上の差があった場合に発動する事ができる。
お互いのライフポイントは3000になる。

お互いのライフを3000にするこのカードを発動した後、《残骸爆破》やあらかじめ3ターン置いておいた《波動キャノン》などを使えば勝利できる。
しかし発動条件が異様に厳しい。なにせお互いのライフポイントが8000以上開いていないと発動できない
自分のライフをどんなに削ろうと付けられるライフ差は7999が限界であり、相手のライフが初期ライフポイントを越える8001以上にならなければ達成できない。
相手に回復してもらうのは依存度があまりにも高すぎる上、当時は《神の宣告》《早すぎた埋葬》などのライフコストを求めるカード華やかなりし頃。
そのため自分で相手のライフを回復させる手段を用意する必要があるのだが、相手のライフを削るカードなのに相手のライフを回復させないといけないという、矛盾した行動を要求する謎すぎるカード。
単に「差があった場合」としか表記されていないため、どちらのライフが上かは問わない。そのため《N・エア・ハミングバード》《魂吸収》などを使って自分から回復しに行く手もあるが、これで勝つんだったらもっとスマートな手段はいくらでもあるわけで。

そのため、当時の運用は「相手のライフを回復するカード」と「バーン手段」を両方採用している【シモッチバーン】で運用することが主だった。
以前の版では「コンボ失敗時の保険」「そんなことを考えるならコンボに特化した方がいい」と説明されていたが、そもそも当時のシモッチバーンはデッキに3枚しか入らない上にサーチ手段に乏しい《シモッチによる副作用》に極めて依存したデッキである。その代わり非常に爆発力があり、かつ普通のデッキでは絶対に見ることのない《真実の眼》のようなカードが使えることで人気を博すアーキタイプだ。
肝心のシモッチが手札に来なくて、対戦相手を回復させるカードばかりが手札に来るのが当たり前。そのためそういったカードを矢継ぎ早に発動して、とどめを刺せそうなタイミングで《ライフチェンジャー》と《シモッチによる副作用》を発動して一気に詰めていくという動きが当たり前だった。「プランB」である。
《ギフトカード》登場後はこの動きに磨きがかかり、《ライフチェンジャー》の発動条件を満たしたり、《ライフチェンジャー》後に3000バーンでトドメを刺したりすることもできた。
つまりこの時期の【シモッチバーン】においては、第二のフィニッシャーとしてごくごく普通に入ったカードである。「シモッチバーンにおいても矛盾した動きとなる」という考えは、多くのサーチに対応している《堕天使ナース-レフィキュル》の登場後、つまりシモッチに安定性が加わった後に初めてシモッチバーンを組んだ人か、ないしは組んだこと自体がない人の意見だろう*2

しかし、ほとんどの遊戯王のデッキにおいて、勝利とは「対戦相手のライフポイントを0にする」ことであり、そのために万策を尽くす。対戦相手を回復させるという行為は、その勝利条件を自分から遠ざけてしまう。
そうやって発動条件を満たしてライフを3000に固定化してからタコ殴りというのは回りくどい。【シモッチバーン】自体がこのような構造矛盾を抱えているデッキであり、類似デッキ自体が存在しない。そしてほとんどのデッキにおいては使い方を考えても矛盾を起こす。
ましてシンクロ召喚のような「ルールで定義されている特殊召喚でフィニッシャーを手早く出すゲーム性」と、テーマデッキのような「特定の名称やステータスという条件を満たしたカードにだけ恩恵を与えるカードを組み合わせて戦うデザイナーズ・コンボ」が主流となった第6期以降なら何をいわんや。
使おうとすると何をしたいのかがわからなくなる」「効果に見るものはあるが発動条件が厳しすぎて無理に使う程の価値が無い」という評価に落ち着いてしまう。
一応《次元融合》等で自分のライフをガンガン削る【ドグマブレード】ならば《成金ゴブリン》を追加する事で発動条件を満たせたが、大抵《ライフチェンジャー》の枠を2枚目の《マジカル・エクスプロージョン》にしても勝てるためほとんど使われなかった。

