登録日:2020/05/24 Sun 09:14:35
更新日:2025/03/29 Sat 22:48:54
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この項目は『東方鬼形獣 〜 Wily Beast and Weakest Creature.』の終盤や公式設定資料集のネタバレを含みます。ご注意ください。
二つ名:孤立無援が誂えた造形神
能力:偶像を作り出す程度の能力
テーマ曲:偶像に世界を委ねて〜Idoratrize World
登場作品:東方鬼形獣(6面ボス)
スペルカード:方形「方形造形術」(easy、normal)
方形「スクエアクリーチャー」(hard、Lunatic)
円形「真円造形術」(easy、normal)
円形「サークルクリーチャー」(hard、Lunatic)
線形「線形造形術」(easy、normal)
線形「リニアクリーチャー」(hard、Lunatic)
埴輪「偶像人馬造形術」(easy、normal)
埴輪「アイドルクリーチャー」(hard、Lunatic)
「鬼形造形術」
「ジオメトリッククリーチャー」
「イドラディアボルス」
『東方鬼形獣 〜 Wily Beast and Weakest Creature.』にて初登場。種族は神様。畜生界にて動物霊から虐げられていた人間霊が己の無力を呪い、起死回生をかけて招喚した神で、自らを造形神と名乗る。
人間霊の願いに応じ畜生界に舞い降りた彼女は、人間霊が押し込められていた霊長園を、その能力で古墳の形に改築。そこを拠点とし、人間を保護する行動に出た。造形術で敵を倒し、また埴輪兵団を築き、動物霊たちの支配から人間を解き放った。だが、結局は人間を支配する者が代わっただけ。人間の庇護者と称する彼女だが、人間霊から信仰を吸い上げることで力を得ていたのだ。
次回作のラスボスとは真逆である
彼女自身は「動物霊が人間霊を尊重できるのであれば共存しよう」と考えていたが、如何せん相手はヤクザ。抗争に発展し、
磨弓をはじめとする埴輪兵団をけしかけることになる。
その一方で、動物霊が生身の人間までも抗争に巻き込み、更に庇護対象の人間霊が攻撃されたり、そこまでやって自分の前に現れたくせにいきなり敵前逃亡を謀ったことには腹を立てていた。
その様を、動物霊は「畜生界の理を覆した邪神」「動物の敵であり人間の敵でもある」、
霊夢からも「邪悪な宗教オーラを感じる」と言われる一方、
魔理沙は「物わかりの良い奴」「無邪気で、野望があるような様子は窺えなかった」、
妖夢は「こっちの方が僅かながら理解できた」と語っている。
結局最初は敵として出会った主人公達も袿姫に対してそれほど悪い印象は抱いておらず、動物霊が言うような「邪神」だとは感じていなかった。実際のところ今回の異変の発端、地上へ動物霊が現れた出来事の
直接の黒幕は八千慧である。
確かにその理由は袿姫にあるのだが、袿姫が産まれた元々の原因は「畜生界における勢力争いと、動物霊が人間霊を奴隷として扱っていた」ことにある。
それに袿姫自身も
「願いに応じて現れて使命を果たそうと動いただけなのに、当事者だからととりあえずボコられた」という、ちょっと不憫な扱いである。
彼女と違って消滅させられなかっただけマシか。
最終的に袿姫は主人公達に敗北したことで動物霊への攻撃こそ止めたものの、「人間霊も畜生界より地上にいた方が幸せかも」という理由で拠点を地上に移す計画を考え始め、人間霊の受け入れ先を探すために幻想郷に現れるようになった。
その後は彼女自身も人間界に興味を持っていたり、そして拠点探しの最中に冥界まで行ったか「幽霊が多すぎる」とお断りされ、結局未だに霊長園に在住しており、「畜生界は元通り」というわけにはいかなかった。まあ、元を辿れば人間霊を絶滅危惧種にまで追い込んだ動物霊の自業自得なのだが。
天才造形師でとにかくクリエイテイブなキャラ。
手下も自分で造るし、攻撃でも 「相手を作り替え」たりする。畜生界中の動物霊達も彼女の造形術と彼女が造った埴輪兵団に蹂躙されていた。
彼女が造ったファインセラミックスは、信仰心を集めたり身代わりにしたり、一緒に遊んだり部屋に飾ったり出来る優れもの。壊れてもすぐに修復する、病気知らずで休憩もいらない。
埴輪兵団だけではなく土器や銅鐸、鏡、剣も作れる。上記の霊長園改築の件もあるので、形あるものならほぼ何でも作れるのかもしれない。
どれもボロボロに見えるが魂や強い魔力を宿していて、それぞれ単体でも御神体として信仰を集めるため、魔理沙は「偶像を作り出す程度の能力」を「神を作り出すに等しい力じゃないか」と評した。
…なんというか、本作の他のボスたちと比べて一人だけスケールでかすぎである。
紺珠伝との類似が指摘される鬼形獣だが、だからってラスボスまで似せなくてもよかったんじゃないのか。
○容姿
鮮やかな青色のロングヘアーに赤紫色の目で、髪の毛が落ちないように緑色の頭巾を被った職人然とした姿。
縄文土器のような模様のついた黄色のワンピースの上に、同じく緑色のエプロンを着ている。所々に彫刻道具を携帯しており、首には三つの勾玉をぶら下げている。両腕両足には水色の紐を結び、鼻緒のないサンダルを履いている。
背後の龍や獣が混ざったような不定形の炎のオーラはおそらく元ネタの一つ、迦具土神が埴安姫神に竜を産ませようとして生まれという火を吐く竜「土竜オコロ」がモチーフではないかと言われている。
服装とオーラを含め全体的に
背中にマッハドリルつけた鋼鉄ジーグみたいな原色に近い色に古墳時代の巫女や女性埴輪を意識したデザインをしている。
○元ネタ
- 波邇夜須比古
- 波邇夜須比売
日本神話に登場する神性。イザナミが
ヒノカグツチを産んだ際に漏らした大便から生まれた神様。二柱共に土のエネルギーを司る神様で、信仰することで土壌や粘土、それによって作られる作物や芸術作品に影響を及ぼすとされる。
ちなみに、イザナミはヒノカグツチを産んだ際、小便も漏らしており、こちらは
和久産巣日と
弥都波能売という神様になった。
上記四柱はイザナミから最後に産まれた神々である。
イザナミが最初に産んだヒルコ=戎瓔花に始まり、イザナミから最後に産まれたハニヤス=埴安神袿姫に終わる。それが東方鬼形獣なのである。
ZUN氏は外來韋編にて
「ずっと偶像崇拝の話をしたかったんですよね。
ラスボスの二つ名だって、最初は「アイドルマスター」にしようかって思ってましたから(笑)」
「「マスター」というよりは「P」、プロデューサーの方だったんですよね。アイドルを作る側ですから。」
「だからあえて1面から「アイドル」が登場していて、ラスボスにちゃんと絡めてるんです。」
と発言しており、どうやら
瓔花の存在そのものが、袿姫登場の伏線だったようだ。
余談だが、植村花菜の曲『トイレの神様』の歌詞に『それはそれはきれいな女神様』とあるが、実は古今東西排せつ物に関わる女神はみな一様に美人と伝承にあったりする。
古代ギリシャにて確立された演出技法の一つ。
簡単に説明すると「物語の収拾がつかなくなったので、何か凄いやつを登場させてそいつに軌道修正してもらう」という手法。「機械仕掛けから出てくる神」あるいは「機械仕掛けの神」などと訳される。
袿姫の場合は本編のまま、動物霊視点で「理不尽を体現したような上位存在」、人間霊視点で「閉塞した状況をぶち壊してくれるヒーロー」「神に等しい力を持つプログラム」
もしくは東方二次創作で「
紫や
永琳や
にとりなどが
様々な道具であらゆる夢を叶える猫みたいになる」こと。
さすがに上記の猫や
終焉の魔神にして究極の破界神、
翼をもがれた鳥もしくは鳥へと進化する以前の獣といった面々には見劣りするが
自然や現象を司る神と違って
陶芸・建築・人工的かつ近未来的な技術など「造形」を司る袿姫は、普段から我々が頼りにしている『文明の力』そのものであり、紛れもないデウスエクスマキナと言える。もしかしたら「道具を作り、それを使う」こと自体が、彼女への信仰になるのかもしれない。
イスラエルの作家、ユヴァル・ノア・ハラリの書いた書籍「サピエンス全史」の続編。「人間が作り出した技術によって、人間の自由意志が支配される」という未来予測が書かれている。
上記の通り袿姫は「文明の力」=「人間が作り出した技術」であり、ZUN氏は袿姫の「土と水で造り変えてやろう」というセリフに対しての解釈は
『純粋な善意で「そのほうが死ななくていい。不老不死にしてあげるよ」ーー現実で言うと病気になるような体を捨ててサイボーグ化して行こうという意味』で
そして彼女と人間霊の関係を『世界を支配する為に作ったモノに、結果的に自分も支配されてしまう』としていて