後に登場した【ジャンクブレード】で採用された罠をコピーする効果を持つ《ジャンク・コレクター》も発動コストと誓約は踏み倒せても発動条件は踏み倒せなかったため結局使えず。
レアリティもレアということでカスレアとして語り継がれることもなく、ひたすら地味な存在で多くのデュエリストに忘れ去られて行った。













…と環境デッキでの採用どころかそれ以外のデッキでもまともに使う事すらできなかったので、ほとんどのデュエリストに忘れ去られていた。
しかし、登場から10年が近づいてきた辺りでこのカードは突然注目を受ける事になる。

2015年9月19日発売の「ストラクチャーデッキR-真帝王降臨-」である。
一見【帝王】は盤面コントロール寄りのカードであり、使うならバーンデッキになりそうな《ライフチェンジャー》とは縁が無いように見える。*3
しかし、ストラクチャー新規カードの《汎神の帝王》がドローとサーチ効果持ちで、サーチ効果で自身をサーチする《帝王の深怨》サーチでき、ドロー効果がターン1制限もないことからデッキの圧縮性能が高かった。
更に《冥帝エレボス》も自身を墓地からサルベージできるレベル8の闇属性ということで《闇の誘惑》《トレード・イン》と相性が良い。

デッキを圧縮する魔法カードは当然このカードが目を付けない訳がなく…

通常罠
自分の手札が0枚の時に発動する事ができる。
自分の墓地に存在する魔法カードの枚数×200ポイントダメージを相手ライフに与える。

先攻ソリティアワンキルの申し子、通称マジエクである。
しかし、約5年半前に【ジャンクブレード】で暴れた際に制限カードとなっており《マジカル・エクスプロージョン》1枚で相手のライフを8000*4削る事は困難なため火力不足に悩まされていた。
そこで相方として目をつけられたのが《ライフチェンジャー》だった。

従来のマジエク系統のデッキは《マジカル・エクスプロージョン》一発4000ダメージ程度の火力が求められていたため墓地に魔法カードを20枚貯める必要があった。
《ライフチェンジャー》を使うと相手のライフは3000となるため墓地に要求される魔法カードの枚数は15枚と従来より少なく済む。
しかし、これは昔からわかりきっていたことで問題はどうやって《ライフチェンジャー》の発動条件を満たすかと言う事になる。

《成金ゴブリン》
通常魔法
自分のデッキからカードを1枚ドローする。
その後、相手は1000ライフポイント回復する

《チキンレース》
フィールド魔法
(1):このカードがフィールドゾーンに存在する限り、相手よりLPが少ないプレイヤーが受ける全てのダメージは0になる。
(2):お互いのプレイヤーは1ターンに1度、自分メインフェイズに1000LPを払って以下の効果から1つを選択して発動できる。
この効果の発動に対して、お互いは魔法・罠・モンスターの効果を発動できない。
デッキから1枚ドローする。
●このカードを破壊する。
●相手は1000LP回復する。

《疑似空間》
フィールド魔法
(1):1ターンに1度、自分の墓地からフィールド魔法カード1枚を除外して発動できる。
エンドフェイズまで、このカードは除外したカードと同名カードとして扱い、同じ効果を得る。

《成金ゴブリン》は《ライフチェンジャー》登場前から存在していたカードだが《チキンレース》が登場したのストラク真帝王降臨が登場する少し前。
《チキンレース》はフィールド魔法のため《疑似空間》でコピーが可能なため、これによりライフ差をつけながらドローできるカードが実質9枚になった。
相手を回復させてしまうため非ビートデッキでありながら、バーンデッキでは敬遠されがちだった《成金ゴブリン》も《ライフチェンジャー》を使う前提ならノーデメリットに等しい。
しかも、当時はフィールド魔法をサーチする《テラ・フォーミング》は無制限のため「《チキンレース》が墓地にないのに《疑似空間》ばかり手札にある」といった事故も回避しやすい。
こうして全てのパーツが揃い開発されたのが【マジエク帝】である。

デッキはほぼ「ドローソース」「サーチカード」「ドローソースのコスト」「エンドカードとなる罠」の4種で構成されている。
前述の帝王パーツに加え、この手のデッキでお馴染みの《トレード・イン》《闇の誘惑》《無の煉獄》《手札抹殺》《手札断殺》《打ち出の小槌》などでドローを繰り返しデッキを回転させていく。
特殊召喚をしないため《命削りの宝札》《強欲で謙虚な壺》も使用可能。
この過程で《成金ゴブリン》《チキンレース》《疑似空間》を8回発動しライフ差を8000つけ、《マジカル・エクスプロージョン》《ライフチェンジャー》の両方を引くというのは難易度が高い様に見える。
しかし、デッキの殆どのパーツがドローかサーチの魔法カードであり1ターンでデッキの全てを引き切るぐらいデッキを回転させることが可能なため無理なく達成が可能だった。
当時は後攻からドローとサーチを止めに来る《灰流うらら》は存在しないので尚更。
ある程度【帝王】デッキのギミックを使っているため、サイドチェンジで普通の【帝王】に切り替えることも可能で、この手のデッキのマッチ戦での弱点になるメタカードにもある程度耐性があった。

こうして環境どころかフリー対戦などでもほぼ使われることがなかった、無名だった《ライフチェンジャー》は一気に環境における地雷デッキのキーカードとして環境に駆け上がる事になる。
ただ、活躍したデッキが先攻ワンキルだったため当然野放しにされる訳もなく2016/04/01改訂にて一発で禁止カードとなった。

禁止カードに指定されたものが悪名高く過去の実績もある《マジカル・エクスプロージョン》ではなく、《ライフチェンジャー》である事に驚くデュエリストは少なくはなかった。
これについては《マジカル・エクスプロージョン》では《残骸爆破》などで代用が効くからだと言われている。
また《成金ゴブリン》《チキンレース》《疑似空間》とライフ差をつけながらドローするギミックが生きている以上は、再び新たなワンキルデッキが開発される可能性を危惧したのではないかという説もある。
実際海外では日本のリミットレギュレーションとほぼ同時期に《成金ゴブリン》が制限カード、《チキンレース》を禁止カードに指定する方向で規制をかけており《ライフチェンジャー》は現在でも無制限のままとなっている。
一発禁止に関しては性質上一回使えれば十分な上に採用されていたのは1枚だったため、制限カードでは意味がないので仕方のない事だろう。
そういった事情を考えるとあながちとばっちり規制とは言えないのかもしれない。
尤も《マジカル・エクスプロージョン》はこの後《闇よりの罠》を相方とし【マジエク閃刀帝】として復活し最後の一仕事をしてしまったので、やっぱりこの時禁止にしておくべきだったという声も少なくはない。

使えないと思われていた無名のカードがカードプールの変化で突如大化けし、禁止カードとなって行ったのは多くのデュエリストに驚きを与えた。
次の《ライフチェンジャー》はもしかしたら忘れ去ってあなたのストレージに放置されているカード…なのかもしれない。


ちなみに似たような発動条件を持つカードには、強制的に引き分けを起こす《自爆スイッチ》がある。
こちらは禁止カードリストには載っていないものの、肝心の大会ではしょっちゅう禁止になっている。
やはりこの手のカードは問題を引き起こすようだ。



追記・修正は相手とのライフの差が8000開いてからお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 遊戯王
  • 遊戯王OCG
  • 罠カード
  • 禁止カード
  • 1ターンキル
  • ワンキル
  • マジエク帝
  • 通常罠
  • ENEMY OF JUSTICE
  • 3000
最終更新:2025年04月12日 15:20

*1 当時はまったく珍しいものではなかった。後から名称やステータスによって参照されるようになりテーマ化したものはあるが、この時代はテーマで縛って遊ぶようなカード自体が少なかったため。

*2 ちなみにレフィキュルは当時ゲーム付属カードということで値段が法外であり、3枚必須なくせに【シモッチバーン】でしか使えないため買える人がほとんどいなかったことも併記しておく。ただし当時のカードプール的に、レフィキュルが入ったとしても《ライフチェンジャー》をデッキに入れる人は多かったはずである。まぁシモッチ自体割とネタデッキ寄りなので……

*3 《光帝クライス》が【ドグマブレード】【ジャンクブレード】で戦士族かつ特殊召喚時にカードを破壊してドローできる性質が評価され採用されることがあるにはあった。

*4 1枚200ダメージなので墓地に魔法カードが40枚必要。最低のデッキ枚数である40枚と同等の数。