これを「人類が作ったAIそのもの」「技術革新によって人類は病気と闘争を克服し、不死と幸福を目指す」「偶像崇拝」「神になる人類と家畜になる人類」「独善的完全管理社会」の暗喩と位置付けており
ましてや本編で神であるはずの袿姫は主人公達に対して「人間同士」と呼ぶ節があるため
彼女の二つ名の「イドラデウス」は『ホモ・デウス 』の捩りだと思われる。
○キャラ考察
通称「けーき様」「ケーキ」「けーきっき」。
人間霊たちにとって希望そのもので
一見するとただの善な存在に思えるが
上記の元ネタやZUN氏の発言により
「人間の願いから誕生してるので言動はとても人間らしいが人間の気持ちはわからない概念のような存在」
「基本的に温厚で友好的だが、神話にも残る最古の部類の神であると同時に最も新しい神かつ"天才"ゆえに倫理観と価値観も人とズレてる」
「袿姫の本質は善だが非情。善悪がない、信者も敵も誰もが平等、利他的であると同時に利己的。秩序をつかさどるプログラムの様な機械的な神格」
「嗜虐的な我欲はないが、最初に与えられた信仰というコードを何を犠牲にしてでも守り続ける元祖創作物AIの無機質さと危うさがある」
「いい意味でも悪い意味でも人間の味方」
「無邪気で純粋で子供のような独善者で、慈悲深さと冷酷さを併せ持った、あくまで中立で誰の味方でもないが救いを求めるなら気まぐれで手を貸すという、絵に描いたような神様」
「現状では東方史上一番神様らしい神かもしれない」など
ある意味で人工的な生粋の古神という概念そのものだからか、東方における異質さが感じられる解釈も見られる。
ただ、東方香霖堂でも述べられている通り、神には和と荒という二面性がある。和は人間に対して優しい性格。雨や日光の恵みなど、神の優しく平和的な側面。荒は神の怒りであり、人の心を荒廃させて争いへ駆り立てる神の働きである。
ただし、荒の性格が悪い物と言う訳ではない。荒こそが神の本当の力。荒を祀る事で悪い面から人々を守る事に繋がる。
要するに、何も人に御利益を齎すだけが神ではないと言うこと。人間に災禍を齎す荒魂の側面もあり、寧ろこちらの方が本質的で重要である。その二面性を理解せず一概に『邪悪』と決め付けるのは早計だろう。あるいは扱い方次第で「敵にも味方にもなり得る、もしくは神にも悪魔にもなれる」ということか。繰り返し言うが、100%都合のいい神など存在しないのだから。
本編では普段の言葉遣いは女性口調だが
どこぞの神みたいに神様アピールする時は神らしく尊大な態度を取り、威圧的で中性的な口調に変わる。一部のEDでは霊夢に対して気さくで柔らかい口調、霊長園を見学する魔理沙には丁寧語を使う場合もある。
一方、主人公達に取り憑いてる動物霊に対してわざわざ「さん」付けで子供の悪戯のように煽ったり、妖夢カワウソEDで挑発してきた八千慧には煽りの入った敬語を少し使えたりする。
また、外來韋編でZUN氏の一文
『埴輪って不思議ですよね、なぜみんな作ったんだろうかって。考古学では困ったらすぐ信仰のせいにしちゃいますけど、今の人間の道德観とかで考えると違うんじゃないか、なんてことをずっと考えててね。僕としては、単純に作りたかったんじゃないかと思うんです。最初は違ったかもですが、だんだん作ること自体が楽しくなってきて、バリエーションも増えちゃった。作り欲求を満たすためだったんじゃないかな。土偶とかもね。そういうすごいクリエイターがいたんじゃないかなあ。』
上記によると
「信仰とか支配とか人の目とかより、ただ自分の造りたいものを造る、そんな自由奔放で純粋無垢なクリエイターである」のが
ZUN氏の「救世主とか邪神とか善悪とか関係なくただのクリエイターとしての彼女」に対するイメージなのかもしれない。
更に人妖名鑑 常世編でZUN氏のコメントでは
『天才造形師の彼女は、いつでも作業が出来る様に彫刻刀などの工具が入るポケット付きエプロンを着けています。髪の毛が落ちないように頭巾もしています』
『天才というと、何故かファッションには無頓着でいつも部屋着のような格好でいるイメージがありますね。まあ実際にそういう人も多いからでしょうけど、天才は美的センスがないと言うのは乱暴かも知れません。天才が生み出すものは殆どが美しいからです。天才ほど、美の探求者もいないでしょう。彼女も例外ではなく、美的センスは相当高いはずです。そうで無いと、埴輪武装男子立像や馬形埴輪みたいなふるゆらフィギュアは到底造れないはずですもんね。』など、どうやらZUN氏の埴安神袿姫に対するイメージは、ごく一部の二次創作で盛り上がってた特殊性癖設定とは真逆であるらしい。
あくまで推測ですぎないが、言動はお茶目で人間くさく、自分勝手で調子に乗りやすい。敵対相手であっても説得、あるいは時間稼ぎを試みることができる。行動原理は合理的で単純明快、掴み所のなく、相手や状況によって口調や立ち振る舞いが大きく変わる、というより無意識に器用に使い分けてる印象。
そもそも自分のスペカに「ディアボルス」と名付けてる時点で少なくとも「自分は邪神である」ことを全然気にしてなさそう自覚があると思われる。
「悪意はない、自己本位、陽気で話し上手」「積極的に人を破滅させる趣味はない」「自分の興味や気持ちの赴くままに動く行動力の塊」「目的や使命を果たすためなら手段を選ばない」「異変が起こるきっかけであるのだが本人は異変を意図していたわけではない」など、ちょっと某邪仙と同じ匂いがする…。
○二次設定
カップリングは磨弓、八千慧、瓔花等。
形は違えど人形を作る同士で
アリスと
青娥との絡みがある。人形談義もしくは人形バトルとか。
同じ造物主であるところや、テーマ曲が所々「神話幻想」「AN ORDEAL FROM GOD」と似ているなど、
ゲームの演出上どこか通ずるものがあるため、意外なところでは
神綺との絡みも見られる。
普段は残念な美人少し幼げなお姉ちゃんな感じだが作業中になるとかっこよくて傍若無人になる。
埴輪兵団と人間霊だけではなく竜形の炎のような謎生物も飼ってるらしい。
一説によると、瓔花の今の姿も「不具の子」として生まれた姉を哀れんだ袿姫が造って与えたものなんだとか。
名前ネタでケーキが大好物である。ケーキを食べたり、ケーキになっていたりしている。名前を捩って「歯に優しいケーキ」とも。
余談だが、「「袿」は「けい」と打っても変換できない」という話は半分ガセ。機種によっては普通に出るが、「うちき」か「うちぎ」と打って変換した方が安定するだろう。
二次では大体そのデウスエクスマキナっぷりを遺憾無く発揮しており、爆発した
紅魔館や炎上した鈴奈庵をさくっと建て直したり、
メディスンや
成美を彼女たちの理想体型に魔改造してあげたり
高すぎる神性のオーラで人々を
駄目にする信仰させる無自覚系
台風の目邪神神様ムーブしたりとか
多少の無茶も
「元ネタがあの綿月姉妹の叔母だから」という理由で納得できてしまう。
まあそもそも東方の姉妹は基本姉より妹がぶっとんでるんだし良いんじゃね?
彼女のテーマ曲「偶像に世界を委ねて」は非公式ながら長期シリーズとなってる東方人気投票の音楽部門で「初登場時には4位」になり、以降は10位圏内と多くのユーザーからも支持されている。
追記・修正はサピエンス全史とホモ・デウスを読んでからお願いします。
- 追記・修正の要件が現実にできる範囲でかつハードルが高いww -- 名無しさん (2020-05-25 03:39:15)
- 純狐さんといいおっきーなといいケーキ様といい最近神が多い、だがそれがいい -- 名無しさん (2020-05-25 10:53:00)
- 埴安姫の皮を被ったデミウルゴス -- 名無しさん (2020-05-26 17:01:26)
- 「お姉さん」の優しさ、「子供」の無邪気さと「神様」の慈悲さと「AI」の冷酷さの混ざり具合が絶妙 -- 名無しさん (2020-05-26 17:04:11)
- カラーリングがハニワ絶対コロマンに似ているのが気になる -- 名無しさん (2020-05-29 06:58:48)
- 読み方がわからん -- 名無しさん (2020-05-29 08:00:33)
- 二つ名が孤立無援を誂えた造形神になってるけど、孤立無援”が”誂えた造形神では? -- 名無しさん (2020-08-13 03:08:26)
- ↑修正しました -- 名無しさん (2020-08-20 21:38:55)
- 弾幕STGじゃなかったらでっかい粘土の塊がもにゅもにゅ変形して無数の怪鳥の群れとかでかいモンスターになって襲ってくるような攻撃をしてきそう -- 名無しさん (2020-08-27 18:34:13)
- 虹龍洞の千亦様も市場の神だったからこれで4連続ラスボス神様ですね -- 名無しさん (2021-07-28 16:15:34)
最終更新:2025年03月29日 22:48